病院にやって来るのは、何かしらの「問題」を抱えている人です。診察が終わった後はどうでしょう。心や身体の不安、心配は無くなったでしょうか。病名をもらって足取りが重いでしょうか。
患者さんの問題とは何か、問題解決に支障をきたすことは何か、問題の解決方法は?
時にはプライベートな問題にも立ち入る必要があり、患者さんとの信頼関係を築くことなしに問題解決は出来ません。
これらのことを考え、実行することは、ナースの仕事にかかわらず、ビジネスやプライペートでも、人と関わる様々なシーンで応用できることは多い。
患者さんの問題は、肉体的、精神的、社会的、経済的など様々な要素があって複雑です。1つのことが解決しても、新たな問題が起こることもある。医師や看護師など医療スタッフにとって、患者さんの問題の中に、ニーズがどのように重なり合っているかを見つけることが必要となります。
問題解決のためのプロセス
問題の解決には、患者さんの真の問題が何なのかを、見抜く必要が有ります。そのために患者さんに質問してデータを集めるのが、問題解決の第一歩ですが、質問の前に重要な事があります。
「患者さんが診察室に入ってきた、その瞬間から視線を合わせる」ことです。
その時から問題解決に向かっている、ということを態度で表します。通常より過敏になっている患者さんは、「この先生や看護師さんは、私のことを見てくれている。相談できる」と言った信頼、安心感を感じ取ります。
信頼関係が重要
これが、患者さんが座ってから初めて患者さんを見るようだと、「ちゃんと診てもらえるのだろうか」と言った不信感にも繋がる。
病気と診断され、入院となった場合も、信頼関係がなければ治療にも支障をきたすのです。
ビジネスや、プライベートでも「相手をしっかりみる。視線を合わす」。これができるかどうかで、良い関係を構築できるかどうかが決まります。
丸裸にされる患者の秘密
患者さんの情報を得るためには、これまでの病歴や今の症状、健康に不安のあることなど、直接病状に関わることは勿論、非常にプライベートなことにも、立ち入ってお聞きしなければならない場合も有ります。
診察室でも、病室でも例えば、女性の場合、今までの中絶の有無や回数など、誰にも話したことの無いようなことも、尋ねる必要があることも有ります。あるいは、他人には知られたくない、家庭の事情がある方もいらっしゃるでしょう。
場合によっては、非常にデリケートなことまで、根堀葉掘り聞き取りしなければいけないかも。
その際、カーテン1枚で仕切られたスペースで、周りじゅうに聞こえるような会話では、患者さんには過大なストレスを与えてしまうことは必至です。
病棟ナースが患者さんの情報を得る前にする4つの目標
- 信頼関係を築く
- ナースの役割を正しく伝える
- 患者さんの不安を上手に包み込む
- 環境に配慮
信頼関係を築く
基本的な行動は、挨拶をすること、自己紹介をすること。これは看護師に限らず重要なことです。様々なストレスにさらされている、患者さんの心理を理解するようにしなければいけません。
患者さんの多くは、担当医の名前は知っていても、病棟ナースの名前を知っている人は少ないし、ただ白衣を来て、ナースですと言われても、どこの誰だか知らない人に、自分の内面を話す気にはなれないのは、普通でしょう。
まずは、患者さんと信頼関係を築くことが大切になります。
ナースの役割を正しく伝える
患者さんによっては、何でもかんでもナースが希望を聞いてくれる、と思う人もいるし、看護師がこんなことをしてもいいのか、などと懐疑的な患者さんだっています。
できること、出来ないことをはっきり伝えることも重要。
患者さんに対して「私はあなたに、こういうことが出来ます」と予め伝えナースの役割を理解して頂く。
ナースは患者さんを助ける役割
ナースは、身体的なケアだけでなく、精神的、社会的な問題も取り扱います。患者さんはテレビや小説で見たナースをイメージすることが多く、切実な問題を相談しないこともあります。
「あなたが困ったとき、私たちはこういう手助けが出来ます」ということを、患者さんにしっかり伝えておくことが重要です。
患者さんの不安を上手に包み込む
目の前にいる患者さんの情報を、機会的に「取り」に行くと、緊張している患者さんの気持ちに、配慮すること無く、単に情報収集するだけになって、患者さんは不安な状態のままです。
情報収集ではなく、情報交換の機会と捉えるのが適切です。
患者として、ここにいて安心だ、と言う感情を持ってもらえるようになることが大切。
環境に配慮
患者さんの問題を明らかにするための、聞き取りでは、非常にプライベートな部分に立ち入ることもあります。個室ならプライバシーは保てますが、そうでない場合は、十分な配慮をしなければいけません。
人の出入りが多くて落ち着かない、声が聴こえないほどうるさい、ペンキが剥がれている、トイレが狭いなど病院や病室に関する条件の他にも、情報を取る人、つまり看護師や医師の身だしなみがだらしなかったり、いかにも疲れきっているという印象を与えてはいけません。
What is problem? 問題とは何か
ここで、患者さんが抱えている「問題」とは
- 医学的領域
- 生活領域
- 仕事の環境
- 嗜好や習慣
- ハンディキャップ
などの問題です。1つのことが解決しても、そこからさらに新たな問題が起こったりもします。
「問題」と言う言葉は、様々な意味で使われています。例えば
わからないこと・・・・ 疑問、質問
困っていること・・・・ 困惑
差し障りのあること・・ 障害、支障
どうにもならないこと・ 高速、不条理
などなど
患者さんの問題とは、あるべき姿、こうなってほしいという望ましい状態、と現実に起きていることのずれ、ギャップと考えることが出来ます。
問題=目標とする状態-現在の状況
ナースは患者さんの問題、患者さんの中のずれを、見逃さないようにする必要があります。
問題の発見を難しくし、阻むもの5つ
患者さん自身がうまく言い表せないような問題も、医師やナースは引き出さねばなりません。そのためにはどんな言葉が適切なのかを考えル必要がありますが、問題の発見を困難にするものがあります。
- 知的盲目
- 感性の欠如
- ナースの偏見・先入観
- 死角
- 混乱状態
知的盲目
知識が欠如しているために、患者さんの問題を発見することが出来ない
感性の欠如
感性を受け止める心の触手がない、患者さんに対して感性豊かでいられるか
ナースの偏見・先入観
偏見を持っているため、問題が見えないこと。先入観や自負心、興味や感心、恐怖など様々なものが、ナースの側にあると、問題をリアルにとらえることができない。
死角
問題が影に隠れ、死角に入り見えない
混乱状態
問題が分離し、お互いに絡み合っているので、どこから手をつけたら良いのかわからない、と言う混乱状態である
まとめ
患者さんのお世話を24時間休みなくする看護師は、患者さんの問題点をより深く、広く知ることのできる位置にいます。
患者さんを苦しめている「問題」をとらえ、肉体的、精神的、経済的にも負担を与えない方法は何か。問題解決のために、時には、患者さんの「他人には知られたくない秘密」を、聞き出さなければならないことも。
患者さんとの信頼関係の構築が、できるかどうかが患者さんの情報を正確に引き出すカギ、と言えます。
「ナースのひとりごと」~今日も1ページ