標高3,776m日本の最高峰富士山。
四季折々日本人の心を捉えてきました。
その美しさの源があります。
年間20億トンを超える雪解け水や雨水です。
溶岩に染み込んだ水は磨かれ奇跡のような風景を生み出します。
水の山富士山。
巨大な山をめぐる水の物語です。
冬。
周囲に高い山がない独立峰の富士山は白い魔境と化します。
5合目から山頂への大斜面を覆う雪。
山頂付近は氷点下20度を下回り雪は固く凍りつきます。
(風の音)吹きつける風は時に秒速30m。
(風の音)雪煙がりょう線を包みます。
吹雪がやむと冬枯れの山は美しい姿を見せます。
木の枝を飾る氷の結晶…氷点下で枝に風がぶつかると風に含まれる水滴や水蒸気が瞬時に凍りつきこの光景が生まれます。
冬の間富士山は山全体で水分を蓄えます。
(ウグイスの鳴き声)春。
富士山の水の旅が始まります。
山頂に続く大斜面。
(水音)雪解けです。
春の日ざしを受け解けだした水ははるかなる旅を始めます。
斜面を下るうち流れは交わり大きくなります。
この季節にだけ現れる幻の清流です。
清流はこのあと思いがけない姿に変わります。
流れが小さくなり最後は水たまりに。
水は地下へ吸い込まれていったのです。
噴火により生まれた富士山。
山を覆う溶岩の隙間に水は染み込んでいくのです。
水が再び現れたのは裾野に口を開けた洞窟の中。
溶岩にろ過され磨かれた水です。
洞窟に伸びる氷のオブジェ。
氷筍と呼ばれる氷の結晶です。
滴る水が凍りつき上へと伸びていきます。
旅の途中氷に姿を変える水。
気温が上がると解けだしまた旅を続けます。
富士山がりりしい姿を見せる初夏。
標高およそ940mの裾野に人々が集まります。
富士山の伏流水が湧き出す湧池です。
水深はおよそ5m。
古くからこの池の奥には富士山の水がめぐる水中洞窟があると伝えられてきました。
その姿を捉えようと潜水撮影が行われました。
池のふちに開いた岩の隙間。
水中洞窟の入り口です。
奥には人一人がやっと通れるほどの空間が続いていました。
入り口からおよそ20m。
天井が高くなり視界が開けました。
水がある事を忘れてしまう透明度です。
入り口から35m。
幻想的な光景と出会いました。
洞窟の壁の色がこれまでと変わります。
大理石のような乳白色の壁。
水中に生きるプランクトンの死骸が長い年月をかけ堆積したと考えられています。
洞窟を進むこと50m。
何かを見つけました。
水の湧き出し口です。
富士山でろ過された雪解け水が水中洞窟を満たします。
富士山が磨いた水は生き物たちの楽園をつくります。
富士山頂から35kmにある静岡県柿田川湧水群。
住宅街にこつ然と現れる清流です。
その透明度は50m先が見通せるほど。
夏でもおよそ15度に保たれた水に水草が揺れます。
源となる湧き水は一日100万トン以上。
数ある湧き水の中で最大です。
清らかな水にしか咲かないという特別な花があります。
ウメに似たかれんな花の形からバイカという名が付けられました。
富士山の雪解けに始まる水の旅。
山頂からはるか35キロ。
磨かれた水が作り出す夏の風景です。
秋。
澄み切った大気の中富士山を紅葉が飾ります。
富士山の水の旅にも秋が訪れます。
溶岩の断層から幅200mにわたり富士山の伏流水が流れます。
数百という隙間からあふれる水は絹のように柔らかです。
柿田川では命のリレーが始まります。
アユの産卵です。
冬もおよそ15度に保たれる水。
産卵は1月まで続きます。
富士山が磨いた水でめぐる命。
水はこのあと海へと下り長い旅を終えます。
季節はめぐり冬。
水の山では再び旅の準備が始まります。
年間20億トンもの水を蓄える日本の最高峰富士山。
その水は時をかけ麓へ向かいます。
山を彩り草木を潤し命を育む。
富士山をめぐるはるかなる水の旅です。
2015/12/16(水) 15:40〜16:00
NHK総合1・神戸
富士山 水めぐる旅[字]
四季折々、日本人の心を捉える富士山。その美しさの源が「水」。年間20億トンをこえる雪どけ水や雨水は、山麓に「幻の清流」や「水中洞窟」「湧水群」などの絶景を作る。
詳細情報
番組内容
四季折々、日本人の心を捉えてきた日本の最高峰、富士山。その美しさの源が「水」だ。年間20億トンをこえる雪どけ水や雨水は、巨大な山麓のあちこちに絶景を作り出す。冬、氷点下20度になる山肌を美しく彩る「霧氷(むひょう)」。春、雪どけの時期にしか見られない「幻の清流」。夏、溶岩が磨いた伏流水が満たす「水中洞窟」。そして秋、柿田川の湧水群ではあゆが産卵を始める。「水の山」富士山でめぐる水の物語。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
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