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次のメールを日本科学者会議の東京支部幹事の知り合いに送りました。下記に入れた「経緯」のPDFを添付してのことです。
あのような粗雑なもの(増田氏のもの)を掲載するだけで恥を知るべきです。
会員が非難されているのに反論させないという経緯に驚きよりも怒りが湧いてきました。
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左巻健男です。
日本の科学者2015年10月号の増田論説があまりにもお粗末なので反論が載ると思ったら添付のような経過だということで、抗議を込めて退会します。
手続きは本部に連絡しようと思います。
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その一人から次の返事が来ました。
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メール、ありがとうございます。
いやー、科学者会議、驚きの対応ですね。
編集委員会、資質が問われるのはまさにそのとおりです。
不掲載という決定は改められなければなりません。
退会ということについては、少し様子を見てもらえないでしょうか?
きっと、この経緯を見て、科学者会議という科学者集団の組織として、誤りを犯した編集委員会の姿勢を変更することになると信じていますし、変更しなければならないと思います。この編集委員会の方針が是正されないのだとしたら、退会ということもよくわかります。
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以下、野口さんらからの経緯です。(増田氏の文章も全文引用されていたのですが、ここでは削除しました。「反論」でわかると思います。)
2015年12月18日
投稿論文不掲載の経緯について
野口邦和・清水修二・児玉一八
日本科学者会議発行の機関誌『日本の科学者』2015年10月号(同年9月10日発行)に,増田善信著「福島原発事故による放射性ヨウ素の拡散と小児甲状腺がんとの関連性,およびその危険性」と題する論文が掲載されました(【別紙1】).被害を過小評価しようとする加害者への怒りや警戒が論文執筆の根底にあるとはいえ,一読すれば分かることですが,間違った情報と知見にもとづいて執筆された問題だらけの論文です.論文の「まとめ」も乱暴極まりないものです.通常なら「おそまつな論文が掲載されたものだな」と放っておくところですが,論文の中で増田氏は,私たち3名の共著『放射線被曝の理科・社会』(かもがわ出版,2014年12月)を名指しで批判しています.間違った情報と知見にもとづいて批判されたのでは放っておくわけにもいかず,清水,野口,児玉の3名で反論を執筆し『日本の科学者』に投稿することにしました.論点は,放射性ヨウ素の放出量と小児甲状腺がんの評価です。増田氏の論文が感情論をベースにしたずさんな論理で成り立っていたため,こうした論理に対しては冷静な論理で反論するよう心がけました.
私たちの反論「放射線被曝の影響評価は科学的な手法で-甲状腺がんをめぐる増田善信氏の論稿について-」は,10月13日に論文筆頭著者の清水が『日本の科学者』編集委員会に投稿しました(【別紙2】)(注).
投稿から約25日後の11月7日,『日本の科学者』編集委員長名で「掲載を見送る」旨の下記文書が届きました.
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清水 修二 様
11月7日の編集委員会で、御稿の掲載について協議した結果、増田論文の放出日数について3ページを使って(2〜5ページ)反論するほどのものではないこと、また、「まとめ」での「可能性は少ない」との推論根拠が示されていないことを主な理由として、掲載を見送ることとしました。
検討に時間を要し、ご連絡が遅れましたことをお詫びしますと同時にご了解をお願
いいたします。
11月12日
『日本の科学者』編集委員長 伊藤宏之
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私たちの反論が内容的に間違っているのであれば不掲載は当然あり得ることでしょう.無条件に『日本の科学者』に掲載せよなどと主張するつもりは毛頭ありません.しかし,「掲載を見送る」理由は,「3ページを使って反論するほどのものではない」とか,非常に不可解なものでした.また,「『まとめ』での『可能性は少ない』との推論根拠が示されていない」というのであれば(私たちはそれなりに示したつもりですが・・・),説得力のある修正記述を私たちに求めればよいのであって,いきなり問答無用で不掲載とするのはあまりに乱暴です.
編集委員長の文書は不掲載とすることに対する「了解」を私たちに求めるものでしたが,11月7日の編集委員会で組織的に検討したとは思えないおそまつな不掲載理由で,了解など到底できるものではありません.そこで私たちは3名で検討し,代表して筆頭著者の清水が11月15日付けで『日本の科学者』編集委員会宛に,編集委員長個人ではなく編集委員長として正式な回答をするよう求めました(【別紙3】).
12月9日に届いた編集委員会からの回答は以下のものでした.
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清水 修二 様 2015年12月9日
貴兄からの2015年11月15日付け「日本の科学者」編集委員会あての文書につき、12月5日の編集委員会の協議の結果に基づきお答えいたします。
1.「日本の科学者」は、日本科学者会議の機関誌として、「3.11」後の「原発の廃止」という大会決定に基づき、原発のない社会実現の立場での研究活動の成果を掲載することを基調にしています。
2.政府や東京電力など関係機関により公開・公表されている被曝や汚染のデータの多くは、限定されていますし、加工もされています。また、意図的な「データ隠し」さえ、認められます。民間サイドの調査も調査区域制限や範囲の広がりにおいて、不十分にならざるを得ない現状が続いています。「自主・民主・公開」の原則は依然として重要です。つまり、徹底した調査ならびに生データの集積による事実分析が何よりも不可欠です。この基本線で共同することが、科学者の使命です。
3.研究活動の過程においては、事実分析の適性と仮設定立の妥当性を研究者相互が吟味し合うこと、そして節度ある相互批判が必要です。
4.「掲載見送り」との判断は、以上の編集委員会の編集方針に基づき、御稿を拝読した結果でした。すなわち、批判の権利があること並びに公平性を重視することを是認したうえで、限られたデータの扱い方に慎重さが必要であることを理由に判断した次第です。
12月5日の編集委員会は、以上のことを改めて確認し、お答えといたします。
なお、今後も会員としての投稿の権利は、当然のことですが、保障します。
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この「回答」が私たちの論文を不掲載とする理由は,先の11月12日付けの不掲載理由とは明らかに異なります.不掲載という結論が先にあって,あとからその理由付けをしたと考えざるを得ません.それにしても12月9日付け回答は,「仮説」を「仮設」と誤植しており,12月5日の編集委員会後4日間もの間,組織的に検討して作成した文書とは思えない代物です.一番の問題は,項目をひとつひとつ読んでみても,いったい何を言いたいのかさっぱり分からない文章であることでしょう.頭が痛くなってくるほどです.『日本の科学者』編集委員会は,なぜ会員である私たちにこのような官僚的作文で対応してくるのでしょうか.
この点について,清水は「回答」が届いたその日のうちに,抗議を込めて,編集委員会宛に「回答」を読んだ感想を送りました(【別紙4】).この感想は清水が個人として書いたものであり,野口と児玉は関知しておりませんが,野口と児玉もまったく同様の感想を持っています.
ある会員が会誌を通じて別の会員を名指しで批判した場合,当然,批判された側の会員は会誌を通じて反論を行う権利があるはずです.上記のような一貫しない理由付けで,しかも意味不明な官僚的作文で会員の反論を不掲載とすることは,まったく納得がいきません.清水は,日本科学者会議事務局長にも「感想」を送りました.事務局長からは「先生のご主張承りました.私としての個人的な意見はありますが,JJS(『日本の科学者』の英文略称)の編集については事務局として編集委員会にお任せしていることをご理解ください.」との返信がありました.
以上が事柄の経緯です.『日本の科学者』は編集委員会のものではなく日本科学者会議のものです.それは『日本の科学者』に毎号,「日本科学者会議編集・発行」と明記されていることからも明らかです.確かに日常の編集の実務は編集委員会に任されているとはいえ,編集委員会が対応を間違った場合は,事務局会議なり,常任幹事会なりが間違いを正さなければならないのではないでしょうか.その自覚が,残念ながら現在の事務局長にはないと言わざるをえません.
増田論文に対する私たちの反論がまったくもって理不尽な理由により不掲載になったことから,日本科学者会議の現在のあり様を心配しつつも,私たちはそれぞれの判断で同会議を退会しました.30〜40年にわたりその一員として活動してきた組織を離れるのは複雑な思いがありますが、放射線被曝,放射線影響に関する限り,日本科学者会議はもはや科学者集団ではなくなったと言わざるを得ません.そのことを大変残念に思います.
(注) 私たちの反論は,増田論文の内容上の問題点について詳細に触れていますが,形式上の問題点については触れていません.たとえば同論文の図1の横軸の目盛の値が2箇所間違っているとか,増田氏の主張の中で非常に重要と思われる小児甲状腺がんの男女比が10代で5.43であるとする出典が明示されていないことなどです.後者は米国人のデータであることを反論の中で触れましたが,一次資料を参照せず二次資料に依拠して(いわゆる引用の引用)主張を展開しているため,別の意味で欠陥の多い論文であることを指摘しておきます.
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清水修二・野口邦和・児玉一八
はじめに
本誌Vol.50-10(2015年10月号)に載った増田善信氏の「福島原発事故による放射性ヨウ素の拡散と小児甲状腺がんとの関連性,及びその危険性」と題する論文は,そのすべてがそうであるとは言えないまでも,われわれの共著書『放射線被曝の理科・社会』(かもがわ出版刊,2014)を批判する内容になっており,筆者の執筆のターゲットもおそらくそこに定められているものと受け取られる.無論,まっとうな批判は歓迎すべきものであり,そこから生産的な議論が展開されるなら有益な結果が生まれることも期待できよう.しかし増田氏の論稿には残念ながら粗っぽい独断が目立ち,生産的な議論の端緒とはなりそうもない.拙著で論じたとおり,放射線被曝の健康影響の評価に政治的なバイアスをかけることは厳に慎まなければならない.たとえそれが全き善意からの解釈や主張であっても,である.
放射性ヨウ素の大気放出についての増田論文の主張は,「チェルノブイリでは10日で放出が終わったが,福島では40日以上も続いた.ヨウ素131の半減期は8日であるが,これだけ長期に放出され続けていたので,長期間にわたる甲状腺への影響は無視できない」というものである.ここでは,�NHKスペシャルの報道内容は新事実なのか,�チェルノブイリ原発事故では放射性ヨウ素の放出が10日間で終わったのか,�放射性ヨウ素が長期間にわたって放出されたことが子どもの甲状腺に大きな影響を与えることになるのか,の3点について増田論文を批判的に検討する.
�NHKスペシャルの報道内容は新事実なのか
増田論文は2014年12月21日に放送されたTV番組のNHKスペシャル「原発メルトダウン File.5 知られざる大量放出」での,放射性ヨウ素の大気放出量は「最初の5日間で25%,残り75%はその後の2週間であった」との報道内容を紹介する.これを「衝撃的な事実を伝えた」,「NHKの報道は衝撃的である」とまで述べている.実はこの番組をわれわれも見ているが,放射性ヨウ素の放出期間について,特段目新しい内容はなかったと記憶している.「最初の5日間で25%,残り75%はその後の2週間であった」,すなわち3月末までの約20日間に大部分の放射性ヨウ素が大気中に放出されたというのは,福島第一原発事故をずっと追跡している者からすれば,常識の範囲内のことである.
「従来は,最初の4日間で,ほとんどすべての放射性物質が放出されたと思われていた」などと増田論文は引用文献などの根拠も示さず述べているが,仮にそのように思っている研究者がいるとすれば不勉強極まりない.ヨウ素131とセシウム137の大量放出が3月12日から3月末または4月初めまで続いたことを示すデータは,たとえば2011年5月12日第31回原子力安全委員会資料4-2号1)など,数多く存在する.増田論文が引用している気象研究所の「東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の移流拡散について」2)も,2011年7月8日に同研究所のHPに掲載されたものである.
国連科学委員会(UNSCEAR)2013年報告書は,「3月12日から大量の放出が始まり,放出率はそれから1週間にわたって大きく変動し,それぞれの原子炉におけるこの事象に関連して著しい増加が見られた.最初の1週間が過ぎると,より限られた期間に若干の変動が見られたものの,放出率は徐々に低下した.4月初めの時点で放出率は事故後の最初の週に発生した放出率の1000分の1以下に低下したが,これらの非常に低い放出率は何週間にもわたって持続した」3)と述べている.NHKスペシャルが言うように3月15日以降の大量放出の事実が「(2014年12月の)今頃になって判明した」わけでも何でもない.NHKスペシャルのディレクターが2014年になってそうした事実に気づき,これを新事実であると誤認しただけのことである.
�チェルノブイリ原発事故では放射性ヨウ素の放出が10日間で終わったのか
「大規模な大気放出が10日で終わった」と主張するのであればわれわれも異論はないが,福島第一原発事故で大量のヨウ素131が長期間にわたって大気放出されたと述べる増田論文が,「チェルノブイリでは10日で放出が終わった」とあっさり述べている点も大いに疑問である.チェルノブイリ原発事故では,原子炉暴走事故により蒸気爆発が起こり,原子炉が破壊された.火災と放射性物質の大量放出を抑制するために採られた最初の措置は,原子炉の破壊によって生じた大きな穴の中に中性子吸収材と火災抑制物質を投下することであった.ホウ素化合物,鉛,砂・粘土,ドロマイトなど総重量約5000トンの物質が延べ1800機のヘリコプターから投下されたことはよく知られている事柄である.この結果,放射性物質の大規模な大気放出は,事故発生の1986年4月26日〜5月5日までの10日間で幸運にも収まったのである.しかし,放射性物質の大気放出が決して終わったわけではない.
これについても数多くの資料が存在するが、たとえばUNSCEAR2000年報告書は,「5月5日と6日の放出は大幅に減少したが,低いレベルでの放出はその後数週間,そして事故後40日まで続いた.5月15日と16日には特に高い濃度が観察されたが,これは火災の継続的な発生あるいは原子炉のホットエリアによるものである」4)と述べている.もちろんより低いレベルの放射性物質の放出は事故後40日以降も続いたはずである.そうでなければソ連邦内の各国から労働者を動員して,放射性物質の放出を抑制するために破壊された原子炉を密閉する巨大なコンクリート建造物いわゆる「石棺」を造る必要はなかったはずではないか.根拠を示すことなくヨウ素131の大気放出が「チェルノブイリでは10日で放出が終わった」と主張する増田氏の見解は,同事故によるヨウ素131の大気放出に関連するこれまでの数多くの研究成果を無視するものでしかない.
�放射性ヨウ素が長期間にわたって放出されたことが子どもの甲状腺に大きな影響を与えることになるのか
福島第一原発1〜3号機は地震時に緊急停止しており,既に核分裂連鎖反応は終わっている.放射性ヨウ素が新たに生成することはなく,あとは時間経過に伴う放射能の減衰だけを考えればよい.それ故,放射性ヨウ素が短期間に大気放出されたか,それとも長期間にわたって大気放出され続けたかが,子どもの甲状腺に与える影響の要因として大きいものとはわれわれには思えない.たとえば半減期8日のヨウ素131の場合,40日も経過すれば,その放射能は初めの3%ほどに減衰することを考えれば,そのことは明らかではないか.子どもの甲状腺に与える影響を考える場合,先ずヨウ素131がどれだけ放出されたか,すなわち放出の絶対量が決定的に重要である.次に,それが居住地域にどれだけ拡散・移動し降下・沈着したかも重要な要因となる.また,事故情報がきちんと公表されたか否か,緊急時対応が適切に採られたか否かも重要な要因である.これらの視点からチェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故を比較してみよう.
福島第一原発事故のヨウ素131大気放出量は,チェルノブイリ原発事故の10分の1以下であったとする数多くの評価結果(たとえばUNSCEAR 2013 年報告書は16研究グループの評価値)があり,これは今後大きく変わることはないと思われる.チェルノブリ原発周辺には陸地のみで海洋がなく,ヨウ素131の多くは周辺の居住地域に拡散・移動し降下・沈着した.一方,福島第一原発事故では,東京工業大学の吉田尚弘教授と東京海洋大学の神田穣太教授により,事故当時の卓越した偏西風により大気放出量の70〜80%は海洋,残りが陸地(居住地域)に拡散・移動し降下・沈着したと評価されている5).また,チェルノブイリ原発事故では事故情報がソ連邦内で5日間以上も国民に隠されていたために初期の緊急時対応がまったく採れなかったのに対し,福島第一原発事故では国民の多くが事故を注視し,十分とはいえないまでもそれなりの緊急時対応を採ることができた.加えて、チェルブイリ原発周辺のように内陸部でヨウ素欠乏地帯であったのか、それとも日本のように島国でヨウ素含有量の多い海産物を通して日頃からヨウ素を十分に摂取していたかも重要な因子である。増田論文は大気中のヨウ素131濃度のみに注目し,こうした問題を一顧だにしない.こうした諸々の結果として小児甲状腺線量はどの程度だったのかについて,増田論文は触れようとさえしない.小児甲状腺線量の評価結果が存在しないなら触れようはないが,事故直後の3月26日〜30日にいわき市,川俣町,飯舘村で放射線医学総合研究所の研究グループが実施した0〜15歳までの1,080人(いわき市134人,川俣町647人,飯館村299人)の小児甲状腺被曝検査結果6)や弘前大学の床次真司教授らの研究グループが実施した小児甲状腺被曝検査結果7)など,実測データはあるのである.しかも上記放医研の研究では,小児人口に占める甲状腺被曝検査割合は、飯舘村が約41%、川俣町が約36%あり8)、その信頼性は高いと考えられるものである。また,これらはいずれも経口摂取ではなく吸入摂取を前提に甲状腺線量が高くなるように評価したものであり,その評価結果は99%以上が30mSv未満であることを示している.一方,UNSCEAR2000年報告書などによれば,ベラルーシなどチェルノブイリ原発周辺の小児甲状腺線量は平均値が福島の最大値の10倍以上,福島の平均値の100倍以上も高い9).「現在発生している小児甲状腺がんは福島原発事故に由来したヨウ素131による影響の可能性が高い」と主張する増田氏が,甲状腺線量についてまったく触れず,既に存在する小児甲状腺線量の評価結果について何も触れないことは,極めて公正さを欠いた態度である指摘せざるを得ない.
2.小児甲状腺がんの原因評価
福島県が実施している県民健康調査で見つかった小児甲状腺がんが,果たして原発事故由来の放射線被曝によるものかどうかを判定する基準は4つあると拙著では述べた.第1がヨウ素131の被曝線量,第2がいわゆる潜伏期間,第3が患者の地理的分布,第4が患者の年齢構成である.増田氏は第1の被曝線量には全然ふれず,その代り患者の男女比を論じている.
甲状腺がんが見つかった子ども個々人のヨウ素131被曝線量を推定することは困難だが,県民健康調査の基本調査で事故後4か月間の実効被曝線量(外部被曝)の推計値が分かっている患者がそのうち63人おり,実効被曝線量1mSv未満の者が45人(71.4%)で,最大でも2.2mSvである.ヨウ素131の(内部)被曝だけが特段に多いと考える理由はない.
チェルノブイリ事故では小児甲状腺がんが4〜5年後から急増していることをもって,今の段階で見つかっている福島のがんは被曝の影響によるものではないと断ずる論法に対しては,拙著でも疑問を呈している.そのような前提を置いて「先行調査」(ベースラインの確認)を行うのは,調査そのものの信頼性を損なうので不適切だからである.とはいえチェルノブイリ事故後の小児甲状腺がんの急増時期に関するくだんの観測に対しては国際的に広い支持があり,これを批判するにしても綿密な実証を要する.山下俊一氏が共著者になっている論文中のワンセンテンスを「証拠」に,それをあっさり否定するような乱暴なことはすべきではなかろう.
増田氏の論稿にある「図3」は,見つかった甲状腺がんの患者の分布を市町村別に(0か2人以下か3人以上かで)示したもので,放射線量の低い会津や県南で患者の絶対数が少ないことを指摘して,事故の影響を反映していると論じている.しかし福島県民なら,この図の濃淡が人口の多寡に対応していることはすぐ分かる.奥会津や南会津はもともと人口希薄な過疎地で,放射線量が低いことから甲状腺検査の受診率も低い.たとえば南会津町は「悪性ないし悪性疑い」0人だが受診者数は1,869人,他方,郡山市は受診者数54,063人に対し「悪性ないし悪性疑い」25人となっている.これを,南会津町は0人だから白地,郡山市は3人以上だから黒く塗るといった図を示して一体どんな意味があるのだろう.表1で県内の大まかな圏域別にデータを見ると,「悪性ないし悪性疑い」の発見率は圏域間でほぼ差がない.「浜通り」の比率が一番高いが,避難区域を含んでいない.
増田氏の図では,市町村別にみると皮肉なことに双葉地方の避難区域でかえって患者数が少ない事実が看取される.増田氏がこれを「避難が比較的早かったからであろう」のひとことで片づけているのには驚かざるを得ない.双葉郡の住民は即座にみんな県外へ脱出したとでも氏は思っているのだろうか.実際には「患者数の多い」中通りやいわき市に避難した住民が非常に多かった.
そもそも原発にほど近い避難区域の住民は避難が早かったから被曝が少なかったなどというのは,全く事実に反する.事故後4か月間の外部被曝量をみた基本調査の結果(表2)は,避難区域を含む「相双」の住民の被曝量が他地域と比べて明らかに大きかったことを示している.(平均値を見ると「県北」よりも小さいが,これは線量の低い相馬市や南相馬市の人口が大きいからである.)ちなみに,福島市を含む「県北」でも郡山市を含む「県中」でも3mSv未満が99.6%,全県でみれば(「相双」を含めても)5mSv未満が99.8%である.念のために付言するが,これは最も放射線量が高かった時期の数字であることに留意すべきであり,これを3倍して1年間の被曝線量としたりするのは正しくない.半減期の短いヨウ素131の放射能の減衰とともに線量は急速に低減に向かった.
患者の男女比については拙著では触れていないが,国立がん研究センターがん対策情報センターのがん統計データベース10)を使って2000〜2011年の甲状腺がんの罹患率における男女比(女/男)を見ると,5〜9歳で2.4,10〜14歳で2.0,15〜19歳で3.7,20〜24歳で3.6,25〜29歳で3.8,30〜34歳で4.3,35〜39歳で3.4,40〜44歳で3.7,45〜49歳で4.2,50〜54歳で3.4,55〜59歳で3.2,60〜64歳で2.7,65〜69歳で2.6,70〜74歳で2.1となる。10代だけをとってみると3.2である.増田論文にある10代で5.43は米国人のデータであり,日本人には当てはまらない。増田氏は男女比(女/男)が放射線起因性か自然発生かを識別する指標と考えているようであるが、そもそもそのような考えは定説として確立されているものではない.
今見つかっている甲状腺がんが,事故由来の放射線被曝の結果であるとは考えられないと評価する最も分かりやすいデータは,患者の年齢構成であると拙著では述べた.ベラルーシのデータでは4歳以下の患者が3分の2を占めているのに対し,福島のケースでは5歳以下の患者は皆無である.増田氏は「精密検査未実施の5歳以下を別にしても,年齢が高くなるにつれて多くなっている」とさりげなく書いておられる.5歳以下は精密検査を実施していないから見つかっていないのだと言いたいのであれば,はっきりそう書くべきである.事実は,5歳以下では精密検査を必要とするような検査結果が出ていないということだ.
幼少の子どもに患者が見つからず,年齢がかさむにしたがって患者がほぼ逓増しているデータを見たとき,常識のある人なら「年齢とともに甲状腺がんは増えるものではないか」と考えるだろう.しかし増田氏は「屋外活動の規制が遅れたため,活動的な子どもほど多量の放射性ヨウ素を吸引し,その内部被曝が現れたのではないか」と言う.呼気からの内部被曝が原因であるとするなら,屋外にいようが屋内にいようが大きな差はないだろう.県民が屋外に出ることに慎重になったのは,主として地表に落ちた放射性物質からの外部被曝を避けるためだった.また福島県民は,政府の指示がなければ無頓着に屋外で子どもを遊ばせ,政府の一声で一斉に屋内に引き入れるといった行動様式をとるほど,お人よしではない.
チェルノブイリ事故では,飲食物とくにミルク経由の内部被曝が多数の小児甲状腺がんを引き起こしたとみるのが定説で,増田氏もそれは認めている.(もっともヨウ素131に関しては「数年間の」食品摂取規制のゆるさを問題にする意味は乏しい.)福島事故のケースでは幸いにして飲食物からの内部被曝は僅少で済んだ.これも増田氏は認めている.しかし大きな子どもほど患者が多いという,増田氏にとって「都合の悪い」データの意味するものを,牽強付会な理屈を持ち出してまでなぜ覆さなければならないのだろうか.そこに窺われるのは,「事故の過小評価は許せない」という,科学的判断とは次元を異にする一念であると評さざるを得ない.
3. スクリーニング効果などの問題
スクリーニング効果や,いわゆる過剰診断についても増田氏が触れているので簡潔に敷衍しておきたい.
甲状腺がんは組織型から,乳頭がん,濾胞がん,未分化がんに分類される.甲状腺がんの約9割を占める乳頭がん,および濾胞がんは予後がたいへん良好で,進行がゆっくりしている.いっぽう未分化がんは予後が悪い.小児甲状腺がんは,甲状腺がんのうち約1〜2%を占めるまれながんで,発見時に肺などへの遠隔転移や広範なリンパ節転移が認められ,一見進行しているように見えても,あるいは成人に比べて再発が多いものの,長期予後は成人よりも良好とされている.
米国の5州と4市において,1973〜2002年の甲状腺がんの発生率と死亡率(疾患発生数(及び死亡数)÷観察人年)の年次推移を,米国がん登録から調べた結果によると,発生率は1970年代から顕著な増加傾向を示しているいっぽうで,死亡率はほぼ一定あるいはわずかに減少傾向を示した.甲状腺がんの大部分を占める乳頭がんについて,腫瘍のサイズ別に分類したところ,サイズの大きな腫瘍の発生率はあまり変わっていないのに,微小サイズの検出は大きく増加していた1).この結果は,検査技術の向上に伴って,それまで検出できなかった甲状腺がんが検出できるようになったため,がんの発生率が上昇したことを示す.
スクリーニング検査は,対象とする集団からある疾患について疑わしいものを拾い上げるための検査で,自治体で行われる検診もその一つである.スクリーニング検査によって,無症状の疾患が高い頻度で見つかることをスクリーニング効果という.
ここで紹介した米国の知見では,甲状腺がんの発生率の上昇のほとんどを乳頭がんが占めており,予後が悪い未分化がんは増えていない.がん検診の技術向上によって微小で寿命に関係しないがんも検出できるようになったことが,見かけ上のがん発生率増加の原因であって,死亡率には変化がなかった.甲状腺がんのスクリーニング効果とはこのように,生命予後に影響しないがんも大量に見つけてしまうことである11).
甲状腺がん手術には,甲状腺機能低下,副甲状腺機能低下,反回神経(声帯を動かす神経)麻痺などの神経の損傷といった合併症がある.チェルノブイリ原発事故後,6,000人以上の小児甲状腺がんの手術が行われて,死亡例は約15人であったが,その多くは手術や術後治療に慣れていない施設での術後合併症に起因したとされる.
甲状腺の検査によってがんが見つかれば,たとえ微小で経過観察でよいという症例であっても,本人や親はすぐに切除したいと思うであろう.事実,福島県の甲状腺がん検査で見つかった症例において,医師は手術せずに経過観察することを勧めたが,本人の希望で手術を行った症例が報告されている12).
増田氏は,「福島県の隣接地域にもスクリーニング検査を拡大すべき」,「十分な外科手術の実施を提案したい」と述べているが,外科手術には合併症のリスクがあること,スクリーニング効果によって過剰診療の発生が危惧されること,医療関係者は過剰診療を可能な限り避けたいと考えていることの,いずれも理解していないと考えざるを得ない.
なお,福島県立医科大学において切除した小児甲状腺がんの遺伝子解析を行ったところ,RET/PTC遺伝子再配列の頻度が低く,BRAF遺伝子の点変異が高率で認められた13).チェルノブイリ原発事故による小児甲状腺がんでは,半数以上でRET/PTC再配列が見られたいっぽう,BRAF点変異は少なく,とくに幼児ではごくまれであった.対照的に,成人の散発性甲状腺がんでは,半数ほどにBRAF点変異が見つかり,RET/PTC再配列はきわめてまれとされている.福島の小児甲状腺がんの遺伝子解析結果は,通常の成人型甲状腺がんと同様のパターンを示した.この知見は,小児甲状腺がんの発症メカニズムを考える上で重要と思われる.もっとも福島県立医科大学は,「この差異のみをもって,放射線影響の有無を判断するのは早計である」とコメントしている.
まとめ
原発事故の影響で小児甲状腺がんがふえるかどうか,今の時点で結論を出すのは時期尚早である.引き続き調査を継続する必要があることは福島県も明言している.過小評価も過大評価もせず,冷静に科学的な検証を行うべきである.しかし今度の事故による程度の低線量被曝では,統計的に確認できるほどの増加が観察される可能性は小さい.それでも考えられる評価基準のすべてにおいて「シロ」である確証が得られない限り,「疑わしきはクロ」とみるのが正義だ,と増田氏は主張されるだろうか.それで誰が救われることになるのか,考えてほしいものである.
参考文献
1) 第31回原子力安全委員会資料4-2号:ヨウ素131とセシウム137の大気放出量に関する試算(2011年5月12日).
2) 気象研究所HP:東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の移流拡散について, http://www.mri-jma.go.jp/Topics/H23/H23_tohoku-taiheiyo-oki-eq/1107fukushima.html
3) UNSCEAR 2013年報告書(和訳)附属書A:2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響,第41項,17(2014).
4) UNSCEAR 2000年報告書(和訳)附属書J:チェルノブイリ事故の被ばくと影響,第28項,513-514(2002).
5) Naohiro Yoshida, Jota Kanda:Tracking the Fukushima Radionuclides,336(6085):1115-1116(2012).
6) 第31回原子力安全委員会資料4-3号:福島県における小児甲状腺被ばく調査結果について(2011年5月12日).
7) S. Tokonami, et al:Thyroid doses for evacuees from the Fukushima nuclear accident, Nature Scientific Reports 2, Article number. 507(2012).
8) 東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議参考資料2:第1回から第3回専門家会議での確認事項のまとめ(甲状腺被ばくの現状・事実)(2014).
9) UNSCEAR 2000年報告書(和訳)附属書J:チェルノブイリ事故の被ばくと影響,表21,587(2002).
10)国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター,ガン情報サービスがん統計データベース.
11) Davies L, Welch HG, Increasing incidence of thyroid cancer in the United States, 1976-2002, JAMA 2006;295(18):2164-7.
12) 鈴木眞一「手術の適応症例について」(2015年
8月31日)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/129308.pdf
13) 鈴木眞一ら「小児〜若年者における甲状腺がん
発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明」,
第57回日本甲状腺学会学術集会抄録(2014)
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福島支部 清水修二
私ども(清水・児玉・野口)の論文「放射線被曝の影響評価は科学的な手法で-甲状腺がんをめぐる増田善信氏の論稿について」の「日本の科学者」への投稿につき、伊藤宏之編集委員長から掲載拒否の連絡を受け取りました。了解を求められましたが、了解できませんので、以下その理由を述べます。
(1)「日本の科学者」10月号に掲載された増田氏の論文は、私どもの共著「放射線被曝の理科・社会」を批判する内容のものであり、JSA会員である私どもには、その批判に同誌上でこたえる権利があると考えます。
(2)私どもの論文に科学的な意味で重大な欠陥があるとすれば掲載不可の判断もありうると思いますが、編集委員長の示す「掲載見送り」の理由はそのようなものとは受け取れません。伊藤委員長の示す理由の�「増田論文の放出日数について3ページを使って反論するほどのものではないこと」は、何を言っておられるのか理解に苦しみます。増田氏の論じている事柄が取るに足りないものだということなのか、こちらの記述が単に長すぎるということなのか、分かりません。放射性物質の放出期間の件は、気象学者である増田氏が重視している事柄であり、それを批判する以上、私どもも丁寧に根拠を示して論じる必要があると考えた結果です。仮に編集上の観点から長すぎるということであるなら、そのように注文を付けるのが順序ではありませんか。委員長の挙げる理由の�「可能性は少ない、との推論の根拠が示されていない」については、拙稿において福島県民の被曝線量のデータ、あるいは飲食物を経由する内部被曝の抑制などの記述で示唆したつもりであり、何の根拠もなくそのように書いたわけではありません。これも仮に説明不足であるということであれば、そのように指摘すればよい話ではありませんか。いきなり掲載拒否というのはあまりにも乱暴です。
(3)福島県における小児甲状腺がんの問題については、これを放射線被曝に起因するものとする見方とスクリーニング効果によるものとする見方と、2つの対立する見方があるのは周知のとおりです。そして、これはあくまでも科学論争のテーマとして扱うべきであり、日本科学者会議の機関誌である「日本の科学者」は、かかる科学論争の場を会員に公平に提供するべきものと考えます。しかし今度の貴委員会の対応は、論争の一方のサイドにその場を提供する半面、他方のサイドにはこれを認めないというものであり、フェアな対応とは到底認められません。
以上のような理由から、私どもは掲載拒否の決定に承服できません。
委員長個人ではなく編集委員会名での正式なご回答を求めます。
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編集委員会の「回答」について
2015.12.9 福島支部 清水修二
編集委員会のご回答を拝見しました。野口・児玉両先生のご意見もありましょうが、とりあえず私の率直な感想を述べさせていただきます。
お示しになったご回答は、その言わんとする内容をストレートに表現することを避け、何重にもオブラートに包んだような表現で、「官僚の作文」の一典型であるというのが第一印象です。いったい何を言いたいのか、いちいち「真意」を忖度しないと理解できない文章です。
1.「日本の科学者」は、日本科学者会議の機関誌として、「3.11」後の「原発の廃止」という大会決定に基づき、原発のない社会実現の立場での研究活動の成果を掲載することを基調にしています。
この文言を単なる枕詞でなく第一項目に掲げた「真意」を忖度しますと、要するに私どもの論文は「原発の廃止という大会決定」に沿っていない、「原発のない社会実現の立場」に立っていない、ということかと思われます。被曝の健康影響を否定的に論じるのは原発のない社会の実現に敵対するものだとの「政治的」な判断が、ここには窺われます。拙稿の最初の部分で強調した「放射線被曝の健康影響の評価に政治的なバイアスをかけることは厳に慎まなければならない」という私どもの主張は、ものの見事に一蹴されたわけです。ご回答は続いていろいろ述べておられますが、つまるところおっしゃりたいのはこの第一項に尽きていると思われます。
2.政府や東京電力など関係機関により公開・公表されている被曝や汚染のデータの多くは、限定されていますし、加工もされています。また、意図的な「データ隠し」さえ、認められます。民間サイドの調査も調査区域制限や範囲の広がりにおいて、不十分にならざるを得ない現状が続いています。「自主・民主・公開」の原則は依然として重要です。つまり、徹底した調査ならびに生データの集積による事実分析が何よりも不可欠です。この基本線で共同することが、科学者の使命です。
この第二項は何を言いたいのか、再び忖度しますと、拙稿で挙げているもろもろのデータは政府や東京電力などによって歪曲されているので信用できない、したがってそれらに基づく主張も信頼に値しないということでしょう。しかも民間サイドの調査も不十分だというわけですから、一体私たちは何を根拠に事を論じればいいのか、分からなくなります。たとえば福島県の県民健康調査のデータが県の発表だから信用できないとなれば、子どもの甲状腺がんのデータも議論のベースにはなりえないことになります。増田論文もそれを根拠に自説を展開しておられますから、同じように問題ありということになります。
「徹底した調査ならびに生データの集積による事実分析が何より不可欠です」と言うのは簡単ですが、放射線被曝に関するデータ収集は膨大なスケールになり、政府機関の力なくして達成できるものではありません。政府関係の研究所にも数多くの真面目な研究者が研究に従事しています。それを政府機関だからといって黒一色に塗りつぶすのは不当であり、余りにも政治的です。
3.研究活動の過程においては、事実分析の適性[?]と仮設[説!]定立の妥当性を研究者相互が吟味し合うこと、そして節度ある相互批判が必要です。
これはまた何をおっしゃりたいのか、さっぱり分かりません。わずかに読み取れるのは「節度ある相互批判」という言葉で、私どもの増田批判に節度がないと言っておられるのかな、という点だけです。拙稿をお読みいただけば、私どもが別に非紳士的な表現を使っていないことはお分かりになるはずです。もっとも、明確な表現で相手の欠点を批判するのを「節度を欠く」とまで受け取られては、こちらの立つ瀬がありません。
4.「掲載見送り」との判断は、以上の編集委員会の編集方針に基づき、御稿を拝読した結果でした。すなわち、批判の権利があること並びに公平性を重視することを是認したうえで、限られたデータの扱い方に慎重さが必要であることを理由に判断した次第です。
「限られたデータの扱い方に慎重さが必要である」とは、どのデータのどういう扱いについて言っておられるのか、これまた忖度するしかありません。またこの観点からみたとき、なぜ増田論文が合格で私どもの論文がなぜ不合格なのか、これも分かりません。
12月5日の編集委員会は、以上のことを改めて確認し、お答えといたします。なお、今後も会員としての投稿の権利は、当然のことですが、保障します。
ここまで理不尽な扱いをしておきながら、「投稿の権利は、当然のことですが、保障します」とは、何とも人を食った物言いだとは思いませんか?