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130万円の壁 現状に合わない制度だ

 年収130万円未満のパートの主婦らは年金や健康保険料を負担しなくても済み、103万円以下だと所得税がかからず配偶者控除が適用される。これらの優遇を受けるため、自ら働く時間を抑えている人は多い。いわゆる「130万円の壁」「103万円の壁」だ。

     厚生労働省はパートの賃上げや勤務時間を増やした企業に助成金を支給し、パートの人が「壁」を意識せず長時間働くことを促すことを検討している。だが、そんな小手先の対策で済ますべきではない。

     「壁」をなくすことは、(1)働く人の不公平の解消(2)労働力の確保(3)社会保障財源の安定−−につながる。抜本的な制度改革が必要だ。

     現在の社会保障制度は「正社員の夫と専業主婦の妻」をモデルに1960年代に整備された。親の介護や子育てなども含めて無償の家事労働を担っている専業主婦に対して保険や税の優遇措置が設けられたのだ。

     86年に男女雇用機会均等法が施行されたころから働く女性が増え、現在は専業主婦世帯より夫婦共働きの方が多くなった。多世代同居より核家族が増え、親の介護を担わない専業主婦も多くなった。

     一方、未婚や一人親の非正規社員は長時間働きながら低賃金しか得られず、その中から保険料を自分で払っている。特に国民健康保険に加入している一人親は子どもの数が多くなるほど負担が重くなる。「壁」に守られて保険料負担のない主婦と比べると著しく不利だ。

     現状と制度が合わなくなっているのは明らかだ。

     政府は一人親家庭に支給する児童扶養手当を増額することを検討している。多額の予算が必要だ。「壁」をなくしてパートの人が自分で保険料を負担するようになれば、その分の公費支出が少なくなる。働いても貧しいワーキングプアの家庭に財源を回すなど再分配の機能をもっと働かせるべきだ。

     また、福祉やサービス業などは深刻な労働力不足に苦しんでおり、「壁」をなくすことは労働力確保の面でも大きな意味がある。現在は働いていない人、短時間のパートの人の中には看護師や保育士などの資格を持っている人も多い。

     もちろん、現に介護や子育てをしているため働きたくても働けない人には配慮が必要だ。休業補償を手厚くし、税や保険でも不利にならないようにしなければならない。

     加藤勝信1億総活躍担当相は「103万円の壁」についても解消する必要があると明言している。すべての人が公平感を持って積極的に働くことができる社会に向け、時代に合った制度に改めるべきだ。

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