半沢直樹、ルーズヴェルト・ゲームに続いてドラマ化された、池井戸潤原作の「下町ロケット」は大人気を博し、毎回20%近くの視聴率を叩き出している。
物語は第二部の「ガウディ計画」編に入り、新たなキャストも続々と登場してきた。その中で、私が強く惹きつけられたのは、ライバル会社佐山製作所の社長を演じる小泉孝太郎(役名:椎名直之)だった。
小泉孝太郎がドラマの中で演じているのは、NASA出身のエリートで、町工場の社長に就任してから急激に売上を伸ばしてきたやり手の敏腕経営者。実力主義で、時には汚い手を使いながらも、佃製作所の取引先から次々と契約を奪っていく。
ドラマの中では完全なヒール役だ。しかし、小泉は、このヒール役を完全にモノにした。
■NASA帰りのエリート社長がハマった
これまでの俳優小泉孝太郎は、言ってみればパッとしない俳優だった。「踊る大捜査線」でちょい役で出てたかな、という程度の印象だ。彼の出演作をすべて見たわけではないが、そもそもこれまでの役柄というのは、そのさわやかな容姿から、「温厚で清々しい好青年」が多かったのではないか、と思う。私がドラマの監督でもそういう使い方をしただろう。
なぜなら、元総理大臣の息子なのだ。素晴らしい環境で、最高の教育を受けて育ったに違いない。絶対に好青年だろう、というイメージだった。
しかし、今回の下町ロケットで演じた「NASA帰りのエリート社長」という役柄は、このイメージを逆手に取った、ある意味逆転的発想ながら、それが見事なまでにハマったパターンと言える。
佃製作所が取引先に契約を打ち切られたその瞬間、新たに契約を勝ち取った佐山陣営が現れるこの瞬間など、エリートオーラが放たれていて、最高だ。
そして、今回の大成功の裏側には、そのイメージをうまく利用しながらも、これまで積み重ねてきた経験に裏打ちされた実力があるのだと思う。
例えば、このシーン。佃製作所から引き抜いてきた社員が結果を出せずにいるところを、詰めるシーン。声にストレスがかかっていて、絶妙に相手をプレッシャーを与える声だった。
その他にも、取引先である日本クラインと悪い話をするときの表情や、痛いところを突かれて開き直る時の変貌ぶりなど、すべてがハマっていると言える。個人的には100点に近い。半沢直樹における香川照之と同等の評価か、それ以上を与えて良いと思う。
■小泉孝太郎の経歴
放つエリートオーラが素晴らしい小泉孝太郎だが、これを機に経歴を調べてみたところ、実は華々しいエリートコースを歩んできたわけではなかった。
日本大学夜間部を中退し、俳優を目指していたが、オーディションにはすべて落選の日々。父親が総理大臣になって、ようやくそのネームバリューで現在の事務所に拾ってもらったようだ。
『狂った果実2002(フジ・2002年)』で初主演を果たすと、さわやかな好青年のイメージを崩さずに、着実に実力をつけていく。
その後は、『ナースマン(日テレ・2004年)』、『炎の警備隊長・五十嵐杜夫シリーズ(テレ朝・2003年~20011年)』、『踊る大捜査線シリーズ(フジ/東宝・2003年~2011年)』などに出演。
連ドラの主演というよりは、単発ドラマの助演俳優という印象が強い。
失礼を承知で言うと、これまで代表作はなかったと言ってもいいだろう。
しかし、この『下町ロケット』椎名直之役は、誰もが認める代表作になる。私はそう確信している。
■半沢直樹の大和田常務を超えられるか?
この記事を執筆時点では、まだ最終回は放映されていない。
半沢直樹においては、半沢と大和田常務のバトルシーンに民放ドラマレベルではない迫力があり、印象に残っている。堺雅人演じる半沢直樹はもちろんのこと、香川照之の大和田常務の失脚する姿、激昂する姿、そのあまりに表情豊かで感情をむき出しにする演技に舌を巻いてしまった。
今回、小泉孝太郎は、大和田常務になれるのか。事前の情報では、阿部寛演じる佃耕平との15分のバトルシーンがあるようだ。非常に楽しみである。
ヒール役として突如ドラマ界で輝きを放ちだした「小泉孝太郎」から目が離せない。
おまけ