「マッドマックス 怒りのデス・ロード 」は映画関係のブログではどこも「大絶賛!」というほどの持ち上げ方になっていたので、少しでも欠陥を見つけたら大々的に騒いでやろうと思って観てみたのだが……。
やはり世間の声は圧倒的に正しい!!!
自分には120分という時間が過ぎたことが全く信じられないほどで、体内時計的にはこの映画は68分ほどの、コンパクトな小品ではないかとすら思えるほどだった。
しかしそれは錯覚で、つまりそれほど面白すぎて、砂塵と爆発とアクションのてんこ盛りで、泣きも笑いも怒りも叫びも、ひたすら風を切って過ぎ去って行くようなスピード感に満ちている映画なので、そう感じられるだけなのであった。
どういう種類のアクション映画でも、普通はそれなりに説明的な場面やドラマ部分があって、いわば「休み時間」が用意されているものだが、本作は冗長な説明や理屈がごっそり削ぎ落とされている(ウォー・ボーイズたちの体躯のように)。
そういう訳でこの映画の魅力のほとんどは言葉にし難い要素、つまりアクションそのものやカットのつなぎや切り替えのタイミング、構図と色彩、それに車や衣服や武器のデザインそのものの方に本質があるのだが、言葉にし難いもどかしさを抑えきれない興奮がぶち破ってしまい、ついつい大絶賛してしまうのであろう。
そんなことを考えてしまったので感想も書きにくいのだが、あえて三点ほどメモしておく。
1.主人公の位置!
最初のカーチェイスの場面で、尋常でない「位置」に主人公が置かれる(しかも動けない)。ここに私は最も惹かれたというか、ここが実に新鮮なのであった。
映画の序盤+主人公=死ぬ筈が無い
という、アクション映画のしらけ要素の排除に成功している。
このアイディアのおかげで臨場感が増しているので、爆発や被弾、加速や追い越しといった一つ一つのアクションの価値が高まり、他の映画で何回も観たような場面の迫力が、二倍も三倍にも感じられてくる。
映画を見る際に観客がどれほど「主人公のいる位置」を意識しているのか、ということを身をもって教えられたというべきか。
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2.コースがわかりやすい!
観ていて、主人公らの目指す目的地が常によくわかる!
この点は本作の見逃せない美点である。
序盤から前半は、とにかく「大体こっちの方向へ行っている!」という向きがシンプルで良い。
そしてある時、マラソンの折り返し地点のような場所が出てきて、その後さらにさらに、これ以上ないほど分かりやすくなるのだ。
しかも、小学生でも理解できるほど理にかなっている。
レコード盤のA面が終って、ひっくり返してさあB面を聴こう!という感じの構成になっているという、気配り満点の親切設計なのだ。
まるで「北斗の拳」だ、という感想をよく見かけるし影響関係もあるようだが、私の目には最初から最後まで「大友克洋の世界だな」という風にしか映らなかった(実際、監督は「AKIRA」の影響を公言していて、映画化のオファーもあったらしい)。
とにかくホースからニトロを吸うとか、ギターから炎が出る男、太った敵の男など、大友克洋の絵柄が浮かんで浮かんで仕方がなかった。
昔の「スターログ」に大友克洋のアシスタントの対談という企画があって、その中で戸川純の「レーダーマン」の頃のビジュアルを見た大友先生が「やられた!」とがっかりしていたというエピソードがあり、かなり後になってからそれは鉄雄の義手のことだったのだなと理解できたのであった。
今回、その伝統的な義手が大いに復活して活躍していた点も喜びたい。