文/黒木亮
去る12月12日、パリで開かれていた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で2020年以降の地球温暖化防止の新たな枠組みとなる「パリ協定」が採択された。今後各国の批准手続きを経て、来年4月頃に発効する見通しである。
主要各国の思惑
1997年の京都議定書以来18年ぶりの国際的な合意となる「パリ」協定が採択されたのは、世界の二大排出国である米国と中国が事前協議や会期中に首脳電話協議を行ったことと、開催国フランスのオランド大統領自らが根回しのために米・中・インドなどを訪問し、会議が始まる前から首脳レベルの同意を取り付けていたことが大きく寄与した。
米国のオバマ大統領は、任期中のアフガニスタン駐留米軍の完全撤収を見送らざるを得なかった失点を、キューバとの国交回復(今年7月)やイランとの核合意(同)で挽回しようとした。今回の協定参加には、それに続く外交面でのレガシー(実績)作りという動機が働いていた。
一方中国の習近平主席は、去る9月に鳴り物入りで訪米したものの、極めて冷淡な扱いを受けるという「カノッサの屈辱」を味わい、人工島建設を進める南シナ海に米第七艦隊のイージス駆逐艦や爆撃機を派遣された。地球温暖化対策は、中国が米国にすり寄ることができる数少ないチャンスだった。
また、2009年のCOP15(コペンハーゲン)に、世界119ヵ国の首脳が集まったにもかかわらず合意が成立しなかったとき、戦犯扱いされた苦い経験もある。経済力がつき、途上国として金をもらおうとしても無理な立場にもなった。国内の大気汚染も深刻で、いずれにせよ温室効果ガス対策はやらなくてはならない状況だ。
フランスのオランド大統領にとっては、経済力のあるドイツにEU内の主導権を握られ、パリの同時多発テロで傷ついた国家の威信を回復する機会だった。12月12日までの協定採択にこだわったのは、極右政党の優勢が伝えられていた13日のフランス地方議会の第2回(決戦)投票に間に合わせるためだった。