【コラム】民間企業に「1兆基金」を要求する不可解な韓中FTA

 長い長い綱引きの末に国会を通過した韓中自由貿易協定(FTA)。経過を見守りながら「われわれはなぜ、FTAを締結しなければならないのか」という思いが頭をよぎった。与野党は今回、各企業・機関から今後10年にわたり毎年1000億ウォン(約106億円)を集め、1兆ウォン(約1060億円)規模の「農漁業共生基金(仮称)」を創設することで合意したが、その背景を探ると韓国政府と政界はいったいFTAをどのように考えているのかと首を傾げたくなる。「FTAは大企業に数兆ウォン(数千億円)の利益をもたらし、農漁民と零細企業関係者には数兆ウォンの損失をもたらす制度だ」と単純に考えてよいものなのか。

 韓国の国内総生産(GDP)のうち輸出入が占める割合は76%だ。これは絶対的な貿易依存国だということを意味する。FTAは、当事国同士が国内での取引のように関税なしで交易ができるようにする取り決めだ。「FTAは韓国経済の領土を広げてくれる」といわれる根拠はここにある。韓国の立場からすれば、FTAへの参加は基本的には有利だと考えるのが正しい。

 しかし、FTAが発効したからといって各企業が黙っていても金をもうけられるわけではない。FTAによって市場が拡大すると同時に、その分だけライバルも増えることになる。FTAを通じて企業は新たなライバルに出会い、その過程でさらなる競争力を身に付けていくわけだ。

 このような競争によって結果的に、韓国社会のパワーはより生産的な所に送られるよう誘導される。冷静に言えば、構造調整を促進することになる。構造調整といえばいわゆるリストラ、つまり「クビを切ること」と思われがちだが、実際には構造調整の本当の意味は、非効率的な所にあった資源を効率的な所へと再配置することだ。

李仁烈(イ・インヨル)記者
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