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【群馬】

怒鳴らない子育て 前橋市が虐待防止へ訓練講座

怒鳴らない子育て実践法を練習する母親ら=前橋市で

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 県内でも児童虐待が増加する中、育児不安の解消につなげようと、前橋市は怒鳴らないで子どもをしつける具体的な実践法を学ぶ保護者向けの訓練講座に力を入れている。どのような内容なのか。米国で開発されたプログラムの有資格者らが教えているという、無料の講座をのぞいてみた。 (川田篤志)

 「次遊ぶ時にすぐに使えるから、おもちゃの片付けをしてほしいな」

 市内の永明公民館で九日開かれた「どならない子育て」講座。市の望月恵・こども発達支援センター所長は、おもちゃの片付けを例にしつける際の声の掛け方を説明した。

 ポイントは、子どもにその行動をした時に得られるメリットを説明した上で、「散らかしてほしくない」という保護者の視点ではなく、「次遊ぶ時にすぐ使える」という子どもの目線で理由を明確にすることだ。子どもが理解しやすく、次にまた適切な行動を選ぶ可能性が高まるという。

 さらに(1)「ちゃんとやって」などの曖昧な表現を避けて短く明確なフレーズを使う(2)親子とも落ち着いている状態で教える(3)教えたことの練習を重ねる(4)できた時には抱き合ったりハイタッチしたりして承認する−ことが大切と解説。この日参加した母親十二人はそれぞれペアを組み、早速声の掛け方を練習した。

 望月さんは、米国の児童施設で開発された、怒鳴ったり暴力を振るったりせずに子どもをしつける技法を学ぶプログラム「コモンセンスペアレンティング(CSP)」の認定トレーナーの資格を持つ。

 この日は、十一月中旬に始まった四回コース計八時間に及ぶレッスンの三回目。講座では、カッとなったら深呼吸するなど保護者の気持ちをコントロールする技法などを教えている。

 「しかるのではなく、教えることが親の役目。良好な親子関係が子育ての基本で褒めることがベースになる」と望月さん。「完璧な子育てはない。声の掛け方を工夫するだけで、子どもが学び成長するスイッチが入ることを知ってもらえれば」とエールを送った。

 この日参加した市内の吉田美香さん(41)は、三歳の長男と十一カ月の次男を育てるが、長男が言うことを聞かず腹を立ててしまう場面が増えたという。食べ物をせがむ長男から何度もたたかれ、ついカッとなってたたき返してしまったことも。「このままだと、子どもを嫌いになってしまいそう」と感じ、受講を決意した。「怒らずに正すやり方をこれから実践していきたい」と前を向いた。

   ◆   ◆

 市は二〇〇八年度、虐待対応の専門チームを子育て支援課に設置。虐待防止につながる保護者向けのトレーニングに力を入れようと、一一年度からCSPと、CSPを日本向けにアレンジした「怒鳴らない子育て練習法」の認定トレーナーの資格を取得する市職員を支援し、これまでに延べ約二十人が取得した。

 一二年度からは有資格者の職員を派遣する事業を開始。複数回の講義を受けるグループワークの参加者は昨年度までの三年間で約二百人、入門編の出前講座は約千五百人に上った。

 市子育て支援課の竹渕亨副参事は「子育てに悩む親がどうすれば良いのか気付くヒントが講座にある。有資格者の職員は市のこども発達支援センターにいつでもいるので、講座に限らず悩んだら相談に来てほしい」と呼び掛けている。

◆県も指導者育成で支援

 県内各地でも「怒鳴らない子育て」を広める動きが加速している。県は「怒鳴らない子育て練習法」の認定トレーナーとなる市町村職員を、本年度から3年間で約100人養成する方針を決定。地域で保護者を指導してもらい、虐待の未然防止に役立てたい考えだ。

 県による本年度の認定トレーナー養成講座には、12月までに計30人が受講。今後も計画的に増やすため、2016、17年度も定員約18人の講座を年2回ずつ開催する方針だ。

 厚生労働省のまとめによると、県内の児童相談所が対応した14年度の児童虐待件数は920件で、前年度より183件も増加。昨年8月には、玉村町で当時3歳の男児が母親に虐待されて死亡する事件も起きた。

 県児童福祉課は「『子どもの育て方が分からない』『怒鳴ってしまうのでどうしよう』という保護者の相談もあり、対応が必要と考えた。虐待防止につながれば」と話している。

 

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