「様々な人の絶望」を目の当たりにしてきた山田氏だからこそ言える?
漫画家、山田玲司氏の代表作として有名なのはやはり『絶望に効くクスリ(YOUNG SUNDAY COMICS SPECIAL,1~15巻)』ではないでしょうか。
様々な現場でそれぞれの人生を歩んできた著名人を訪ね、その生き様に触れ、“絶望”している読者や、自分自身を救う“クスリ”を、彼らとの対談の中で探して回るストーリーです。
ちなみに、現在までの対談相手としては画家のみうらじゅん氏や、ミュージシャンの故・忌野清志郎氏、コピーライターの糸井重里氏、歌手の加藤登紀子氏など、錚々たる面子が並びます。
ちなみに、私自身はこの漫画を読んだことはありませんが「こんな成功者たちにも、絶望するような経験はあったんだな…」と感慨しきりでございます。
〜実は誰もがメンヘラなのではないか?という疑問が湧き上がる〜
”メンヘラ”は俗語でして、うつ病や精神病、神経症、心身症といった心の病気に罹っている人のことを指します。
2015年を締めくくるにあたり、山田氏はインタビュー冒頭でいきなり「メンヘラブートキャンプ」と題して、メンヘラの新兵訓練を行いたい旨を告白。その心は?世の中の人間は2つのタイプに大別され、それはすなわち
- 「医者に行っているメンヘラ」
- 「医者に行っていないメンヘラ」
だそうです。医者に行っていないということは自覚症状がない普通人だということでしょう。では、人は誰でもメンヘラであると…?
〜教育機関で、「トラウマ」を強制される学生たち〜
山田氏によると、15歳までに大体の日本人は
- 親が教育を失敗したこと
- 学校が教育を失敗したこと
のどちらかにおいて、なんらかの形でその後の人生に取り返しのつかないトラウマを抱えるように、システム的になっているとのこと。
いきなりこんな国で恋愛しろって無理でしょって。最初の段階であんな教育を受けて、学校でめちゃくちゃにされて、スクールカーストでボロボロにされるわけじゃない。
スクールカーストで、いい思いをするのは全体の1パーセントだけだから。残りの99パーセントっていうのは、完全に女子にスルーされる人生。女子たちもそうだよね、男子にいないことになっている女にされる人生、みたいな。男たちもそうね
そういう意味なのですね。確かに。
スクールカーストの説明
「スクールカースト」という言葉は、まだまだ日本では耳慣れない言葉だと勝手に思っていますので、老婆心ながら簡単に説明しておきます。ちょっと以下の表をご覧ください。
これは、アメリカのハイスクールにおける「スクールカースト表」です。
最上級の「ジョック」や「クイーンビー」というのは、男子なら人気のあるスポーツ部、女子ならチアリーダー部に所属し、お互い同士憎からぬ思いを持っている一部の選ばれし人々を指します。日本では”リア充”がこれにあたります。
そして、その下の「サイドキックス」や「ワナビー」というのは、最上級の選ばれし人々のようになりたいなぁ…と思っている彼らの取り巻きさんたちです。
でも多くの場合、なることはできません。日本では”キョロ充”に置き換え可能だという意見が一般的です。
それから、ちょっと別分野になるのでしょうが、ワナビーたちの下の階層が文科系の人々で構成される「プレップス」です。日本ではおそらく”サブカル系”に置き換え可能ということになろうかと思います。一応ここまでが、楽しい学生生活を送れるラインとされています。
で、その下の「ギーク」や「ブレイン」になってくると、なんかこうガリガリ勉強とかしてるし、しかもプログラミングとかの特定の人にしかわからない趣味にのめり込んでるし、話題もそういうことに限定されてるからコミュニケーション取りづらい人たち、みたいなニュアンスですかね。日本では”オタク”ですね、説明の必要は多分ないと思います。
その下の「ターゲット」というのはもう説明の必要はないですね。プログラミング能力に長けているわけでもなく、運動もできず、勉強もいまいち。要するにいじめのターゲット層です(ちなみに”便所飯”というのが書かれていますが、実際している人を見たことは筆者自身はないです)
今の立場は、永続的なものではないのに…
自身の学生時代、恐らくは「ギーク」だったと思われるMicrosoft創始者;ビル・ゲイツが、過去に行われた学生を対象にした講演会で、発言した有名な言葉。
「オタクには親切にしよう。君たちの多くが将来、彼らの下で働く可能性が高い」
個人的には、ゲイツの発言は単なる過去への恨みつらみとか、「俺を馬鹿にした奴らめ、ざまあみろ」みたいな意地悪な気持ちからの発言ではないと私は思っています。
彼は本当に世界中の学生が置かれている「のっぴきならない状況」に、心を痛めているのだと思います。そうでなければあれだけ多くの教育プログラムへのチャリティはしないはずです。
実際、スクールカーストを一気に有名にした1999年の『コロンバイン高校銃乱射事件』の主犯格はスクールカーストで下位だったことが、事件を起こした引き金として指摘されていました。
確かにこんな風に“プツン”と、切れてしまう子やずっと立ち直れない子どもはいる、それは否定できません。しかし、捉え方によって人生は明るくできるー「ジョック」に向けた発言と捉えられがちなゲイツのこの発言は、実は今この瞬間にも義務教育や、高校で苦しんでいるスクールカースト下位者に向けて語られていると私は思います。
レジリエンスが重要なんですよね、きっと
山田さんも「この状況からいかに明るく脱していくことができるか、みたいなことが、この国のテーマなんじゃないかなと思って。それであらゆる意味でメンヘラを笑い飛ばせるようになるために、いろんなことをやっていこうかなと思っています。」と語っています。
山田さんは日本で、ということを仰っています。でもこれは、全世界的な課題であると思います。
精神的な衝撃に対する柔軟性を指す「レジリエンス」というキーワードは、世界中で注目されていますし、人のメンタルの問題だけではなく、東日本大震災を始めとする自然災害やリーマンショックに代表される金融ショックなどから、素早く立ち直るための総合的な処方箋でもあります。
このサイトでも、レジリエンスに関する記事がありますが、2016年は是非、山田氏のブートキャンプに入隊し、まさにレジリエンス=”折れない心”を培っていきたいものです。
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