産経新聞前ソウル支局長「無罪判決」の裏
韓国の朴槿恵大統領(63)の男女関係に絡む噂を紹介した記事を書き、名誉を毀損したとして在宅起訴されていた産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(49)の判決公判が17日、ソウル中央地裁(李東根裁判長)で開かれ「朴氏を中傷する目的はなかった」として無罪(求刑懲役1年6月)が言い渡された。無罪判決の舞台裏では、米国の強い圧力のほか、朴大統領が抱える愛人スキャンダルをめぐる事情があったのでは?との見方が浮上している。
判決で李裁判長は「韓国憲法は言論の自由を保障しており、特に公職者への批判は、その地位が高ければ高いほど保障の範囲は広くなければならない」と指摘。記事は「言論の自由の領域に含まれる」と判断し、大統領の地位を考慮すれば、記事が名誉を傷つけたとみるのは難しいとした。
加藤氏は判決後、ソウル市内で記者会見し「当然の判決。検察は控訴することなく終結させるよう希望する」と述べた。加藤氏の在宅起訴をめぐっては、韓国の報道の自由のあり方に対する懸念が世界的に高まっていた。元公安調査庁第2部長・菅沼光弘氏の著書「ヤクザと妓生が作った大韓民国」のインタビュー・構成を担当した但馬オサム氏はこうみている。
「今回の裁判を米国も注視しており、事前に『加藤氏が有罪になるようなことがあったら、今後、韓国を民主主義国家と認めることはできない』とかなり強い調子の圧力があったといいます」
韓国外務省が韓国法務省に「日韓関係を損なうことのないように」という趣旨の異例の要請をしていたことも明らかになった。「経済崩壊間近の韓国にとって、いざというとき頼れるのは日本だけ。国内の反日をあおっても、何の得策にもならないとようやく理解できたようです。韓国のネット世論も同様で、今回の判決に『弱腰』『日本に屈した』といった声はむしろ少数で、大勢は加藤氏の起訴自体を『意味のないこと』『無謀』『韓国の後進性を世界にさらした』でした」と但馬氏。
そればかりか、現在の韓国では、セウォル号沈没事故話がむし返されている真っ最中だ。
「沈没直後、潜水士500人を投入して捜査にあたっているという報道は真っ赤なうそで『実際は8人の救助員しか投入されていなかった』と発覚し、改めて当局の危機管理の甘さと、当日の朴大統領の“空白の7時間”に世論の目が向いています。もともと朴大統領の私怨で始まった一連の産経事件ですが、彼女としてはとんだヤブヘビと言えそうです」(同)
そもそも今回、朴氏の密会相手とささやかれていたのは元秘書室長の鄭允会(チョン・ユンフェ)氏で、2人の仲は公然の秘密だったという。但馬氏が続ける。
「実は朴大統領の男性スキャンダルはこれにとどまりません。父の朴正熙大統領が健在だったころ、彼女は崔太敏(チェ・テミン)という怪しげな牧師と深い関係になり、青瓦台(大統領官邸)にまで出入りさせていたといいます。しかも、この崔氏には妻子があり、年齢は父の正熙大統領より3歳上でした。正熙大統領がこの2人の関係に頭を悩ませていたのは言うまでもありません」
当時の正熙大統領の意をくんで、崔氏の身辺を洗い、逐一報告を上げていたのが当時のKCIA(韓国中央情報部)部長の金載圭(キム・ジェギュ)氏だった。
これを察知した朴槿恵氏は父親に、金氏にまつわるうその報告をして失脚させるよう迫ったといわれ、金氏の耳にも届いていたはずだ。
この金氏こそ、秘密パーティーの席上で正熙大統領を撃った暗殺犯だった。
「朴正熙大統領暗殺事件に関しては、金の動機も含めて今なお謎が多いのですが、娘が言った悪口によって大統領の不興を買い、出世の道を閉ざされたと思い込んだ金の自暴自棄もまた遠因の一つと考えられます。となれば、父に向かって引き金を引かせた原因の何パーセントかを作ったのは朴槿恵大統領自身と言えるのでは。彼女の現在の愛人とされる鄭允会はかつての愛人・崔太敏の娘の夫(現在は離婚)というのもなんとも因果めいています。彼女にしてみれば、触れられたくないスキャンダルでしょう」と但馬氏は指摘している。