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 「夫婦は同姓」のルールについて最高裁は「合憲」としつつ、別姓も選べる制度について国会に議論を促しました。選べる制度に反対する人の多くが、子どもへの影響を理由に挙げています。そこで、メールをくれた人たちに話を聞いてみました。最高裁判決を受けて第2回アンケートの回答は一気に増え、3500を超えました。

■親が「ペーパー離婚」した松浦将也さん(20)

 最高裁判決は、別姓の両親をもつ子どもの実態を理解していない、と感じました。頭の中で考えるのではなく、ちゃんと話を聞いてほしいと思います。

 僕は両親が別の姓の家庭で育ちました。母は結婚でいったん父の姓になった後も旧姓を通称で使っていましたが、職場の給与口座の名義などで限界があって、僕が1歳半のときペーパー離婚したそうです。

 その経緯を小学3年のとき初めて聞きました。母は「自分の姓を名乗るため仕方なく離婚したけど、こうして3人で暮らしている。家族として何も変わらない」と言いました。

 離婚という言葉には驚きましたが納得できました。実際、家族の仲もいいんです。家族の絆は誰かが我慢することではなく、お互いを尊重することで作られるのだと感じます。

 ここ10年、友だちから親の姓を聞かれたことはありません。それでいじめられたこともないです。「親が別姓だと子どもがかわいそう」「家族の絆が薄れ、健全な子どもが育たない」と考える人までいると聞きましたが、僕は幸せに育ちました。生まれ変われるとしても、今の家族を選びます。

 ただ、仲のいい両親が法的には夫婦と認められていないことが残念です。選択的夫婦別姓の制度があれば両親はわざわざ「離婚」する必要などなかったわけですから。(聞き手・長富由希子)

■事実婚を選択した城貴子さん(64)

 20年ほど前、今の夫ともう一度家庭というものをつくろうと思いました。ともに再婚で、私には小学4年の長男がいました。婚姻届を出し私が夫の姓になり、子どもの姓も変えていいのか。悩みました。

 当時、小学校の教員をしていました。親の離婚や再婚で姓が変わると子どもの表情が微妙に硬くなるのを見ていました。静かに楽しく学校生活を送りたいのに、気持ちにさざ波が起きる。それまでの姓を通称として使うのは、学校では通じにくく、姓の変化が、家庭環境の変化をいや応もなく公にします。

 相手の子どものことも考えました。娘3人で、10代初めの微妙な年頃。私が姓を変えることで「自分たちの世界に踏み込まれた」と感じるかもしれないと思いました。夫と話し合い、婚姻届を出さない事実婚の夫婦としてスタートしました。

 息子の学校に登録する「保護者」は夫ではなく私にしました。息子が中学生になったときは迷いました。寮生活も始め、新しい姓にするいいタイミングです。でも、場所が変わって名前も変わると、小学校までの人間関係が切れてしまうかもしれません。同じ名前でいさせてあげたいと思いました。

 その息子も今年の夏、結婚しました。お相手やそのご両親の考え次第では、私たちの婚姻届を出そうと思いました。ですが、息子を通じて聞くと「新郎の両親が別姓でも別に構わない」とのことでした。

 結婚式では、息子たちの考えで、私たち夫婦それぞれの姓が書かれた席次表が配られました。事実婚であることを知らない人は戸惑ったと思います。夫があいさつで説明しました。みなさん、私たちの考えを温かく受け止めてくれました。私たちの家族らしい式になったと思います。

 夫の娘たちとは、結婚当初、互いにモヤモヤした感じがありました。今、娘によって「ママ」「貴子さん」と呼ばれ、穏やかないい関係を築けています。私たちの場合、時間が硬さを溶かしてくれました。

 私たちが家族になるために、夫婦別姓は必要な選択でした。(聞き手・村上研志)

■最高裁判決を受けて回答急増

 16日の最高裁判決を受け、アンケート回答は急増しました。「子どもたち」についての意見とともに紹介します。(抜粋。選択的夫婦別姓の導入への賛否、夫婦同姓・別姓使用などを表記)

●「判決では『夫または妻の姓を選択できる』としていましたが、夫の姓を選択せざるを得ない社会的圧力は存在すると思います。私も夫側の親族に『女は戸籍やルーツなどどうでもいい』『ウチの姓にしてもらわないと困る』と言われ、多少もめましたが穏便に法律婚をすることを優先し夫の姓に改姓しました。判決通り国会で審議され選択的夫婦別姓が実現することを願います」(20代女性・賛成・既婚で同じ姓)

●「定着してるから合憲という判断に心底納得いかない。女性が改姓をするのが当たり前、と定着させられていることにこそ、今回の問題があるのに。女性判事が3人とも反対を表明したことを、重く受け止めてほしい」(30代女性・賛成・事実婚で別の姓)

●「姓とは家族の名称であり個人を表すものではない。現法律で家族の名は合意の下で決められているはずで全く強制してはいない。仕事上問題があるなら通称を使えばよいし、今以上に社会的認知はすすむはずだ」(40代男性・反対・単身)

●「『通称』は旧姓を使い、パスポートにも旧姓を併記しているが銀行口座が旧姓で作れないなど仕事上でも不便が多い。今回の最高裁判決でペーパー離婚を考えている。仕事に活躍する女性は今まで以上に法律婚をためらうだろうし、少子化の促進要因になるだろう」(50代女性・賛成・既婚で別の姓)

●「今回の夫婦同姓合憲の説明に、現在は社会的に旧姓を名乗ることができるから、としているが、実際医師である我々は旧姓では仕事が成り立たないため、旧姓を名乗れない」(40代女性・賛成・既婚で同じ姓)

●「夫婦別姓を選ぶ人がごく少数でしかない時点で法律を変えてまで行う必要性がない。むしろ、時間と費用の無駄を生みだす。仕事上、旧姓を使用することが問題なく行える環境を整えることの方が簡易である」(30代男性・反対・既婚で同じ姓)

●「国家賠償訴訟において夫婦同姓を合憲とする判断は至極妥当。そもそも司法に判断を求めるような事柄でない。別姓支持者にとっては、法改正に向けて数歩後退したのではないか」(40代女性・反対・既婚で同じ姓)

●「夫と夫の母は、26年前に私が別姓の結婚を望んだ時に絶対の反対派でした。2人とも『なんでうちの嫁が』と、悪いくじに当たったかのように嘆きました。でも今は2人とも最大の賛成派です。義母は私に『お陰で目を開かれた』と言って、別姓も平和も原発も話題と関心を共有することを喜んでくれます。夫も『最高裁が制度の追認をしたら司法の役割の放棄だ』と憤っていて、過去の強硬な反対姿勢の影もありません。裁判には負けましたが、家庭では別姓は主流化できました。別姓の主張の根幹にある個人の尊厳をないがしろにしない態度が、家族を育てた一例ではないかと思います」(50代女性・賛成・既婚で別の姓)

●「この問題は、夫婦別姓もしくは旧姓を名乗ることを社会(企業)が受け入れないと法律問題としても改正まで時間がかかると思う。何よりも古い社会通念の塊の男性の意識改革が必要だと考えます」(40代女性・どちらでもない・単身)

●「夫が外国人であるために、たまたま夫婦別姓になりました。二つの姓があることで周囲を戸惑わせることが多々あります。子供がいれば、両親が同姓で家族でXX家と言える方が良いと思っています。子供も安心するように思います」(50代女性・反対・既婚で別の姓)

●「家族は社会の最小単位でとても大切なものと思います。その中で子どもたちが育っていきますので、家族全員が同じ姓であることは、子どもに家族の絆を自覚させる大切な要素のような気がします。大人の意見のみでなく、子どもの意見も尊重する姿勢が必要と思います」(50代女性・どちらでもない・既婚で同じ姓)

●「子どもの姓は、生まれた時に両親がどちらの姓にするかを決めて届け、子どもが成人した時に他方の親と同じ姓に希望する場合は変更できるようにすればよいと思います。夫婦、親子の姓が違うことも、それが当たり前になれば、違和感なんて感じなくなると思います」(50代女性・賛成・事実婚で別の姓)

●「私の両親は事実婚の夫婦別姓で、私は母の姓、双子の弟2人は父の姓を名乗っています。両親の姓だけでなく、きょうだいでも姓が違いますが、家族仲はいい方だと思います」(10代女性・賛成・単身)

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