衆院議長の諮問機関「衆議院選挙制度に関する調査会」が、来年1月に議長に答申する改革案をまとめた。

 衆院定数は、小選挙区で6、比例区で4の計10減らし、戦後最少の465とする。

 また「一票の格差」を縮めるため、都道府県の人口比に基づく「アダムズ方式」で定数を再配分する。これにより、都道府県ごとの一票の格差は最大1・62倍になるという。

 調査会が設置されたのは、各党による協議で結論を出せなかったからだ。自分たちではどうにもできない。だから有識者の皆さん、お願いします――。

 この経緯を踏まえれば、各党は答申にそって速やかに合意形成を図り、次の衆院選は新制度の下で行えるよう、来年の通常国会で法改正を行うべきだ。

 衆院選の一票の不平等をめぐって、最高裁はこの4年間に3度、「違憲状態」の判決を出している。これ以上、対応を先延ばしすることは許されない。

 一方、国会議員は、民意を国政の場に届けるという重要な役割を担う。「身を切る改革」は定数削減ではなく、政党交付金や各種手当の減額などで行うべきだとの議論は根強くある。

 なぜ定数10減なのか。結論の根拠が弱いことも否めないが、調査会に議論を委ねた以上、各党は答申に従わねばならない。

 同時に、選挙制度の改革は本来、一票の格差の是正や定数削減にとどまらないし、一度変えればそれで終わりでもない。

 民主的平等とは何かという観点から、制度によって民意との隔たりが生まれないよう不断の見直しを続ける。それが国会議員の責務であることを、肝に銘じてもらいたい。

 残念なのは、調査会の結論は、定数の変動を最小限にとどめるという政治的配慮が優先された印象がぬぐえないことだ。

 一票の格差是正に関しては、最高裁が「速やかな廃止」を求めていた、議席をあらかじめ都道府県に一つずつ割り振る「1人別枠方式」が名実ともに廃止されることになる。

 ただ、アダムズ方式は、結果的に各都道府県に1議席ずつ配分される仕組みになっており、「1人別枠方式」と同じ効果がある。最高裁判決の趣旨に照らして疑問が残る。

 選挙制度は民主政治の基盤である。結論はもとより、議論のプロセスも極めて重要だ。

 調査会は1年以上議論を重ねてきた。答申にあたっては、反対意見も含め議論の蓄積を紹介し、幅広い有権者の納得をえられるよう力を尽くしてほしい。