東京深夜。
1人リビングで文章をしたためる…あの〜何を書いているんですか?
(高見)これは家内へのですね誕生日のカードを直筆で書いてます。
自分の言葉でですね実際に書いたほうが自分の思いが伝わるということで。
伝えたい思い。
欠かせないのが愛用のボールペンです。
そういうところが気に入ってます。
このボールペン長野県南木曽町で作られているろくろ細工。
木の優しいぬくもりと抜群の使い心地。
年間6千本も売れています。
誰もが美しい木目に心奪われてしまうんです。
特徴は木のぬくもりを生かした丸く滑らかな形。
ほかにも…食卓に生える「こね鉢」や優美な姿の「花器」など魅力的な製品が続々。
きょうは思わず使いたくなるイッピンをご紹介します。
長野県の南部にある南木曽町。
古くから交通の要衝で中山道の宿場妻籠宿がある事でも知られています。
イッピンリサーチャーはモデルの生方ななえさん。
器集めが趣味で木工品が大好き。
初めての南木曽町です。
早速創業90年のお店を訪ねました。
(生方)こんにちは!失礼します。
お〜すごい!いろんな種類があるんですね。
そしてカラフル。
色も木目も千差万別。
100種類以上もあるんです。
あっ。
こう…何っていうのカーブと言うんですか滑らかな。
すごい。
トゥルントゥルンしてる。
あ!お〜!スルスル書けますね。
へぇ〜ちょっと万年筆のような感じですよね。
滑らかな木肌に美しい木目が浮かぶボールペン。
その作り方を見せていただきましょう。
生方さん工房へ。
4代目の…まずは材料から。
すご〜い。
いろんな種類があるんですね。
あらかじめボールペン用のサイズに切り出した角材。
すべて長さ8センチ。
まず角材に穴をあけます。
ここにボールペンの芯が入るんですが…。
あれ?端のほうにあけちゃいました。
うん。
白いです。
はい。
(野原)いろんな方向から見ながら確認して削った時にどう残るか。
この角材の場合真ん中に穴をあけると削った時に白い部分が多く残ってしまうんだそう。
そこで中心をずらしバランスよく木の模様が出るような場所を選んで穴をあけるのです。
長年の経験で決めたこの場所。
削ったらどんな表情になるんでしょう?そこで行うのが「ろくろ挽き」。
角材をこちらの小型電動ろくろにセッティング。
ろくろ挽きとはろくろを高速で回しカンナと呼ばれる刃で削っていくこと。
(削る音)1分間におよそ3千回転しています。
まずは「荒挽き」。
わ〜削れてる!おおよそのペンの形にしていきますが。
あれ?もう終わりですか?滑らか。
もう十分滑らか。
フフフ。
足りないですか?これだと。
まだまだ。
まだまだ?まだまだ。
次は「仕上げ挽き」。
繊細な削りでいっそう滑らかにします。
削っては触りまた削っては触る。
指先でカーブの具合や木肌のざらつきを確認しながら削っていきます。
横から見た時になだらかにこう盛り上がっているというか真ん中が…。
ええ。
あれはどんな事を意識して?なだらかな弓型のしなったようなカーブになるように心がけながら。
手先というよりは体全体で削っているので。
使う人の手になじむ理想の形にたどり着くまで5年を費やしました。
仕上げにサンドペーパーをかけオイルを塗れば木のボディーが完成。
すごい滑らか。
えも言われぬなだらかなカーブ。
美しい模様が見事に現れました。
材料となる木は工房の2階に保管されています。
先々代から集め続けてきた100種類もの木材。
今では手に入りにくい木もありかけがえのないものなんです。
ボールペンの材料はこちらの引き出しの中に種類ごとに収められています。
あけてみるとびっしり!種類が違えば性質も違う。
例えばこの二つ。
あ重いまず。
そうです。
すっごい重いこっち。
堅さもこっちのほうが堅い。
はい。
こんなに違うんですね同じ木でも。
同じ木でも。
こっちは軽くて…。
そうですね。
重さや堅さが異なっても野原さんは削り方を変え同じようになだらかで美しいボールペンに仕上げます。
どう削り分けるのか見せていただきます。
まずは堅いほうから。
堅いほう!「シタン」です。
古来銘木とされ木材の中では最も堅いものの一つ。
野原さんは刃を水平にして木にカンナをしっかりと当てて削っています。
次に「木曽ヒノキ」。
野原さんが扱う木材のうち最もやわらかいものの一つ。
そうですね。
右肩上がりな。
刃に角度をつけ木にあたる面を最小限に。
必要以上に削らないためです。
木の性質によって角度を変える。
これが100種類もの木を自在に操る野原さんの技でした。
うん。
うんうん。
そうですね。
シンプルな作業だからこそごまかしは利かない。
木1つ1つとの対話を経て生まれるボールペン。
最高の表情がここにあります。
南木曽町の一画にある「木地師の里」。
現在13人の木地師がいます。
ろくろを使って木を挽き器を作り出す。
その技は千年もの長きにわたり受け継がれてきました。
歴史を物語る貴重な品があると聞き生方さん訪ねました。
こんにちは!
(小椋)こんにちは。
小椋浩喜さん。
先祖が南木曽に移り住んだのはおよそ140年前のこと。
ある巻物を見せてくれました。
巻物が…。
これが御綸旨ですね。
これでごりん…。
御綸旨とは天皇の意を表した文書。
ここには「小椋さんの先祖に対し全国の山に入ることを許す」という内容が記されています。
私たちの仕事はですね滋賀県の近江が発祥と言われていて惟喬親王の家来の者たちが始めた仕事と言われているんです。
それの関係でこういう免状をもらったということですね。
伝承では平安時代都での政争に敗れた惟喬親王が落ちのびた近江でろくろの技術を人々に伝えその人々が木地師となって滋賀から全国へと移り住んだと言い伝えられています。
この木地師の末裔たちが明治時代になってここ南木曽町に住み着いたのが南木曽のろくろ細工の始まりなのです。
今話題の器があると聞いてやってきたのは…。
わぁいっぱいありますね。
へぇ〜これすべてろくろ細工ですよねぇ。
わ何だろうこれ?へぇ〜。
不思議な形をした花器です。
お〜面白い形。
たおやかなカーブが印象的。
よく見ると上と下で微妙に異なる曲面になっています。
決して無機的でないこの独特の形が自然の花を引き立てるんです。
器を作った木地師歴40年の小椋一男さん。
すっごいすてきなんですけど。
ありがとうございます。
不思議だね。
はい。
では不思議な花器の作り方拝見です。
小椋さんの工房まずは材料ですが意外なことに…。
こちらとこちらを合わせてさっきの花器になるんですか?そうじゃなくてね…1枚なんですね。
そうなんですよ。
お皿とお皿をくっつけてではなくて?削り出してあの形を作っています。
この一枚の板をどうやって削っていくのでしょうか?ろくろにセットします。
そうなんですね。
このゆがんだ木材からあの美しいカーブが生まれるんですが…。
ろくろを回しカンナを当てていきます。
おぉ〜。
次第に曲線が出てきました。
小椋さんの左手の小指に注目。
微妙に動いています。
そうなんですよ。
刃先に近い小指でカンナを木に押しつける力加減を変えていました。
小指に少しずつ力を加えることで徐々に削りを深くしていたのです。
「枕」と呼ばれる台を支点に手全体を少しずつずらしてカンナを当てる位置を変えていきます。
小指の力加減ひとつで曲線を生み出す職人の技。
出来上がりです!わ!さっきのゆがんでた木がこんなきれいな花器に!すごい曲線ですね。
曲線に自然の美を取り合わせたくなった生方さん。
あの花器に合う花を…。
ヨイショ。
うん。
生けました!野に咲く花がいっそう可憐に。
職人が自らのイメージを巧みな技で形にまで高めたイッピンです。
南木曽の歴史を教えてくれた小椋さんのお店です。
これは器ですか?これは昔こね鉢きじ鉢と言っておうどんとかおそばなんかの…へぇ〜。
従来のこね鉢を改良しておすしなどを盛る器を作ったところ大好評。
今や3か月待ちの人気です。
かなり浅くなっていますね。
どうして浅くしたんでしょう。
(小椋)やっぱりうちの家内とか母親の要望で作ってみたんです。
お話伺ったんですが。
とてもいいものなんですが…お昼をごちそうになりました。
こね鉢に盛ったちらし寿司。
わ〜すてきですね。
白い木なんではい。
すごく食材が映えますね。
そうなんですね。
非常に見た目も華やかになるって言いますか。
ほんと食卓に花が咲いたよう。
おいしい!料理をおいしく見せる清らかな白木のこね鉢。
木目が美しいなめらかな器の秘密を探ります。
(切り出す音)南木曽の木地師は原木の切り出しから仕上げまで1人で行います。
まずは原木を輪切りにする「玉切り」。
輪切りにした木材から製品の大きさに合わせて材料板を切り出します。
こね鉢のような大きな器の場合このようにして切り出すのが最も効率的なんだそう。
板になった木材を丸く切り出していきます。
そしてザッとくりぬいていきますがこれが…荒挽きしたものをよく見ると荒れている部分とそうでない部分があります。
触っても見た目ももうかなり荒れていますね。
ええ。
木材には木目に対して「順目」と「逆目」があります。
ツルンとした順目。
ザラザラの逆目。
なぜこのような違いが出るのでしょうか?カンナの当たり方を特殊なカメラで見ます。
カンナ屑にご注目。
こま切れ状のものと糸状のものとが交互に出てきています。
カンナ屑がこま切れなのが逆目の部分。
木目にカンナの刃が引っかかり木をむしり取っているのです。
一方連続した糸状のカンナ屑は順目。
これは木目に対して刃が抵抗なく当たり滑らかに削れているため。
さぁここから仕上げ。
どうしたら逆目を目立たなくなめらかな表面に出来るんでしょう。
秘密はカンナにありました。
実はこのカンナ小椋さんの手作り。
かつて全国の山々を渡り歩いた木地師は道具を自ら作りました。
その末裔の南木曽の職人は今も皆そうしています。
小椋さんが作るカンナは年間80本。
(カンナを研ぐ音)そしてそのカンナを日々研ぎ上げることを怠りません。
こうして刃を鋭く保つことが逆目をきれいに削るコツだったのです。
ではきちんと研いだカンナとそうでないカンナ。
逆目に当てるとどれほど違うんでしょう。
ハイスピードカメラで見てみると研いでいないカンナでは細切れのカンナ屑が頻繁に出て表面をむしり取っているのが分かります。
一方よく研いだカンナでは連続したカンナ屑が多く出ています。
その表面を特殊な顕微鏡で比較しました。
研いでいないカンナでは0.1ミリの段差があります。
一方よく研いだカンナでは0.06ミリ。
僅かな削り具合の違いが表面の滑らかさにつながっていたのです。
さらに美しい器にするため小椋さんにはこだわりがありました。
(削る音)はい。
器の中央の白い部分が大きすぎ木目の出方が弱いのだと小椋さんは言います。
ここに1本年輪がありますよね。
うんうん。
今これの表面で止めている状態。
はい。
もうちょっと深くするとこれが出てくるんですがこれをもうちょっと深くするために結構彫らなくちゃいけないっていうか…。
あ意味が分かった!これ分彫るんですね。
そうです!年輪ひとつ分だけ。
小椋さんさらにミリ単位で削りを加えました。
すると…。
これがただまっすぐになっているよりもちょっとでもこういう模様が出てきたほうが面白い。
模様が変わった。
ええ。
これがやっぱり手づくりなんです。
機械で作っちゃうと同じものは出来るんだけど木目のいい所でやめるってことが出来ないんでこの辺が本当に作っていて一番面白いところですね。
小椋さんが理想とする木目が現れました。
木を熟知した職人が作り出したこね鉢。
滑らかさの中に木目の美しさが際立つ器です。
生方さん南木曽のろくろ細工いかがでしたか?木のそれぞれの個性に敬意を払ってその木が持つ美しさを最大限に引き出そうとする木地師の職人魂っていうのがすっごいかっこよかったですね。
2015/12/20(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「丸くてなめらか 心地いい白木〜長野 南木曽のろくろ細工〜」[字]
木目が美しく、書き心地抜群のボールペンが大人気。長野県南木曽町で作られたろくろ細工だ。話題沸騰の「こね鉢」や花器など、木地師の里が生み出した木製品の魅力を探る。
詳細情報
番組内容
なめらかな触り心地と驚くほどの書きやすさで今、大人気の木製ボールペンがある。長野県南木曽町で作られた「ろくろ細工」のイッピンだ。100種類もの木の性質を見極め、最も美しい木目が出、かつ持ちやすい形に削っていく木地師の技が光る。ほかにも、清らかな美しさで話題沸騰のちらしずし用の「こね鉢」や、たおやかな曲線が際立つ花器など、「木地師の里」が生み出した木製品の魅力をモデルの生方ななえが探る。
出演者
【リポーター】生方ななえ,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
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