地政学的カオス
今年の国際情勢を振り返ると、世界が「アメリカ後」の秩序形成に向けて一段と加速した感がある。それは、一種の安定感を漂わせる多極化時代や米中によるG2時代などとは全く次元の異なる世界だ。
シリア内戦を始めとした中東の混乱、欧州に押し寄せる難民、中国の南シナ海における人工島造成の既成事実化、ロシアの傍若無人な言動……。世界を見渡せば、「地政学的カオス」というのが実情だ。
覇権国家の役割がバランス・オブ・パワー(勢力均衡)の調停であるなら、その役割をアメリカに求めるのはもう無理なのかもしれない。
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昨年(2014)出版されたヘンリー・キッシンジャー元米国務長官の『World Order』は、現状の国際関係を読み解くのに参考になる。
キッシンジャー氏はその中で「(大西洋と太平洋により孤立した)地理的条件と膨大な資源に恵まれたアメリカでは、外交とは選択的行動(optional activity)であるという認識が育まれた」と書いている。「アメリカは世界の警察官ではない」と明言したオバマ大統領の外交に、まさに当てはまる記述ではないだろうか。
その象徴が、ブッシュ政権時代の遠大な「中東民主化」構想から一転して、中東への軍事的コミットメントを最小限に抑えようとするオバマ政権の中東政策であり、その矛盾が一気に噴きだしたのがシリア情勢と言えるだろう。
このアメリカの「変わり身」は、単なる気まぐれではなく、中東の戦略的価値の低下を反映したものだ。国内でのシェール・オイルの急速な増産により、2020年にはサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になると予測されるアメリカにとって、外交・安保政策において「石油」を重視する必要が薄れている結果なのである。
その例証が、今年7月のイラン核問題の解決に向けた進展だ。
アメリカは、スンニ派のサウジなど親米中東産油国の反発を押し切る形で、イランと最終合意に達した。年明けにも対イラン経済制裁の解除が予想されるが、石油増産などでシーア派のイランが経済力を強化すれば、その影響力は強まり、中東秩序が一層不安定化することは間違いない。
ここに、親米路線一本道の日本が読み取るべき教訓が潜んでいる。
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