大相撲の横綱日馬富士(31=伊勢ケ浜)が19日、絵画展を開くことを発表した。

 23~27日に東京・銀座の日動画廊で、同じくモンゴル出身で日本在住の画家Zaya氏と展覧会「Two World」を開く。九州場所では2場所休場明けで7度目の優勝。苦難を乗り越えた秘密が、ここにある。

 角界きっての腕前を公に披露する時が来た。しかも場所は、1928年創業で日本で最も歴史が深い老舗、日動画廊だ。プロの画家以外で展示会を開くのは音楽家の長渕剛以来、2人目。長谷川徳七社長(76)と10年来の知人であることが縁になり「長渕剛さんの大ファンなんで、うれしいですね。会長からも『玄人だ』と言ってもらって、番付が上がりました」と、土俵外でも“資格者”になり頬を緩めた。

 忍び、耐える-。そう繰り返す日々を支えたのが、大好きな絵だった。「僕は悲しいときに絵を描くんです。幸せなときは、色が出ない」。名古屋場所初日に右肘を負傷してから2場所休場中は、すべての仕事をキャンセル。ひたすらキャンバスと向き合い、8枚を描き上げた。九州場所で2年ぶりの賜杯を抱いたのも、無関係ではない。

 出展する60号から小品までの油絵など20数点は、すべて来日後に描いたもの。富士山をモチーフにしたものがメーンで、タイトルは「春」「夏」「おはようございます」「お疲れさまです」など。同じ富士山でも色合いはさまざまだ。尊敬する画家ゴッホの作品をモチーフに描いた「父と私」などもあり「言葉を色に出してます。僕の絵は、落ち着くものが多い。元気をもらって、リラックスして帰ってもらえれば」と話した。

 母国モンゴルでは美術学校に通い、15歳で初めて個展を開催。日本での開催は今回が初めてで「売るのも初めてです。本当は売りたくなかったんですけど」と笑う。価格設定などは画廊側に任せ、売上金はすべて、09年から協力するNPO法人「ハートセービングプロジェクト」の活動に寄付するという。かねて「絵画を通して慈善活動を」と考えてきた日馬富士が、夢を1つかなえた。