今日は認知症の方々にお集まり頂きまして認知症の人にしか語れない率直な思いをお聞きしています。
引き続き重松清さんと小島慶子さんにご一緒にお話を伺っていきます。
よろしくお願いします。
(2人)よろしくお願いします。
いのっちどうですか?ここまで聞いて。
そうですね。
何でしょう…僕はもういろいろ番組とかでも扱ってきた題材ですしちょっと知った気になってたようなところもあるんですけどやはり当事者の方たちのお話を聞くと全然自分は分かってなかったなって部分もありましたね。
今回寄せられた中で最も多かったのがこれまでできていた事ができなくなる事への不安や悲しみというお便りでした。
ご紹介します。
こちらの香川県に住むある男性からのお手紙なんですが「言葉をどんどん忘れていくことがとてもつらいです。
人とうまくコミュニケーションできなくて疎外感を感じています。
また体調が悪くても症状を的確に言えないし医者がいう事もよく理解できません。
将来どうなるのかこれが一番の不安」。
…という事なんですがこの男性の日常を取材させて頂きました。
将来への不安をメールにつづってくれた…認知症と診断されて4年になります。
最近はたまねぎや大根と言われてもそれがどのようなものなのか分からなくなってきました。
症状が進行し言葉の意味を認識する事が難しくなっているのです。
野菜の写真を貼り付けたノートでそのつど確認している好井さん。
これまで当たり前にできていた事ができなくなっていく…。
好井さんは認知症の進行を遅らせる事につながればと2年前からある事を始めました。
毎日楽しみに読んでいる新聞の記事を書き写す事です。
まず初めに平仮名で書き写しそのあと漢字の交じった文章に書き直します。
書けなかった漢字は印をつけ改めて確認しています。
(好井)これをできるだけもっと書く事ができるようにせないかんかなと思いよってもなかなかできてないんで。
思いどおりにならない現実。
それでも好井さんには大切にしたいと思っている事があります。
30年以上にわたって小学校の教師をしてきた好井さん。
定年を迎えその後認知症になってからも子どもたちと関わり続けてきました。
中でも楽しみにしてきたのが自宅のみかん畑で行う体験学習。
子どもたちとのコミュニケーションが次第に難しくなる中いつまで続けるべきか心は揺れています。
今年も体験学習の日を迎えました。
子どもたちにうまく教えられるよう事前に寄せられた質問に対して詳しい回答を準備してきました。
好井さんは体験学習が始まる2時間前から何度もリハーサルを繰り返します。
「夏の暑い時に…」。
子どもたちがやって来ました。
こんにちは。
(一同)こんにちは〜!こんにちはどうもね。
(先生)よろしくお願いします。
(一同)よろしくお願いします。
好井さんは今年も先生として子どもたちに教える事ができました。
はいどうぞ採って下さいよ。
(先生)どんどんいきましょう。
採って食べて下さいよ。
おいしい!あっおいしいですか?はいはいどうも。
認知症が進んでもできる事を精いっぱいやる。
子どもたちとの再会を信じて好井さんはまたみかん畑の準備に取りかかります。
やっぱり子どもたちが現れた瞬間の笑顔っていうのは何かね。
やっぱりこのまま続けてほしいなというふうに思いましたね。
ねえ本当に。
どうでしょう?皆さんどのように感じましたか?リハーサルされてましたもんね。
あれだけ人の前でお話をスラスラされてた教職にあられた方が2時間のリハーサルするというそういう前向きな事もやっぱりすごいなと思いますしそこまでなってしまったのを自分で自覚してそれでもやっぱり前に前にトライしてちゃんとやるっていう気持ちでされてるところはすごいなと思います。
丹野さんは今のVTR。
やはり不安とか恐怖っていうのは完全には取り除く事はできないと思うんですね。
でも私もやっぱり将来の事を考えると不安ではありますけど私の場合は一日一日楽しく生きる事を常に考えてるのでやっぱりこれから先の事はあんまり考えるとやっぱり不安しかないですね。
その…全部ではないけれどもいくつかの能力が落ちてくる訳ですよね。
その時にそれを正常に戻さなくちゃいけない。
ものすごくストレスだと思いますし苦しい事だと思うんですよ。
そうじゃなくて別に忘れたっていいじゃないか。
忘れる事の何が悪い。
その人の足りなくなってるところそのままでいいよって認めてあげる。
でもほかにもっといいところいっぱいあるんだからそこを生かしてねっていうふうに。
要するにできないとこはできないままで何にも問題ないよっていう社会になってほしいです。
そうですね。
むしろ逆にほかに目を向けた事で新たなできる事が増えていくっていう可能性もたくさんありますもんね。
(口)はいそうですね。
今いろんな事話して頂いたんですが実は世界に目を向けますと認知症の人たちと一緒に考える事で認知症になっても暮らしやすい社会の実現に取り組んでいるというところがあるんです。
はい。
認知症の人たちが暮らしやすい社会をどうしたら実現できるか。
先進的な取り組みで知られるスコットランドです。
その原動力となってきたのがほかならぬ認知症になった本人の声。
13年前認知症の人たちが集まって当事者団体を設立しました。
合言葉は…自治政府の政策づくりに積極的に関わりいくつもの支援策を実現させてきました。
前に首相が患者と言ったので修正を求めました。
患者という言葉については2002年からキャンペーンを続けてきましたが報道機関はこの言葉が好きなようです。
私たちは病気ではなく人として見てほしいのです。
首相がここに来れば改善すべき点をきっちり教えてあげられるのにな。
(笑い声)認知症の人たちが自らの手で実現させた政策の一つが診断されたその日から始まる支援。
診断後の絶望や孤立を防ぐ事がその目的です。
ハロー!カムイン!この制度では認知症と診断された全ての人にリンクワーカーと呼ばれる専門のスタッフが派遣されます。
リンクワーカーは悩み事の相談から利用できる行政サービスの紹介まで1年をかけて生活の基盤を整えていきます。
あなたが半年で死ぬ事はないと言ってくれてほっとしました。
私も覚えています。
認知症の人と家族にとってどこにどんな支援があるのかはなかなか分からないものです。
時間をかけてその人について知り関係を育てていきながら認知症とよく生きるための支援やアドバイスを提供するのです。
私たちも一緒に考えたい。
去年10月日本でも認知症の人たちによる当事者団体が設立されました。
これまでは認知症を巡る議論から本人自身が置き去りにされてきたからです。
こうした声は国を動かしました。
今年1月に発表された認知症の新しい国家戦略。
そこには政策づくりやその評価に認知症の人自身が積極的に関わっていく方針が盛り込まれたのです。
認知症の人たちと一緒に考えていくっていうのがやっぱり悩みだったりとかこういうものが欲しいんだっていう意見だったりとかも聞ける訳ですからそれは大切ですよね。
さっきから出てるリンクワーカー制度も一つの方法だとは思うんですけどね。
早くやっぱり何かそういう具体的な制度というものを作っていく。
そのためには要するに当事者がもっと声を上げて運動していかないとなかなかそうはならないと思うんですけどね。
これからの課題だと思うんですけど。
丹野さんは去年10月に認知症の人の会を立ち上げるってところに参加されてますよね。
そうですね一緒に参加しております。
でも私たちは全てやってもらいたい訳ではなくてできない事だけ本当にサポートしてもらってできる事は一緒にやってほしくて。
支えてる支えられてるというよりは私ができる事はしてあげるし私ができない事はしてもらうという対等な関係なんですよね。
結局今までだとサポーターサポーターっていう事でサポートしてもらえるっていう考えの人が多かったんですけどそうすると何でもしてあげなきゃって思ってる人が多かったんですよね。
相手もよかれと思って何かをやってあげる事が逆にその…やりたい事を奪っていってしまうという話は…。
普通にやれたら一番本当はいいんだけどどうしてもやっぱり言われた事に対して少しどうしてもこうすぐに答えられないとかそういうのでもう向こうが一方的に決めてしまって出来上がってしまってるんですよねどこかで多分。
そのやりたい事が。
それにはやっぱり本音を聞き出してほしいし聞いてほしいっていう。
怖がっちゃ言えなくなるんでやっぱり怖がらないで「僕は認知症です」ってはっきり言ってで相手が「ああそうなの」っていう事で普通に暮らせるようにこう…目線っていうんですか同じような目線になって楽しくやっていけたらっていう気持ちはねあるんで。
そうなったらいいなと思います。
(永田)ここで今日本当に思いを語って下さったけれども番組が募集してもっとかなりの多くの人が声を寄せて下さったんですよね。
今日紹介されてないけれどももう…。
みんなチャンスがあれば思いをもっと出せるしそのチャンスを…声を聞いておしまいにしないで是非チャンスを一緒に作って広げてほしいなと思います。
実はこの番組であるチャレンジを致しました。
チャレンジ。
東京・町田のデイサービスの皆さんたちと一緒にですねなんとポスターを作る事にしました。
ポスター。
認知症の人が発信するために。
へえ〜。
さあそのポスター。
どうなったんですかね?どうなったんでしょう?どうなったんですか?認知症の人たちから寄せられた数多くの声。
その思いをポスターを通じてできるだけ大勢の人に届けたい。
番組では東京・町田のデイサービスDAYSBLG!と一緒に制作を始めました。
早速議論になったのはポスターを通じてどんなメッセージを伝えるか。
次々に出されたメッセージのアイデア。
メンバーから一つにまとめるのは難しいのではないかという声が上がりました。
多様な認知症の人たちの思いをどうしたら伝えられるか。
デザイナーがこれまでの議論を形にしてきました。
メッセージを一つに絞らずそのまま載せるというのです。
更にこんなアイデアも。
声を出せずにいる認知症の人たちが自分の意見を自由に書き込めるようにしたのです。
何かすごくいいアイデアですよね。
ねえ。
ええ。
小島さんも重松さんもどうですか?これ。
(重松)いやよかったしこれだけの多様な声があり多様な事情がありっていうのを本当にビジュアルでも分かる訳じゃない?いいなと思った。
確かに。
そうですね。
(小島)私もねもし自分が認知症の当事者だったらほかの人の意見聞いて「ああそうだよな。
分かる」って思う一方で「でも私にも私で意見があるんだけどな」ってやっぱり思うと思うのでそれをその場でね貼れるっていうのはいいですね。
そうですね。
感じ方もそれぞれ違う訳ですからね。
実際貼らなかったとしても貼ってもいいんだよってメッセージを受け取るだけでもすごい違うと思うんですよね。
たくさん余白がまだあるって。
まださ聞き取れていない声がたくさんあるんだぞっていうメッセージにもなってると思うしね。
そうですね。
本当にそうですね。
じゃあせっかくですから今ここでメッセージ書いて頂きましょう。
あっお願いします。
お願いします。
皆さん。
ここでじゃあこの場で一つ作り上げられるっていう事ですね。
まさに今ここで伝えたいメッセージを書いて下さい。
今伝えたい事で。
何でもいいですか?何でもいいです。
じゃあお一人ずつ伺っていきましょうか。
メッセージに込めた思いをね。
どなたからいきましょうか?町田さん?町田さん。
町田さん。
あ〜すばらしい。
さあ続いて杉本さん。
杉本さん。
あ〜いいですね。
あ〜!いい。
かっこいい。
「私は青山だ」。
(青山)「私は青山だ」です。
かっこいいです。
更に増やしていくっていう事ですね。
続いて福田さんお願いします。
あの絵の上にちょうどメッセージとしてあってもよさそうな感じですね。
気持ちはもう本当に頑張って生きていくっていう…。
でもやっぱり心は柔らかくありたいなって。
なるほど。
さあ続いて口さん。
全然皆さんほかの方と何も変わらない普通の人。
ただそれぞれ病気によって違いがありますけどそれぞれちょっと障害がある。
ちょっと障害があるけれどもその障害をなんとか一生懸命乗り越えながら生きている普通の人だという事を理解して頂きたいです。
なるほど。
続いて丹野さん。
あ〜なるほど。
できる事はそのままやらせてっていう事ですね。
さあいのっち今日本当にしっかりというかじっくり認知症の人たちとお話まさにじかに伺ったんですがどうですか?そうですね。
もちろん今日まず一番最初に今日皆さんとお会いできて本当によかったなっていうのと楽しい時間だったなっていう気持ちなんですけど。
口さんがおっしゃるようにみんな普通だっていうみんな同じだよっていう事が本当によく分かったんですよね。
なので本当にそういった意味でも皆さんに今日お会いできてよかったなと思うし単純にお話しできて楽しかったです。
ありがとうございます。
2015/12/14(月) 22:55〜23:20
NHK総合1・神戸
NHK認知症キャンペーン わたしが伝えたいこと〜認知症の人からのメッセージ2[解][字]
“認知症の人たち”をスタジオに招き、さまざまな課題を徹底討論。本人の視点から“認知症になっても、より良く生きられる社会”の実現に向けたヒントを探る。
詳細情報
番組内容
「認知症の人=何もわからない」として、施策の大半を“本人以外の第三者”の声に基づいて決めてきた日本。一方、世界では、認知症の人自身が政策決定に積極的に関わることで“認知症になっても、より良く生きられる社会”を目指している。番組では“認知症の人たち”をスタジオに招き、認知症を取り巻く様々な課題を徹底討論。本人の視点から「認知症と共に自分らしく暮らせる社会”の実現に向けたヒントを探る。
出演者
【出演】井ノ原快彦,小島慶子,重松清,【司会】山本哲也,【語り】ayako Halo
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 社会福祉
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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