本当に一度もか!?ああ。
あれは全部嘘だったって事か!?そうだよ!ふざけるなー!離せよ!私たちがどんな気持ちであれを読んでたかわかるか?わかるかー!
(パトカーのサイレン)
(八十田刑事)どうですか?
(鑑識係)難しいかもしれませんね。
(八十田)昨日の雨でゲソ痕は取れそうにありません。
(宗像刑事)血もかなり流されてるな。
指紋は出ないでしょうね。
(チャイム)
(中井美佐子)「はい」横浜本牧署の者です。
(美佐子)「お待ちください」
(ドアの開く音)中井光一さんですね?
(中井光一)はい。
黒川圭太さん殺害容疑で逮捕状が出ています。
ご同行願います。
はい行こう。
(光一)説明してください!なんの事ですか!?
(美佐子)何かの間違いですから。
(光一)ちゃんと説明してください!
(宗像)開けてくれ早く!
(美佐子)あなた!ちょっと刑事さん!あなた!ちゃんと調べてよ。
あなた!
(本多和美)先生。
いつものこれです。
おっサンキュー。
嬉しいね。
お疲れみたいですね。
ちょっと仕事入れすぎじゃないですか?ん?あれどうしたの?いつもの本多さんじゃないね。
稼げ稼げって言わないの?先生のお体を心配して言ってるんです。
あ〜もう。
それに引きかえこの能天気!
(和美)はみ出してる!先生のとこまで。
もう!何研修してんだか。
(伊丹織枝)先生今度受けた国選私が代わりましょうか?
(和美)それいい!せっかく織枝先生にピンチヒッターに来てもらってるんですから代わってもらいましょうよ。
いや代わってもらいたいのはやまやまだけどね…。
私じゃまだまだ経験不足ですか?いやそういう意味じゃないけどさ。
顔がそう言ってます。
(和美)お言葉ですけどね伊丹先生あそこの能天気弁護士に比べたら織枝先生の方がはるかに優秀だと思いますけど。
今回だってあちらの事務所にお願いして来て頂くの大変だったんですよ!いやわかってますわかってます。
織枝先生がバリバリ仕事して私よりうんと稼いでるのはよく知ってます。
ウフフ…。
それ皮肉?いや真面目な話。
でもねちょっと気になるんだよねこの事件。
そうだね。
織枝先生にも手伝ってもらいますか。
それがいいです。
はい!お父様。
コラッ!弁護士の伊丹です。
中井です。
お世話になります。
まず警察でも検察でも一貫して無罪を主張していますね。
それに間違いはありませんか?はい。
私は殺しておりません。
娘さんが巻き込まれてしまった4年前の事件についてお聞きしてもいいですか?綾さんは当時高校3年生で念願だった音大に合格したばかりだったそうですね。
プロのピアニストを目指して。
ピアニストになる夢はもともと女房の夢だったんです。
ですから合格した時には家中で…。
(ピアノ)
(中井涼)じゃーん!
(中井舜)じゃーん!
(中井綾)わーっ!えっ?
(綾)なんでケーキなの?誕生日じゃないのに。
いいじゃないのおめでたいんだから。
ろうそくまで…いらないのに。
いいから早く吹き消して!行ってきなさい。
ちょちょっと何やってんのよ!
(舜・涼)合格おめでとう!
(クラッカーの音)もう!
(光一)綾!
(綾)ダメだよ!綾お父さんとお母さんから。
えっ開けていい?
(光一)うん。
えーっすごい!素敵なバッグだ!ありがとう!合格おめでとう!
(舜・涼)おめでとう!
(一同の笑い声)
(光一の声)その次の日でした。
事件が起こったのは…。
高校の同級生にお祝いしてもらった帰りでいつもなら夜遅い時は駅まで私が迎えにいくんですがその日はまた女房と祝杯だと言って飲んでしまって…。
ああっ!助けて…。
翌日急性硬膜下血腫で亡くなったわけですね。
亡くなったんじゃありません。
あいつらに殺されたんです!…すいません。
いえ…。
2人は5日後に捕まったんですね。
佐山琢磨黒川圭太強盗致死で逮捕する!運転していたのが佐山琢磨当時20歳。
後ろに乗って綾さんのバッグをひったくったのが黒川圭太当時17歳。
佐山の方は強盗致死罪で無期懲役に。
黒川の方は10年以上15年以下の不定期刑。
実際には仮釈放が認められて黒川はたったの4年で出てきてます。
どうしてですか?それは少年法というのが…。
少年法の意味や目的は何度も聞いてます。
自分でも調べました。
ですけど全く納得が出来ません。
どこが納得出来ないんですか?犯行当時17歳の少年だったからといって綾を殺した犯人がたったの4年で刑務所から出てきてもいいもんなんでしょうか?
(光一)綾を殺した犯人ですよ?そんな男がたったの4年で…。
そんな事…そんな事あっていいんでしょうか!?綾だけじゃない。
あいつら私たち家族も殺したんです。
ただいま。
母さんは?
(若月検察官)「被告人中井光一は黒川圭太さんに復讐する事を計画し黒川さんを殺害する目的で平成23年11月1日午後10時半頃横浜市西区の平沢公園へ誘い出し突き倒した黒川さんの頭にこぶし3個分ほどの大きさの石を数回振り下ろし急性硬膜下血腫により死に至らしめたものです」「罪名及び罰条殺人。
刑法第199条」
(三田村裁判長)これから今検察官が読み上げた事実について審議しますけど被告人には黙秘権があります。
被告人は答えたくなければ答えなくてもいいのです。
(三田村)ただしここで言う事は不利な事も有利な事も証拠として採用されますので気をつけてください。
はい。
(三田村)被告人は今検察官が読み上げた起訴状の事実に対し何か言う事はありますか?綾を殺した黒川の事は殺してやりたいぐらい憎んでおりました。
ですけど私は殺しておりません。
(三田村)被告人は起訴状の罪状を認めないという事ですね?認めません。
(三田村)弁護人は意見がありますか?はい。
弁護人も中井さんの無罪を主張します。
このジャケットは誰のものですか?証拠として押収した被告人のジャケットです。
(宗像)洗濯されているためよーく見ないとわかりませんが数か所に血痕の跡がある事がわかります。
誰の血が付着したものですか?DNA鑑定の結果殺された黒川さんのものと断定されました。
(宗像)被告人が黒川さんを殺害した時に付着したものと思われます。
(宗像)これは被告人の靴です。
靴底の溝に詰まっていた土を分析した結果黒川さんが殺害された現場の土と同一のものという事がわかりました。
(宗像)全く同じ土が被告人の自宅玄関からも採取されています。
(若月)警察としてはその事をどう考えましたか?
(宗像)被告人が黒川さんの殺害現場にいた事は間違いないと考えました。
(若月)以上です。
中井さんの靴底から採取された土ですがこれは殺害現場の土と断定出来るんでしょうか?ええ出来ます。
この土はこの公園を造成する際に業者が土壌改良のために入れた特別な土だからです。
確かに特別な土かもしれませんが殺害現場だけにしかない土とまでは言い切れませんよね?それはまあ…。
中井さんはどこか別の場所で全く同じ種類の土を踏んでいたという事もあり得るわけですよね?ないとは言えませんがその可能性は…。
質問を終わります。
(三田村)宣誓書を声を出して読んでください。
「宣誓良心に従って真実を述べ何事も隠さず偽りを述べない事を誓います」「中井美佐子」証人は嘘偽りを述べますと偽証罪で処罰される事がありますので本当の事を喋るようにしてください。
はい。
中井さんの奥さんに伺います。
あなたは事件が起こった夜ご主人が黒川圭太さんに会いに行った事を知っていましたか?知っていました。
ご主人はどうして黒川さんに会いに行ったんですか?次の日が綾の命日だったんです。
私たち家族と主人の弟とそれと幼なじみで綾とお付き合いしていた遠藤君とお墓参りに行くつもりでした。
そのお墓参りに黒川にも一緒に行ってほしくて主人は頼みに行ったんです。
頼みに行ってどうなりましたか?断られて帰ってきました。
それは何時頃ですか?9時半過ぎていました。
でも10時前です。
つまりご主人は黒川さんが殺害されたという10時半頃には確実にうちにいたわけですね?はいおりました。
中井さんのこのジャケットを洗濯したのはどなたですか?私です。
洗濯した時血が付いていた事を覚えていますか?覚えています。
このジャケットにどうして血が付いたかも覚えていますか?主人が黒川を殴ってしまって黒川が鼻血を出したんです。
その時の血です。
ご主人が黒川さんを殴ったというのはいつの事ですか?黒川が殺された1か月くらい前です。
正確な日付を覚えていますか?確か10月…3日です。
(若月)10月3日被告人が黒川さんを殴ったという事ですがなぜそのような事が起こったんですか?殴るにはきっかけというか理由があったわけですよね?私もあの場にいましたから主人が黒川を殴りつけた気持ちはよくわかります。
私だって殴ってやりたかった。
それぐらい黒川の態度はひどかったんです。
ですからその理由を聞いて…。
話します!少年刑務所に服役していた黒川から毎月のように手紙が届くようになっていたんです。
(美佐子の声)最初の頃は私も主人も読む気にはなれませんでした。
(美佐子の声)ですけど毎月届く手紙に私たちの気持ちも少しずつほぐれていきました。
(美佐子の声)黒川の手紙は意外にも誠実な謝罪の言葉でつづられていたんです。
1年が過ぎた頃には主人は黒川と文通をするようになっていました。
主人も私も黒川の手紙を読むたびに本当に心から反省しているって思うようになりました。
(美佐子)ある時黒川が書いてきたんです。
もしも仮釈放がかなうような日がきたら真っ先に綾のお墓参りに行って謝罪をしたいって。
(美佐子の声)それを読んだ私たちはいつの間にか黒川が仮釈放される日を楽しみにするようになっていました。
とうとう仮釈放が認められて黒川が働き出したと聞いた私たちはいてもたってもいられなくなって黒川の職場を訪ねたんです。
だけど黒川が真っ先に吐いた言葉は…。
(黒川圭太)何しに来たんだよ?手紙であれだけ謝罪して反省したんだからもういいだろ?4年もムショに入れられたんだぞ。
もう十分すぎるぐらい罪は償ったよ。
待ちなさい!なんだよ?綾の墓参りには行ってくれるんだろ?勘弁してくれよ。
だって手紙には行きたいって…。
行くわけねえだろ!今なんて言った?だからそんなもん行くわけねえだろっつったんだよ。
そんなもんとはなんだ!
(美佐子)お父さん!
(光一)おい!
(黒川)なんだよ!あの手紙はなんだったんだ!?離せよ!お父さん…。
なんだったんだ!?答えろ!!やめてお父さん…。
綾に謝れ!
(美佐子)やめてやめて…。
なんだよ?遠藤君もやめて…!仮釈放中じゃなかったらてめえ半殺しにしてんぞコラ。
(若月)その時被告人の中に黒川さんに対する殺意が芽生えたんじゃないですか?その時の事が引き金となって今回の事件を起こしてしまったんじゃないですか?異議あり。
検察官は証人に意見を押しつけています。
殺意が芽生えて当然じゃないですか?
(美佐子)手紙であれだけ期待させておいて私たちは裏切られたんです。
あの時の失望感は綾を失った時と同じでした。
娘を無残な形で殺されて殺した男が反省してくれたかと思ったらあっけなく裏切られてその上悪態までつかれたんです。
それで殺意が芽生えたっておかしくないでしょ?
(若月)あなたは被告人の殺意を認めるんですね?あっ聞いてください!確かにあの時主人の中に殺意が芽生えたかもしれません。
だけど主人はそこでその気持ちを必死に抑えたんです。
だから黒川を殺したりしなかったんじゃないですか?確かに一度は殴りましたけどでもその気持ちをそこで抑えたんです。
(美佐子)殺意が芽生える事と実際に殺してしまう事は別です。
今度の事件だって主人はやってません。
絶対に殺したりしてません!綾が殺された時…私だって出来る事なら黒川をこの手で殺してやりたい気持ちでいっぱいでした。
だけど…!私も主人も…そんな事は致しません。
証人の目から見ても黒川さんを殴った時の被告人は相当興奮していたわけですね?言い換えれば殺意を感じるぐらい興奮していた。
(遠藤祐介)そこまではわかりません。
ですけど中井さんが手を出していなかったら僕が手を出していたかもしれません。
そのくらいあの男の態度はひどかったんです!
(若月)つまり証人もその時被告人と同じ気持ちになっていたわけですか?まあ…そうだったと思います。
(若月)やはりあなたも黒川さんの事を殺してやりたいと思ったわけですか?異議あり。
検察官は証人に意見を押しつけています。
娘さんが殺されて心に大きな穴が開いて家族がバラバラになって…。
黒川の手紙にすがりつく事で自分たちの気持ちになんとか決着をつけようとしたのはよくわかるわ。
でも殺意が芽生えて当然じゃないかって言った奥さんの証言…あれはまずかったわね。
うん…。
裁判員はあの証言にかなり反応してたわ。
先生。
明日なんとしても巻き返さないとダメよ。
生意気言って…。
(三田村)検察官に記憶を喚起するための書面の提示を許可します。
尋問を続けてください。
事件が起こった夜被告人がお宅に戻ってきた時刻を教えてください。
昨日も言いましたけど…。
もう一度正確な時刻を教えてください。
9時半過ぎです。
10時には間違いなく家にいました。
(若月)その夜横浜周辺では一時的に激しい雨が降っています。
被告人はどのくらい濡れて帰ってきましたか?ちょっと濡れた程度ですか?それとも滴が滴り落ちるぐらいびしょびしょでしたか?滴が…滴るほどは濡れていませんでした。
(若月)でもかなり濡れていたわけですね?はい。
(若月)モニターを見てください。
これは事件が起こった11月1日の午後10時半の横浜周辺の雨雲の状況です。
ご覧のように10時半の時点で激しい雨が降っていた事がわかります。
これも同じ夜の横浜周辺の雨雲の状況ですがまだ雨雲がかかっていないので雨が降っていない事がわかります。
これがちょうど午後10時の…10時の雨雲の状況なんです。
(若月)証人は先ほど被告人はかなり濡れて帰ってきたと証言しました。
その証言が正しければ9時半過ぎに帰ってきたという証言とは明らかに矛盾します。
(若月)本当はもっと遅い時間に帰ってきたんじゃないんですか?11時とかそのぐらいに帰ってきたんじゃないんですか?どうなんですか。
本当の事を言いなさい!異議あり。
検察官の尋問は極めて威嚇的です。
(三田村)異議を認めます。
しかし今の検察官の質問は極めて重要です。
証人は質問に答えてください。
(三田村)答えられませんか?すみません…。
嘘をついてました。
主人が帰ってきたのは…11時過ぎです。
(若月)その時被告人が着ていたジャケットには血痕が付いていたんじゃないですか?付いていました。
(若月)それをすぐに洗ってくれと頼まれたんじゃないですか?頼まれました。
(若月)帰ってきた時刻も9時半にしてくれと被告人に頼まれたんじゃ…。
(美佐子)そうです。
嘘だ…!どうしてそんな事を言うんだ!
(三田村)被告人は静粛にしなさい!裁判長。
改めて主尋問の許可をお願いします。
さっき証言した事が本当の事です。
でしたらどうして昨日はああいう証言をしたんですか?主人をかばいたかったからです。
あんな男のために主人が逮捕されて裁判にかけられるなんて…許せませんでした。
だけど…ずっと迷ってたんです。
このまま嘘の証言をして主人をかばってしまったら自分たちも黒川と同じになってしまう…。
心から罪を認めて償わなければ…黒川と全く同じですから。
裁判長。
明日以降の公判の延期をお願い出来ないでしょうか。
検察官は何か意見がありますか?しかるべく。
(三田村)では次回の公判は改めて日時を決めたいと思います。
これにて閉廷とします。
(光一)どうして美佐子があんな証言をしたのか私には全くわかりません。
私は黒川を殺したりしていません!
(チャイム)
(美佐子)「はい」弁護士の伊丹です。
(美佐子)「お待ちください」
(美佐子)おかえりなさい。
今のお子さんが…。
長男の涼です。
どうぞ。
お墓はつくったんですけどまだ納骨してないんです。
だってかわいそうでしょ。
独りぼっちであんな暗くて冷たいところに…。
私が一緒に入ってやれるまではここで一緒に暮らします。
娘さんなんですって?アシスタントの弁護士さん。
ええ。
いいですねお仕事の時まで一緒で。
いやもう生意気で困ってます。
娘なんかと一緒にやるもんじゃありません。
本気でそうおっしゃってるんですか?一緒にいられるだけで十分じゃないですか…。
(美佐子)主人が罪を認めたくない気持ち私には痛いほどわかります。
悔しいんです。
あいつらが軽い気持ちでひったくりなんかしなかったら綾は死なずに済んだんです。
主人だってこんな目に遭わずに済んだんです。
それを考えると…悔しくて仕方がないんです。
どうか主人が情状酌量して頂けるように先生のお力でなんとか…。
今の状況では難しいですね。
どうしてですか?ご主人が本当に黒川さんを殺害したのだとしたら今のように全面否認していては反省していないとみなされてしまいます。
となると情状酌量は…。
なんだまだいたのか。
あっおかえりなさい。
似たような判例探してたんだけどなかなかいいのがなくて。
でもこれ調べたらもう今日はやめる。
そしたら一緒に帰ろう。
(美佐子の声)いいですねお仕事の時まで一緒で。
一緒にいられるだけで十分じゃないですか…。
どうしたの?織枝も随分大人になったなと思って。
やだそんなの当たり前でしょ。
何言ってんの…。
(中井拓次)俺が聞いてたのは兄貴からも義姉さんからも黒川を殺したりはしていないっていう事だけで…。
じゃあお義姉さんの証言は寝耳に水だったわけですか。
ええ…。
あなたの知っているお兄さんはどういう人ですか?はい?つまり自分が罪を犯したのにそれを認めないような人ですか?いいえ。
そんな人間じゃありません。
ですけど兄貴が黒川を殺したくなる気持ちはわかるんですよ。
痛いほどわかります…。
あなたも綾さんをかわいがっていたんですか?はい。
綾が小さい頃からよくあずかっていました。
はーいカレーお待たせしました。
ハンバーグとドリアお待たせしました。
はいハンバーグお待たせ!綾ちゃんお願い!はい!
(拓次の声)兄貴のところも共働きだったんで…。
女房は5年前に亡くなったんですけど子供が出来なかったんです。
だから綾は自分たちの子供同然で…。
そうだったんですか…。
なんで綾が…。
(ドアの開く音)
(舜)おじさんなんか食わせて!もう死にそう…。
(拓次)来たなハイエナども。
こんにちは。
確か君は…。
遠藤です。
こいつは舜たちのサッカー部のコーチをやってるんですよ。
合宿所が近いんで腹が減ると抜け出してきて…。
こいつが中井舜です。
お前の親父の弁護士さんだ。
あいさつしろ。
父がお世話になってます!お父さんの事が心配だろう…。
そりゃあ心配ですけど…。
腹は減るわけで…。
そうか。
そりゃそうだ。
いつものでいいんだろ?お願いします。
おい皿洗い行くぞ。
(2人)はい!舜君ちょっといいかな?はい。
君は事件が起こった晩合宿所にいたのかな?いえ。
次の日姉貴の墓参りに行く事になってたんでその晩は家に帰ったんです。
帰ったのは何時頃?11時頃…だったと思います。
随分遅いんだね。
遠藤コーチのところに寄ってて。
2人でサッカーのDVD見てたら夢中になっちゃいまして。
(拓次)先生!先生もよかったらどうですか?せっかくですけど私はこれで失礼します。
すいません突然押しかけて。
伊丹先生。
あっ…いえ。
朝早くからすみません。
いいえ。
どうぞ。
昨日…私に何か言いかけましたよね。
その事を話しにいらしたんじゃないんですか?先生。
このメール読んでみてください。
弁21号証を示します。
まずそれを見てください。
「今晩中に誰にも気づかれないように黒川が殺された公園の土を採って来て」このメールは誰が打ったものですか?このメールはあなたが中井拓次さんに送ったものじゃないんですか?違います。
送信者は間違いなくあなたでしたよ?そんなメール送った覚えありません。
このメールが中井拓次さんに届いたのは黒川さんが殺された翌日の夜です。
あなたは黒川さんが公園で殺害された事をニュースで知りその公園の土を拓次さんに取ってくるように指示したんじゃないんですか?なぜあなたがそんな事を指示したか…。
ご主人である中井光一さんに罪を着せるためです。
そんなメール送った覚えがありません。
(拓次)間違いありません。
義姉さんから送られてきたメールです。
義姉さんというのは中井美佐子さんの事ですね。
そうです。
あなたはこのメールをもらってどうしましたか?公園に土を取りにいきました。
その土はどうしました?夜中のうちに義姉さんの家の郵便受けに入れておきました。
その土はどのように使われたんですか?それは聞いてません。
でも想像ついたんじゃないんですか?大体は…。
恐らく美佐子さんはその土をご主人の靴底に付けさらには玄関にまいたんです。
あなたはそうする事は想像ついたのにどうしてメールをもらっただけで言うとおりにしたんですか?あなたは美佐子さんの言う事ならなんでも聞くんですか?そういう関係があなたと美佐子さんの間にはあるという事ですか?はっきり言えば義理の姉である美佐子さんと男女の関係にあるんじゃないんですか?否定しないんですね。
男女の関係にある事を認めるんですね?認めます。
裁判長。
中井美佐子さんの再主尋問をお願いします。
中井拓次さんは男女の関係にある事を認めました。
あなたも認めますか?認めます。
あなた方は協力してご主人である中井光一さんを陥れようとした。
つまり中井光一さんは黒川さんを殺してなどいない。
そうなんですね?そうです。
(若月)あなたは本当に中井拓次さんと協力して被告人を陥れたんですか?そうです。
(若月)被告人が事件当夜午後11時過ぎに帰宅したという証言もその時ジャケットに血痕が付いていたという証言も全て嘘だというんですか?弁護士さんにさっきそうだって言いました。
何度も同じ事聞かないでください!でしたらなぜそこまでして被告人を陥れようとしたんですか?主人とこれ以上一緒にいたくなかったからです。
別れたかったからです。
(若月)どうして別れたかったんですか?そんな事どうだっていいでしょ!?あなたが本当に被告人を陥れたのだとしたらその動機が重要なんです。
この人と一緒にいると亡くなった綾の事が忘れられないんです。
そこから一歩も前に進めないんです!だけど…拓次さんは違いました。
一緒にいると綾の事を忘れられるんです。
心が穏やかになれるんです…。
綾を失ってから拓次さんにどれだけ心を支えられたか…。
今は拓次さんともう一度人生をやり直す…。
その事しか考えていません。
(三田村)裁判員の方々には申し訳ありませんが再度公判の予定を変更したいと思います。
検察官その方がいいですね。
はい。
補充捜査の時間を頂きたいと思います。
(三田村)弁護人はいかがですか?しかるべく。
参ったなあ…。
参ったわねえ…。
あの奥さんがご主人に罪を着せてたなんてね…。
慣れてるとはいえ人の嫌な部分を見るっていうのはやっぱりいい気しないね…。
最近夢とか希望とか全然持てないもん。
これって職業病かな?それで結婚しないのか?そういうわけじゃないけど。
いないのか?秘密!いないわよ。
情けないなぁ!もうしばらくお父さんのそばにいてあげるわよ。
へへへ…。
生意気言って。
おじさーん!2本つけて。
はいよ!おいおい…。
おでんもいい?はいよ!じゃあお父さんは野菜不足だから…大根と昆布!はいどうぞ。
(美佐子)これを主人に渡してください。
ちょっと待ってください。
預かるわけにはいきません。
いきなりこんなものを突き付けるんじゃなくてまずは一度ご主人と話し合って…。
私の気持ちは変わりませんから。
預かる前にもう一度あなたの気持ちを聞かせてください。
本当にもうあなたの気持ちはご主人にはないんですか?ありません。
だからといってどうして裁判でご主人に罪を着せようなんてしたんですか?普通に話し合う事は出来なかったんですか?あなただって偽証罪に問われるんですよ?普通に話し合って別れてくれると思いませんでした。
相手が拓次さんならなおさらです。
話してみなきゃわからないでしょう?今からでも遅くないんじゃないですか?よろしくお願いします。
奥さんからこれを預かってきました。
あとでサインしておきますからお手数ですけど美佐子に渡してもらえますか?中井さん…あなたもですか。
どうして2人ともせめて話し合ってみようとは思わないんですか?20年以上連れ添った夫婦でしょ?簡単にサインしていいんですか?女房の証言を聞いてあいつの気持ちはわかりましたから。
わかりましたからって…。
そんな簡単に納得していいんですか?涼君と舜君2人のお子さんだっているじゃないですか。
中井さん!もういいんです。
何がいいんですか!
(舜)こんにちは!あれ〜?臨時休業みたいだね。
腹ぺこで死にそうなのに〜。
(舜)いただきまーす!お母さんから聞いてるかな?離婚の事ですか?うん…。
多分そうなるからってこの前聞きました。
舜君はどうなのかな?お母さんとお父さんがそういう事になって。
しょうがないんじゃないですか。
随分あっさり言うんだね。
親父無罪になりますよね?確かこの辺りです。
間違いないですか?はい。
鑑識さん。
はい。
ご苦労さまです。
所轄署で聞いていらしたんですか?いえ。
どうやら同じ事を考えているようです。
でしたらここは我々に任せてください。
あなたは前回の公判で中井拓次さんに頼んで公園の土を取ってきてもらったと証言しましたね。
その事に間違いありませんか?間違いありません。
ではその土を具体的にどのように使ったのか教えてもらえますか?主人の靴の底にすり込みました。
残りはうちの玄関にまきました。
(若月)それも間違いありませんか?間違いありません。
あなたはまた嘘をついていませんか?嘘なんかついていません。
重ねて嘘をつくと偽証罪の罪も重ねる事になるんですよ。
嘘なんかついていません!
(若月)モニターを見てください。
これは黒川さんが殺害された公園の地図です。
A地点が殺害現場そして約100メートル離れたB地点が中井拓次さんが土を採取した場所です。
確かこの辺りです。
続いてこの映像を見てください。
公判初日の宗像刑事の証言で明らかなように殺害現場となったA地点には2年前土壌改良の際に業者が特別な土を入れていました。
対するB地点の土は見るからに全く別な土である事がわかります。
これはこの公園を造る前からこの土地にあった土です。
被告人の靴からはA地点の土が採取されたんですよ。
B地点の土じゃない!つまり中井拓次さんが土を採取してきたというのが嘘なのかあるいはあなたが被告人の靴の底に土をすりつけたというのが嘘なのか…。
いずれにしてもあなたと中井拓次さんは嘘をついている事になる。
ではなぜ…なぜあなたはそんな嘘をついたのか。
あなたは被告人を助けたいがために一世一代の大芝居を打ったんです。
被告人に愛想を尽かしたふりをし義理の弟と不倫関係に陥ったふりをし被告人に罪を着せるふりをした。
あなたがとんでもない悪女を演じる事は被告人も承知の上だったんじゃないんですか?どうなんですか!
(ため息)自首をするって言ってきかなかった主人を私が無理矢理止めたんです。
綾を殺してもなんの反省もないあんな男のためにどうしてうちの主人が罰を受けなくちゃならないんですか!教えてください!質問を終わります。
(光一)あの日は綾の命日の前日でした。
命日にはお墓参りをしてそのあと納骨するつもりでした。
あなたは綾さんのお墓参りに黒川さんにも一緒に行ってほしくて頼みにいったんでしたね。
でも断られてしまった…。
黒川が一緒に行って謝罪してくれなければ納骨出来ない…。
綾に申し訳ないって思ってしまってもう一度だけ頼んでみようって思いました。
そう思いだしたらいてもたってもいられなくなって…。
この前殴った事は謝る。
申し訳なかった!一度だけでいいんだ!一度だけ一緒に綾の墓参りをしてくれたらそれで私の気も済む。
だから明日付き合ってくれないか?頼む!頼む!もう自分でもよくわかりませんでした。
どうしてそこまでしてあんな男に頭を下げたりしたのか。
恐らく自分の中にけじめをつけたかったんだと思います。
とにかく綾の墓参りをしてくれたらもう事件の事は忘れよう。
あんな男の事は忘れようって…。
それでも黒川さんは墓参りを断り続けた。
私は気持ちを静めて黒川に問いかけました。
刑務所にいた時には墓参りしようって気持ちがあったんじゃないのか?綾に謝罪したいってそのために墓参りしたいって手紙に書いたんじゃないのか?って…。
そしたらあいつなんて答えたと思いますか?手紙は一度も自分で書いた事なんてない。
手紙は全部他の受刑者に代筆させたんだってあいつヘラヘラ笑いながらそう言ったんです。
嘘だろう?ハッハッハッ…嘘じゃねえよ。
ムショん中でも金さえ出せば結構色んなもの買えるんだよ。
それで買ったチョコの1つもやれば喜んで書いてくれたよ。
それでも何回かは自分で書いた事もあったんだろ?あるわけねえだろ!バカかお前。
漢字なんか書けねえよ。
あのさそういう事だから。
いい加減諦めろ。
本当に一度もか!?
(黒川)ああ。
あれは全部嘘だったって事か!?そうだよ!ふざけるなー!
(黒川)離せよ!私たちがどんな気持ちであれを読んでたかわかるか?わかるか!わかるかー!ああっ!うわー!その時までは絶対にこの前みたいに手を出しちゃいけないって自分に言い聞かせてたんです。
だけど…。
手紙の事を聞いた瞬間にもう自分がわからなくなってそれで…。
(嗚咽)
(若月)最後にもう一度裁判員の皆さんに申し上げておきます。
黒川さんを殺害したという重大な犯罪を家族まで一緒になり隠蔽しようとした被告人の行為は極めて悪質なものです。
決して許されるべき事ではありません。
その事を十分意識して量刑を判断して頂きたいと思います。
以上のような事から被告人を懲役15年に処すべきであると考えます。
(三田村)弁護人最終弁論をどうぞ。
はい。
これより中井光一に対する判決を言い渡します。
被告人は前へ出てください。
はい。
「主文被告人を懲役13年とします」「被告人に対して未決勾留日数中40日をその刑に算入します」求刑とほとんど同じだ。
厳しすぎるよ…。
いくらなんでも13年はないんじゃないですか?8年ぐらいが妥当よ。
うん…。
(遠藤)先生!刑が重すぎるんじゃないですか?控訴した方がいいですよね。
私もそう思う。
中井さんには控訴を勧めるつもりだよ。
ぜひお願いします!
(美佐子)控訴は結構です。
主人も自業自得だと思ってるはずです。
ですから控訴はしません。
でも控訴はすべきですよ。
私の力不足もありますが判決としてはどう見ても厳しすぎます。
中井さんここでは結論を出さずにご主人に聞いてみてから…。
色々ありがとうございました。
先生のお気持ちはありがたいと思います。
ですけど控訴はしません。
中井さんの気持ちはわからないわけじゃない。
今はやってしまった事を深く反省してるじゃないですか。
その気持ちがあるなら控訴はためらう事はありませんよ。
いえ。
自分がズルをしようとしたんです。
下された判決は当然の量刑だと受け止めています。
ですからもう…。
でも大の大人が3人して口裏を合わせて罪を逃れようとしたわけでしょ?それがバレちゃったんだからもう控訴なんて恥ずかしくて出来ませんよ。
出来ない出来ない!それにしてもあっさりしすぎてません?控訴をすれば刑が軽くなる可能性だってあるわけですから。
だから人間として恥ずかしいんですって!控訴はどんな人間にも与えられる当然の権利なんですよ!伊丹先生どう思います?うん…織枝先生と同じ意見だね。
まあ珍しい!裁判であれだけの嘘をついて罪を逃れようとしたわけだろう?その割にはあっさりしすぎてると思うんだ。
そう潔すぎるんだよ。
義姉さん…本当に控訴しなくていいのか?もうやめて。
涼に聞こえる。
(ため息)フフ…。
ひょっとしたら…。
(かけ声)わかった。
ありがとう。
いえ。
もしかして控訴する事になったんですか?いやそういう事じゃないんだけどね捜査資料を見ていて気になる事があったんだ。
練習中申し訳ない。
ありがとう。
お疲れ!バイバーイ!お疲れ。
涼君。
涼君!ちょっと話を聞かせてくれないかな?伊丹先生いらっしゃいますか?
(和美)今来客中で…。
どうなさいましたか?どういう事ですか!ちょっと失礼致します。
さあどうぞこちらへ。
どうして涼に会ったりしたんですか?涼には勉強に集中させてあげたいんです!二度と涼に会ったりしないでください。
勉強に集中させたいんならご主人に接見させてあげたらどうですか?涼君お父さんの事心配してましたよ。
きっと舜君だって…。
お子さんだったら当然の事でしょう?申し訳ありませんでした。
私が弁護士としてもっと力があったらあれほど厳しい量刑にはならなかったと思います。
本当に申し訳ありませんでした。
そんな先生のせいでは…。
弁護士を長くやっていると時には思い出したくない裁判もあります。
もう10年も前になりますがある殺人事件でそのうちのお父さんが起訴されたんです。
お父さんは罪を認め裁判の結果懲役刑が下り服役しました。
でもそのお父さんは殺人を犯していない事があとになってわかったんです。
どうしてそれがわかったのか…。
そのお父さんの息子さんが自殺して残された遺書でわかったんです。
真犯人は息子さんでした。
お父さんは息子さんをかばっていたんですね。
涼君。
本当の事を知って黙ってるのはつらかったろう。
この前涼君に会った時私が無理矢理つらい話を聞き出したんです。
ごめんなさい!やめて舜!もう黙ってられないよ!事件が起こった夜君は本当は遠藤君の部屋には寄っていなかった。
…そうです。
うちにはもっと早く帰っていたんだね?舜君ちょっといいかな?はい。
帰ったのは何時頃?11時頃…だったと思います。
本当は9時前には帰っていました。
だから外から帰ってきたお父さんとお母さんの話を聞いてしまった。
(ドアの開く音)
(美佐子)どうしたのお父さん。
顔が真っ青!黒川を…殺しちゃったかもしれない。
えっ!?押し倒したら頭を石にぶつけて動かなくなっちゃったんだ。
そんな…!だって…死んだかどうかわからないじゃない。
確かめに行った方がいいかな?僕が公園に駆けつけた時あいつはまだ生きていました。
頭を抱えて痛がっていました。
あいつは僕に気づくと助けを求めてきました。
痛いのか?姉ちゃんはもっと痛かったんだ!誰が助けるか!誰が助けてやるか!姉ちゃんの敵だ!死ね!死ねーっ!!もうやめて!やめてもう…やめて…!わかったからもういいから舜もう…!舜君もう少し聞いていいかな?本当は私が殺したんです。
またそんな事を言うんですか。
犯人なんて誰だっていいじゃないですか!いいわけないでしょう。
警察は真犯人にたどり着けなかったじゃないですか。
警察だけじゃない裁判も法律もみんないい加減よ!何がいい加減なんですか?綾を殺した黒川は少年法に守られてたった4年で仮釈放です!少年を更生させるための法律が逆にその少年を…もっとひどい人間にしてるじゃないですか!そんないい加減が通るんだったら犯人なんて誰だっていいじゃないですか。
あなたがご主人を見捨てて中井拓次さんと不倫に走ったと聞いた時いや正直信じられませんでした。
しかしあとからあれは全て芝居だったとわかって納得がいきました。
それにしてもですよあなたのような人がよくもあんな計画を考えたものです。
あなた一人で考えたんですか?そうです…。
いやあ…まだ信じられませんよ。
誰の心の中にも鬼はいますから。
ご主人と中井拓次さんを巻き込んで大芝居を打ってご主人の無罪を勝ち取るのが第一段階だった。
もしそれに失敗したらご主人が黒川さんを殺害した事にして刑に服するのが第二段階。
それでも最悪は舜君だけは守れると考えた。
そしてこの期に及んでもまだあなたはなんとしても舜君を守れないかとあがいている。
けれど…まだあなたも知らないもう一つの真実があるとしたらどうですか?ちょっと付き合ってください。
この前の話の続きだが君は事件があった夜舜君が部屋に遊びに来て一緒にサッカーのDVDを見たって言ってたね。
はい。
警察に聞かれても同じように答えていたね。
はい。
だけどそれは事実じゃない。
本当はその夜舜君は君の部屋には寄らず合宿所からまっすぐうちに帰ったんだ。
さっき直接舜君からその事を聞いたよ。
つまり君も舜君と口裏を合わせていたという事になる。
そうでない限り警察にまで嘘の証言をするなんてありえないからね。
となると君のあの時の行動と矛盾するんだ。
中井光一さんの判決が言い渡された…直後の事だ。
(遠藤の声)先生!刑が重すぎるんじゃないですか?控訴した方がいいですよね。
あの時中井家の人たちは全員黒川さんを本当に殺したのは舜君だと思っていた。
だからあれで裁判を終わらせるつもりだった。
控訴なんて考えてもいなかった。
なのに舜君と口裏を合わせていた君だけが控訴をしてほしいと私に言ってきた。
それはなぜかな?君には中井光一さんの刑が重くなってしまうと困る事情があったんじゃないのかな?遠藤君。
先生が…考えてるとおりです。
俺が黒川を殺しました。
嘘でしょ…。
本当です。
(舜)違う!違うよ!僕が…僕が黒川を殺したんだ。
あいつを殺したのは僕なんだ!舜!もういいんだ!お前を俺の身代わりにして綾が喜ぶわけないんだ!そんな事わかってたのに…。
もっと早く…。
すいませんでした!ひょっとして君もあの夜黒川さんに会いに行ったんじゃないのかな?…行きました。
あいつの仕事が終わるのを見計らって無理矢理でも綾のお墓参りに連れて行こうと思って…。
(遠藤の声)そしたら俺より先にお父さんがあいつと話していたんです。
黒川は避けているように見えました。
お父さんは諦めずに必死に何か話しかけていました。
そのあと2人はあの公園に移動したんだね?黒川の方がお父さんを避けてあの公園に入って行ったように俺には見えました。
君は2人をずっと追っていった。
なんかあったらすぐに飛び出そうと思って。
だけど公園に入って見失ってしまったんです。
(光一)ふざけるなー!
(黒川)離せよ!
(光一)私たちがどんな気持ちであれを読んでたかわかるか!わかるか!わかるかー!助けてくれよ…。
頭が…割れそうに痛ぇ…。
助けてくれよ…。
助けて…。
お前は綾を助けたのか?助けたのか!?助けたのか!?うわあーっ!気がついた時には黒川は動かなくなってました。
警察に行かなくちゃ…警察に…。
(遠藤)やめろ!やめろ舜!
(舜)姉ちゃんの敵だ!死ね!死ね!
(遠藤)もう死んでる!死んでるんだよ!俺は警察に行く。
お前は帰れ。
僕が行きます!何言ってんだよ!俺だって…俺だってずっとこいつを殺したかったんだ!だから僕が行く!僕ならまだ17だから少年法で刑が軽くなるんだ!こいつだって少年法で刑が軽くなったんだからチャラですよ。
そうでしょ!?
(遠藤の声)その舜の言葉に俺は一瞬心が揺れました。
いや一瞬じゃない。
ぐらぐら揺れて結局舜の言うとおりにしてしまったんです。
すいません!そのまま舜君は自分が自首するつもりでうちに帰ったんだね?そしてお父さんとお母さんに自分がやったと言ったんだね?だけどあなたは舜君を自首させなかった。
本当は私が殺したんです。
もうかばってくれなくていいんです。
かばってるんじゃないの。
本当は…。
私があの男を殺すべきだった。
この手であの男を殺したいってずっと思ってた。
その気持ちはどんな事しても抑えられなかった。
ここにずっとここに…ずっとここにあったんです。
遠藤君よりもお父さんよりも誰よりもあの男を殺したかったの…私なんです!だから…。
あの男を殺したのは私なんです。
中井さん。
本当は…私が殺したんです。
中井さんもうやめましょう。
それでいいじゃないですか!よくない!あなたはそれでいいかもしれない。
しかし遠藤君の気持ちはどうなります?自分が犯してしまった罪に一生苦しむ事になるんですよ。
そんな苦しみを彼に背負わせる権利などあなたにはない!それはあなたのわがままというものです!私だってあなたと同じように抑えきれない感情が溢れてくる事がある。
思わずその感情に負けそうになる事もある。
そんな時私はこんなふうに自分に問いかけてみるんです。
今の自分の思いは神様に見られて恥ずかしくないか。
ただまっすぐに素直な思いで自分の心に問いかけてみるんです。
あなたならこう言い換える事が出来るかもしれない。
今の私の思いは天国の綾に見られて恥ずかしくないか。
そんな奇麗事…。
私たちみたいな目に遭ってないから言えるんです。
先生はこうやっていつも娘さんと一緒じゃないですか。
でも私の綾はもうどこにもいないんですよ。
どこにもいないの。
どこにもいない…。
確かにあなたの言うとおりかもしれない。
だけどあなたには舜君がいる涼君がいるご主人もいる。
拓次さんだって遠藤君だって家族同然でしょう?上手く言えませんけどこのままじゃいけない。
このままじゃいけないんです。
もう一度元の自分に戻らなきゃ。
それは…長い時間がかかるかもしれない。
でもきっと元の自分に戻れます。
いや戻らなきゃいけない。
そのためにこそ一緒に苦しんでくれる家族がいるんじゃないんですか?お母さん。
お母さん。
お母さん…。
(泣き声)
(美佐子の泣き声)
(泣き声)
(美佐子の泣き声)伊丹先生本当にいいんですか?運動不足解消のために歩いて帰るよ。
悪いけど警察の方は頼むよ。
わかりました。
先生。
先生のお陰で救われました。
・「ミスター・サマータイムさがさないで」2015/12/16(水) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
事件15[再][字]
復讐殺人法廷・娘を殺した男がたった4年で出所?許さない!残された家族が立てた恐るべき計画!
詳細情報
◇番組内容
北大路欣也が正義感あふれる弁護士を演じる人気シリーズ第15弾!“復讐殺人”に隠された衝撃の真相とは…!?殺人被害者遺族の慟哭が問題提起する、社会派サスペンス!
◇出演者
北大路欣也、若村麻由美、杉本哲太、原田龍二、石丸謙二郎、松本莉緒、山下容莉枝、深水三章
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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