使わず貯まった有給休暇338日、CEOが社員に送る暗黙のメッセージ
2015/12/21 07:05 JST
(ブルームバーグ):きょう有給休暇に入ったとすれば職場に復帰するのは再来年の3月頃でよい。米高級食料品店チェーン、ホールフーズ・マーケットの共同最高経営責任者(CEO)、ウォルター・ロブ氏の場合はこうなる。
ロブ氏の時間単位での未消化の有給休暇は1991年の入社以来、2703時間に積み上がっている。1日当たり8時間と計算した場合、338日に相当する。ロブ氏はこれを使って会社を休むこともできるし、買い取ることもできる。ホールフーズのように社員が毎年の未使用の有給休暇を翌年に持ち越し続けることができる企業は米国では珍しい。しかしロブ氏のように有給休暇を使わない人は珍しくない。
通信機器メーカー、クアルコムのスティーブン・モレンコフCEOの未使用有給休暇は2010年以降、毎年度末の時点で少なくとも12万1000ドル(約1500万円)相当に達している。病院経営のHCAホールディングスのR.ミルトン・ジョンソン氏は2014年末の時点で15万2308ドルあった。アップルのティム・クック氏は14年に有給休暇の未使用分として5万6923ドルを受け取った。
ダンキン・ブランズ・グループの元CEO、ジョン・ルーサー氏は「今のようなテクノロジーのある時代に、休暇は存在しないも同然だ」と話す。休みを取っても午前中は仕事に費やし、それからリラックスモードに切り替えたという。休息の時間をあらかじめ決めないと危険だと同氏は警告し、「仕事から距離を置いて深呼吸し、充電する時間を確保しなくてはいけない」と語った。
米国では他国に比べて有給休暇が少ないため、それを使い切るのは容易であるはずだ。経営者養成サービスのビステージ・ワールドワイドがまとめた調査によれば、米企業の経営陣に与えられる有給休暇は年間15日から25日がだいたいの相場となっている。英国やスウェーデンなどは一方、すべての社員に約5週間の休暇を与えるよう法律で義務付けている。
経済政策研究センター(CEPR)のリポートによれば、法的に有給休暇を義務付けていないのは先進国の中で米国だけだ。それに加えて上司たちがなかなか休暇を取らない環境では、「社員が休暇を取ることに不安を感じる社風」が育ちやすくなると、クリア・パス・エグゼクティブ・コーチングのイーデン・エイブラムズ氏は話す。
正反対の極端なケースとして無制限の有給休暇を認める米企業もわずかながら存在する。つまり何日でも休暇は取れる、取る勇気があれば、という話だ。映画配信サービスのネットフリックスは2004年からこの制度を導入。配車サービスのウーバー・テクノロジーズなどシリコン・バレーの企業も追随した。ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOは11月、ニューヨーク・タイムズ紙主催の会合で、自身は年間でだいたい6週間の休暇を取っており、「良い例を示そうと、そのことを社内で大っぴらにしている」と話した。
ビステージの人事担当最高責任者、マイケル・モリーナ氏は「会社のトップが数千ドル規模の有給を使わず放置すれば、他の社員は恐らくそれを、自分たちもそうするべきだというメッセージと受け止めるだろう」と話す。経営陣には社員の模範となる責任があり、だから自分は年間4週間の有給をすべて使おうと努力していると同氏は語った。
原題:With 338 Vacation Days Saved Up, a CEO Sets Tone for His Company(抜粋)
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更新日時: 2015/12/21 07:05 JST