北京のランダム・ウォーカー

習近平が進める「ネット支配」の真実〜その目的は言論弾圧だけじゃない!

漂う次世代「巨大利権」の匂い

2015年12月21日(月) 近藤 大介
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〔PHOTO〕gettyimages

習近平主席の「インターネット博」

上海の南西約140km、上海から杭州へ向かって3分の2くらい行ったところに、「烏鎮」(ウージェン)と呼ばれる地区がある。古代の春秋時代に呉越両国がこの地で覇を争っていた頃、呉国が国境警備隊「烏戍」を置いていたことから、その名がついた。

唐代には蘇州府の一角として富豪たちが沼地に沿って邸宅を構えたとされ、1300年前の水郷の住居群が、今もそのまま残っていて、約5万6000人が暮らしている。

私は5年前にこの地を訪れたが、公害にまみれて草木が腐臭を放っている工場群を進むと、水郷地帯に江南の風光明媚な場景が出現した。120元(約2,400円)も入場料を取られたが、「烏鎮」は、名にしおわぬ悠久の雰囲気を醸し出していた。

そんな浙江省の名所旧跡に、12月16日午後3時頃、習近平主席がやって来た。この地で16日から18日まで、2回目の「互聯網之光博覧会」(ワールド・インターネット・カンファレンス)が開かれたのである。

この「インターネット博」は昨年11月、同じ烏鎮で初めて開かれた。なぜこの地で開いたかと言えば、浙江省は習近平主席が2002年から2007年まで党委書記(省トップ)を務めていた「地元」であり、名所旧跡で開催することによって、海外のVIPを呼び込もうとしたのである。

来年9月には、杭州でG20を開くと中国政府は発表しており、この地で同時期に「第3回インターネット博」を開く予定だという。今回の「ネット博」も当初は10月下旬に開催することが決まっていたが、直前になって「出席者の都合」で12月に延期されたのだった。

すなわち、習近平主席が自ら出席すると決意したことで、他の全員が「習近平主席の都合」に合わせて日程を変更させられたのである。つまり、多分に政治的な博覧会なのだ。

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