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生活圏外の森林は除染しない方針 土砂流出など懸念
12月21日 19時23分

東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、各地で行われている除染を巡り、国は住民の生活圏から離れた森林については除染で落ち葉を取り除くことで土砂が流出するなどの悪影響が懸念されるとして、除染を行わない方針を示しました。
福島第一原発の事故を受けた森林の除染について、国は現在、原則として住民の生活圏から20メートルの範囲に限定して行っていて、それ以外の森林については方針を示していませんでした。
国は21日に東京都内で開いた専門家の会議で、新たに、生活圏から離れた大部分の森林は除染を行わない方針を示しました。
その理由について国は、福島県内で行った調査の結果、森林から生活圏に影響を与えるような放射性物質の飛散が確認されなかったことや、除染で広範囲にわたって落ち葉を取り除くことで土壌が露出し、土砂が流出するなどの悪影響が懸念されるとしています。そのうえで土砂の流出対策として傾斜が急な場所などでは木の柵を設置するほか、間伐などを進めて森林を再生させるとしています。
会議のあと井上環境副大臣は「どうすれば住民の方々にとって、いちばんよいのかを考えた結果で、今後丁寧に説明してご理解をいただけるようにしたい」と述べました。

福島県内 引き続き除染求める声

原発事故で町のほぼ全域に出されていた避難指示が、ことし9月に解除された福島県楢葉町では、去年春までに国が住宅など生活圏の除染を終えましたが、そのほかの森林は手つかずのままです。
楢葉町には周りを森林に囲まれた住宅も多く、住民からは「町に戻るうえで放射線が不安だ」と訴える声が上がっていて、山あいに自宅がある楢葉町上小塙の会社員、齊藤典夫さん(59)も森林の除染を求めています。齊藤さんは、妻と娘夫婦、それに小学生と幼稚園の孫2人の合わせて6人でいわき市に避難していましたが、「20年余り前に建てたわが家を守りたい」と1人で自宅に戻りました。将来、家族を呼び戻したいと考えていますが、孫たちの遊び場にもなる自宅の周りの森林の除染が行われていないことから、去年の夏には自宅の裏の杉や竹を自分で伐採しました。
齊藤さんは「楢葉町は山が多いので、子どもが帰ってくれば山で遊びたがる。子どもや若い人が帰ってこないと高齢者だけで暮らすのは大変なので、自然に放射線量が下がるのを待つのでなく少しでも除染を進めてほしい」と話しています。
楢葉町の放射線対策課は「山林が7割を占める楢葉町の住民は、国が現在除染を行っている住民の生活圏から20メートルの範囲に限らず、山や林に日常的に立ち入る生活をしていた。国にとっての除染の必要性と住民が感じる安心には大きなギャップがあり、住民が安心して町に戻れるよう森林除染の範囲を広げるとともに、きめ細やかな除染を引き続き求めていきたい」と話しています。

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