「きょうの健康」今日と明日は「ストレスと腹痛・下痢・便秘」と題してお伝えします。
まずはよくあるケースからご紹介します。
会社員で34歳のAさん。
通勤電車の中で必ず腹痛に襲われ下痢になる事がよくあります。
いつでもトイレに行けるよう各駅停車にしか乗れません。
気が付いたら各駅のトイレの位置を全て把握していました。
一方大学生で22歳のBさん。
期末試験の前になると必ずひどい便秘になり4日以上排便がない事もあります。
せっかく勉強しても試験の当日はいつも腹痛が起こりどうしても試験に集中できません。
程度の違いはあるかもしれませんが思い当たる方いらっしゃるかと思います。
下痢と便秘全く逆の症状なんですがどちらも過敏性腸症候群という病気によるものかもしれないという事なんです。
2日間にわたってお伝えしますけれども今日のテーマはこちら「過敏性腸症候群とは?」という事でお話伺います。
お話は東北大学大学院医学系研究科教授福土審さんです。
心療内科医で過敏性腸症候群の診療や研究に携わってこられました。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願い致します。
この過敏性腸症候群なかなか難しい病名ですね。
名前は難しく聞こえるかもしれませんけど会社や学校へ行こうとするとお腹が痛くなったりそれから試験や面接前に急にお腹が痛くなって下痢になってしまう。
それから出張したり就職面接で遠方に行く事があると便秘になってしまうと。
つまりこれらはストレスがかかると下痢になったり便秘になるという経験をされた事がある方はよくいらっしゃるんじゃないかと思うんですね。
そして検査しても腸に異常が見られない。
そしてこうした症状が1回では終わらずに慢性的にずっと繰り返されるのが過敏性腸症候群です。
日本人のおよそ10%から20%がかかっているといわれています。
多いという事ですよね。
ええ大変多い病気なんです。
なかなかつらいと思うんですけどなぜストレスが便通に関係するのかそちらの模型で説明をして頂けますか?はい。
腸は食べ物を消化して便を形成する場所です。
実は腸は脳と自律神経によってつながっておりましてお互いに密接な情報のやり取りを行っているんですね。
食べ物が…これ食べ物ですけども小腸から大腸に送られてまいります。
そしてこの自律神経を介して大腸の動きがコントロールされている訳です。
このように少しずつゆっくりと水分が吸収されながらこの便ができていきましてそして最終的に排せつされるという事で健常な便が排せつされる訳です。
はい。
しかし脳が過剰なストレスを感じますと脳の中でストレスに関係するホルモンが分泌されます。
このホルモンがこの自律神経を刺激致します。
こうして自律神経を通してストレスが腸に伝わる。
そして腸の動きに異常が起こるという事がこの過敏性腸症候群の成り立ちです。
この腸の押し出す働きが非常に速い場合非常に速く先ほどよりも随分速く過ぎてしまうと通り過ぎてる間に水分が吸収されません。
そして下痢が起こってしまうという現象が起こります。
動きが速い場合。
そうです。
そして腸の動きが乱れてしまってこの送り出す力がうまくいかなくなりますと水分が非常に吸収され過ぎてしまいまして便秘になってくるという症状が起こってきます。
乱れた場合こんなふうになってうまく出ていかないんですね。
そうです。
じゃあ先ほどのAさんとBさんの場合どうなんでしょうか?このAさんは電車に乗った時にそしてBさんは試験の日の前にいつも腹痛が起こっていますね。
これはトイレに行けない状態に置かれている不安ですとかそれから試験前の緊張がストレスになって脳から腸に作用しているからだと考えられます。
その…ストレスと一口に言ってもいろんなストレスがありますよね。
過敏性腸症候群を引き起こす可能性があるストレスの種類としてよく見られるのはこの…さまざまです。
これらのストレスを本人がストレスだと自覚しないままに感じて症状が起きているという場合もあります。
そのストレスが大きな原因という事でしたけどじゃあその腸自体の機能としてはそんなに影響してないんですか?実は腸自体にも原因があるんですね。
過敏性腸症候群は心だけが原因で起こる病気ではないんです。
腸が通常よりも敏感になっておりますので普通の方でしたら我慢できるようなちょっとした刺激にも腸が反応してしまいます。
このために腹痛それから下痢便秘といった症状が起こると。
どうしてその腸は…敏感になってしまうんですか?実はこれは大きく2つ考えられます。
まず一つは感染性腸炎というものです。
これは細菌やウイルスに感染してこの感染性腸炎を起こしますと腸が炎症を起こします。
治療をする事で治ったように見えても軽い炎症が続いてる場合がありましてこの時に腸が過敏になるのです。
はい。
感染性腸炎の主な原因ですけれども卵が感染源になるこのサルモネラ菌。
それから鶏肉が感染源としてよく知られているこのカンピロバクター。
そして赤痢菌などのこういった細菌ですね。
またノロウイルスのようなこのウイルスも感染性腸炎の原因になります。
ノロウイルスに感染してこの感染性腸炎にかかりますと治ったあとも軽い炎症が続いて過敏性腸症候群になりやすいという事も分かっています。
でもどうなんでしょうか例えばですよこのサルモネラ菌ですとかノロウイルスに感染したとしますよね。
そしたらみんな過敏性腸症候群になってしまうんでしょうか?そうじゃないんですね。
過剰なストレスがなければ発症する事はあまりないと考えられています。
ストレスが非常に過剰にかかってる人それから神経質な人は感染性腸炎をこれをきっかけにして過敏性腸症候群になる事が考えられます。
感染性腸炎によって敏感になった腸に自律神経を介してこのストレスによる刺激が加わると腹痛それから下痢便秘が起こって過敏性腸症候群が発症してくるというように考えられています。
そうするとストレスそして腸炎とその両方がやっぱり関わってくるという事ですか?ええそうなんですね。
もう一つは腸内細菌というものが大事です。
これは服用中の薬によって…。
例えばどんな薬ですか?例えば抗菌薬などこういったものの影響で腸内に生息する腸内細菌の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れてこの悪玉菌が多くなってしまうと。
こういう事態が多くなってまいりますと…悪玉菌の毒素でって事ですね?ええそうですね。
またストレスによって腸内細菌の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れるという事も最近明らかになってきています。
でも一回例えば便秘とか下痢もちょっとつらいのに繰り返すというの非常につらいと思うんですけどどうして慢性的になってしまうんですか?そこが先ほども説明しましたように過敏性腸症候群はこの過剰なストレスによる刺激がこの自律神経を介して敏感になった腸に伝わる事で発症してくるという訳です。
実はこの腸というのは第2の脳と呼ばれるくらいたくさんの神経細胞に囲まれておりましてそこから常にいろんな刺激が実は脳に送られてもいる訳です。
第2の脳なんですか?脳ですねはい。
特に腸が過敏になりますと脳に過剰な刺激が加わってしまうんですね。
するとその刺激が脳にとって大きなストレスになりまして更に脳から腸へ過剰な刺激が加わると。
そしてここでこの悪循環が起こってくる訳です。
こうして慢性化していくという事です。
慢性化するとやがて過敏性腸症候群からこのうつ病や不安症を発症するという事も分かっています。
実は過敏性腸症候群の患者さんのおよそ1/3がうつ症状を伴ってるという事も明らかになっています。
1/3の方が…。
ええ。
そうですか。
それにしても…どういう人がかかりやすいとかそういう事は言えるんですか?はい。
この病気は働き盛りの20代から30代に多い病気なんですね。
ちょうど親の保護下から離れて自力で社会生活を送っていかなくてはいけない年齢でたくさんのストレスがかかってくるからだと考えられています。
また…こういった人はストレスを感じやすく過敏性腸症候群にかかりやすいといわれています。
最初のお話で患者さんが10%から20%日本人はいるとおっしゃいましたけれどもどうなんでしょうか。
そういう方はみんな病院に行ったりしてるんでしょうか?実際は受診する方はむしろ少ないのが現状なんですね。
症状があってもそれは体質のせいだと思ったりあるいはその市販の下痢止め市販の便秘薬を使って我慢してる人も多いのが現状です。
そして過敏性腸症候群とは命に別状はない病気なんですが生活の質を大変著しく下げてしまうという病気なんですね。
治療が可能な病気ですので生活に支障がある場合には是非受診をして頂きたいと思います。
でもなかなか一過性かなと思ったりして病院に行くというのはやっぱりもう少し強い気持ちが必要だと思うんですけどどういう場合に…疑いがあると考えたらいいんですか?何でもかんでも病気にしてはいけないんですね。
しっかりした基準があるのでそれをお示ししたいと思います。
これらの質問に答えてみて下さい。
つまり…これが一つの目安になります。
3か月について9日以上症状があるような場合という事になります。
ある場合はこれから述べる3つの項目をチェックしてみて下さい。
まず1番目は排便する事でこれらの痛みですとか不快感がこのお腹の症状がやわらぐかどうかというそういうポイントです。
2番目のポイントはこれらのお腹の痛みやお腹の不快感がある時に排便回数が増える下痢方に傾くとかあるいはこれが減ってしまう。
排便回数が減ると便秘の方に傾くというそういうものですね。
それから3番目はこのお腹の痛みあるいは不快感がある時に便が軟らかく変わるあるいは硬い便が出てくる。
こういうものですね。
これらの3つの特徴的な症状がこの中の2つ以上があるものこれが過敏性腸症候群の可能性が非常に高い症状だという事が言えると思います。
月3日以上最近3か月間あると。
そしてそういう方でこの症状が2つ以上あると。
2つ以上ですね。
そういう場合にはその可能性があるので受診が必要という事ですね。
でもどこに行ったらいいのかという事になりますけども何科がいいんでしょうかしら?まずは地域の消化器内科の先生に診てもらうのがいいかと思います。
しかし過敏性腸症候群にはがんやそれから潰瘍などの目に見える病変はありません。
このためにあまり重視されない場合もあります。
こうした場合は専門医らが立ち上げた日本神経消化器病学会というホームページがありますのでそこに載っている役員名簿をご覧になって下さい。
先ほど過敏性腸症候群ではうつそれから不安症なども多いというふうに言いましたが…。
ええ1/3と…。
そうした重度の過敏性腸症候群になってきた場合は心理療法が必要になる事も多いのでその場合は心療内科が安心だと思います。
明日は治療についてまた福土審さんに伺います。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
2015/12/14(月) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 ストレスと腹痛・下痢・便秘「過敏性腸症候群とは?」[解][字]
腹痛・下痢・便秘などが慢性的に続く過敏性腸症候群は、過剰なストレスが自律神経を通して腸に伝わることで発症する。過敏性腸症候群について2回で詳しくお伝えする。
詳細情報
番組内容
腹痛・下痢・便秘などが慢性的に続く過敏性腸症候群は、過剰なストレスが自律神経を通して腸に伝わることで発症する。また、腸が過敏な状態になっているという特徴もあるが、その原因としては感染性腸炎や悪玉菌の増加がある。さらに、腸からの刺激が脳に伝わることでうつ病になる人も多い。症状が続くようならば、消化器内科・心療内科に行くことが勧められる。過敏性腸症候群について2回シリーズで詳しくお伝えする。
出演者
【講師】東北大学大学院教授…福土審,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:26038(0x65B6)