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<地方移住>1万人超え 5年で4倍 支援策拡充で

毎日新聞 12月19日(土)20時28分配信

 2014年度に地方自治体の移住支援策を利用するなどして地方に移住した人が1万1735人と1万人を超えたことが、毎日新聞とNHK、明治大学地域ガバナンス論研究室(小田切徳美教授)の共同調査で分かった。09年度から5年間で4倍以上に増えた。移住志向の高まりを受け、支援策を拡充した自治体が増えたことが背景にあるとみられる。【阿部亮介】

 東京都と大阪府を除き、移住相談の窓口や中古住宅を活用する「空き家バンク」などの支援策を利用した人や、住民票提出時の意識調査で移住目的とした人のうち、別の都道府県から移り住んだ人を都道府県や市町村に尋ねた。昨年12月に09~13年度分を初めて調査。今秋、14年度分を調べた。昨年12月の回答率は92%、今秋は90%だった。

 13年度の移住者数は8181人で09年度(2864人)の2.9倍だった。14年度は43%増えて1万人を突破した。ただ、移住者数を集計していない自治体もある。行政の支援策に頼らない移住者もいるとみられ、実際はさらに多いとみられる。

 14年度に最も多かったのは岡山県の1737人で前年度より1000人以上も増加。続いて鳥取県が1246人、長野県953人、島根県873人、岐阜県782人。09年度に移住者数が0人だった青森県は10人、沖縄県は25人だった。

 一方、09年度からの6年間でみると、群馬県は2人から135人に、高知県は19人から652人に急増した。高知県の担当者は「相談窓口を東京に設置したり情報発信を増やしたりするなど取り組みを強化している。窓口を多く設置したため『移住者』として把握できる人が増えたことも要因ではないか」と分析している。

 政府は地方移住の促進に向け、20年までに東京圏から地方への転出を13年の37万人より4万人増やす一方、地方から東京圏への転入を47万人から6万人減らす目標を掲げている。

 移住希望者や受け入れ自治体をサポートする民間団体「生涯活躍のまち移住促進センター」(東京都)の渥美京子センター長は「東京に住む50~60代は、介護施設の不足など10年後の生活を心配して『第二の人生』の相談に来る人が多い。30~40代でも安心して子育てできる環境を求めて地方移住を考える人も増えている」と話している。

 ◇上位5県で48%、地域間格差課題

 共同調査では移住者は岡山や鳥取、長野といった10県ほどに集中し、「地域間格差」がみられる。14年度は島根、岐阜を加えた上位5県で計5591人で、全体の48%を占めた。

 鳥取や島根は過疎化による人口減少に悩み、早くから移住支援に取り組んできた。小田切教授は「移住者数が持続的に伸びる傾向は評価できるが、『地方消滅』という課題に対処するには幅広い地域への移住が望ましい」と指摘。「地域の特徴や特産品を生かし、魅力ある地域づくりに取り組む必要がある」と語った。【阿部亮介】

最終更新:12月19日(土)22時45分

毎日新聞