まず、2015年の国内IT市場はどうだったのか。IDC Japanが先頃発表した調査結果によると、金融機関などの大型案件やPC更新需要でIT支出を伸ばした2014年の反動を受け、2015年は全体で前年比0.1%増の14兆7837億円と横ばいで落ち着く見込みだ。
では、2016年はどうなるか。IDCでは、銀行、製造業、小売業、運輸業、サービス業などで堅調なIT支出を維持することが見込まれることから、前年比成長率で2.7%、さらに2017年も同2.0%の伸びを予測している。
企業規模別における2015年のIT支出額の前年比成長率は、大企業(従業員数1000人以上)および中堅企業(500〜999人)が1.0%、中小企業(100〜499人)が0.8%の伸びを示す一方、小規模企業(1〜99人)は0.5%のマイナス成長となる見込みだ。
2014〜2019年の年間平均成長率では、大企業が2.0%増と引き続き全体を牽引する一方、中堅・中小企業も業績回復に伴い、システム更改や新規システム案件が増加すると、IDCでは見ている(図1参照)。
産業分野別では、金融分野において大手都市銀行やゆうちょ銀行での大型案件、地方銀行の再編によるシステム統合などの案件、大手金融機関を中心にFinTechやコグニティブ(認知)などの最新技術によるビジネスおよびサービスの革新を進める動きが、今後の国内IT投資を牽引する見通しだ。
また、製造業では基幹システムの刷新を終えた企業が、グローバルサプライチェーンの最適化や生産ラインの自動化、設計・開発領域でのデジタル化や標準化を見据えた環境整備へ進む動きが見られる。さらにオムニチャネル推進が加速する小売業では、それを実現するプラットフォーム構築やデジタルマーケティング領域での投資が増加するとしている(図2参照)。
国内のIT投資は、IDCの産業分野別の見立てにもあるように大型のSI案件が目白押しの状態であることから、ここ数年は堅調に推移すると見られている。だが、今後クラウド化が進むにつれ、IT投資の推移にも影響が出てくるだろう。図2において2016年以降、全体として成長率が鈍化するとIDCも見ているが、クラウド化の進展によってIT投資の推移がどう変化するか、注意深く見ておく必要がありそうだ。
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