シリア内戦、政治的解決行程表を採択 初の決議
【ニューヨーク草野和彦】国連安全保障理事会は18日、外相会合を開催し、シリア内戦の政治的解決に向けた行程表を支持する決議案を全会一致で採択した。来月初めを目標に、国連の仲介でアサド政権と反体制派との交渉に着手▽6カ月以内の移行統治機構の設立と新憲法起草▽18カ月以内の選挙実施−−が柱だ。シリア内戦で政治的解決に焦点を絞った安保理決議は初めて。
決議は、最大の焦点となっているアサド大統領の処遇には触れていない。また、決議違反があった場合に制裁を科すことを可能にする国連憲章7章への言及もなく、行程表の実現には大きな困難が予想される。
アサド大統領を巡っては、欧米や反体制派が退陣を求める一方で、ロシアやイランが支持。この点について、議長を務めたケリー米国務長官は「大きな意見の相違がある」と認めたうえで、過激派組織「イスラム国」(IS)を打倒するため、政権移行について交渉し、内戦を終結させる必要性を強調した。
ロシアのラブロフ外相も「大統領のことを含め、シリアのことはシリア国民が決める」と従来の立場を主張しつつ、安保理決議の採択により「広範な対テロ戦線が形成された」と意義を強調した。
行程表は、先月にウィーンで開かれたシリア支援国会合でまとまった声明に盛り込まれた。安保理決議はこの声明を支持し、平和協議と並行したシリア全土での停戦実現への支援も表明。国連事務総長に対して、停戦監視の方法を1カ月以内に報告するよう求めた。
一方で、停戦はテロ組織に対する攻撃には「適用されない」としており、米主導の有志国連合やロシア軍による空爆は継続される。
安保理会合に先立ち、外相級のシリア支援国会合がニューヨーク市内で開催され、イランも参加した。
和平交渉が予定通り実現すれば、2014年1〜2月にジュネーブで開催して以来2年ぶり。この時は、政権側と反体制派との溝が埋まらず、次回日程も決まらないまま終了した。