（眞澄）５分遅れたわよ。
５分。
「ただ今帰りました」って言うのよちゃんと。
（美輪子）ただ今帰りました。
（眞澄）６時まで自習よ。
（美輪子）多摩留。
（ぼたん）美輪ちゃん！？もしもし？ちょっと。
やめなさい。
私よ。
（多摩留）どうしたんだよ？昨日もかけたのに全然通じねえじゃんか。
悪いけどそっちからかけないでほしいの。
今ちょっとヤバいのよ。
（多摩留）何かあったのか？今度会ったとき詳しく話すけど。
用事があるときは私の方から電話するからね。
多摩留。
そんなのさみしいよ。
美輪ちゃん。
まるで皆既月食みたいじゃないか。
世の中真っ暗になっちゃうよ！相変わらずオーバーね。
じゃあ多摩留。
おとなしく私の電話を待っててね。
バイバイ。
美輪ちゃん。
どうして約束が守れないの？お母さんから言われたことをそんなにやすやすと無視していいと思ってるの？密告したいなら構わないわ。
どうぞ言い付けなさいよ。
あなたをいくらかばってあげたくても平気でそんなことをするんじゃ…。
かばってくれなくて結構よ。
どうせぼたんはお母さんの回し者。
スパイなんだし。
それが分かってるんならどうして目の前でそういう電話をするのよ？私に対する礼儀ってものがあるはずでしょう？まあ怖い。
これじゃ侮辱されたも同じよ！ぼたん。
私たち姉妹の信頼も何もあったものじゃない。
牡丹と薔薇の姉妹が泣くわよ。
だってかかってくるんだもの。
しかたがないじゃない。
出なきゃいいでしょう？そんな薄情なことはできないわ。
悪い人じゃないのに。
あら。
婚約指輪をはめて行くのね？綱輝さん。
喜ぶんじゃない？しっかりやるのね。
ぼたん。
たまには綱輝さんと愛し合ったらいいじゃない。
きっと彼が好きになって離れられなくなるわ。
この盛りのついた雌猫。
あなたとは違うわよ！ぼたん。
よくも言ったわね。
ぼたん。
許さない。
（泣き声）もっぱら実技でこれを直してごらんって先生が選んでくれたものを直しそれが終わるとまた次のって。
それは今私が通ってる工房でも同じやり方なんだけどうちの先生は日本古来の金継ぎって技法がメーンなの。
（綱輝）うんうん。
接着した箇所の金の継ぎ目をわざと目立たせて修復するのよ。
でもあちらのカレッジで教えてるのはちょっと見ただけでは欠損箇所が分からないように壊れる前の姿を可能なかぎり忠実に再現するって技法なの。
その技法を身に付けたいのよ私。
（綱輝）結婚したらすぐにでも留学すればいいよ。
僕がスポンサーになるから。
本当によろしいの？綱輝さん。
お式を挙げた途端に離れ離れになっても？１年や２年離れて暮らしてたってあっという間だろう。
仕事の合間に僕の方からイギリスへ遊びに行ってもいいし。
それも楽しいかもしれないわ。
日本の美術館の収蔵庫には素晴らしい骨董品なのに破損して展示できないものがたくさんあるのよ。
私将来はそういうものを修復して日の目を見させたいの。
ああ。
いいな。
それはいいな。
（世奈子）まあまあ。
今日は一段と話が弾んでるようで。
あなたたちどこから見ても申し分のないフィアンセ同士。
こっちまで胸が浮き浮きしてくるわ。
ワインがうまいです。
（世奈子）ホントに案ずるより産むがやすしね。
（世奈子）ごゆっくりね。
綱輝さん。
本当によろしいの？ウェストディーンカレッジに入学申込書を送っても本当にあなた大丈夫なの？もちろんだ。
あなたの熱意に何とか応えたい。
それくらいのことをしなくてどうするんだと思ってる。
ありがとうございます。
河岸を変えない？えっ？ママが歓待してくれるのはうれしいけど僕たちのデートがいつもママに見守られてるっていうのもね窮屈だから。
そうね。
じゃあ場所を変えましょうか？うん。
ごちそうさま。
（平野）デザート召し上がらないんですか？いらないわ。
（萌子）あら。
美輪ちゃん。
一人で晩ご飯さみしかったわね。
中途半端な時間に私が来ちゃったからごめんね。
お母さんもあまり食欲がないっていうし。
別に。
美輪子。
おばあちゃまが京陽堂のもなか持ってきてくれたのよ。
ぼたんが帰ってきたら一緒に頂きましょう。
じゃあ私これからお風呂。
（萌子）別に以前と変わったふうには見えないわね。
（萌子）清純そのものの女子高生に見えるのに。
それがくせものなのよ。
ああいう虫も殺さないような顔をして。
ホントに私今度ほどぞっとしたことなかったわ。
（萌子）あんたには過去のトラウマがあるからねぇ。
そう。
あのときちょうど美輪子と同じ１８歳だったし。
そう思うと震えが止まらなくって。
（萌子）親の因果が子に報うっていうから私が受けたショックを少しは分かったんじゃないの？あんたのときはいきなり臨月だったんだから。
（萌子）《ちょっと。
いきなりびっくりするじゃないの》《どういうことよ？》
（今朝義）《見れば分かるだろうが》《そのでっかい腹をよ》
（萌子）《まあ。
眞澄》
（今朝義）《てめえの娘はなもう立派にきずもんだわな》
（萌子）《えっ？》
（今朝義）《それどころかどこのどいつとも分からねえ男の子供を産むんだよ》
（萌子）《何ですって！？いくら何でも…》
（今朝義）《交通事故で死んじまったんだってよ相手は》
（萌子）《死んだ？えっ？死んだ？》
（今朝義）《哀れなもんだよ》《父親が死んじまっても腹だけはでかくなる》《産むしかねえな》《駄目よ駄目》《どうしておろさないのよ？すぐに。
ねえ。
すぐに》
（今朝義）《てめえの目は節穴か？臨月だぞ》
（ミサオ）《予定日が１月９日だって》
（萌子）《予定日が！？》
（ミサオ）《あと２週間したら生まれるんだ。
ねっ？眞澄》《どうしてこんなことになるまで黙ってたのよ？》《どうしてお母さんに言わないのよ？》
（眞澄）《だって。
だってお母さんは…》《だってじゃないでしょ！こんなことになったらにっちもさっちもいかないじゃないの》《高校生のくせに子供なんかつくって》《あんたの人生設計なんかめちゃくちゃじゃないの》《これからが青春だっていうのに。
そんなんでいいっていうの！？》本当にあのときほど腰が抜けるような思いをしたことはないわね。
思い出したくない。
私だって。
崑一さんには話してないんでしょ？あのことは。
ええ。
美輪ちゃんがあんたのときみたいに妊娠してなかったのが不幸中の幸いだけれども。
どこでどうしてるのかしらね。
あんたが産んだ子は。
ぼたんみたいに奇麗な娘に成長してるのかしら？
（綱輝）愛してるよ。
結婚をした後に別れが待っていると思うと余計にぼたんがいとしくて。
ええ。
私もうれしいの。
あなたの寛大なお気持ちが。
いいだろ？ねっ。
ぼたん。
何をなさるのよ！
（綱輝）えっ！？そういうことをされて私が喜ぶとでも思ってらっしゃるの？冗談じゃないわ。
そんな女じゃありません。
私は。
ひどいわ。
ひどいわ！それじゃあなたも並の男と変わらないじゃありませんか。
しかし僕たちはいずれ結婚するんだから何もそんなに…。
嫌なものは嫌なんです！本当に何てことをなさるのよ！
（綱輝）ちょっと待って。
ぼたん。
待って。
これタクシー代にして。
あらそう？悪いわね。
その代わりこの家のことあちこちでしゃべったりしないでよ？当たり前じゃないの。
そんなこと。
（萌子）じゃあね。
あら。
ぼたん。
おかえりなさい。
おかえりなさい。
（萌子）デートだったんですって？ええ。
まあ。
（萌子）じゃあ今度ゆっくり話聞かせてね。
（萌子）じゃあね。
気を付けてね。
（平野）お部屋の方にお持ちしときましょうか？結構よ。
ぼたん。
お茶でも飲まない？いいわ。
もう寝ます。
寝てるの？
（崑一）まだかね？あまり時間はないよ。
眞澄。
ねえ。
どうしても私行かなきゃいけないかしら？
（崑一）当たり前だろう？仲人だよ。
社員の結婚式に出るのに仲人夫婦が揃ってなくてどうするんだ？でも夜になるんでしょう？あんまり長い時間家を空けると…。
（崑一）大丈夫だよ。
美輪子を信用してやりなさい。
お前みたいに四六時中監視の目を光らしちゃあの子だって身の置きどころがなくなるだろう？でもねぇ…。
あまり神経過敏になっちゃ駄目だ。
ぼたんもいるんだしそっとしておきなさい。
そうね。
うん。
パパ。
いってらっしゃい。
お母さんもいってらっしゃい。
じゃあね。
ぼたん。
美輪子のことくれぐれもお願いね。
決して目を離さないでね。
ええ。
いってらっしゃい。
いってきます。
いってらっしゃーい！
（操作音）多摩留？私よ。
美輪ちゃん！？会いたいの。
今から行くわ。
お墓で待っててよ！駄目！何してるの！すぐ行くからね！やめなさい！
（操作音）行くわよ私。
駄目。
駄目！これだけあれば十分だわ。
借りるわねぼたん。
美輪ちゃん！待って！待ってよ！行かないで。
お願い。
行かないで！密告したきゃすればいいじゃない。
行っちゃ駄目！・
（ドアの閉まる音）美輪ちゃん…。
来てくれた。
やっぱり来てくれた！ああ！会いたかった。
多摩留！大丈夫だったか？すぐにまた携帯にかけたんだけど通じなくて。
取り上げられたのよ姉に。
でも平気。
こうして多摩留と会えたんだもの。
妨害されてんだろ？家族から。
親父のしつけ厳しいんだろ？たたかれなかったか？パパはいいのよ。
分かってても何も言わないの。
でもお母さんがひどいの。
お小遣いもゼロにされちゃって。
兵糧攻めか？一日中監視されて学校へ行く以外はどこへも出られなくて。
ああ。
夢みたいよ。
多摩留とこうして…。
こうして抱き合えるなんて。
こういうのって何だかスリルあるよな。
家じゅうの連中がみんな反対してるのに会いたい一心でさ。
お互い火の玉になって…。
ほら。
『ロミオとジュリエット』ってあるじゃん。
『ロミオとジュリエット』？俺たちの愛はそんなもんじゃねえのか？誰がどんなに邪魔立てしたって圧倒的に燃え上がって。
もう消せやしねえ。
愛なんだ。
俺たちって純粋に愛なんだ！愛？なあ？なあ？えっ？なあ？えっ？えっ？ここで？ここでするの？ここで？ほらほら。
体ん中で純粋なエキスが膨れ上がってんだよ。
もう悲しくてよ。
切ないよ俺は！嫌。
嫌よ。
こんなところじゃ嫌！何言ってんだよ？ロミオとジュリエットだって墓場でセックスしてんだぜ。
これほどうってつけの場所はねえんだよ。
嫌よ。
あっ。
やめて。
多摩留。
多摩留。
なっ？なっ？なっ？やめて…。
もしもし。
美輪子？えっ？美輪子じゃないの？私です。
あら。
ぼたん。
美輪子はどうしたのよ？あのう。
今下でシャワーを使って…。
あっそう。
７時ごろには帰りますからね。
あなたたち先に食事をしててちょうだい。
はい。
お母さん。
じゃあね。
（通話の切れる音）
（伊佐子）はい。
おまけで３００円。
（女性）いいの？
（伊佐子）毎度どうも。
（女性）悪いね。
（伊佐子）ありがとう。
はい。
お待たせしました！
（伊佐子）はい。
お待ち。
（男性）あっ。
ありがとう。
（男性）はい。
ありがとう。
（伊佐子）はい。
（伊佐子）よく来てくれたわね。
懲りずに。
はい。
（多摩留）食べねえのか？ええ。
どうしたんだよ？この前来たときはおいしいおいしいって芋天ぱくぱく食ったのに。
何だか私胸がいっぱいで。
（伊佐子）多摩留がねあんたのことが自慢であっちこっち携帯の写真見せ回ってるのよ。
「奇麗だろ？奇麗だろ？」って。
（杉彦）奇麗。
奇麗。
（伊佐子）杉彦も大好きなんだから。
あんたのこと。
（杉彦）奇麗よ。
奇麗よ。
（伊佐子）多摩留。
みんなで写真撮ってアメリカのお姉ちゃんに送ってやれば？
（多摩留）そうだそうだ。
写真撮ろう！親父も来いよ。
（峰靖）ああ。
俺が撮ってやろう。
（伊佐子）えっ？
（多摩留）そう？はい。
よしよしよしよし。
（峰靖）ほらほら。
並んで並んで。
（多摩留）並んで並んで。
ほら。
（伊佐子）はい。
はいはい。
（峰靖）ほら。
笑って。
（多摩留）笑って。
（峰靖）さあ撮るぞ。
（一同）はい。
チーズ。
（シャッター音）
（多摩留）親父も入れば？
（峰靖）ああ。
俺はいい。
（多摩留）美輪ちゃん。
２階行こうよ。
アメリカの姉ちゃんから来たメール見せてやっから。
私もうそろそろ。
駄目か？親がうるさいか？
（峰靖）多摩留。
送っていってやった方がいいんじゃないのか？いえ。
いいです。
結構です。
私一人で帰れますから。
（多摩留）バイクで送ってくよ？いい。
いい。
（多摩留）またな！決して親の反対に負けるんじゃないぞ。
最後は愛が勝つんだからな！・
（ブレーキ音）あっ。
（崑一）おいおいおいおい。
大丈夫か？ぼたん。
美輪子。
下りてらっしゃい。
（崑一）平野！帰ったぞ。
・
（ドアの開閉音）美輪ちゃん。
表にパパの車が止まってたから裏口から入ったの。
2015/12/15(火) 13:25〜13:55
関西テレビ１
新・牡丹と薔薇 ＃１２[字][デ]【サカリのついた牝猫ッ】
美輪子（逢沢りな）に親密な仲の恋人の存在を知る眞澄（伊藤かずえ）。自身の過去のトラウマが脳裏をよぎり、ぼたん（黛英里佳）に、厳しく美輪子を監視するよう命じるが…
詳細情報
番組内容
美輪子（逢沢りな）は、ぼたん（黛英里佳）の前で多摩留（戸塚純貴）に電話し、仲の良いところを見せつける。反抗的な妹にさすがのぼたんも怒りを募らせ、綱輝（片岡信和）に会いに出かける間際、冷やかす美輪子に『さかりのついた牝猫のようなあなたとは違う！』とまで言い放つ。
綱輝と甘いひとときを過ごすぼたん。
番組内容２
そんな彼女に上機嫌の綱輝は、いつも世奈子（田中美奈子）の店で会うだけでなく、ときにはどこか別の場所に行こうと誘う。二人は夜の公園で良い雰囲気になるものの、その後の綱輝の行動が、ぼたんの態度を一変させることに。
数日後、眞澄（伊藤かずえ）は崑一（岡田浩暉）とともに、どうしても出掛けなくてはいけない用事が出来る。両親の外出後、美輪子はぼたんが止めるのも聞かず、多摩留に会いに行ってしまう。
出演者
小日向ぼたん：黛英里佳
小日向美輪子：逢沢りな
牧原世奈子：田中美奈子
小日向崑一：岡田浩暉
浅黄萌子：山口いづみ
瀬尾綱輝：片岡信和
・
小日向眞澄：伊藤かずえ ほか
スタッフ
【企画】
横田誠（東海テレビ）
【原作・脚本】
中島丈博
【演出】
藤木靖之
【音楽】
中川幸太郎
【主題歌】
サラ・オレイン「涙のアリア」（ユニバーサルミュージック）
【プロデュース】
西本淳一（東海テレビ）
大久保直実（ビデオフォーカス）
坪ノ内俊也（ビデオフォーカス）
【制作著作】
ビデオフォーカス
【制作】
東海テレビ
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