Shopping While Black とは?
『Shopping While Black』
と言う、英語のフレーズがあります。これは、市場におけるある種の人種差別を経験する事を指し、『Racial Profiling』人種別性格予断とも言われるものです。たとえば、肌の色が黒いというだけで、『あの人は物を盗む』と予測し、店員が客の後ろをついてまわったり、直接的な言葉で攻撃したり、あるいは、物を売ることやサービスを拒否、または、それ以上にひどい扱いをしたりすることを指します。
この人種別性格予断は、雑貨店からはじまり、衣料品店、デパートなど、あらゆ市場でみられる行為であり、ウォールマートや有名デパートのメイシーズなども、消費者から訴訟を起こされ大問題になりました。昨年2014年には、メイシーズが消費者に訴えられて日本円にしておよそ8千万円の賠償金を支払っており、また、同じく有名デパートのバーニーズも、同様のケースでおよそ3千万円の支払いを命じられています。
主にアメリカのメディアで取り上げられることが多い「Shopping While Black」(消費者人種別性格予断)ですが、イギリス、カナダ、スイス、そしてオランダなどの国々でも数々の症例が報告されています。
【Wikipedia参照】
そして、アンケートによると、アメリカでは実に60%のアフリカ系アメリカ人の人々がこの「Shopping While Black」を経験していることがわかっています。
一人の美しいアフリカ系アメリカ人の女性が、NYのファッションの中心でもあるソーホーの一流ブティックに足を踏み入れます。そこに素早く近づいてきた白人店員が厳格に告げます。
「この店は高級ブランドの店で、あなたのような方が探している商品は見つからないと思いますよ。」
「あなたみたいな人が店に入ってきて、商品を盗んでいくの。私の言ってる意味わかるでしょ?私は忙しくて、ずっとあなたを見張っているわけにはいかないのよ。」
「あなたがいると落ち着かないわ。」
「あなたが買えるような安物は置いていないの」
思わず耳を疑うような、衝撃的な言葉を次々と女性に投げかけます。
「私みたいな人ってどういう意味???」
「あなた最低な事をしているのよ。」
「あなたは私を犯罪者の様に扱っているのよ。」
実験を仕掛ける側の女性、渾身の演技で見ている人も思わず泣いてしまいそうなぐらいの衝撃を顔に浮かべ、周りの客にも助けを求めます。
そして、追い打ちをかけるように警備員がボディチェックをし、あきらかに人権侵害な言葉かけをし、店から追い出してしまいます。
(ちなみに、実験では、実験者の女性が高級な服を身にまとった場合と、カジュアルな恰好をした場合と二つのバージョンを撮影しています。)
1.巻き込まれたくない
最初の被験者、女性二人は、店員とアフリカ系アメリカ人の女性のやり取りを聞いていましたが、何も言わずにその場を通り過ぎます。店から出てきた二人に、実験者がインタビューをすると、
「彼女が気の毒だったわ。」という女性。実験者がさらに踏み込んで、「彼女のために何かしようとは?」と尋ねると、
「でも、私には関係ないことだもの。巻き込まれたくないわ。」と言い切りました。
実験者はさらに、「でも、彼女は助けを必要としていたでしょう?誰かが何かをしないと・・・」と突っ込むと、「でも、どうやって助けたらいいのかわからないわ」と困った様に笑いました。
2.あからさまな人種差別
そして、3分過ぎから出てくる男性。警備員が女性を追い出した後、店員が近づいて話しかけると・・・
「お客様はこんな経験なさった事がありますか?本当に信じられない!以前にもあったんです・・・」と訴える店員に、男性が発した言葉。
「おそらく、黒人だってことを盾にしてあんな演技してたんだろうね」と店員に同情的な顔をしてみせた男性。
しかし、店を出た男性に実験者が近づき、詳細を告げると・・・
「彼女が本当に気の毒だったよ。」
と言ってのけました。「女性の味方をしてあげるべきだったとは思いませんか?」と重ねて質問する実験者に対して男性は、「もし僕が彼女だったら、あなたは私の見方をしてくれたっていうんですか?」と突っぱねました。
1.泣き出す人
4分あたりから出てくる女性は、店員のあまりにひどい差別発言に憤りを抑える事が出来ません。彼女の反応にひるむ事なく差別発言を続ける店員の態度のひどさに、女性は泣き出してしまいました。
2.怒りをあらわにする人
次に入ってきた裕福な感じの家族連れのアフリカ系アメリカ人の男性。店員の態度をみてすぐに反応を示します。
「これは良くないよ。良くない。君は彼女にとんでもない恥をかかせてるんだぞ。」と矢継ぎ早に店員に詰め寄りますが、店員は平然と言い放ちます。「あなたは上流の方ですけど、彼女を見てください。わかるでしょ?私は店を守ろうとしているだけです。先週にもあったのよ。なにか盗まれたら私が自費で弁償しなければならないのよ。」。
「仕事をするなとは言ってるんじゃない。あなたは間違っている。正しいやり方がわからないなら、働くべきじゃない。」、「謝罪するべきだ。本当におかしい、ひどすぎる。」
男性は呆れ果てて、実験者の女性を促してお店を出て行ってしまいました。
店を出たところで実験者が近づき、実験について説明しますが怒りが抑えられない様子でした。
3.かばう人
そして、その後に出てくる二人の女性。ひどい扱いを受けているアフリカ系アメリカ人の女性に対して、「クレームを申し立てるべきよ」と話しかけますが、助け舟を出す女性の存在を無視して警備員は実験者の女性のボディチェックを始めます。
女性は、実験者の女性を促して一緒に店を出ます。彼女らに続いて、店員の態度にあきれかえった人々も店を次々と出ました。そして、外にいたテレビクルーに事の顛末を話し始めます。これが実験だったと知らされ、女性は笑顔になり、買い物を続けるためにお店にもどりました。
まとめ
この実験で100人の人がこのあからさまな差別を目撃しましたが、女性を助けようと声をあげた人は実に20人以下という結果に終わりました。今はツイッターというソーシャルメディアの力もあって、こういう不当な行為が行われたら、きっと、そのお店は大変なことになりそうですが、冒頭でもご紹介したように、2014年にも有名デパートが訴えられている事を思えば、こういう人種をベースにした先入観からくる差別はまだまだ根深い事がわかります。昔は、外国の人を見かけるという事はほとんどなかった日本でも、近年では海外からの渡航者が増え、様々な人種が行きかう国際的な都市へと姿を変えつつあります。
もしも、あなたがあからさまな人種差別を目撃したら、あなたは一歩前に踏み出して助けの手を差し伸べますか?それとも、関わり合いにはなりたくないと目をそらして通り過ぎますか?
(ちなみに、このお店、ソーホーに数ある衣料品店の中で、唯一実験に協力してくれたお店だそうです。実験をみていると、なんてひどい店だ!!と思ってしまいそうになりますが、実は、最も差別問題に対して高い意識を持つ、良心的なお店だったんですね。)