美の壺「クリスマスのテーブルセッティング」 2015.12.17


(テーマ音楽)これでよしと。
草刈さんどうしたんですか?今夜はねクリスマスの特別なディナーを用意してるんです。
ほら部屋は飾りつけたしおしゃれもしたしおいしいワインもほら。
実はね七面鳥がもうすぐ焼けるんです。
へえ〜!やればできるじゃないですか。
ところがね何か足りないんですよね。
何でしょう?あっそうだ!明かりだ。
おなじみのクリスマスの風景です。
サンタや豪華なツリーもいいですが…。
もう一工夫でいつもと違う楽しみ方ができます。
食器やクロスを組み合わせて食卓を飾るテーブルセッティング。
特別な夜を演出します。
テーブルセッティングやマナーを学ぶ教室。
教えるのは3年前にイギリスから帰国した真由美チャップマンさん。
イギリス王室の作法をもとにしたモダンで上質なセッティングが得意です。
この日のテーマは「貴族のようなクリスマス」。
近代上流階級の洗練された華やかさを出しています。
色の組み合わせにご注目下さい。
クリスマスの定番赤と緑をひねって赤を紫に緑を黄緑に変えました。
そして高さ。
ナプキンをキャンドルのように細長く丸め立体的な空間を作り出しています。
見せるだけのテーブルデザインだったら多分誰でもできると思うんですが特別な場に行った時に意外とテーブルって小さいんですね。
毎回大きいとは限らないんです。
そういう時にいろんなマジックがあって。
クリスマスのテーブルセッティングには心に留めたい三つのポイントがあります。
一つ目は家族で大切にしてきた「ナイフやフォーク」。
次にイエス・キリストの誕生を祝う純白の「テーブルクロス」。

(歌声)そして集った人の心をつなぐ中央の飾り「センターピース」。
深い歴史を持つこの三要素。
全てそろえば奇跡の夜も期待できるかもしれません。
まずはテーブルクロスから。
お皿やグラス銀器が並ぶテーブル。
意識したいのがその下に敷かれた陰の主役テーブルクロスです。
単なる白い布と侮るなかれ。
そこにはある歴史が隠されています。

(聖歌)カトリック本郷教会。
日曜日に行われるミサはキリストが弟子たちと共にした「最後の晩餐」に由来する儀式。
その食卓を表すのが祭壇です。
上に掛けられているのが「祭壇布」と呼ばれる白いクロス。
白は神の栄光や清らかさを表す特別な色です。
素材は亜麻という麻を用いています。
全世界のカトリック教会では私が子供のころ50年ぐらい前まではどこの教会でも長い習わしに従って亜麻布の祭壇布を用いていたんですね。
そういう考えですね。
祭壇は信者がキリストと一緒に囲む食卓だったのです。
更に亜麻布はキリストを十字架から降ろす時に包んだ聖なる布でもあります。
真っ白い亜麻のテーブルクロスにはキリストに関わる深い意味が込められていました。
今日最初の壺。
伊豆にある老舗ホテル。
ここでもテーブルクロスの正統性を大切にしています。
多くのホテルやレストランが綿や化学繊維に切り替える中白い亜麻のクロスを使い続けています。
ホテルの歴史を知り尽くすベテランです。
この白いクロス自体も開業して昭和11年から継続して78年間続けられておりますけどもこれはこのホテルをつくられた大倉男爵様この方の意向が生きてると思いますね。
やはり英国紳士であられたので英国風のサービス備品をやっぱりご希望され…どんな時代のもとでも受け継がれた白い亜麻のクロス。
正統性に加えて重要な点があるといいます。
麻の特質性と申しますのがお客様のためにいいのがこのグラスお客様が初めてお使いになった時にはしわがありませんけどこれを1回グッと押しますともう跡が残ってしまいます。
もう次のお客様には使えません。
従いましてこのテーブルは次のお客様のために新しく全てをセットし直す。
日本の皇室やイギリスの王室などでは今も正式な晩餐会には白い亜麻のクロスといいます。
私たちがよく見る麻布と正式な場で使われるクロスを比べてみましょう。
素材は同じ亜麻ですが織り方が違います。
左は縦糸と横糸を交互に織る平織り。
右はしゅす織り。
3センチ四方に200本近い細い糸が織り込まれています。
麻なのに絹のような光沢。
肌触りもとっても柔らかです。
同じ白でも豊かな白です。
早朝の日を受け清らかに輝く白。
夜キャンドルの明かりに浮かぶ白。
クリスマスの夜には白いテーブルクロスの意味をかみしめてみるのもいいかもしれません。
明かりつきましたね。
う〜んクリスマスといえばキャンドル。
いい雰囲気でしょう。
ほんとロマンチック。
光だけじゃなくて影もいいでしょう。
しかし何だろう…。
何か忘れてるような気がするんだよな。
またですか?う〜ん…。
何かしら?あっ音楽だ!次はナイフやフォークスプーンなどカトラリーです。
年に一度のクリスマス。
西洋の食卓でマダムが得意げに出してくるのが銀製の年代物。
なぜ銀なのか。
骨董店を訪ねました。
こちらでは銀器の文化が最も発展した18世紀から20世紀までのカトラリーを扱っています。
19世紀ヨーロッパのもの。
デザートに砂糖をかけるためのスプーンです。
手の込んだ透かし彫り。
イチゴにクリスマスの魔法をかけます。
焼き菓子をつかむためのトング。
女性の手になじむ繊細な作り。
ブドウは豊穣を表すモチーフです。
アンティークシルバーには一方ならぬ哲学を持っています。
教科書に書いてあるような歴史っていうのはやっぱり一つの非常に大きな歴史として書かれているので身近なもんじゃないわけですよね。
ところがこういうふうに自分が目にしてこうやって日々手に取れるようなものとしてね歴史を見始めるとすごくビビッドで立体的なものになるわけですよ。
これ1772年のスプーンですけれども紋章が入ってるわけですね家のですね。
更にこの紋章の上には個人の人のイニシャルが入っているわけですね。
こういう昔のですね古い時代の銀のスプーンを使ってこうやってスープを飲むというね喜びがですね歴史に直結する扉だというふうに考えて頂ければいいと思いますよ。
銀器には家や家族のたどった時間が刻まれています。
今日二つ目の壺。
昭和の初めから上質な銀製のカトラリーを作り続ける東京の工場。
1枚の銀の板から1本のスプーンを完成させるまでおよそ20もの工程があります。
1本数万円もする本格的なスプーン。
欧米の物にも引けを取らないデザインと技術の結晶です。
しかも50年100年後にはどういうふうになってるかと。
それがもうこだわりの銀食器作りなんですね。
使い続けるためには耐久性も重要。
その秘訣は銀の純度にあると上田耕造さんは言います。
意外と皆さん純銀のほうがいいと。
純に近けりゃいいっていう感覚がどうしても抜けないんですね。
ところがカトラリーは最も使いやすさそれから光沢それから機能あらゆる面で「シルバー925」が最も優れてると。
シルバー925とは銀に銅を7.5パーセント混ぜた合金。
純銀より高い強度を生み出します。
もう一つ工夫があります。
熱を加えることで金属を軟らかくします。
それを一本一本たたくことで結晶組織が緻密になりより硬い丈夫なカトラリーが出来ます。
金属をたたいて硬くするのは刀鍛冶と同じ伝統の技法です。
硬く引き締まったフォークにはこんな特徴も。
これうちで作ってるフォークですけども音を聞いて下さい。
(響く音)こんな音がするんですよ。
(響く音)澄んだ響きと輝き。
スプーンは100年後誰に使われているのでしょう。
(子供の笑い声)カトラリーを磨いたことはありますか?はい持ってきたよ。
草原多留砂さん一家は銀仕上げのカトラリーを大切にしています。
毎年クリスマスを前に念入りに磨くことが草原家の決まりです。
終わった。
ほら見て。
きれいになった。
映る?見える?うん。
逆さまだけど。
逆さまだけど。
ほらきらきら。
きれい。
きれいになったね。
多留砂さんのお母さんが30年以上前にあつらえたカトラリー。
家族が増えるたびに子どもたちのイニシャルを入れて今もプレゼントしています。
この人たちが結婚する時もまた持ってってくれればいいなぁ。
大成功かなと思いますけど。
イニシャルが入ってることで娘たちも愛着を持って使ってくれてるので多分大人になって「要らない」って言わないんじゃないかなと。
要らなかったらもらっちゃうけどね。
いい?もらっちゃっても。
ダメ!母から子へそして孫へ。
クリスマスを前に磨くことで家族の歴史がピカピカに光ります。

(「WhiteChristmas」)・「JustliketheonceIusedtoknow」これで音楽も決まりましたね。
フフフッ。
やっぱりクリスマスソングを聴くと盛り上がるでしょう。
ふ〜ん…でもまだ何か足らないような。
う〜ん…。
最後は卓上の飾り「センターピース」。
クリスマスならではのメッセージを込めた演出をご紹介しましょう。
センターピースでうたげのテーマを伝えます。
テーブルマナーと食卓芸術に詳しい今田美奈子さん。
家庭でも応用できるクリスマスのセンターピースを見せて頂きました。
定番の一つ陶製の人形。
ただかわいいからではありません。
テーマは「ノスタルジー」。
クリスマスを待ち焦がれたあのころを思い出しましょうという提案です。
招かれた方々が幸せな家庭をイメージするような人間の生活の理想の姿ですね。
そういう心の平安のためにお人形をよく使うことがあります。
お菓子の家。
メッセージは「子供たちのためのクリスマス」。
これをお子様のパーティーだったらばこのお菓子を手作りしてここに飾ってあげる。
ということは子供心にとって小さい時の思い出に大変強い記憶として心に残ると思うんですね。
家族の柔和な生活というものは食卓を囲む時のセンターピースに表現されていくべきだと思うんです。
センターピースには心を動かす仕掛けがあるのです。
今日最後の壺。
東京・銀座のフレンチレストラン。
サービスの腕を競うコンクールで審査員を務める給仕のプロです。
熟練のセンスで作るクリスマスのテーブル。
特別なテーマで考えてもらいました。
もてなすのは来年結婚30年を迎える夫婦です。
この花はクリスマスリースになってます。
この緑はヤドリギといってヨーロッパでは天使が宿る植物と言われてるそうなんでクリスマスを私なりに表してます。
ご結婚29周年というカップルのお食事なので銀婚式から真珠婚というつながりでこのガラス玉は29個置いてあります。
田中さんのアイデアが詰まったクリスマスのテーブル。
反応はいかに?佐藤さん夫妻がやってきました。
お世話になります。
銀婚式の銀から真珠婚の30年までの間ということで銀と真珠でご用意させて頂きました。
きれいですね。
ありがとうございます。
おいしい料理と心尽くしの演出。
センターピースのテーマは「共に過ごした時への感謝」でした。
忘れられないクリスマスのディナーになりました。
来日して12年になるメサさん一家。
ふるさとドイツのクリスマスはどんなものなのでしょうか。
作っているのはクリスマスに欠かせないセンターピース「アドベンツクランツ」。
「アドベント」とはキリストの到来を待ち望む期間のこと。
4本のキャンドルをリースにさし4週間前から日曜日ごとに1本ずつ火をともしていきます。
もうすぐクリスマス。
そんな気分が高まります。
クリスマスは私たちのために最も最大な祭り一年間の最大な祭りですので私たちの家族はおばあちゃんたちもそうだし母もそう作りましたけど今私も子供と一緒に毎年アドベンツクランツとか準備します。
完成したアドベンツクランツは食卓へ。
イエ〜イ。
(拍手)キリストを待ち望む歌を歌いながら1本目に火をつけます。
アドベントの4週間毎日卓上に置かれ食事のたびに火をともすことを繰り返します。
センターピースを囲み重なる家族の心。
今年も無事クリスマスがやってきます。
飾りつけたでしょ?おしゃれも音楽も。
テーブルセッティング完璧。
え何だろう?心の中にぽっかり穴が開いたような…。
(チャイム)参ったな。
・ただいま。
草刈さんチャイム鳴ってますよ。
(チャイム)・ただいま。
ピンポン…ただいま…?・あ〜おなかぺこぺこ。
そうか!足らなかったのはこれだ!えっまさか!お帰り〜。
待ってたよ。
足りなかったのは奥さんって…。
メリークリスマス。
今月開かれたバドミントン全日本総合選手権。
2015/12/17(木) 00:40〜01:10
NHK総合1・神戸
美の壺「クリスマスのテーブルセッティング」[字]

身近なテーマを中心に3つのツボでわかりやすく観賞指南する新感覚美術番組。今回はクリスマスのテーブルクロスやカトラリー、飾りまで!案内役:草刈正雄 語り:木村多江

詳細情報
番組内容
今年のクリスマスは、食器やテーブルクロスで食卓を飾る「テーブルセッティング」に挑戦してみませんか? テーブルクロスの色や素材に秘められた、カトリック教会の深い意味とは? 銀のナイフやフォークに隠された、家族の歴史とは? 食卓上の飾りに、西洋人が込める象徴的な想いとは? 伝統からモダンまで、色使いや、品の良さ、心地よい驚きなどの技はもちろん、食卓を囲む皆の心が通い合う、テーブル演出術をご紹介します!
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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