安倍内閣が集団的自衛権の行使を認めた昨年7月1日の閣議決定について、内閣官房国家安全保障局が、修正意見は受け入れ困難だという「留意事項」をつけた上で、閣議決定前日になって各省庁に半日の回答期間で意見を求めていたことがわかった。憲法解釈の変更を伴う歴史的な閣議決定だったが、省庁間の意見集約は形式的だったことが浮き彫りになった。
朝日新聞が入手した安保局の文書などによると、安保局は昨年6月30日午前10時40分ごろ、閣議決定文の案とともに全省庁にメールで「『国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について』について(協議)」と題する文書を送信。意見がある場合、メールに添付して、同日午後9時までに提出するよう求めた。同時に、「留意事項」として「(閣議決定の案文は)関係省庁と与党との調整を経て作成されているため、修正を求める御意見については、基本的に受け入れることが困難である」とも記載した。
安保局は朝日新聞の取材に「(閣議決定の案文の)調整プロセスに関与していた(外務省、防衛省、警察庁など)関係省庁、それ以外の省庁からも修正意見が示されることは想定されなかったが、重要性に鑑み、全省庁に対し正式に事前協議を依頼した」としており、実際に異論はなかったという。
複数の省庁の官僚によると、閣議決定する文書は担当省庁が各省庁に意見照会するのが慣例だという。税制改正大綱など与党間協議を経て「政治決着」した文書や、首相の施政方針演説など政治色の強い文書に対して意見を聴く際は、「変更は困難」などの文言を添えることもあるといい、形式的な意見照会が常態化していることがうかがえる。
朝日新聞社
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