最初わからなかったですもんね。
(アナウンス)「財前教授の総回診です」
(財前)建て前だけの空疎な話におつきあいしている時間はございませんので。
(東)財前君を勝たせてはいけない。
(財前)今更亡霊にかき回されるのはごめんですから。
(関口)3,000人を助けても1人を死なせては許されない。
(華子)柳原先生。
着きましたよ。
すいません。
(君子)わたしやっぱり証人になることはできません。
何もかも忘れてやり直したいんです。
(佐枝子)みんな本当のことが言えないんですね。
(里見)わたしなら何度でも真実を話します。
(ケイ子)五郎ちゃん?
(佐枝子)お父さま!
(東)わたしでもお役に立てますか?
(財前)こっちにはもう一枚上をいく隠し玉がある。
(東)私は一審の鑑定報告に異議を唱えます。
財前教授は十分な検査をせずまた里見助教授の進言を無視して手術を行ったことは独断とも呼べる行為であります。
(国平)そうですか。
ところで東先生。
あなたは浪速大学を勤続17年で退官なさったんでしたね?
(東)はい。
(国平)その間あなたは優秀な医師を何人もこの世に送り出してきた。
ここに座っておられる財前教授もあなたの教えを受け国際外科医学会で評されるほどの医師になった。
すばらしいですね。
はい。
しかしあなたは今弟子である財前教授の診療を否定していらっしゃる。
それは一体なぜですか?教え子であっても医師として誤った行動を取ったことは許してはならないと思うからです。
それだけでしょうか?あなたはご自分の後継者の教授選の際愛弟子である財前教授ではなく他大学の候補を擁立したという事実はございませんか?もう少し平たく言いましょう。
東先生と財前教授との間には確執があったのではないんですか?異議あり。
ただいまの質問は本件とは何ら関係がありません。
撤回を求めます。
(国平)いいえ。
ここは法廷です。
公正な事実を述べる場であり個人的な確執を持ち込むのは審理を混乱させる行為です。
(裁判長)分かりました。
どうぞ。
(国平)どうされました?東先生。
お答えにならないということはやはり確執があったと考えてよろしいんでしょうか?だとすれば個人的な恨みを晴らすために財前教授の診療を否定してるとしか思えませんね。
さもなければどこにわざわざ法廷まで出てきて弟子を陥れる発言をする指導者がいるでしょうか。
裁判長!尋問を終わります。
(裁判長)原告代理人は…。
(東)お待ちください。
答えさせていただけますか?どうぞ。
お恥ずかしいことですが財前教授と私との間には少なからず確執がございました。
(東)そして本来なら私はここにいてはならない人間です。
監督する立場にあった者が弟子の誤りを法廷で暴くなど到底許されることではないからです。
しかし私は恨みにかられて出てきたわけではございません。
(国平)そうですかねえ。
あなたのやってることは大事な教え子の名誉を傷つけるものではありませんかね。
私は逆だと思いますよ。
財前教授が進んで自らの誤りを認めるならばその結果は決して過酷な判決にはならずむしろ逆に世間は財前教授の潔さを評価しそれは明日の医療へとつないでいけるものとわたしは信じます。
さらに申し上げれば財前教授の誤りは第一外科の教授であった私の誤りでもあります。
ですから後進の医師を志す者の戒めのためにも私は現職である近畿労共病院院長の職を辞してその責任を果たすつもりでおります。
(ざわめき)ご遺族の方々。
この席をお借りして私からおわび申し上げます。
(財前のせき)大丈夫ですか?
(佐枝子)わたしが父を巻き込んでしまったかと思うと…。
それだけこの事件は深いということです。
佐々木庸平さん一人の死ではなく医者にとって見過ごすことのできない問題をはらんでいるんです。
わたしは今浪速大学を辞めたことを後悔してませんよ。
さあ裁判を見届けましょう。
はい。
(船尾)いいえ。
私は一審の鑑定報告を支持いたします。
(国平)つまり船尾先生は財前教授の診療に過失はなかったとおっしゃるんですね?
(船尾)はい。
(国平)ではもし船尾先生がこの佐々木庸平さんを担当なさっていたらどのような治療方針で臨んだでしょうか?一刻も早く食道ガンの手術にかかることを考えたでしょう。
仮に胸腔鏡検査をした場合少なくとも2週間の手術延期が必要となります。
あらゆる可能性を検討する必要があるならばこの2週間に別の新たな転移が生じる可能性も考えなければならないということになります。
であればその可能性と左肺の陰影が転移であるという可能性のいずれが大きいかの判断が求められることになりますがそれに回答を与えることは不可能でありましょう。
それは要するに?財前教授と同じ治療方針を選択するということです。
(国平)そうですか。
しかしそれでは先程の東先生の証言とは多くの点で食い違ってきますね。
そのことについてはどう思われますか?私は東都大学医学部長としてまた日本外科医学会の会長としてただいまの証言をいたしました。
職を辞めてしまう方の発言とどちらが重いかお考えいただきたいと思います。
(国平)医学的に貴重なご意見ありがとうございました。
証人への尋問を終わります。
(裁判長)原告代理人は質問がありますか?
(関口)はい。
(裁判長)原告代理人。
どうしました?すいません。
船尾証人への質問はありません。
(又一)ないんかい。
ヒゲそれやおい。
(裁判長)証人は席に戻ってください。
(裁判長)それでは本日の審理は終わります。
次回は原告佐々木よし江さんと被告財前五郎さんの本人尋問となります。
よろしいですね?
(又一と鵜飼の笑い声)ざまあ見さらせです。
とうとうヤツらお手上げですわ。
ハハハハハ。
(財前)あー船尾先生。
ありがとうございました。
まさか船尾先生がわたしの側に立って証言してくださるとは思っておりませんでした。
いやあなたとは教授選ではいろいろとありましたが外科医としての業績は認めていますからね。
(又一)ありがとうございます。
特に浪速大のガンセンターの設立ではすばらしい手腕を発揮されてるそうじゃないですか。
えっ?
(鵜飼)財前君。
この際我々のガンセンターには東都大さんにも大いに協力していただかなきゃということだよ。
アッハハ。
困りますなあ鵜飼学長。
裁判と引き換えにお宅のガンセンターのジッツを求めるほどウチは困っておりませんよ。
おや天下の東都大さんに大変失礼なことを申し上げました。
(又一の笑い声)まあねまあまあねそらね…。
(岩田)でどうなるんですか?この裁判はいつごろ終わるんでっか?
(又一)それですねん。
(国平)次回の財前教授と佐々木よし江の本人尋問の後は先方は看護師の亀山君子と里見先生の証人申請をしてますね。
亀山君子?
(国平)まあわたしのほうから念のため出廷を拒否するよう抑えておきます。
しかしこの里見この石頭また出てきよりまんねんな?えっ?でっかいずうたいしてから。
(国平)こちらも心配する必要はありません。
控訴審では一審と同じ質問はできないという決まりがあります。
里見先生には財前教授を責める要素はもはや残ってないでしょう。
(又一)はあ。
(国平)この展開ならこちらも柳原先生の尋問も取り下げていいですね。
つまり次の尋問が大詰めで3か月後には判決が出ると思われます。
あっさよか。
(鵜飼)なるほど。
(一同の笑い声)
(関口)今日はすいませんでした。
先方の策に対抗できずに。
次回までには必ず盲点を見つけだしますから。
(庸一)また訳分からないことやるんですか?
(庸一)結局いっつも何言ってるか分からないから。
(よし江)あんな難しい議論なんていらないのにね。
議論はいらない?わたしたちが起こした裁判なのにお医者さんたちが出てきて難しいことばっかり言い合って当のわたしたちにはさっぱり訳分かんなくて。
(庸一)親父が生きてたらどなってるよきっと。
「わしに分かるように言え」って。
佐々木さん。
はい。
僕は闘い方を間違ってたのかもしれません。
(ケイ子)そう。
やっとセンター長に決まったの。
(財前)何だ喜んでくれないのか?
(ケイ子)どこまで上るつもりかと思って。
わたしの手の届かないところへ行っちゃわないでよ。
この世に手の届かないところなんてあるのか?
(せき)
(テーマソング)〜〜
(財前)みんなも承知のとおり再来年春には浪速大学附属高度ガン医療センターが竣工する。
ついては先日鵜飼学長から内々に僕をセンター長にするというお話を頂いた。
(医局員一同)おーっ!第一外科のますますの充実はもちろんのことだが君たちの中からも何人かについてきてもらうことになる。
さらに系列の大学からも優秀なスタッフを集め最高の専門医集団をつくり上げたい。
それに伴って当然のことながらこの中から系列の地方大学に行ってもらう者も出てくる。
覚悟しておいてほしい。
(佃)ぜひ財前先生のお供させてください。
(安西)僕もおそばで研究を続けたいです。
(金井)わたしも助教授としてお役に立ちたいと思います。
(医局員)僕もガンセンターで働き…。
どちらになるかは君たちの頑張りしだいということだ。
(一同)はい。
柳原君。
(柳原)はい。
失礼します。
(佃)いいよな。
あいつだけは絶対飛ばされないもんなあ。
(安西)こんなんだったら佐々木庸平を担当しておくんでしたね。
おい。
(柳原)何でしょうか?
(財前)結婚はいつごろになりそうだ?えっ。
あっ結婚などまだ…。
隠さなくていい。
女房から聞いたよ。
彼女とは随分気が合うそうじゃないか。
まあ医者にとって女房の家は金があるに越したことはない。
はあ。
裁判も終わりが見えてきた。
君にはもう法廷に立ってもらうこともないから安心しなさい。
学位論文も結婚式までには通してやる。
それに…。
ガンセンターに連れていくリストに君の名前を入れておいた。
はっはい。
ただし僕が君に特別に目を掛けていることは忘れてはいけないよ。
それを忘れたら君だって例外じゃないんだ。
いいね?フッ。
弁護の方針を変更する?
(関口)きっかけは前回の船尾教授の証人尋問のときに感じた違和感でした。
(関口)僕はこれまで「財前さんが肺への転移を見落として無理なオペを行った。
そのオペが佐々木庸平さんの死期を早めた」という事実を証明しようとしてきました。
はいどうぞ。
しかしそれでは永遠にこの裁判に勝つことはできないんです。
なぜなら里見先生や東先生が財前さんの診療に問題があったと証言してくださったとしても船尾教授のような方が出てきて妥当性を強調し蒸し返されたら水掛け論が続いてしまうからです。
そしてこの長い長い医学論争はいちばん大事なものを置き去りにしたまま行われているんです。
いちばん大事なもの?この裁判にとっていちばん大事なものです。
何だと思いますか?亡くなった佐々木庸平さんとご遺族です。
《当のわたしたちにはさっぱり訳分かんなくて》《親父が生きてたらどなってるよきっと。
「わしに分かるように言え」って》なのに法廷では医者同士の高度な議論に終始しなぜ遺族が訴えようとしたのかその大本のところはどこかに追いやられてしまっています。
(よし江)《主人の無念と財前ていう医者の無責任さ訴えたいだけなのに》つまりこの裁判は転移うんぬんではなく医療の水準が高いかどうかではなく…。
医者と患者がどう向き合うかを問うべきだとおっしゃりたいんですね?はい。
そこで里見先生にお教えいただきたいんです。
ガン治療において医者と患者が向き合うために不可欠なものは何でしょう?それは「話す」ということに尽きると思います。
「話す」ガンの治療はその治療方針によって大きな違いが出ます。
今回ならオペを行わず化学療法を行っていればわずか1か月で亡くなることはなくうまくいけば1年ないし2年の生存は見込めたでしょう。
もちろんオペによって根治の可能性はあったわけですが財前は選択の可能性があることを説明せずオペ以外に方法はないと言い切った。
もし佐々木さんが説明を受けた上でオペを選んでいたなら同じように亡くなったとしても安らかな死を迎えられたかもしれません。
(よし江)《あの財前ていう医者がいいかげんだったせいでお父ちゃんちゃんと死ぬことができなかった》財前さんはきちんと話をしなかった。
それをこそ法廷で問うべきだということですね。
それを財前が認めることができたら医者と患者との関係も変わると思います。
(柳原)悪いねいつも。
(竹内)気にすんな気にすんな。
今行ってるさバイトの病院の宿直料が結構いいんだよな。
(柳原)ホント?
(竹内)ハハッ。
いやね…。
(華子)おかえりなさい。
ああ華子さん。
(華子)ごめんなさい。
待っていたりして。
今日ウチでスペアリブ作ったから柳原先生に食べていただきたくて。
ああ…。
あっどうも。
どうぞ。
あっでもお友達に悪いわ。
(竹内)ああ同期の竹内です。
僕ならもう全然オーケーですよ。
(華子)やっぱり帰ります。
柳原先生。
また。
すいません。
(柳原)痛っ。
(竹内)ハハハハ。
(柳原)痛いなあ。
(竹内)ハハハハ。
(竹内)「柳原先生。
また」だって。
おい。
「また」って何よ?「また」ってえっ?うまそう!ってさすが逆玉。
(柳原)はい。
あるよ。
はあ。
俺ピンク。
ハハハ。
よっしゃ。
いいんだよな?あっ?もちろん食っていいっしょ。
いや…。
(竹内)あっ?俺…このままでいいんだよな?いいんじゃない?だって財前先生は目を掛けてくれてるわけだし華子さんもかわいいし。
第一今更本当のこと言ったらお前クビだよ。
(竹内)それどころか偽証罪に問われるよ。
いいんだよヤナ。
(柳原)食おう。
(竹内)よっし!
(君子)あっお疲れさまでした。
(看護師)お疲れさまでした。
(国平)亀山君子さんですね?弁護士の国平と申します。
(君子)お話することはありません。
お待ちください。
お渡ししたい物があるだけです。
何ですか?これ。
法廷には出ないでいただきたいんです。
わたしそんな気ありませんから。
それはホントですか?
(君子)もう浪速大でのことは忘れましたから。
それはよかった。
新潟のお姉さんの離婚問題でお悩みだそうなのでお役に立ちたいと思っていたんです。
どうしてそんなこと?証人のことは徹底的に調べさせてもらいますから。
わたしは証人になんかなりません!
(杏子)もう行くの?今日は法廷だ。
今日の尋問が終われば一区切りだよ。
(杏子)ああそうだ。
あなたのお母さんからゆうべ電話あったわよ。
おふくろが?
(杏子)何かね裁判のことが心配でかけてきたみたい。
かけてあげたら?わたし苦手だからすぐ切っちゃったの。
またにするよ。
(せき)風邪?いや心配はいらん。
うん。
もしもし。
財前。
どうした?
(財前)今日の法廷には来るのか?ああ行かせてもらうよ。
君が悔いのない証言をしてくれることを願っている。
フッ。
悪いが説教は聞きたくないね。
今日は君に報告したいことがあって電話をしたんだ。
浪速大ガンセンターのセンター長に内定したよ。
そうか。
裁判が終わったらもう一度君を口説きに行くよ。
内科部長の件考えといてくれ。
そのつもりはないよ。
そう言ってられるのも今のうちさ。
コホッコホッ。
実際に出来上がったガンセンターを見たら絶対に君は来たくなる。
(せき)おいどうした?よくないせきだな。
この間法廷で見かけたときも顔色がよくなかった。
ちゃんと体調管理はしているのか?フフッ。
僕の身を案じてくれてるのか?医者は自分の体調の変化を見逃しがちだ。
誰にものを言ってるんだ?僕は浪速大学の医学部教授だぞ。
用件は以上だ。
失礼する。
(三知代)また裁判を見に行くの?ああ。
かかわった以上最後まで責任を持たないとな。
(三知代)あなたが納得するようにやって。
(三知代)でも一つだけお願いがある。
裁判が終わったらもう佐枝子さんには会わないでほしいの。
彼女はわたしの友達だから。
靴磨いてくるわ。
失礼いたします。
ああ…。
失礼いたします。
さあ。
(又一)おおおお!ご苦労さんやな。
あれ。
ヘヘヘ。
ああ。
来てくれたんや。
ハハハ。
こんな所で会うよりも店で会いたいわ。
ホホホホ。
そうね。
(又一)ああおおきにおおきに。
どうもどうもご苦労さんです。
おお。
ヘヘヘ…。
〜どうされました?いえ。
(ケイ子)こんにちは。
(きぬ)あらあなた。
(ケイ子)ちょっと…。
(又一)そやあのねあの…。
あれ?
(きぬ)あの…どういうことなんでしょうか?ああ財前先生にお母さまをご案内するように頼まれました。
あっでもわたしは裁判を…。
(ケイ子)あああのお母さまには裁判を傍聴してほしくないとおっしゃってました。
(きぬ)あの子わたしに見せられないようなことしたんでしょうか?それであなたに…。
ああいえいえ。
うーん…。
被告席に立つ姿を母親には見せたくないのだと思います。
(裁判長)それでは本日は被告の本人尋問から行います。
被告はお座りください。
(裁判長)では被告代理人尋問をどうぞ。
はい。
(関口)裁判長。
尋問方法についての意見があります。
(裁判長)どうぞ。
本日は原告被告による対質尋問を申請いたします。
何や?何タイシツ尋問って?
(佃)確かね…。
(関口)本件は一審二審を通して4度にわたる証人調べを経て参りましたが診療経過に関する事実の食い違いがありいまだ核心をつくに至りません。
もはや原告佐々木よし江さんと財前被告がこの法廷で直接対峙すること以外に真実を追究する方法はないと思われます。
よって極めて異例であることは承知しておりますが対質尋問をお願いいたします。
(又一)そんなあかんのやね。
決められたとおりせなあかん…。
(裁判長)静粛にしてください。
決められたとおりせな!
(裁判長)静粛に!はい。
被告代理人。
原告代理人の申請をどう考えますか?お待ちください。
対質とはあなたと佐々木よし江がここで同時に尋問を受けることです。
無謀な申し出ですので拒否します。
待ってください。
望むところですよ。
(財前)そのほうが手間もかからんでしょう。
(ケイ子)こちらです。
ここに30階建の建物が立ってその最上階に財前先生のお部屋が出来るそうですよ。
(きぬ)はあ。
また無理をしてるんでしょうね。
いつも「世界と渡り合える病院にする」って…。
フッフフ。
おっしゃってます。
フフフフ。
法廷が終わる時間になりましたら大学病院のほうにご案内しますから。
いえわたしは帰ります。
もう10年以上も顔を合わせてないのにこんなときに会いたくないでしょうから。
10年以上も。
「学位を取れたら呼んでやる。
講師になれたら助教授になれたら教授になれたら…」って。
フフフ。
いっつもそうやって次々と背伸びばっかりして。
わたしは立派じゃなくたって元気な顔を見られるだけでそれでいいんですけど。
財前先生は一生懸命いい病院をつくろうとされてますよ。
フッフフ。
フフフ。
いっつもどうもありがとう。
ああいえ。
(裁判長)合議の結果対質尋問を採用します。
原告被告は前へ。
はい。
はい。
(裁判長)お座りください。
(関口)まず財前さんにお聞きします。
あなたは佐々木庸平さんに対して行った診療が妥当だったという考えに変わりはありませんか?むろんです。
わたしは佐々木庸平さんに対して行った診療について一点の非もございません。
佐々木よし江さん。
あなたはどうですか?わたしは納得してません。
主人はムダな手術を受けて死期を早めました。
絶対に許せないことです。
原告はこう言っていますが?わたしは正しい治療をしました。
それは一審鑑定の唐木教授も船尾教授も支持してくれました。
しかし里見先生や東先生はあなたの診療に問題があったと証言していますよ。
結果論で責任をなすりつけられるのは迷惑です。
人の死は結果論で片づけられるものでしょうか?財前さんは自分の肉親が同じケースで亡くなっても結果論だからしかたがないと言えますか?
(国平)異議あり!ただいまの質問は一般論とすり替えようとするものです。
構いませんよ。
お答えいたしましょう。
ぜひお願いします。
ガンという病はその成り立ちや発展の仕方において千差万別なのです。
特に本件のように高度な鑑別診断が要求されるようなケースにおいては治療方針が議論される可能性もありえます。
しかしわたしはあるゆる可能性をこれまでの経験に照らし合わせて十分に検討した上で最善の治療を選択しました。
よってたとえわたしの母親が全く同じケースで亡くなったとしてもそれが十分な経験を積み高度な技術を持った専門医が選択した治療の結果であるなら納得いたします。
なるほど。
要するにあなたは選択の結果最善の治療を行ったということですね?そのとおりです。
よく分かりました。
ではもう一つだけ聞かせてください。
佐々木庸平さんの治療に関してはどんな選択肢があったんでしょう?医学に不案内な原告にも分かるように話してもらえますか?大きくは手術をして根治に賭けるか手術をせずに化学療法と放射線治療を行うかの2つの選択肢がありました。
そしてそれぞれの治療法がまた細かい選択の積み重ねなのですがここですべてを申し上げましょうか?その必要はありません。
手術以外に選択の余地があったのかわたしはそれだけが聞きたかったんです。
では佐々木よし江さんにお聞きします。
あなたはご主人に手術以外の選択肢があったことをご存じでしたか?いえ。
知りませんでした。
おかしいですね。
財前さん。
あなたは佐々木庸平さんとご家族に手術以外の選択肢があったことを説明なさらなかったんですか?どうだったでしょうか。
わたしは年間150例以上のオペを行いますのですべてを明確に覚えてるわけではありませんが手術の前に必ず説明を行っているはずです。
佐々木さん。
間違いありませんか?手術の方法の説明はありましたけどわたしらが切らずに治す方法はないかって聞いたとき切るしかないの一点張りで…。
柳原先生がCT写真を見て言葉に詰まられたので「肺に何かあるんですか」って聞いたとき「何の問題もない」ってろくに説明もしてくれませんでした。
記憶にはありませんが想像するに肺の影は炎症性変化で特に言及の必要はないと判断したのだと思います。
なぜ必要がないんでしょう?患者のご家族が不安がって医師に質問しているんですよ?不安がっておられたからこそです。
患者やその家族に理解できもしない専門用語を並べ立て1から10まで病状のことを詳しく説明したところでそれはいたずらに不安を増長させるばかりです。
しかしこの左肺の影に関してはあなたご自身が治療方針が議論に発展する可能性があるとおっしゃられたほど判断の難しいものです。
この肺の影だけはどんなに時間を割いても懇切な説明が必要だったのではないですか?ですが患者やご家族も納得なさってその証拠に術前にちゃんと同意書を頂いてるんですよ。
佐々木さん。
同意書をお書きになったんですか?いや同意書書いたからって同意したわけじゃありません!同意書というものは同意したら書くものです。
フフフ。
医師にほかに助かる見込みが…道がないって言われれば同意するしかないじゃないですか!《助かりたいのなら手術をするしかないということです》
(関口)十分な説明がなされず事実を伏して半ば強要する形で取られた同意書には何の意味もないのではないでしょうか!強要するようなこと言った覚えはありませんね。
しかしあなたは患者やご家族と十分に話をしなかった。
ほかでもない命にかかわる問題についてです。
これは医師の怠慢なのではないでしょうか!財前さん。
答えてください。
お待ちください。
重要なことですので記憶を整理いたします。
思い出しました。
そうあれは手術の1週間前12月19日のことです。
わたしは佐々木さんに手術の説明をした後担当医である柳原君に肺の影についてもう一度詳しく患者に説明し納得をしていただけるまで話してから同意書を頂くよう厳しく命じました。
ですからわたしの手元に同意書が回ってきたときはすでに柳原君のほうから細かな説明がなされた結果だと判断して手術に踏み切ったのですが佐々木さんが強要されたという感じを抱かれたのならそれはわたしではなく柳原君の言動についてだと思われます。
そもそもわたしは日ごろから医局員に対して患者さんやそのご家族には実際の治療の前に十二分な説明を行うようにと指導しております。
にもかかわらず柳原君がご家族に納得のいく説明をちゃんとせずただやみくもに同意書を取ったのだとすると柳原君に対するわたしの指導不足で誠に遺憾なことと言うほかありません。
ただわたし自身は教え子の不手際は教授であるわたしの教え方に…。
嘘だ。
今の証言は嘘です!僕は…!
(裁判長)静粛に。
財前先生に説明など命じられていません!
(裁判長)…席に着きなさい。
(廷吏)席に着きなさい。
(柳原)検査を進言したのに却下されたのです!
(裁判長)傍聴人の退廷を命じます。
(柳原)それは財前先生に強要されたからです!
(廷吏)下がりなさい!
(柳原)カルテの改ざんも行いました!
(佃・安西)ヤナ!
(柳原)僕は偽証罪に問われてもかまいません!
(男たち)やめろ!やめろ!
(柳原)財前先生は俺が里見先生と進言したのに却下したのです!
(竹内)ヤナ!
(柳原)離してください!
(又一)何言うてんねん!
(柳原)財前先生の言ったことは嘘です!
(ドアの閉まる音)どアホ!『アメイジング・グレイス』〜〜〜〜〜2015/12/18(金) 14:55〜15:50
関西テレビ1
白い巨塔 #19[再][字]【舞台は控訴審へ…財前教授を待ち受ける運命とは!?】
「嘘だ!真実の叫び」
詳細情報
番組内容
法廷に立った東(石坂浩二)は、病院長の職を辞す覚悟で医師の倫理を説いたが、船尾(中原丈雄)の学術的な反証に比べ説得力を欠いた。財前(唐沢寿明)たちは勝利を確信した。だが、財前の気になる咳は、頻度を増していた。次の審理は財前とよし江(かたせ梨乃)の対質尋問となった。関口(上川隆也)は、インフォームド・コンセントを争点とした。財前は「担当医が説明したはず」と責任を柳原(伊藤英明)に転嫁した。
番組内容2
そのとき傍聴席から声が上がった。
出演者
唐沢寿明
江口洋介
黒木瞳
矢田亜希子
水野真紀
上川隆也
及川光博
片岡孝太郎
伊武雅刀
若村麻由美
西田尚美
野川由美子
池内淳子
かたせ梨乃
伊藤英明
石坂浩二
西田敏行ほか
原作・脚本
【原作】
山崎豊子
【脚本】
井上由美子
監督・演出
【企画】
和田行
【プロデューサー】
高橋萬彦
川上一夫
【演出】
西谷弘
【音楽】
加古隆
【主題歌】
「アメイジング・グレイス」ヘイリー
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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