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「次のコミケに新作ゲームを出します」といったTwitter広告を個人でも出せる新機能「セルフサービス式広告」を使ってみよう
その広告は,Twitterが2015年11月18日に始めた新しい広告サービス「セルフサービス式のTwitter広告」(以下,セルフサービス式広告)を,いち早く利用したものだったようだ。
Twitterの広告といえば,ある程度名の通った企業や,SNSでのプロモーションを重視する企業が,製品やサービスの宣伝をするものといったイメージを,筆者は持っていた。しかし,セルフサービス式広告は,中小企業や個人でもTwitter広告を出せるという触れ込みのサービスだ。筆者はたまたま,そのサービスが始まったことを知っていたので,それを早速,インディーズゲームの広告に使った人がいるのだなと驚き,感心したのである。
そんなセルフサービス式広告の仕組みについて,Twitterの日本法人であるTwitter Japan(以下,Twitter)に話を聞いてみた。Twitter側でも,日本の中小ゲームスタジオやインディーズゲーム開発者に,このサービスを広く利用してもらいたいと考えているようである。
はたしてセルフサービス式広告は,アプリの告知拡大に頭を悩ませる人々にとって,どんな利点があるのだろうか。
広告出稿のハードルを下げて,個人でも広告を出せる仕組みを用意
まず始めに,セルフサービス式広告は既存のTwitter広告と比べて,何が違うのだろうか。
Twitterは,以前から広告代理店を経由した広告出稿を受け付けていたのに加えて,2014年11月には,Yahoo! JAPANとの提携により中小企業を主な対象とした「Yahoo!プロモーション広告」でTwitter広告が扱われるようになり,これらを通じて企業の広告を掲載している。
新しく展開するセルフサービス式広告は,そういった従来のTwitter広告より「広告を出す側の裾野を広げた」(森田氏)サービスであるという。
裾野を広げるポイントの1つめは,ハードルの低さだ。セルフサービス式広告を出すためにしなければならないことは,Webブラウザからのアクセスの場合,Twitterアカウントをクリックして表示されるメニューから「Twitter広告」を選択し,必要事項に答えることだけ。当然,一個人でも利用できる。
広告料金の決済は,クレジットカードで行うので,支払いの設定も簡単だ。しかも,広告の設定を変えてみるだけなら,支払いは発生しない。試しに「どんな機能があるのか」「いくらかかるのか」を確認するだけなら,お金はかからないわけだ。
2つめのポイントは,手軽さだ。★たとえば,ゲームスタジオ公式アカウントから発した新作ゲームに関するツイートが,多くの人にリツイートされていたとしよう。そのツイートをさらに多くの人にも見てもらいたいと考えたときに,簡単な操作でそのツイートを広告ツイートとして設定できるのである。★もちろん,設定したツイートがTwitterの広告ルールに従ったものかを審査するプロセスはあるものの,ツイートが話題になっているうちに,素早く広告に切り替えることができるわけだ。
この手軽さという利点は,広告の概念や範囲を大きく広げるかもしれない。一般的に広告といえば,ある規模の企業が商品やサービスを売るためにプランを練って準備を行ったうえで,さまざまな媒体に投入するものというイメージだろう。しかし,セルフサービス式広告はもっと柔軟で手軽に利用できる。
たとえば,写真やスクリーンショットと組み合わせて,「次の冬コミで新作ゲームを出します」というツイートや,「来週末に○○でイベントをやります。来てね!」というツイートを作り,それを広告にできるのだ。自分のアカウントで告知をしても,そのアカウントのフォロワーがリツイートしてくれないと,フォロワー以外の人まで大きく広がりはしないものだが,Twitter広告なら,より広い対象ユーザーに告知を届けられる可能性がある。新聞における「三行広告」的な使い方ができるTwitter広告が,セルフサービス式広告の利点といったところだろうか。
3つめのポイントは,広告を表示するだけなら,料金の支払いは発生しないということ。広告内のリンクをクリックしたり,アプリが売れたり,フォロワーを獲得したりといった,事前に設定した条件(キャンペーンの目的)を満たした場合のみ,1回いくらでの支払いが発生する仕組み,いわゆる「クリック報酬型広告」を採用しているのである。
キャンペーンの目的は,さまざまなものが用意されており,ツイートが表示された場合,リンクがクリックされた場合のほか,モバイル端末向けアプリがインストールされた場合といった条件を設定することも可能だ。
「『Fallout 4』のことをつぶやいた『中部地方』の『4Gamerフォロワー』」といったターゲッティングが可能
さて,セルフサービス式広告で興味深いところは,広告を届けたいユーザー(オーディエンスと呼ぶ)を細かく設定できるところだ。
単純に露出を広げたいなら,予算を大きく取って入札金額を高く設定し,対象ユーザーも絞らなければいいと考えるかもしれない。表示だけならコストは発生しないので,リンクをクリックしたときだけ支払いが発生するのならば,「対象を絞らなくてもいいじゃないか」というわけだ。しかし,「実際はそう単純ではない」と森田氏は説明する。
セルフサービス式広告の場合,広告のクリック率が高いほど,その広告が表示されやすくなるという仕組みがあるという。森田氏によると,「全然関係ないユーザーにまで広告を出してしまうと,当然ながらクリック率は下がってしまいますから,広告が出にくくなってしまう」というわけで,ユーザーを絞るのは効果的に広告を出すための戦略というわけだ。
対象ユーザーの絞り込み項目を1つ1つ説明するのは本稿の趣旨ではないので,興味深いものに絞って説明しよう。
まず1つめは,「フォロワー」。ここで指定したユーザー名(アカウント)のフォロワーに対して,広告が配信されるというものだ。なにか1つのユーザー名を指定すると,そのユーザーに似たユーザー名もリストアップしてくれるので,対象にしたいユーザー名を1つ1つ入力していく手間が省ける。
ちなみに,対象言語が英語のみではあるが,「ネガティブな感情を含むツイートを除外」するという項目があるのも興味深い。つまり,キーワードに入れた項目を嫌ったり批判したりするツイートをつぶやいている人は,条件にマッチしても広告対象から除外されるわけだ。嫌いな物の広告を見せて,ますます不快に思われるのを避けられるというわけで,日本語にも対応してほしいと考える広告主は多いのではないだろうか。
3つめは「興味関心」。これはカテゴリーに興味を示しているTwitterユーザーを広告の対象とするもので,「ゲーム」という大きいカテゴリーの場合,そのサブカテゴリーとして,「オンラインゲーム」や「ボードゲーム」,「ロールプレイングゲーム」といったものが用意されていた。これをキーワードと組み合わせてうまく使えば,特定のゲームジャンルを好む人だけを正確にターゲットとすることが可能だろう。
そのほかにも,国や地域を指定する機能や,ユーザーが話題にしたテレビ番組を指定する機能など,さまざまな属性で対象ユーザーを絞り込むことが可能となっている。イベントの告知を広告で出す場合に,対象地域を開催地に合わせて設定するといった使い方が考えられそうだ。
セルフサービスならではの難しさはあるが小規模ゲームスタジオやインディーズ開発者なら利用価値あり
このように,ハードルの低さと手軽さ,クリック報酬型という利点を持つセルフサービス式広告だが,セルフサービスであるがゆえの難しさも当然ある。広告代理店が介在する従来型の広告なら,広告代理店の協力を得られるような要素も,すべて自分で考え,自分でコントロールしなくてはならないのだ。
たとえば,対象ユーザーの絞り込みは,自分たちの売り込みたいものが誰になら響くのか正しく理解していなければ,適切に設定するのは難しい面がある。難しく考えず,ある程度広い対象をターゲットにする手もあるが,その場合は先述したように,広告自体が表示されにくくなる可能性があるため,届けたい相手に届かないということになりかねない。誰に広告を打てば響くのか,きちんと検討して絞り込む必要があるだろう。
予算や掲載期間の管理を自分たちで行わなければならないというのも,小規模なゲームスタジオや個人の開発者には難しいところ。お試し程度で少額を使うだけならともかく,ある程度の予算と期間をかけて広告を掲載するなら,きちんと計画を立てて行う必要があるわけだが,そこを広告の専門家ではないゲーム開発者が考え,適切に運用するのは簡単なことではない。
セルフサービス式ならではの難しさはあるものの,Twitterアカウントとクレジットカードさえあれば,かなり簡単に掲載できるセルフサービス式広告は,「広告を出す」という行為にあるハードルを取り払ってくれるものだ。スマートフォン向けゲームの広告手段に悩むゲームスタジオや,冬コミでの新作ゲームを広く告知してみたいと考えているインディーズゲーム開発者の人は,セルフサービス式広告を利用することのを,選択肢に入れてみる価値があるのではないだろうか。
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