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政府が決めた今年度の補正予算案は、与党の選挙対策だと評価するしかない内…
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政府が決めた今年度の補正予算案は、与党の選挙対策だと評価するしかない内容である。
必要な政策を積み上げるという予算編成の基本を忘れ、「いくら使えるか」が先に立ち、来年夏の参院選までに有権者へおカネを届けることを意識した項目が目立つからだ。
総額3兆円余の財源は、今年度の税収が見込みより増えそうな分と前年度決算の余りでまかなう。新規国債の追加発行は避け、4千億円余りは当初予算で計画した国債発行を減らすことに充てる。
財務省は「財政健全化に目配りした」と言うが、とんでもない。
政府は、今年度の国と地方の基礎的財政収支の赤字を国内総生産(GDP)比3・3%に抑える目標を掲げてきた。これを守れるギリギリの線まで補正予算の規模を膨らませ、必要となる国債発行の減額幅を計算したに過ぎない。今年度に予定してきた国債発行が37兆円に迫ることを忘れたのだろうか。
補正では、安倍政権が掲げる「1億総活躍」の目玉政策として、年金額が少ない高齢者に1人あたり3万円、総額3300億円を配ることを盛り込んだ。
低年金者には資産を多く持つ人もいて、全員が貧しいとは限らない。与党の自民党内からでさえ、「なぜ高齢者ばかりかと若い世代は思う」「バラマキのイメージが先行してしまう」と、疑問が噴き出している。
農林水産省が所管する約4千億円の4分の3強、3千億円余りは環太平洋経済連携協定(TPP)関連対策と位置づけられた。その3分の1近くは、公共事業で農地や集落を整備する農業農村整備事業だ。
農水省は「農地の区画拡大などに絞り込んで使う」と説明し、温泉施設の建設にも使われたかつてのウルグアイ・ラウンド対策費との違いを強調する。ただ、自民党の関係議員の間では、金額こそが大切と言わんばかりに早くから予算獲得の目標額が飛び交っていた。
そもそも、TPPはまだ発効していない。農水省は「あらかじめ体質を強化しておく」と言うが、全体で30近い新規事業を並べ、基金の創設を乱発する中身をみれば、「参院選をにらみ、TPPへの農林漁業者の不満や怒りを抑える」という思惑がありありだ。
補正予算は当初予算と比べて編成期間が短く、どうしてもチェックが甘くなる。災害復旧などの緊急対策に絞るのが筋だ。政府・与党は過ちをいつまで繰り返すつもりなのか。
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