セブン&アイがアマゾンを越える日…真逆戦略で「不可能」を可能にする異次元的革命
12月14日付本連載記事『セブン&アイ、アマゾン・楽天「越え」も目前…全勢力結集の革命的ネット通販』で述べたように、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、全社を挙げてオムニチャネル戦略を強力に推進することで、ネット通販での売上高1兆円を目指す意向である。サイト「omni7」より
このオムニチャネル戦略の統率を任されている鈴木康弘CIO(最高情報責任者)が述べているように、同戦略推進の目的は、「店舗とECの融合をさらに進め、いつでもどこでも商品を届けられる体制を築く」ことで、デジタル技術と小売りを掛け合わせた「リテールテック企業」を構築することにある。
セブン&アイHDにおける「第3の経営革新」と位置付けられたこのオムニチャネル戦略は、単なるシステム投資ではなく、同社にとって成長の起爆剤となることが期待されている。
今や日本全国で一大ネットワーク小売拠点となったコンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパン(約1万8,000店舗)を生かして、セブン&アイHDは、オムニチャネル戦略を小売りバリューチェーンの下流(バックエンド)から実現することを目指している。競合となるアマゾンの上流(フロントエンド)から推進する戦略と、まさに対峙している。『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
アマゾンは通販サイト「amazon.com」に約3億6,500万の品揃えやレコメンデーション機能などの革新性を盛り込むことで、商品やサービスを「知る」「調べる」「注文する」「買う」といった顧客の一連の購買行動に新たなる価値を生み出してきた。さらに商品やサービスを「受け取る」プロセスにおいても、配送時間の短縮化を促進することで顧客に付加価値をもたらしてきた。
こうして、アマゾンは販売促進に結び付くテクノロジーを常に創造しながら、受注から納品までのリードタイムの短縮化を図ることで、強固なバリューチェーンを築き上げてきた。日本では、「受け取る」プロセスにおいて、ローソンやファミリーマート(約2万8,000店舗)などを受け取り拠点とし、また、ヤマト運輸の集配所(約3,000店舗)を注文当日の受け取り拠点とするなどしてさらに顧客価値を高めている。
このようにアマゾンは、前述した顧客の購買行動が、ネットやモバイルなど複数のチャネルを経由しても、ストレスなくシームレスに進められる仕組みを着々と整えつつある。
真の狙い
一方、セブン&アイHDはバックエンドでの「受け取り」を重視しつつも、フロントエンドの拡充にも余念がない。今回開設したサイト「omni7(オムニセブン)」こそが、まさにそれである。オムニセブン実現のために、ECサイトとスマートフォンアプリのシステムを新たに開発した。すなわち、顧客との接点を重視したフロントエンドのチャネル拡大である。