空売り投資家は「善人」か-年初から状況一変で注目集まる
2015/12/21 12:14 JST
(ブルームバーグ):株式運用担当者にとって勝ち組銘柄の選択が難しくなりつつあるが、負け組は自信を持って選ぶことができる。
空売り投資家のホイットニー・ティルソン氏の例を挙げよう。同氏は株価が約100ドルから20ドル弱に下落した米ランバー・リクイデーターズ・ホールディングスについて先週、空売りを手じまいした。同氏が2013年にランバーのフローリング木材に関する疑念を公表したことが株価急落の一因となった。
空売り投資家は有名人というわけではない。ビル・アックマン氏でさえ金融界以外ではあまり知られていない。ただ6年に及ぶ米強気相場が失速の兆しを見せる中で、市場ではティルソン氏のような弱気派がこれまでなかったほど注目を集めつつある。
それにツイッターのアカウントを持っていれば誰でも匿名で否定的なコメントを出すことができるため、誰もが実務経験のないアナリストになり得る。市場からの資金流出で悪者扱いされることの多い空売り投資家だが、映画「ザ・ビッグ・ショート」(原題)では恐らく初めて「善人」として描かれている。
空売り投資家が収めた一定の成功によってこの戦略の人気は高まっている。アクティビスト・ショーツのデータによると、公になった空売りキャンペーン件数は今年171件と、前年の145件から増えた。米市場における空売りの割合は最近、金融危機後で最も高い水準に達した。
空売りにとって今年は年初に比べてはるかに好ましい状況で幕を閉じようとしている。今年前半はアクティビスト(物言う投資家)が割安な銘柄の株価上昇に一役買ったほか、買収ブームや低い与信コストを背景に空売りには不利な状況に見えた。
「7月初めに状況が変わった」とGAMホールディングのアミル・マッデン氏は語る。中国の景気減速懸念が市場の動揺を招き、商品価格も落ち込んだ。世界の株式市場でも多額の時価総額が失われた。突然、状況は空売り投資家に有利な方向に動き始めた。夏場の相場低迷が続き、ボラティリティ(変動性)の急上昇という幸運が舞い込んだ。「指数ではなく個別銘柄の空売りに賭けていた運用担当者は好成績で頭角を現し始めた」と説明した。
原題:The Big Short Was Only One Reason 2015 Was The Year of the Bears(抜粋)
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更新日時: 2015/12/21 12:14 JST