アメリカ西海岸の都市サンフランシスコ。
地震が多い事で知られるこの街では毎日20回以上かすかな地震が観測されています。
(ネイ)ほとんどの人は気にも留めていませんが大地震は必ずまた来ます。
サンフランシスコは巨大地震のもととなる断層のすぐ近くに築かれた都市です。
サンフランシスコはどのように地震に備えているのでしょうか。
街を丸裸にして都市の内部構造を明らかにします。
そこには地震から都市を守る多くの独創的な技術がありました。
サンフランシスコとその周辺の人口はおよそ700万。
1906年と1989年の2度にわたり大地震に見舞われました。
(被災者1)「とても大きな揺れで何もかもが粉々に砕け散りました」。
2度の地震による死者は3,000人以上。
被害総額は60億ドルを超えました。
過去の教訓を踏まえサンフランシスコでは地震の被害を最小限に抑えるように努力してきました。
道路や橋を補強し建物の基礎を固め最新の交通システムを築き地震に耐えられる都市づくりをしてきたのです。
課題の一つは地震の際にも崩れる事のない高層ビルを建設する事です。
この街で最も高いビルは高さ260mのトランスアメリカ・ピラミッド。
外壁には窓ガラスおよそ4,000枚とコンクリートと砕いた石英が数千トン使われています。
この巨大なビルの中では常時1,500人が働いています。
地震の際ビル内の人々の安全はあらゆる手段で守られなければなりません。
ほんの数キロ先には巨大地震の発生源が横たわっているのです。
長さ1,000km以上にわたるサンアンドレアス断層です。
地質学者たちはこの断層の全容を正確に把握しようとしています。
これはサンアンドレアス断層の俯瞰図です。
この辺りがサンフランシスコです。
上空から普通に撮影しただけでは断層がどこにあるか全く見えませんよね。
調査隊の飛行機は地表を15cm単位で詳細にスキャンできる特殊な3Dレーザーを搭載しています。
この機器はレーザーを1秒間に10万回地表に向けて照射します。
建物や植物などに遮られる事なく地面の状態を捉える事ができるんです。
レーザーは地表を覆う木立や家などを透過して地形をあらわにします。
(ヒレー)通常の航空写真にレーザーが捉えた画像を重ね合わせてみましょう。
するとサンフランシスコのすぐ隣を走る巨大なサンアンドレアス断層の姿がはっきりと見えてきます。
サンアンドレアス断層は2つのプレートがぶつかる場所に出来た大地の深い裂け目です。
熱いマグマの上に浮かぶ2つのプレートは現在もゆっくりとこすれ合いずれ続けています。
(ヒレー)この辺りでは太平洋プレートと北米プレートが1年間におよそ35mmずつずれています。
(ヒレー)サンアンドレアス断層のある地点では毎年そのくらいずつ地面が動いています。
しかし中には地面の動きがほとんど止まっている場所もあるんです。
プレートは絶えず動いています。
そのため動きの止まった部分には大きな負荷がかかります。
岩をねじ曲げたり引っ張ったりする力が大きくなりすぎると岩盤がついには崩壊して連続的な衝撃波を放ちます。
それが地震です。
(ヒレー)サンフランシスコは大きな危険にさらされています。
街を動かせない以上最善の方法で備えるしかありません。
トランスアメリカ・ピラミッドはどのようにして地震に備えているのでしょうか。
地震を想定したシステムがビル内の至る所に取り込まれています。
ビル全体に地震監視装置を備え高さ260mのてっぺんに揺れを計測する機器を設置しています。
このビルは1989年の大地震を経験しています。
あの時ビルのてっぺんの揺れ幅は30cmにも達し揺れは1分以上も続きました。
しかし負傷者は出ませんでした。
その秘密はビルの設計技術にあります。
まずピラミッドのような形がビルの重心を低く保っています。
ガラスとコンクリートの外装の内側では張り巡らされた鋼の骨組みが48のフロアを支えています。
基礎部分には更に巨大な鋼の補強材が組み込まれています。
地下では3万tの鋼とコンクリートブロックがいかりの役割を果たしビルをしっかりと固定しています。
こうしてビルは1989年に起きたマグニチュード7.1の大地震の際にも被害を免れたのです。
現在のサンフランシスコにはアメリカ西海岸のどの都市よりも多くの高層ビルが建っています。
こうしたビルには大地震への備えが求められているのです。
今ここで地震が起きたらさすがに叫び声を上げるでしょうね。
しかしこのビルの安全性を信頼しているので大地震が来た時はビルの中にいたいと思います。
続いてこの街のシンボルでもある巨大な橋。
次なる課題は橋をどうやって地震から守るかです。
午前8時。
ラッシュアワーです。
何万台もの車が競うように橋を渡っていきます。
海岸線が入り組んだサンフランシスコでは2つの大きな橋が交通網の大動脈。
橋はこの街のライフラインです。
ゴールデンゲートブリッジは世界で最も有名な橋の一つでしょう。
水深100mの海峡に長さ1kmにわたって延びています。
激しい潮の流れに耐えるためにゴールデンゲートブリッジは優美な外観とは対照的に頑強な構造をしています。
橋を支える基礎は海底の硬い岩盤に20mも打ち込まれています。
15万tのコンクリートブロックが高さ250mの塔を支えています。
橋のたもとのコンクリートブロックも岩盤に深く打ち込まれています。
ブロックはつり橋のケーブルを引っ張り固定しています。
ケーブルに使われているワイヤーは全長13万km。
地球を3周する事ができる長さです。
75年以上前に完成したゴールデンゲートブリッジは大地震にも耐えてきました。
しかし次の大地震にも耐えられるのでしょうか。
20km東に位置する断層のひずみが限界に近づきいつ巨大地震に襲われてもおかしくない状況だと言われています。
これから向かう問題の箇所は142年間断層のずれを起こしていません。
ここでの地震発生の周期は平均で138年ですからいつでも大きな地震が発生しうる状況です。
今日起きてもおかしくありませんね。
街の周辺には断層の活動を監視するセンサーが設置されています。
(ビラム)これは「伸縮計」といって地震を伴わない断層のずれを計るものです。
道路の向こう側とつないだワイヤーがどれだけ伸びたかによって断層のずれやひずみが分かります。
一体どれくらいのひずみが蓄積されているのでしょうか。
(ビラム)今の値を測ってみると…63.78mm。
この1年でおよそ5mm動いた事になりますね。
ここ数千年間断層は1年に9mmずつずれてきましたが近年この場所ではその半分しか動いていなくて残りがひずみとしてたまっています。
深さ5,000mの地中で断層がのり付けされたように固まっています。
いずれその部分が崩壊する時がやって来るでしょう。
断層が固まっている箇所はサンフランシスコ市の中心部から数キロしか離れていません。
ここで地震が起きる事は確実ですがその時期は予測がつきません。
時間がたつほどひずみが大きくなるので心配ですね。
しかし備えがあれば被害を最小限に抑える事ができます。
サンフランシスコの人々にとって最も記憶に新しい大地震は1989年に起きたマグニチュード7.1の地震です。
市街地から南へ100km地下17kmの地点で突然断層が2mものずれを起こしました。
巨大な衝撃波は地表の岩石の層を引き裂き僅か数秒後にサンフランシスコの街に到達しました。
ゴールデンゲートブリッジは激しい揺れの中何とか持ちこたえました。
しかし近くのもう一つの橋サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジは大きな被害を受けました。
構造上の問題から衝撃を逃がす事ができなかったのです。
ボルトが外れ250tもの橋の一部が落下しました。
(被災者2)「2階部分が下に落ちてきました」。
(被災者3)「道路が陥没しています」。
1人が死亡。
橋は封鎖されました。
補修の末再び開通しましたが耐震性は十分ではありません。
橋の一部を架け替える大工事が始まりました。
数十億ドルを投じて橋を補強するのです。
バート・ネイはこのプロジェクトに関わる一人です。
(ネイ)ここから建設現場が見渡せます。
地震の研究が進むにつれて橋の補強方法は大きく変わりました。
新たに架ける橋は揺れに対する対策が従来の橋とは大きく異なります。
(ネイ)かつてはどんな揺れにもびくともしない強固な橋が理想とされてきました。
しかし今の考え方は全く逆です。
地震の際には衝撃に逆らわずしなやかに揺れる方がよいとされています。
ですからこの橋も地震が起きた際には揺れる構造になっています。
しなやかな揺れを実現するために新たな橋の構造は柔軟性を考慮した設計となっています。
最も長い橋桁は太い鋼のケーブルでつられ自由に揺れる構造になっています。
中央の塔は数本の独立した鋼の塔がそれぞれ動く設計です。
塔を連結する梁はたわむ事で衝撃を吸収します。
道路は28の部分に分かれそれぞれのつなぎ目にゆとりを持たせています。
更に道路の内側では空洞の鋼の梁が揺れのエネルギーを吸収します。
新しい橋は大地震の衝撃や揺れをうまく逃がす事で崩壊を免れる構造になっています。
(ネイ)この橋はサンフランシスコの街の大動脈です。
交通を妨げずに橋を架け替えるのはとても難しく私たちは何年も苦労してきました。
大プロジェクトはいよいよ大詰めを迎えています。
もうすぐ新しい道路の舗装が完成します。
橋を一時封鎖してその間に古い橋の要らなくなる部分を切り離すんです。
あそこが古い道路。
今新しい道路の路面を舗装しています。
こればかりは通行止めにしなければできません。
舗装を済ませ道路をつなぎ再び車を通すまでの工程をたった2日でやり遂げなくてはならないんです。
もし大地震が来るならその時は自分が手がけたこの橋の上にいたいです。
最新の技術を駆使した安全な橋はサンフランシスコの発展を支えてきました。
一方過去の大地震では街に住む人々が大きな被害を受けました。
住宅を守る事は高層ビルや橋を守る事と同じくらい難しい課題です。
サンフランシスコはアメリカ西海岸で最も人口密度の高い都市の一つです。
19世紀半ばのゴールドラッシュ以来住宅不足が常に問題となってきました。
その問題を解決すべく金融街の入り口ミッションベイ地区に新たに6,000戸の住宅が建てられようとしています。
ただし建設予定地には問題があります。
地盤が弱いのです。
今から150年前ここはサンフランシスコ湾の真ん中でした。
ミッションベイ地区は埋め立て地で岩や土がれきが混ざり合っています。
埋め立てた当時きちんと地盤を整える事をしなかったので正直言って住宅の建設用地としてはあまり適していません。
埋め立てられる前ここはアメリカ西海岸の重要な港でした。
その名残は今も湾岸地区の地中に眠っています。
フェリー乗り場の下を10mほど掘れば木製の帆船の残骸が出てくるでしょう。
ゴールドラッシュの時に押し寄せて打ち捨てられた船です。
現在の金融街の地下に何十という帆船ががれきと泥にまみれて眠っています。
サンフランシスコはそうした船の墓場の上に都市の繁栄を築き上げてきたのです。
サンフランシスコの地図です。
今いる場所はここ。
海際の灰色の部分は全て埋め立て地です。
1850年代から徐々に埋め立てが始まりました。
ここは一見普通の土地ですが埋め立てた土を5〜6m掘ると「ベイマッド」と呼ばれる軟らかい粘土の層が出てきます。
ベイマッドは水分を含む軟らかい泥です。
これがベイマッドのサンプル。
実際にこの場所を掘って採取したものです。
どんなに軟らかいかこうやって親指を差し込んでみると分かります。
この上に住宅を建てるなんて普通は考えられませんよね。
サンフランシスコ湾に面する広さ600に及ぶ埋め立て地にはオフィスビルや住宅が建ち並んでいます。
地表を見ただけでは分かりませんがその下にある軟らかな粘土の層が地震の際にこの土地に大きな被害をもたらす危険性があります。
地震の衝撃波に襲われるとゆるい地盤は液状化します。
建物は沈み極端な場合には崩壊します。
液状化現象は1989年の大地震の際にも起こり多くの住宅が被害を受けました。
大きな地震が発生した場合この辺りは激しい揺れに襲われるでしょう。
液状化現象が起きて地盤の強度が失われ埋め立て地に建っている建物の多くが深刻な被害を受けるでしょう。
このような土地では高層ビルに限らず2階建ての住宅も全て基礎の杭をしっかりとした岩盤に届くまで深く打ち込まなくてはなりません。
ミッションベイ地区の新たな住宅地は驚くべき技術で造られます。
鋼で出来た長い杭をがれきや泥の層を貫いて硬い岩盤のある80mの深さまで打ち込みます。
200本以上の杭を何本かずつまとめて打ち込みコンクリートをかぶせます。
それらをコンクリートの梁で連結し最後に板状の鉄筋コンクリートをかぶせます。
基礎を強固にする事で液状化による被害を防ぐのです。
使われる杭の長さは世界一の高層ビルを支える杭のおよそ2倍。
1本打ち込むのに1万5,000ドル以上かかります。
しかし都市の中心部に造られる新たな住宅地はそれ以上の利益をもたらすのです。
最新の基礎建設技術によって埋め立て地に暮らす人々の安全が守られようとしています。
次は都市のライフライン地下鉄とトンネルの安全をどのようにして守るかという問題です。
サンフランシスコはアメリカで最も坂の多い街です。
街の中心部だけでも43の丘があります。
近くのサンアンドレアス断層が数えきれないほどの衝突を繰り返した結果アコーディオンのような多くのシワが大地に刻まれました。
断層の活動がサンフランシスコに坂をもたらしたのです。
サンフランシスコの中心部には世界でも指折りの傾斜のきつい通りがあります。
地質学者のロジャー・ビラムがある通りの勾配を測ってみました。
この坂は特に急ですね。
急勾配でしかも距離が長い非常にきつい坂です。
勾配は31.4%。
100m進む間に30m以上上ります。
大変だ。
地元のサイクリングクラブの人たちがこの坂に挑戦します。
自転車は走りながら坂の勾配を計測できるようになっています。
(ビラム)スタートだ。
ツール・ド・フランスの難所である急な坂より3倍も勾配が大きい場所がありました。
下にいる人たちはリタイアしたのかな?いやまた上り始めたぞ。
上りきった感想はどう?自転車で上るような坂じゃないね。
坂の多い街で人や物資を運ぶのは大変です。
解決策として登場したのがケーブルカーでした。
ケーブルカーは最も傾斜の急な坂道も減速する事なく上りきる事ができます。
その秘密は道路の下に隠されています。
地下では鋼のケーブルが時速15kmの一定速度で動いています。
ケーブルカーは金具でこのケーブルをつかみ坂の上まで引き上げてもらうのです。
更に交差点にさしかかると…。
運転士は交差するケーブルにぶつかる前に金具をケーブルから外します。
そして交差点の先で再びケーブルをつかみます。
20世紀の初めには600台ものケーブルカーがサンフランシスコの坂道を上り下りしていました。
しかし1906年の巨大地震がケーブルカーの路線網を完全に破壊してしまいました。
現在のサンフランシスコでは丘を越えるよりもその下を掘り進む事に重点を置いています。
道路の渋滞緩和のために地下鉄を建設しているのです。
地震はトンネル建設の技術者たちにとっても頭の痛い問題です。
(ジョンソン)この岩は過去何度もの地震でズタズタにされ押し曲げられてきました。
トンネルを掘る際まずはそういった岩の状態を慎重に考慮する必要があります。
近い将来大きな地震が来る事も想定しなければなりません。
トンネルに必要なのはある程度の柔軟性です。
周囲の地盤が動いてもトンネルとして機能できるようにしなくてはなりません。
トンネルは一続きではなくいくつものセクションに分かれています。
掘った穴の表面にコンクリートとゴムで出来た覆いをします。
ゴムの弾力がトンネル全体に柔軟性を与え周辺の地盤が動いても衝撃を逃がす事ができる構造になっています。
建設中のこのトンネルは市の中心部チャイナタウンに向かう長さ2.5kmの路線です。
最大の難関はチャイナタウンの地下に駅を建設する作業です。
(ジョンソン)ここは人口が密集した人の流れの多い地区です。
工事の影響を最小限にとどめるために駅の建設作業はパズルのように複雑な段階を経なくてはなりません。
地下に駅を建設するにはまずトンネルの一部をコンクリートで満たします。
するとこの部分が硬い壁の役目を果たすためここを手がかりに空洞を更に広げていく事ができるのです。
壁の内側には鋼の網を張り巡らせその上にコンクリートを吹きつけて固めます。
最後にプラットホームを建設し線路を敷いて地下鉄の駅が完成します。
新しい地下鉄はサンフランシスコの交通渋滞の解消に役立つでしょう。
完成すれば毎日数万人の乗客が利用する見込みです。
そして大きな地震の際にも柔軟性のあるトンネルと駅が地下にいる人々の安全を守ります。
地震の際安全な場所はこうしたトンネルの中だと思いますよ。
地上の建物に比べて揺れが小さいからです。
1989年の大地震の際も私は地下にいましたが大きな電車が入ってきた程度の揺れでした。
ビルの40階では床が1.5mも横揺れしたのにね。
揺れの少ない地下の交通網は地震への備えになるでしょう。
しかし地震の恐ろしさは揺れだけではありません。
もう一つの脅威それは火事です。
大地震は都市のあらゆるものを揺さぶり混乱させます。
その直後に起こる事態は更に危険です。
最も警戒すべき事は壊れたガス管から発生する火事です。
フィル・スティーヴンズはサンフランシスコ消防局の地震対応責任者です。
1,400人の消防士と43台の消防車を指揮し地震発生後の猛烈な火災に対応できなくてはなりません。
地震対応チームは日頃から訓練を重ね最悪の事態に備えています。
あらゆる場面を想定し訓練は頻繁に行っています。
(隊員)コンクリート2階建て上の階で火災が発生。
ガス管の破損した箇所はすぐには見つかりません。
破損箇所を探している間にガスに引火して爆発や火災が起きるおそれがあります。
火災発生時消防士たちは数百万の水を必要とします。
しかしもともとサンフランシスコは水の乏しい土地でした。
周囲を海に囲まれていますが中心部を流れる大きな川はありません。
数少ない生活用水の供給源の一つがサンマテオ川です。
サンアンドレアス断層に沿うように流れています。
19世紀の後半生活用水を確保するために町はサンマテオ川にダムを建設しました。
小さな川は1,000億もの水をためられる巨大な貯水池に変貌しました。
クリスタルスプリングスダムは1888年の建設当時には世界最大のコンクリート製ダムでした。
地震への備えもあります。
ダム内部の壁は大きなコンクリートブロックがモザイクのようにかみ合わされています。
地震の際にはこれらのブロックが柔軟に動きダムの決壊を防ぎます。
優れた設計によりこのダムは120年以上たった今も使われています。
1906年の大地震の際にもダムはびくともしませんでした。
しかし40km離れた街までの水道管が地震で寸断されてしまいました。
消防士たちは窮地に立たされました。
(スティーヴンズ)過去の大地震では水道管やガス管など地下のインフラが破壊され消火活動が思うようにできないという事態が起きました。
1906年の地震では火災によって街の3分の2が焼失し20万人が家を失いました。
死者3,000人以上というサンフランシスコ史上最悪の災害です。
消防士たちにはなすすべがなかったのです。
地震は揺れたあとの火災が何より恐ろしいんです。
過去の大地震からサンフランシスコの街は重要な教訓を得ました。
現在は消火活動専用の水供給システムが構築されています。
システムの起点は市内で最も海抜の高いツインピークス。
そこに消火活動専用の巨大な貯水池を建設しました。
貯水槽は地震に耐える構造になっています。
丘の地中深くに設置された貯水槽は内側が厚さ20cmの鉄筋コンクリートの板で補強されています。
板のつなぎ目には遊びがあり貯水槽全体のゆがみを吸収するので割れる心配はありません。
ここには4,000万以上の水をためる事ができます。
重力によって水は丘を下り市内の地中に埋められた消火水道パイプへと流れ込みます。
パイプ網は市内1,500か所の消火栓につながり毎分7万の水を供給します。
水が出るぞ。
準備。
次に大きな地震が起きた時はどこで火事が起きようと必要な時に必要なだけの水が得られます。
サンフランシスコの街は他に類を見ない消火活動専用の水供給システムを完成させました。
長さ240kmに及ぶ水道のネットワークが市内の1,500の消火栓を常に使える状態にしています。
サンフランシスコの街は地震の被害を最小限にするために可能な限りの対策をとっています。
しかし最後に難問が残っています。
それは次の大地震を予知できるのかという問題です。
サンフランシスコの南300kmにあるパークフィールドの町です。
パークフィールドはサンアンドレアス断層のそばに位置し最も地震が頻発している場所です。
住民は18人しかいません。
ここに足しげく通うのは地質学者たち。
アンディ・スナイダーもその一人です。
ここには世界最大の地震監視ネットワークがあります。
多くの科学者がここで地震の予兆をつかもうとしています。
地震の多いパークフィールドは実験に最適な場所なのです。
サンアンドレアス断層の深さおよそ3kmの場所に特徴的な区域があります。
サッカー場ほどの大きさですがそこではマグニチュード1程度の微小な地震が繰り返し発生しているんです。
科学者たちはその区域を集中的に調査しています。
地表から断層の中心部を目がけて長さ3kmほどの穴を掘りこの穴に調査機器を入れて目的の場所に近づけます。
地球物理学の調査班は超高感度マイクで断層内の音を調べようとしています。
よし。
これまで25台のマイクを中に入れましたが多くは失敗に終わりました。
穴の底の温度は120℃と高温ですからね。
機器には目張りをしっかりして穴の底に達したあと水が入ったり腐食したりしないようにしなくてはなりません。
慎重にゆっくりと操作するんだ。
そこに機器を置いて。
(作業員)今だ!下ろして。
調査班は高感度マイクを地表から1km下まで下ろします。
所定の位置でアームを操作して穴の壁にマイクを固定します。
するとマイクが地殻内部のかすかな音を捉え始めます。
科学者たちが探しているのは地震発生直前に聞こえる特徴的な音のパターンです。
マイクは断層内で岩が動くうなりのような音を捉えました。
(コルネーエフ)これが今日収集した音のデータです。
断層の内部で発生している音を波形で表しています。
美しい音だ。
かすかな地震の際に出る音です。
こうした小さな地震の研究は大地震の予知にも役立つはずです。
将来的には地震の警報システムに欠かせないデータを提供できるかもしれません。
現在さまざまな地震観測機器がサンアンドレアス断層の周辺に設置されています。
地震を予知する事はできなくても早期に探知する事は可能になってきました。
地震の波よりも速い光や電子信号を利用すれば地震が都市に到達する前に発電所やガソリンスタンドなどの操業を止めさせる事ができるかもしれません。
研究はまだ途上です。
サンフランシスコの人々は大地震がいつ来てもおかしくない事を心にとどめて過ごすしかありません。
地震と隣り合わせの都市サンフランシスコ。
この街は都市の内部に革新的な技術を蓄え橋の安全を守り住宅の基盤を支えしなやかで強じんな高層ビルを築いてきました。
街の発展と輝きを守るためにはこれからも地震への最大限の備えが必要となるでしょう。
2015/12/15(火) 14:05〜14:50
NHK総合1・神戸
地球ドラマチック選「サンフランシスコ 地震に強い街の秘密」[二][字]
20世紀に2度の大地震に見舞われた米・サンフランシスコ。最新CGで地下の構造や建造物の内部を映像化すると、地震の被害を最小限に抑える様々な工夫が立ち現れる!
詳細情報
番組内容
都市は、どのように地震に備えればいいのか。巨大地震を起こしかねない断層が近くにある米国サンフランシスコ。過去2度の大地震による死者は3000人を超える。建造物にはさまざまな工夫が施され、橋は揺れを逃がす構造に。液状化の被害を防ぐため、住宅の基礎工事では杭を地下80mもの深さに打つ。火災発生時には、丘の上の巨大な貯水池から1500の消火栓に重力で水を送る仕組みとなっている。(イギリス2012年)
出演者
【語り】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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