油井宇宙飛行士の142日〜世界に示せ!日本の実力〜 2015.12.16


夜空に、こうこうと輝く星々。
この中に人類がつくったもう一つの地球があります。
あれだあれだ。
あれか。
えー、すごい。
あんなに見えるんだ。
信じてくれ。
いつも見てるんだ。
上空400kmを飛行する…15か国が協力して造った人類史上最大の宇宙基地です。
ここで142日間滞在した日本人がいます。
油井亀美也さん。
日本人10人目となる宇宙飛行士です。
ISSで私が仕事ができるっていうのは…油井さんは世界各国の宇宙飛行士とともに数多くの任務に当たりました。
中でも世界が注目したのはISSの危機を救うミッション。
日本の輸送船を受け取ることでした。
宇宙開発の超大国アメリカとロシアが次々と輸送に失敗。
ISSで物資が不足する中最後の望みを託されたのが日本の輸送船「こうのとり」でした。
油井さんは「こうのとり」をロボットアームでつかむ役目。
(拍手)今回、私たちは地球に帰還する直前の油井さんにインタビューすることができました。
宇宙と地球をつないだ40分間の交信。
私と一緒に油井さんに迫ってくれるのはコピーライターの糸井重里さんです。
長年、宇宙に憧れてきた糸井さん。
でも、自分が宇宙に行くことは考えられないといいます。
油井さんが、どんな思いを胸に宇宙にいるのかどうしても知りたい。
今回のインタビューに名乗りを上げてくれました。
油井さんのことばを糸井さんは、どう受け止めるのか。
油井宇宙飛行士の142日間。
ほかでは聞けない宇宙のエピソードが盛りだくさんです。
ロケットが。
ねえ、でかい。
油井さんにインタビューするため私たちがやってきたのは筑波宇宙センターです。
初めて見ました。
すごいね。
逆光で見るからなんか神々しいですね。
そうですね。
昔の人がさ奈良に大仏、作ったりなんかしたのともしかしたら同じようなことかもしれないね。
奈良の大仏ですか?でかくて、すごいものをみんなで見ようっていうのがさ。
確かに。
ひかれますもんね。
ひかれますもん、自然に。
自然に、ひかれますもの。
日本が造ったロケットや実物大の宇宙船に糸井さんも大興奮。
宇宙とか行きたいですか?いよいよ宇宙にいる油井さんへのインタビューが始まります。
ここ?私たちが通されたのは今回のために特別に用意された通信室です。
いよいよ会えますね。
油井さんがいるISSは400km上空。
アメリカ・NASAの協力を得て衛星でつなぎます。
では、つながっているようなので糸井さん呼びかけていただけますか。
油井さん、こんばんは。
こちらからは、こんばんはですが。
油井さーん。
いなくなっちゃった。
あ!バク転のような。
キザな出方を。
本当ですね。
油井さーんよろしくお願いします。
どうも、はじめまして糸井重里です。
こんばんは。
糸井さんどうもよろしくお願いいたします。
きょうは、お忙しいところわざわざつくばまで来ていただきましてありがとうございます。
NHKアナウンサーの上條と申します。
よろしくお願いします。
おもしろいな。
失礼いたします。
失礼します。
もう帰還が早くなっちゃったんですよね?残念ですか?10日ほど早くなってしまいましたのでこちらに残された時間もあと僅かでして、そこはちょっと残念ですけれどもまあ、一生懸命やって短くなった時間分ぐらいの成果は残したないと思ってるんですけど。
どうですか?宇宙での暮らしは。
やっぱり非常に快適ですね。
最初は重力がないっていうことに非常に戸惑ったんですけども例えば、物をちょっと放っておくとすぐ、どこかに飛んでいってしまって、物をなくしたりしたんですけれども無重力の状態に慣れると無重力ということの便利さに気が付き始めて。
昔、例えば、天井でね何か仕事をするときは手を伸ばしながらやってたんですけれども今は、そういえば天井に張り付いて仕事をすればいいじゃんっていうふうに思い直して。
そうなるとですね、非常に三次元で仕事ができるというか何でも物がそこらじゅうに置けるしどういう姿勢でも仕事ができるのでそれは、やりやすいですね。
へえ、便利な。
油井さんが宇宙へと旅立ったのは7月23日。
日本中が見守る中打ち上げは行われました。
(一同)7、6、5、43、2、1。
(ごう音)アメリカやロシアの宇宙飛行士と暮らす油井さんの142日間が始まりました。
宇宙での暮らしとはどんなものなのか油井さんに紹介してもらいましょう。
きょうは簡単に私がですね、どの程度宇宙の環境に慣れてきたのかなっていうのを紹介したいなというふうに思います。
パッみたいなね。
着地も、うまくいってみたいな。
足を使って前に回転する力をつけて自分の重心がその方向に向かってったときに離すと。
小さくすれば速く回転するしね。
皆さんのほうに向かっていくと。
ぐるぐるぐるーっと。
どうですか。
おもしろいでしょ。
続いては、宇宙での食事です。
レトルトパックのスープあとは、これはロシアの穀物と肉が一緒に入った缶詰めですね。
フードウォーマーって書いてありますけどこれを開けてですねこのサイドは缶を入れてくださいって書いてあるほうにその缶のやつを入れるようになってます。
で、これをですね、閉めて…。
スイッチを入れると。
これでですね、温め開始ですね。
料理番組と一緒で何分たちましたみたいな感じでやりたいと思います。
えっとですね、ようやく40分以上たったのでこれで、非常にあったかいスープと缶詰めもあったまっているはずです。
では、開けてみましょう。
アチチチチ…。
本当にアツアツです。
ちょっと脂が多いですけど宇宙はね、本当たくさん食べないと、どんどん痩せてってしまうのでこのぐらい脂っこいぐらいでちょうどいいのかもしれませんね。
カロリーを本当に、たくさんとらないといけないので。
では、食べてみたいと思います。
いただきます。
うーん、おいしいですね、これ。
とても。
これ、見えますか?このスープ。
ポテトスープ。
このポテトスープもね塩分、すごい少ないんですけど実は、非常においしくて。
ゆっくり開けないと飛び散るかもしれない。
で、このスプーンでねこう…スプーンで触ってることによって表面張力でフォークにくっつくのでこれでフォークで…。
スープが飲めるわけです。
これ、本当おいしいんですよね。
がっつり食べよう。
こんな食べ方をして慌てる場面も。
地上で、おいしかったものはおいしいし。
まあ、ちょっと私好き嫌いが多いんですけど地上で嫌いだったものはやっぱり上に来ても嫌いでしたね。
宇宙では毎日のトレーニングも欠かせません。
無重力状態では、骨や筋肉がすぐに衰えてしまうからです。
体重を量るのも一苦労です。
最後に油井さんが宇宙の特等席に案内してくれました。
じゃじゃーん!いかがですか?青い地球ですよ。
地球の写真を、たくさん撮ってらっしゃいますけれどもそれは、なんていうんだろう母なる地球っていうようなイメージがあるんでしょうか。
そうですね。
やっぱり最初は自分が、すごい感動したんですよ。
宇宙を見て。
宇宙から地球を見て。
地球が本当にいとおしくてなんていうんですかね、やっぱり宇宙から見ると地球は、すごくちっちゃく感じるんですよね。
地球にいるときは、地球すごく大きかったんですけど私の中では。
宇宙から見ると非常に小さくて非常にかわいらしいというか大切にしなければいけないものっていう感じがしてその感動を、なんとか皆さんに伝えられないかなっていうところで、写真に撮ってことばではなかなか表せないところを写真に撮って送ろうというふうに思ったんですけどそれで、なんか写真を…愛を持ちながら撮るっていったらあれなんですけどそういう形で一生懸命、撮ってます。
一日のうちに自分っていうものだけの暮らしの時間っていうのはどのくらいあるんですか?仕事をするとか…。
平日は、やっぱりほとんどないですね。
仕事をするのは、やっぱり月曜日から金曜日で土日っていうのは土曜日は半日仕事で半日休みって感じなんですけどちょっと寝る前に少し自分の時間があってそれをツイッターとかに私は使って、なんとか、こう皆さんに自分の生活であるとか感動をお伝えしたいというふうに思ってるのであまり自分の時間っていうのはないですね。
つまり職住近接も極まれりっていうことですよね。
それってそのつらさはないんですか。
そのとおりですね、本当に。
ただ、私自身ここでの仕事っていうのは本当にやりがいがあって本当に楽しく仕事をしてますので自分の時間がなくても十分、楽しめてますのでそれは、いいですね。
あとは、地上にいたときの通勤のこととかを考えるとやはり通勤電車とかね非常に大変でしたけどここは職場と生活環境が一体化してるので通勤の苦労もないですしそういう意味でいったら地上よりはるかに過ごしやすいところだと思ってます。
ISSは一体、どんなところなのか。
こんな歌で、ご紹介しましょう。
♪〜♪〜人類の英知を結集させたISS。
その中で最大の実験施設が日本の「きぼう」です。
ここで地上から託された数々のプロジェクトを担うのが油井さんです。
よいしょ。
無重力状態でしかできない実験を行います。
スリー、ツー、ワン。
小型の人工衛星を宇宙に放出するミッション。
地球の温暖化や宇宙の謎に迫ります。
注目を集めるのが新しい薬につながるたんぱく質を宇宙で作る実験です。
地上では、重力があるためきれいな、たんぱく質を作り出すことは簡単ではありません。
宇宙であれば地上では不可能だった新たな、たんぱく質の結晶を生み出すことができるはず。
ALSや筋ジストロフィーなど難病の治療薬の開発につながると期待されています。
本当に私も、その今後のね解析結果っていうのを非常に楽しみにしています。
「きぼう」っていうのは日本全体の財産ですからぜひ利用していただいて新しい研究を始めていただければなというふうに思います。
全然関係ないこと聞いていい?私物で持ってったものってどんなものがあります?本とか。
意外に身近なものでやっぱり家族の写真であるとかそれは、やっぱり欠かせなくてあとは友達の写真であるとかあとは、そうですね…。
油井さんが持っていった折り鶴。
宇宙飛行士になれなかった仲間の夢が託されています。
7年前、1年をかけて行われた宇宙飛行士の選抜試験です。
10年ぶりの試験には史上最多の963人が応募。
最終候補に残ったのは10人でした。
ISSと同じ閉鎖環境で1週間を過ごし忍耐力やチームワークリーダーシップが見極められます。
パイロットや医師など多才な候補者たちの中で油井さんは、いつの間にかまとめ役になっていました。
閉鎖環境試験、最終日の夜。
最後に残ったのが鶴を一人100羽ずつ折って千羽鶴を完成させる課題でした。
ところが、油井さんはノルマから程遠い数しか折れていません。
その姿を見た、ほかの候補者が協力を買って出ました。
ライバルという立場を超えみんなで一つの目標を目指す。
候補者たちにはいつしか絆が生まれていたのです。
1週間にわたる閉鎖環境試験が終わりました。
10人全員が首から提げていたのは折り鶴でした。
963人の中から最終的に選ばれたのは油井さんたち3人でした。
あれから6年。
かつての候補者たちは油井さんがいる宇宙を地上から見上げています。
そうですよね。
持ってってくださって…。
これだ、これ!動いてる?あれだって。
分かる?分かる?オレンジ色の。
あれだ、あれだ。
あれか。
ほら、「油井さーん」って。
油井さーん!来週、待っていまーす!「頑張ってね」って。
頑張ってねー。
皆さんに宇宙から言えることなんかメッセージとかありますか?いや、本当にこうやって応援してもらえると本当に、うれしいですね。
やっぱり、私選抜試験ね、受けたときに思いましたけれども…私、ここに来て思うんですけどこれまでの人生振り返ってあと選ばれてからここまできて思うんですけど…私、運よく選ばれましたけど選ばれなかった方々も…それを知ってるがゆえに…やっぱり皆がですね納得できるぐらいのしっかりとした成果を残してみんなからですね…そういう面でもですね一生懸命、頑張りました。
やっぱり、帰ったらですねみんなと飲みながら話をするのを本当に楽しみにしてます。
つくづく、仲間とかスタッフとつながってるっていう実感の強い毎日ですね。
本当にですね、宇宙飛行士の仕事っていうのは目立ちますけども…思いやりを持ちながらですねやっぱり仕事をするようにしています。
仲間たちの夢を背負い宇宙での任務に当たってきた油井さん。
ISSの命運を左右する一大ミッションが待ち受けていました。
ISSでは地上から水や食糧の補給がないと暮らすことができません。
アメリカ、ロシアそれに日本の無人補給船が定期的に物資を届けています。
しかし…。
去年10月以降宇宙開発の超大国アメリカとロシアの補給船が相次いでミッションに失敗。
数か月にわたって物資の補給が滞っていました。
このままの状態が続けば宇宙飛行士を地球に戻すなどISSの運用に大きな支障が出るおそれがありました。
世界が追い詰められる中望みを託されたのが日本の無人補給船「こうのとり」でした。
「こうのとり」をISSで受け取る重大な責任を背負ったのが油井さんでした。
今回、とても大事なミッションだったと思いますがそれを振り返っていただきたいんですけれど。
「こうのとり」のミッションは私の、このミッションのハイライトでもありましたしというのは「こうのとり」が打ち上がる前までにかなりですね、やっぱりほかの宇宙機関のロケット輸送船の失敗が続いてたんですよね。
ですから、宇宙ステーションの物資というのがかなり心細くなってきてまして私がやっぱり宇宙に来たときも物がちょっと不足してる状況だったんですよね。
ですから、具体的な例でいうと…水で拭くだけとか、そういう形のタオルで拭くだけとかいう状況になってたんですけれどもあと、トイレの部品が足りなかったり…そういう不便を感じながらでしたからやっぱり、ほかの宇宙飛行士もね頑張ってくれよっていうふうに言ってくれますしそれは、うれしいですけれどプレッシャーになりますし。
実際、それが、もし何かがあって失敗すると…日本がISSの命運を握ることになったかつてないミッション。
託された責任の重さを特別な思いで受け止めたのがJAXAの理事・浜崎敬さんです。
25年前に宇宙ステーションをやっていたときにですねこういう時代がやってくるんだよって話を、そのころよく、たとえ話してたんですけどほとんどね、私の友達もですねふーんって聞いてるだけでたぶん全く絵空事とかですねそういう感じに捉えてたんだと思います。
ISSの計画が始まったばかりの25年前。
浜崎さんは、アメリカでNASAとの交渉に当たっていました。
NASAの技術者たちは日本に対し「資金だけ出せばいい」と話していたといいます。
日本がいろんないいアイデアを出したとしても実績がないし本当にそれでできるんだろうかっていうようなところで無視されているようなそんな状態、ある意味で肩身が狭いような状態をずっと味わってきて。
日本の底力を世界に示したい。
開発したのが「こうのとり」でした。
数千人を超える技術者たちの知恵と情熱を結集させた日本初の輸送船です。
これまでの輸送船はISSに衝突する形でドッキングしていました。
しかし、ISSが衝撃を受けることになるため課題となっていました。
そこで日本は新たなドッキングの方法を開発。
音速の20倍以上のスピードで飛行するISSに近づきぴたりと並走します。
その「こうのとり」をISSにいる宇宙飛行士がロボットアームでキャッチしドッキングさせます。
これまで、4回の打ち上げを成功させてきました。
打ち上げが2週間後に迫った7月末。
NASAの専用機が日本に降り立ちました。
アメリカの物資を「こうのとり」に託すためです。
8月19日。
世界が見守る中「こうのとり」が打ち上げられました。
「こうのとり」は筑波宇宙センターにある管制室の指示でISSに接近します。
ISSと筑波の間をつなぐのはNASAにいる若田光一さんです。
その若田さんの支援を受けて「こうのとり」をキャッチするのが油井さんです。
すべてを日本人だけで行うのは初めてのことです。
日本の宇宙開発の、その技術がいかに信頼性の高いものになっているかっていうことを世界が改めて気づくいい機会になったんじゃないかなと思いますね。
ISSに徐々に近づいていく「こうのとり」。
音速の20倍以上で飛行する輸送船をセンチメートル単位でコントロールします。
いよいよキャッチの瞬間です。
少しでもずれると重大な事故につながるおそれがあります。
失敗は許されない。
油井さんにプレッシャーがかかります。
(拍手)「こうのとり」を油井さんがキャプチャーするところで日本の管制官が、チームがそれをコントロールしていてまあ、NASAでは若田さんが、それを対応して…それは、なんでしょうね。
やっぱり頭の中では分かってるんですけど…ミッションが完了した成功したっていうときのその手応えというかその瞬間っていうのはどんな感じだったんですか?やっぱり、まずはほっとしましたね。
そこまで、やっぱり、かなり自分の気持ちを高めてましたしやっぱり失敗は許されないので訓練をしていたので、私自身…ちょっと例えは悪いですけど私ゴルフとかもするんですけれどもプロゴルファーでも優勝がかかったパットなんかを短いパットでも外してしまったりすることがあると思うんですねプレッシャーで。
そういうことがあっては絶対ならないので本当に世界中が注目してますし非常に、ばく大な予算がかかってますのでそういう面で仕事ができたということで本当に、ほっとしましたね。
でも、やっぱりチームとして…そういう面では本当に私、やりがいがあって本当にうれしかったですね。
一人に見えるけど、この大勢の油井さんの、こう、何かハンドリングしてる指先はもう、みんなのものですっていうつながり方がすっごく、よく分かったんでそれがなんか、お話であ、ご本人が一番、それを思ってんだなと思ったんですね。
ISSを救った「こうのとり」。
しかし地上に戻ることはできません。
ISSから切り離されると大気圏で燃え尽きる運命です。
「こうのとり」を切り離そうとしたとき思わぬトラブルが起きました。
「こうのとり」を離して地球に帰してあげるときなんですけどもロボットアームでコマンドを送って離してあげなければいけなかったんですけどちょっとですね離しかけたところで…それはドキッとしましたけれども地上のチームもしっかりサポートしてくれて事なく1周待ちましたけれども…90分、待って同じところでリリースをしたと。
それをツイッターで「駄々をこねていた」というふうにおっしゃってましたよね。
そのことですかね。
「こうのとり」君が駄々をこねていたという。
本当に非常に愛着が湧いてしまってきっと「こうのとり」君も離れたくなかったのかななんて自分の中で思いながら…また一緒の時間を過ごしましたけど。
私自身、なんか分からないんですけど…本当に一生懸命仕事をすればするほど愛を感じてしまうというか…今、実験しててもそうですね。
機械なんですけれども…とても機械とは思えなくなってきちゃうんですよね。
それで、親しみを込めてそういう言い方になってしまうのかもしれません。
はー。
その辺は宇宙飛行士ならではの発言に聞こえますね。
朝5時過ぎ。
暗闇の中を歩く一人の男性の姿がありました。
あれ、そうかな。
ああ、そうだ、そうだ。
よく見れたな。
油井さんの父・すけ司さんです。
おーい!呼びかけた先にあるのは息子の亀美也さんがいるISS。
油井さんは宇宙で初めて栽培されたレタスに舌鼓。
でも実は野菜は大の苦手。
宇宙から届く油井さんの姿をすけ司さんは楽しみに見守っています。
妻と、これが亀美也ですね。
楽しそうにしてますね。
すけ司さんが撮影した幼いころの油井さんです。
レタス農家のすけ司さんは跡取り息子の誕生に大喜びしました。
小学生のころからレタスの収穫を、毎年手伝ってくれるようになります。
手際のいい息子を見てすけ司さんは、大人になったらきっと、いい農家になると楽しみにしていました。
ここが亀美也の部屋だったんですけれども。
一方の油井さん。
いつか宇宙に行きたいと思いを募らせるようになります。
油井さんは高校を卒業後防衛大学校に入学します。
パイロットになれば宇宙飛行士の夢に近づくのではないかと考えたからです。
卒業後は航空自衛隊のパイロットに。
父親の後を継ぐことはありませんでした。
戦闘機のパイロットとして空をかける姿はすけ司さんにはまぶしく映りました。
2008年。
10年ぶりに行われた宇宙飛行士選抜試験。
油井さんは迷わず応募します。
そして、試験に見事合格。
幼いころからの夢をついに、かなえました。
息子の夢を、すけ司さんが初めて知ったのは選抜試験のとき。
初めはパイロットを辞めて宇宙飛行士になることに反対したといいます。
結構、格好いい生活してたからさ今さら、そんなこと考えなくてもいいじゃねえかっていうことだったんだけど。
うちの子が宇宙飛行士になれるなんて思いも考えることもできなかった。
夢のような話だったからね。
本当、よく俺の子どもであんなふうに格好いい生活ができてるなと思って感心しちゃうよな。
俺なんか百姓屋のおやじだしな。
えらい息子が生まれたもんさ。
4年前に妻・八重子さんを亡くし独りで暮らす、すけ司さん。
今は油井さんがプレゼントしてくれた愛犬の優ちゃんと暮らしています。
油井さんの帰還が迫ったある日のこと…。
はいはい。
はい、そうです。
おかげさまで元気にしてます。
突然、宇宙の油井さんから電話がかかってきました。
今、うち。
おいも…もう、すぐだな。
なんか、この間ツイッター見てたらさえらい長い間着替えしなくても大丈夫のようなこと言ってたけど、本当の話?洗濯しないで、何…。
ああ、そうなんだ。
まあ、よかった、よかった。
元気でやってて。
はい。
じゃあ、じゃあね。
はい。
こちらです。
写真が並んでますね。
一番右が毛利さんですね。
全部やっぱり名前、知ってるものですね。
ですね。
歴代の皆さん。
金メダルの選手みたいなもんですね。
毛利さん、僕は後ろ姿を見たことがありますけど小柄な方なんですよね。
数日で帰ってきてすごいニュースになりましたもんね。
5か月行く時代になるってそのときはなかなか思いませんでしたね。
これまで宇宙に行った日本人は合わせて10人です。
最初のうちは宇宙に行くだけで日本中が沸く時代でした。
日本の実験施設「きぼう」が完成したころからは日本人宇宙飛行士の長期滞在が続きます。
今では日本人が宇宙に行くのは当たり前だと言われるようになりました。
日本がISSに使った予算はおよそ9000億円。
今も年間およそ400億円が必要だといわれています。
先月行われた国の予算にむだがないかを検証する会合です。
日本は、いつまでISSに参加し続けるのか。
2020年以降どうするのかは今も検討が続いています。
率直に聞きますが日本の、このISSへの参加意義というものも今、盛んに議論が行われていますがこういうことを油井さんはどう思いますか?何か訴えることって…。
私自身、その議論を聞いたときちょっと驚いたんですけどもここにいるとですね、日本が難しいミッションをやっていてそこで責任を果たすということに関して…ですから日本が…。
私自身実は大きな夢がありまして日本には、やっぱり…宇宙ステーションで培われてる文化っていうんですかね。
相互理解、相互、尊重尊敬っていう文化というのは難しいことに切磋琢磨してやっているからこそ生まれているわけで…ウクライナ危機やシリア情勢をきっかけに欧米とロシアの対立が深まっています。
世界は新たな冷戦の時代が始まったともいわれています。
その中でISSの新たな価値が見いだされています。
欧米とロシアが同じ目標に向かって協力する。
国際協調の場としての役割です。
日本人宇宙飛行士のグループ長を務める野口聡一さんです。
2度の宇宙飛行と160日以上の長期滞在を経験した、野口さん。
各国の思惑が交錯する国際舞台では、日本人にしか発揮できない力があるといいます。
第三極として世界中の宇宙飛行士が世界規模で見たときにむしろ日本人で、いろんな国の状況を、ちゃんと分かっていて…中国とも通じるものがあると。
そういう立場で宇宙飛行士の中でも日本人がそういう立場に立つことでバランスがいいんじゃないかと。
見てもらえてるんじゃないかと。
ですから、三極にいるからこそ…日本にしか果たせない役割。
それを体現したのが若田光一さんでした。
若田さんがISSの船長として長期滞在した2014年。
ウクライナ危機でアメリカとロシアの関係が悪化したころでした。
当然、各国で報道のされ方っていうのは違いますけれどもね。
その中で、じゃあ、きょうは一緒にごはん食べようとかいってね私が声をかけて…われわれは政府機関の宇宙飛行士として仕事をしていますのでそういう立場の違いっていうのはありますけども…そのクリミア紛争のときにね。
その意味を食事をしながら考えたりするとやっぱり、こういう方向が間違っていないと。
油井さんもアメリカやロシアの宇宙飛行士たちと5か月を過ごしました。
航空自衛隊にいたときパイロットとして日本の空を守っていた油井さん。
ロシアの宇宙飛行士とどのように接していたのでしょうか。
今、一緒にいる仲間、3人ロシアの方がいると思いますが油井さんは自衛隊にいるころ今とロシアに対する考え方とか何か変化はありましたか?すごい変化ありましたよ。
自衛隊にいるときっていうのはあまり、いいイメージはなくて入ってくる情報っていうのは悪い情報しか私、聞いてませんでしたのでそもそも、私、ロシアに最初に訓練で行ったときに…実は、そんなことはなくてロシアの方々に非常に優しくしていただいて…そこで考え方を変えてロシアのことをもっと知りたいというふうに思ったんですよね。
ですから、それからロシア語も好きになりましたしロシアの文化を学んで。
ですから今、本当に心から信頼できる友達っていうか仲間として一緒に仕事をしてます。
ものすごい実験場みたいなところ人間の文化の実験場みたいなところがあるんですね。
ですから私自身は今、地球上ではいろんな問題がありますけれどもそういうところまでも実は広げていくことができるんじゃないかと思ってます。
私は諦めの悪い人間なので実は、こういうところは政治の問題だからとかいってそれは別問題でどうにもできないって諦めるんじゃなくて…そして、こちら。
宇宙といってもね広うござんすが…。
これ油井さんのワッペンなんですけど。
火星を、すごく意識なさってる。
はい。
結構、私気に入ってるんですけど自分の名前に亀がついてるので私自身、亀のように…それを象徴していて…人類が目指す新たなフロンティア・火星です。
太陽の光が届き僅かに大気もあることから地球に最も似ている惑星といわれています。
さらに、ことし9月世界を驚かせる研究成果が発表されました。
火星には今も水があり地表を流れているというのです。
しかし、地球からは往復で3年はかかります。
その火星に将来、人類を送りこもうというプロジェクトがアメリカを中心に進められています。
月や小惑星を経て最終的に火星を目指す壮大な計画。
達成には国際協力が欠かせません。
次なる計画への参加を検討している日本。
ISSで培った技術とノウハウがあれば今後の世界の宇宙開発でも存在感を発揮できるといいます。
ISSまで行ってしまったらあとは火星は近いですか?そうですね。
まだまだいろんな課題があるっていうのは、実際私自身、感じてますけれどもでも、その課題が多いっていうのが分かってるだけでもすごくて…やらなければいけないことだと思ってますので人類全体としてですね。
私も人類…。
それ小学校のね。
火星ね、行きたいんですよね。
卒業文集に書かれたんですよね。
本当に月や火星に行きたいっていうふうに書いてましてその第一歩が、やっとここで踏み出せたので。
私、以前も言ったことがあるんですけどお月様には、うさぎがいるんで…ぜひ月より遠くに行きたいなと思ってます。
さらに遠くの宇宙へ。
油井さんと一緒に選ばれた新世代の宇宙飛行士たちに期待がかかっています。
航空会社のパイロット出身の大西卓哉さん。
来年6月ごろからISSに長期滞在します。
日本人宇宙飛行士だけじゃなくて宇宙開発って…再来年ISSに長期滞在するのが金井宣茂さんです。
すごく、こう「今は俺たちの時代だ」っていうそういう意識も自分たちの中で強くて先輩たちは、もちろんすごいですけども先輩たちに負けてはおられないと。
これからは…次に大西さん、そして金井さんと油井さんの同期が続きますよね。
彼らへの、なんかエールやことばっていうのは何かありますか?そうですね、私たち3人は新しい宇宙飛行士ということで一緒にトレーニングしてきたんですけれどもやっぱり私自身が思ったのはトレーニングしてきたことっていうのは本当に土台になって役に立ってるし、自分のねバックグラウンドですよね。
要は、民間のパイロットでありお医者さんであったっていうバックグラウンドはずっと役に立つのでここに来たら。
それを、やっぱり信じてですねやってほしいなと。
最後にですねこの5か月を振り返ってあと、もうちょっと僅かになりました宇宙生活を振り返ってひと言、お願いします。
私自身、挑み続けて、非常に一生懸命やりましたけれどもこれで日本の方々もですね油井さん、やってくれたなと思っていただけると私もありがたいなと思ってます。
本当に、ツイッターにも書きましたけれども油井さん、ちょっと、ずっとこのまま宇宙にいてくれないかなって思われるということ自体…帰ってきてほしくないと言われるのが私自身の実は目標でして最高の褒めことばなのでまもなく帰ることになってしまいましたけれどもそういうミッションになっていればいいなというふうに思ってます。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
また、よろしくお願いします。
無事に帰ってきてくださーい。
もうすぐだもんね。
おー!こういうことができるからなー。
糸井さん宇宙、行きたくなりました?インタビューを終えて糸井さんは宇宙飛行士とは何か思いを巡らせました。
どういう人間が理想かっていうことについてみんな人は、それぞれに考えてるんだと思うんですよね。
だから聖書ってものがあったりお経ってものがあったときにそれは人が生きるってことだとか考えるってことの一つのすごい集合的な意志の固まりみたいなものを作ったわけですよね。
だけど宇宙飛行士っていうのは書物になってるわけじゃなくて…みんなで作ってみようじゃないかっていった答えのような気がする。
だから宇宙飛行士っていう人間を使ってこういうモデルを作り上げてるっていう…まさしく一人じゃない人だっていうことを痛切に感じますよね。
しなくていいことって森羅万象全部しなくていいんですよ。
宇宙のすべて、人間のすべてがしなくていいことだらけなんだけど、すでにこんな、でっかいことをしちゃってるってことはある人は、しなくてもいいと思ってることが…っていうところにまた別の魅力をみんなが感じてるわけで…火星とか言わなくてもやめらんないですよ、これは。
と思う。
今月11日。
油井さんを見送ったISSの仲間が送ったメッセージです。
♪〜油井さん、おかえりなさい!142日間の滞在を終えた油井さんが、帰ってきました。
人々の思いの結晶油井亀美也さん。
地球での新たな挑戦が始まります。
油井さん久しぶりの地球、どうですか?いやー、本当にすばらしいですね。
地球も。
宇宙もいいですけど地球も、なんかいいですね。
この冷たい風も、なんかすごい心地いい感じがします。
でも、皆さん、ちょっと寒いかもしれないですけどね。
大丈夫ですかね。
2015/12/16(水) 19:30〜20:43
NHK総合1・神戸
油井宇宙飛行士の142日〜世界に示せ!日本の実力〜[字]

国際宇宙ステーションで5か月間滞在した油井亀美也宇宙飛行士。はたしてどのような日々を過ごしたのか?帰還直前の油井さんに糸井重里さんが独占インタビューした。

詳細情報
番組内容
日本人10人目の宇宙飛行士として、国際宇宙ステーションで5か月に渡る長期滞在を果たした油井亀美也さん。日本の無人補給船「こうのとり」をNASAにいる若田光一さんと協力してキャッチするなど、日本の実力を世界に示した。はたして、どのような思いでこの5か月間を過ごしたのか?NHKは地球への帰還の直前に、軌道上の油井さんへの独占インタビューに成功。これまで語られなかった秘話を糸井重里さんが聞く。
出演者
【出演】宇宙飛行士…油井亀美也,糸井重里,上條倫子
キーワード1
宇宙飛行士
キーワード2
油井亀美也

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

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