あなたの知らないスマホのバッテリー劣化を抑え長持ちさせる秘訣
2015/12/19
どうしたらバッテリーの劣化が抑えられるのか、1年後でもバッテリーがへたらない上手な使い方を知りましょう。
実際の実験結果を参照しつつ、バッテリーに優しい充電方法について書いていきます。
フル充電サイクルとは
さて、Appleのサイトを見るとバッテリーについてこう書かれています。
iPhoneのバッテリーは、フル充電サイクルを500回繰り返した時に、本来の容量の最大80パーセントを維持できるように設計されています。
ここでまず知ってほしいのはフル充電とフル充電サイクルは別だということ。
フル充電サイクルとは空の状態から満充電までを1サイクルとカウントするものです。50%の充電の場合は2回で1サイクル、25%の充電なら4回で1サイクルとカウントされます。
100%まで充電したら1回ということではありませんよ。お間違いなく。
さて、同じサイクル数でもどのように充電を行うのが望ましいだろうか?
放電深度を知る
放電深度(DOD)という重要な指標があります。
100%から0%まで使い切る状態を放電深度100%とし、100%から75%まで使うことを放電深度25%と呼びます。
100%から50%とまで使うのと、50%から0%まで使うのは同じく放電深度50%。
ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池では継ぎ足し充電をするとメモリー効果により本来の性能を発揮できなくなるという特性があります。
ですから常に放電深度100%で使うのが望ましいものだったわけです。
対してiPhoneに使われているリチウムイオン電池ではメモリー効果が起きず、継ぎ足し充電をしても良いとされています。(※1)
ではどのように使うのが効率的なのでしょうか。
その疑問に答えてくれるデータは小形リチウムイオン電池の寿命特性というレポートにあります。(※2)
このレポートではサイクル数によるバッテリー劣化や、放電深度による影響、温度による影響などをテストしており、非常に参考となるデータを見ることができるので、主にそちらからのデータを引用しつつ説明していきます。
結論から言うと、放電深度100% つまり満充電からバッテリーを使い切るのはバッテリーの劣化を早めてしまうのでやらない方が良い。
図表は(※2)から引用
この実験では放電深度100%・50%・25%を比較していますが、放電深度100%では300サイクル手前で本来の半分まで容量劣化をしてしまっている。
対して放電深度25%では100サイクル以上も延びているのがこの図から読み取れるだろう。
なお、こちらのデータはバッテリーの劣化を早めるため50℃の環境で実験したものなので、通常よりも劣化が早まっている。ここで注目すべきは回数自体ではなく、放電深度による傾向だ。
バッテリーを25%ずつ使うというのはあまり現実的な運用とは言えませんが、100%を使い切ってしまうやり方では大幅に寿命が縮まることをまず知っていただきたい。
Battery Universityというサイトでも同様の実験をしていたのでこちらも見ておきましょう。(※3)
こちらでは70%まで劣化するのに何サイクルかかるかを実験しています。
図表は(※3)から引用
放電深度(DoD)100%では300~500サイクルかかったのに対して、50%では1,200~1,500サイクルまで延びている。じつに3~4倍も違います。
リチウムイオンバッテリーの寿命と放電深度の因果関係は明白だろう。
満充電はしないほうがいい?
放電深度50%で使うとして、
・100%から50%まで使う
・50%から0%まで使う
この2つに差はあるだろうか。
実験結果を見ると明らかに後者の50%から0%まで使う方がバッテリー寿命を延ばす結果になっている。
図表は(※2)から引用
同じ放電深度50%でもこれだけ違う。
先ほどのグラフと比べてみよう。
図表は(※2)から引用
左の図の緑色の折れ線と、右の図のオレンジの折れ線は同じ100%-50%のもの。
先ほどもっとも好成績だった放電深度25%と比較しても、50%-0%までの充放電を繰り返す方がずっと長持ちなことがわかるだろう。
放電深度を浅く使うよりも、充電容量自体を控えめにしておく方が効果的だということだ。
温度と劣化
これは一般的な常識となりつつありますが、温度が高い状態ではバッテリーが劣化をします。
図表は(※2)から引用
データでも明らかで、50℃の環境で放電深度100%の使い方をすると300サイクルで寿命ラインに達するのに対して、40℃では450サイクル付近で寿命に。25℃の環境では700サイクルでもまだ余裕がある。
Battery Universityのデータも同様に、高温である方が劣化をしているのがわかる。
図表は(※3)から引用
さすがに50℃というのはお目にかかることは少ないですが、真夏の車中でナビアプリを使っていると高温警告が出て使用できなくなることがあります。バッテリーのダメージを考えるとすぐに休ませてやる必要がありそうです。
ゲームや動画再生などをしているとiPhoneが温かくなってくることがありますよね。これも注意したい。
ちなみにAppleの推奨温度は0℃〜35℃の環境下とされています。(※4)
適切な温度で使用しないとバッテリーの寿命が倍以上違ってくることを憶えておきましょう。
長期保存と充電度合い
これもよく言われるのが「満充電にして放置しない方が良い」ということ。
これはサンプルによって結果に差が出ていますが、正しいと言える。
長期保存に際しては満充電よりも50%程度の状態で保管する方が劣化を抑えられるのは確かです。
「完全放電させるとバッテリーが痛む」かどうかを確かめる実験はありませんが、これは実験するまでもないようです。痛みます。
急速充電
最近では急速充電をウリにしたアダプターやモバイルバッテリーが増えていますが、急速充電ではバッテリーへ悪い影響があることも知られています。
iPhoneも5sまでは1Aでの充電しかできませんでしたが、6以降は急速充電にも対応しています。
もちろんAppleもTI社のMaxLife™(※5)のような劣化を抑える技術を使っていることでしょうが、どうしても充電には発熱がともなうものですから、より発熱をしやすい急速充電はその点でバッテリーに優しいとは言えないでしょう。
少し話は変わりますが、Battery Universityでは電圧の高い状態で充電をした場合の劣化についても掲載しています。これについてはiPhoneの場合は本体側で適切な電圧に変えて充電しているので心配はいらないでしょう。
まとめ
これまでの情報を総合すると、
高温にならないように気を付け、バッテリー容量をたくさん消費することなく、少し減ったらこまめに充電するのが望ましいことがわかりました。
可能であれば低残量で、使ったらこまめに充電をするのがベストですが、さすがにバッテリー残量50%以下のスマホで外出するのは不安ですよね。
理想は理想と割り切って、普段は満充電して減ったらすぐに充電するという考えでいいと思います。
厳格に守る必要なんてなくて、知識として頭に入れておけばいい。
知っていれば自然とこまめに充電するようになる。それで十分です。
バッテリーは全部使い切ってから充電した方がいいと書いているサイトも多くありますが、こうしてちゃんとしたデータが示されていると何が正しいのかが見えてきます。
もちろんこれらのデータはちゃんと自分でもチェックして信頼できるものかを確認してみてください。
特にNTTの調査データ(※2)についてはここに載せていないものも多くあって勉強になりますし、日本語でわかりやすく書かれているので是非一読をオススメします。
バッテリーが減りすぎないように気を付けたり、温度管理まで行うのはめんどくさいものです。
ですので、それをカバーしてくれるアプリを紹介したいと思います。
電池予報 Pro 2 – 残量と発熱を警告 バッテリーを長持ちさせるのに便利なアプリ
興味があったらこちらも読んでみてください。
参考文献
※1 リチウム二次電池のメモリー効果を発見 – 株式会社 豊田中央研究所
http://www.tytlabs.co.jp/cms/news/pdf/press/20130415_news_naturematerials.pdf
正極材料にリン酸リチウム(LiFePO4)を使った場合にはリチウム電池にもメモリー効果が発見されたという話。
正極材料は他にもあるので、すべてに当てはまるという話ではない。
※2 小形リチウムイオン電池の寿命特性 – NTTファシリティーズ総合研究所 バッテリー技術部長 市村雅弘
https://www.ntt-fsoken.co.jp/research/pdf/2005_ichi.pdf
※3 BU-808: How to Prolong Lithium-based Batteries – Battery University
http://batteryuniversity.com/learn/article/how_to_prolong_lithium_based_batteries
※4 iPhone、iPad、iPod touch を許容可能な動作温度に保つ – Apple
https://support.apple.com/ja-jp/HT201678
※5 【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ:充電時間の短縮と電池セルの劣化防止の両立を実現、単セルのLiイオン電池に向けた電池管理チップセットが登場 – EDN Japan
http://ednjapan.com/edn/articles/1308/01/news012.html
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Comment
非常にためになりました。 私も充電は使い切ってから満タンにするのが、1番バッテリーにいいというのを何処かの記事で読んでからそのようにしてきましたが、完全にしてやられたという感じです。笑 あと、携帯充電器の急速充電がバッテリーに悪いというのも、初耳でしたので参考になりました。 今後もこのような記事を期待しております。m(_ _)m
使い切ってから満タンというのがイメージ的にも良さそうな気がしますし、そう書いているところも多いですからね。
それが嘘でも本当でもすぐに確かめるすべがないので困ったところです。
急速充電についてはそれほど気にしないでもいいとは思いますが、バッテリーに優しいということはないので、時間のある時は普通の充電器でゆっくりやってあげた方がいいでしょうね。
今回はバッテリー関係のアプリを紹介するにあたって前段階として書きましたが、他人の研究成果を紹介するだけの記事というのは乗り気がしませんので、こういう記事はあまり期待しないでください。
できるだけ自分の主義主張のこもったオリジナルの記事を書いていきたいところです。
いつもアプリセール情報の記事も一言レビューがあって嬉しいですが、今回の記事のようにソース載せて深い所まで掘って記事にされてるブログはあまり見たことがないので貴重です。iPhone関連のブログの中では結構異色ですよね。
40分くらいでバッテリー管理アプリについて紹介するだけのつもりが、掘り下げていったらこんなことになってしまいました。
下調べにやたらと時間がかかってしまいましたが、参考になったのなら書いた甲斐がありました。
ソースはどれも面白い情報が載っているので読んでみてくださいね。
異色は嬉しい言葉です。
フラッシュライト界隈でもよくバッテリーの話になりますが、
結論としては同様です。
ラジコン競技やってる人なんかは充電方法にかなりこだわりますね。
300ルーメンを超えるようなライトだとCR123Aがあっという間になくなるって言いますもんねー。
やはり日常的に使い込んでる方々は管理ノウハウがしっかりしてそう。
ラジコンはニッカドとかニッスイなイメージで止まってましたが、リチウムイオンのもあるんですね。
勝敗にかかわってくるだけにガチな分析データを持ってて詳しいでしょうね。
うわー!勉強になりました!
継ぎ足し&低残量がベストだなんて。
こうしてきちんとデータまで示していただき、助かります≧▽≦
私も知らないことがあって勉強になりました。
外出しない時くらいは低残量で使うようにしたいですね。
大変ためになりました。
間違った知識を周囲に広めていたので、データと根拠を示した今回の記事のおかげでこれ以上恥をかかなくてすみそうです。
今後も実証記事を楽しみにしています。
満充電&使い切り派がかなり多くいらっしゃるので、これを機に長持ちする充電方法が広まればいいなと願います。
お知り合いにも教えてあげてください。
勉強になりました!
上の方と同じく、使い切ってから充電というのをどこかで読んで、なるべくそうなるよう心がけていました(-.-;)
自分で勝手に騙されてました。。
いかに、世の中に溢れてる情報がいい加減で、
それを鵜呑みにしてる自分がいるかを再認識。
以前に書かれた、
人生の15分を使ってでも読んでおくべき大学教授の卒業生へ向けた言葉。(でしたっけ?)
の記事を思い出しました。
このサイトが大好きになった記事でもあります。
今回のような記事はあまり乗り気じゃないようですが、参考文献まで載せて為になる事を紹介してくれ、尚かつ知識のない者にもわかりやすい書き方をしてくれるサイトはあまり見つけられませんので感謝です。
ありがとうございますm(_ _)m (^-^)
うちの記事も鵜呑みせず、引用されているデータ自体も疑ってかかることが大事ですね。
グラフというのはそれだけで客観的な事実であるように錯覚させてしまうので危険です。
しっかり元データも読んで、この記事が間違っていないか、元データ自体は信用できそうかというところまで踏み込んでみてください。
Battery Universityの同じデータを引用しても、間違った結論を書いているサイトがありました。
データが添えられていると間違ったものでも正しく見えてしまうから注意しないといけません。
久しぶりに感心したブログをみた。
これからもちょくちょく覗いてみようと思います。
結論を先に述べているところも高評価でした。
ありがとうございます。
最近になってなるべく結論が早めにわかるように意識をして書くようにしています。
本当なら最後までもったいつけたいんですけど、読む側としては嬉しくないですもんね。
これからもどうぞよろしく。