大統領府が助け船を出した?
日韓関係改善を望んでいる証左
裁判所は、単に無罪判決を出すことには抵抗があったことであろう。
韓国の裁判所はこれまでの日本関連の判決を見ても、世論の動向を気にしている。しかし、外交部が検察に出した要請を受けてのことであれば、あくまでも大局的観点からの判決と言うことができよう。裁判所は判決の中で、「被告は噂が虚偽であることを知っていた」として被告にも非があるとしている。その上で、「誹謗が目的であったと見ることはできない。言論の自由は憲法で保障されており、公職者に対する批判は可能な限り許容されるべき」「公人としての大統領の業務遂行については公的関心事」としている。
外交部の要請は、当然大統領府と協議したうえであろう。韓国では、大統領に絡む案件について、外交部独自の判断で検察に善処を求めることはできない。そこには大統領府の意向が反映されていると見ることが自然である。大統領が善処を望んだのであれば、裁判所としても、「公人としての大統領の業務遂行については公的関心事」として無罪判決を出しても誰からもとがめられないであろう。
大統領府、外交部がこのような形で本件を収めようとしたことは、日韓関係の改善を真剣に望んでいる証左である。12月15日にも日韓の局長協議が行われ、そこでこの問題が提起されたと報じられている。今後、慰安婦問題で協議していくにあたっても、この問題は早く片付けたかったのであろう。
もちろん、加藤前支局長の問題と慰安婦問題はまったく別個の問題である。しかし、日韓関係を難しくしているのは国民感情である。これまでは、韓国の反日感情が大きな障害であった。現在は日本の嫌韓感情も大きな障害となりつつある。日韓関係の改善は一気に進むものではないかもしれないが、加藤前支局長の問題への韓国側の対応のように、一つ一つ問題を解決して雰囲気を改善することが全体の雰囲気を改善し、他のより難しい問題の解決に資するのである。
韓国側としても、今回の問題で雰囲気が改善することにより慰安婦問題の話し合いも進んでいくことを期待しているのであろう。
完全に白黒をつけようとすれば
問題の解決が遠くなる
判決を受ける側としては、外交部が、「善処」を望んだから無罪としたのではなく、そもそも無罪であったとの判決を期待したであろう。しかし、なかなかそうはいかないのが日韓関係である。日韓関係を左右するのは国民感情であると申し上げた。したがって、完全に白黒をつけようとすると国民感情が対立し、問題の解決がつかない。