よ〜い。
スタート!鳥取県出身の映画監督岡本喜八さん享年81。
奇想天外な発想でエンターテインメント性の高い演出にこだわり戦争映画にもユーモアを交えながら描いてきました。
戦後70年を迎えた今年そんな岡本監督の戦争映画に若者たちが関心を寄せています。
ほかの戦争映画とは違って…しかし今年新たに見つかった資料から知られざる一面が分かってきました。
激怒してますね。
今岡本喜八はもっと怒ってんだろうね。
岡本監督の怒りとは何だったのか。
現代に向けられた一人の映画監督のメッセージを見つめます。
「フェイス」です。
鳥取県米子市出身で10年前に亡くなった映画監督の岡本喜八さん。
高度成長期に映画が大衆の娯楽として人々に浸透していく中でエンターテインメント性の強い作品を撮り続けその独自の手法は喜八イズムとして数多くの映画監督に影響を与えてきました。
岡本監督が生涯を通じてこだわり続けたのが戦争映画です。
戦後70年を迎えた今年岡本監督の戦争映画に注目が集まっています。
特に関心を寄せているのが20代30代の若者たちです。
なぜ今岡本監督の作品が若者たちに受け入れられているのでしょうか。
先月京都市内で岡本監督の上映会が開かれました。
平日にもかかわらず130人が詰めかけました。
戦後70年を迎えた今年各地で岡本作品の特集上映会が開かれています。
その動きはドイツやシンガポールにも広がっています。
特に関心を寄せているのが若い世代です。
生涯39本の映画を世に出した岡本監督。
それらは多彩でエンターテインメント性にあふれたものです。
プレーボール!やくざの縄張り争いの決着を野球でつけるという任侠映画のパロディー「ダイナマイトどんどん」。
江戸時代末期黒人たちが音楽好きの大名と出会いジャズセッションを繰り広げる奇想天外コメディー「ジャズ大名」。
岡本監督はおもしろさ楽しさをとことんまで追求してきました。
一方で戦争映画にもエンターテインメント性を取り入れてきました。
代表作の一つ昭和34年公開の「独立愚連隊」。
太平洋戦争末期の中国を舞台にはみ出し者ばかりを集めた通称愚連隊と従軍記者の活躍を描いた物語です。
よ〜し逃げろ〜!荒野をさっそうと駆け抜ける主人公や男女間の恋もよう。
戦争を西部劇のように描き異色の作品として当時話題を呼びました。
横浜市に住む会社員の奥山翔平さん26歳。
奥山さんは大学2年生の時初めて岡本作品と出会いその人間描写や軽快なリズムに引かれていったといいます。
戦後70年を迎えた今年岡本監督の戦争映画を見直すようになったといいます。
特にお気に入りの作品が昭和54年公開の「英霊たちの応援歌最後の早慶戦」です。
出征が決まった学生たちは「最後の早慶戦を」と立ち上がります。
プレーボール!奥山さんが引かれるのは特攻に行く前の選手たちの楽しげな姿です。
試合後選手たちは特攻に向かいます。
撃つぞ〜!クライマックスでは若者たちが戦争で命を落とす理不尽さを痛切に伝えています。
もしかしたら後々あるかなっていう…。
なぜ岡本監督は戦争映画にもエンターテインメント性を追求したのか。
いらっしゃい。
よろしくお願いします。
妻の…岡本監督の原点は壮絶な戦争体験にあったといいます。
鳥取県米子市で生まれた岡本監督は17歳で上京。
19歳の時映画監督を夢みて大手映画会社に入社しました。
しかし時代は太平洋戦争の真っただ中。
昭和20年4月愛知県にある予備士官学校に送られます。
その直後空襲に遭い12人の仲間を目の前で失い自身は九死に一生を得ます。
更に終戦後ふるさと米子に戻ると同級生50人のうち25人がフィリピンなどで戦死した事実を知ります。
壮絶な戦争体験をした岡本監督。
しかし戦争をあえて喜劇的に見るようになったといいます。
「刻々と近づく死への恐怖をマジメに考えると日一日とやりきれなくなって行く。
はたと思いついたのがあらゆる状況を喜劇的に見るクセをつけちまおうという事であった」。
喜劇を見てると悲劇である。
本人はね最後に…今回は日本の映画史やメディア産業について研究している神戸芸術工科大学の橋本英治教授にお越し頂きました。
橋本さんどうぞよろしくお願い致します。
今若者たちが改めて岡本監督の映画にシンパシーを感じているこの現状をどのようにお感じになりました?まず岡本喜八という監督は古い監督なので若い人は見てないと思うんですけどもそれを見た時に新たな発見ってのは当然あると思います。
やはり24時間戦闘状態とかそういった事が戦争の中では実際には起こりえない訳です。
でやはりその中には生活っていうのも当然入ってくる訳でそういったものをリアリティーを持って描くっていう事が岡本監督の一つの映画の手法であって例えば戦争の悲惨さをあえて強く描くってなると逆に言うとそれは一つのプロパガンダ映画のようなものになっていくと。
そういった事に関しては岡本喜八という監督は「避けたい」っていう形でリアルな世界っていうのを描いてたという事になると思います。
「悲劇と喜劇は紙一重」というような話もありましたけれども岡本監督がなぜエンターテインメント性ですとか喜劇仕立てというものを戦争映画に取り入れていたのか。
例えばなんですけど非常に突拍子もない例かもしれませんけれども歩いてる人がこけたっていう場合にこけた人は悲劇ですけれども…。
痛いですもんね。
でも見てる人は「喜劇だ」ってなってしまう。
思わず笑ってしまうという事もありますね。
同じ局面が実を言うと2つの面を持ってる。
悲劇的であろうと喜劇的であろうとそれをリアルに描く事によってよりリアリティーを増した戦争に関しての批判的な映画になってるっていう事が言えると思います。
戦争映画にもエンターテインメント性を求めた岡本監督。
しかしその根底には戦争に対する強い怒りの気持ちがある事が分かってきました。
多分これではないかな〜っていうのをちょっと見つけました。
見て下さい。
今年新たな資料が見つかりました。
岡本監督が47年前に記した手記です。
タイトルは「肉弾とあいつその心情と眞意」。
映画「肉弾」を作るにあたってその思いをつづったものです。
「肉弾」は昭和43年に公開された岡本監督の代表作です。
乾杯!特攻が決まった隊員の一日限りの休日をテーマに主人公あいつが死ぬ事の動機を探していく物語です。
素っ裸で作業を強いられる軍隊での理不尽な制裁。
空襲によって両手を失った老人との出会い。
いずれも岡本監督の経験に基づくものです。
物語の中で主人公あいつは一人の女性と出会います。
(2人)出来た!そして国家のためではなくその女性のために特攻での死を覚悟します。
手記には岡本監督の「肉弾」にかける並々ならぬ思いが込められていました。
「『肉弾』は過去6本の戦争または戦争を語った自作の底流である。
そして岡本喜八そのものである」。
俳優の…映画「肉弾」ではナレーションを担当しました。
私生活でもつきあいがありこれまで11本の岡本作品に出演してきました。
仲代さん自身はこういうのを見たご記憶は…?生前親しくしていた仲代さんさえも手記を見た事がありませんでした。
(仲代)「青春の色は多彩なものであり決して灰色とか国防色一色のものではない」。
これまで見た事がない岡本監督の怒りを感じました。
それが今日この文章を読ませて頂けて…仲代さんは怒りの矛先が戦争だけではなく映画が作られた頃の若者に向けられたものではないかと読み解きます。
「危機感も知らずに泰平ムードに酔っている」。
映画が作られた昭和43年。
高度成長期若者たちは豊かさに浸りきっていました。
その若者たちへの思いが映画「肉弾」のラストシーンに表れています。
右後方敵空母一隻接近!ドラム缶に魚雷をくくりつけた主人公あいつは結局特攻には成功せず終戦後も漂流を続けます。
そして終戦から20年余りたった昭和43年。
若者たちが遊ぶ海岸にあいつが流れ着きます。
ねずみのバカヤロー!うさぎのバカヤロー!バカヤローバカヤローバカヤロー!今映画「肉弾」のメッセージを読み解こうという動きが出ています。
この大学では岡本監督の作品を通じて戦争と平和を考える授業を行っています。
この日学生たちは映画「肉弾」のラストシーンの意味を考えていました。
学生たちからは岡本監督のメッセージが現代への警鐘ではないかという意見が相次ぎました。
学生たちは映画「肉弾」の上映会を開催しました。
自分たちが感じたメッセージをより多くの若者に伝えたいと思ったのです。
「肉弾」を作る前にこういう事をおっしゃってた。
…と言ってる事を今読ませて頂いて多少びっくりしたんですけど…橋本さん。
はい。
新たな手記が見つかって岡本監督の戦争への怒りそして若者へのメッセージというものが記されていました。
私もいろいろな文献を調べてきた訳ですけれども非常にシャイで婉曲な表現しかしない監督なのでこういった戦争に対する直接的な怒りっていうのは正直驚きました。
手記から読み解ける「肉弾」で監督が伝えようとした事っていうのはどのような事だったと…?あのエンディングでですね骸骨の意味っていうのを考えた時に音声としては「バカヤロー」という言葉が入るんですけれどもその「バカヤロー」が一体誰に向かってなのか。
国に対してなのかあるいは戦争に対してなのか死んだ恋人に対してなのかそれとも平和ぼけをしている若者に対してなのか。
それを自分で考えろっていうそういう映画だと思います。
戦後70年たった今の社会で生きる若者たちが再び読み解こうとしていました。
どのようにお感じになりましたか?今の若者たちですねある意味で言うと戦争に対するいろいろな意識を持ってデモを行ったり自分の主張をするという若者も今増えてきてる訳です。
ところが大多数の若者っていうのはそういったものに対してですねどう行動したらいいのか分からない。
そういった人たちが大多数だと思うんですね。
こういった映画を見てそれによってですね結論は提示されてない訳です。
それを自分たちの問題としてちゃんと引き受けてどのように心に刻んでいくか。
これが一番大事な事でそれを多分岡本監督は望んでるんじゃないかっていうふうに私は思います。
ありがとうございました。
2015/12/17(木) 15:15〜15:41
NHK総合1・神戸
ろーかる直送便 フェイス「岡本喜八 現代へのメッセージ」[字]
戦後70年を迎えた今年、映画監督・岡本喜八さん(鳥取県米子市出身・享年81)にスポットが向けられている。喜八監督の魅力と現代へのメッセージをひもとく。
詳細情報
番組内容
戦後70年を迎えた今年、反戦映画を撮り続けてきた映画監督・岡本喜八さん(鳥取県米子市出身・享年81)にスポットが向けられている。自らの戦争体験を元に、戦時下でも笑いや楽しさを忘れずに生きる人々を描くことにこだわり、戦争の理不尽さを訴えてきた。全国の映画館などでは、喜八監督の映画を特集した上映会が開催。特に関心を寄せているのが、若者たちだ。再注目される喜八監督の魅力と現代へのメッセージをひもとく。
出演者
【ゲスト】神戸芸術工科大学・芸術工学部…橋本英治,【出演】俳優…仲代達矢,岡本みね子,明治大学・国際日本学部教授…吉田悦志,【司会】出山知樹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映画 – その他
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