今回の「U−29」は…あれ?何か落とし物ですか?シジミがお友達という彼の正体は…4年前この山あいの町に移住してたった一人で鍛冶屋さんを始めました。
山仕事や農業をする地域の人たちに鍛冶屋さんは欠かせません。
しかし一人前になるには最低10年ともいわれる鍛冶職人の世界。
秋田さんはまだまだ失敗の連続。
何かうまくいってない商品が出回っちゃう事がやっぱ恥ずかしいですよね。
お客さんの期待に応えたいもののなかなか追いつかない実力。
秋田さんの孤独な闘いはどうなる?広島県北西部の山あいの町…県内で一番人口が少なく過疎高齢化が進む町です。
(取材者)おはようございます。
おはようございます。
この町で鍛冶屋さんを営む秋田さん。
廃業になった鍛冶職人の工房をそのまま譲り受け鉄製品を作っています。
農業や林業が盛んなこの地域では鉄製の道具が今も欠かせません。
この日作っているのは畑仕事をするためのクワ。
商品は全てオーダーメイドです。
角度が一応まあ55度と。
お年寄りが使うっていう事でちょっと軽めにやってくれっていう事だったんでそれは心がけてますけどね。
使う材質から柄の角度までお客さんが使いやすいよう一つ一つ考えながら作っています。
難しいのは鋼を強くするための焼き入れの作業。
失敗しかけたもののなんとか完成しました。
注文したのは近所に住むこちらの女性です。
秋田さんが一日半かけて作ったクワ2本お買い上げ。
1本1万4,000円です。
こちらになります。
ありがとうございました。
まあどうしましょう。
わ〜うれしい。
(取材者)どなたが使われるんですか?まだまだ修業中の秋田さんですが自分の手になじむ道具を求めてお客さんは通ってきます。
一から商品を作るだけではありません。
あれでも…そうです?はい。
頼まれたのはまき割り用のオノの修理。
かなり古いもののようです。
修理できるかどうか預かる事にしました。
ありがとうございます。
どうもお世話になります。
秋田さんは鉄で作れるものであれば見た事のない商品でもトライします。
こちらのお客さんに頼まれて作ったのはある装置の金具です。
私これを作ったんですよ。
この鉄板とパイプでこの部分だけ作らしてもらって。
実はこれサルよけの装置。
水がたまるとひもにつるしてある大きな袋が揺れてサルを驚かせる仕組みです。
お客さん自ら考案しました。
持っている技術で町の人のさまざまな要望に応える。
それが町の鍛冶屋さんの仕事です。
仕事を終えるのは夜7時。
自宅は工房から歩いて5分ほどの場所にあります。
家賃8,000円。
取り壊し予定だった空き家を借りました。
(取材者)壁ないんですか?そこ。
破格の家賃と職場からの近さで選びました。
地下にあるお風呂場へは懐中電灯を持って移動します。
気を付けないと。
ここまで来たらこれがつくんで。
(取材者)あ〜なるほど。
秋田さんが鍛冶屋さんを続けているのは何より鉄という素材にほれ込んでいるからです。
鉄との出会いは富山での大学時代。
芸術文化学部で鉄の加工の面白さにはまりました。
さまざまな加工技術を極めたいと形や質感の面白さを求めてアート作品を作る日々でした。
そんな時出会ったのが富山周辺で古くから使われてきた泊ナタという道具です。
独特の形が美しくしかもその形が役に立つ事が発見でした。
作っていたのは富山県に住む鍛冶職人。
泊ナタを極めた職人でありながら注文に応じてどんなものでも作る気さくさに秋田さんは驚きました。
鍛冶職人に強く引かれていた時ネットで目にしたのが安芸太田町で鍛冶屋さんの後継者を募集する記事。
迷わず応募しました。
念願はかなったものの奥深い鍛冶職人の世界。
見た事もない道具の注文も多く見本を取り寄せて作ってみるものの…。
(取材者)何か違いましたか?日々の道具の注文になかなか技術が追いつきません。
こちらが秋田さんの1週間スケジュール。
失敗を繰り返しながら作るので効率が悪くなかなか休みが取れません。
売り上げも不安定なのが悩みです。
年間ではギリギリ黒字ですが失敗が続く月は売り上げも減り赤字になってしまいます。
(シャッター音)
(シャッター音)この日の秋田さんは店先で写真撮影に夢中。
何のためかというと…。
秋田さんの得意技は鉄でやわらかい曲線を作る事。
この得意技を生かして何か商品を作りたいと考えています。
この日向かったのは幼稚園の秋祭り。
ここならふだんは鍛冶屋さんに来ない人たちに会えそうです。
どんな商品が売れるのか。
秋田さんはお客さんの反応を見る事にしました。
並べたのはやわらかな曲線にこだわった自信作。
おっ!お客さんが食いついてきましたよ。
そうっすね。
引っ掛けて使ってほしいなと思って。
持ってきたものに対する感想みたいなのとかいろいろ聞かせてもらったんで勉強になりました。
実用が100%ぐらいの道具も作りつつこういうちょっとたたずまいがいいなっていうような道具も作ってそういう体制でやっていこうと思います。
注文が入ったのは秋田さんが鍛冶職人を目指す原点ともなった泊ナタ。
左利きのお客さんのためにどちらの手でも使える両刃のナタを作る事にしました。
刃物を作る時に難しいのが切れ味の要刃の部分。
刃は鋼という硬い金属で作ります。
まず鉄を半分に割り間に鋼を挟みます。
そして鋼と鉄が一体化するよう熱してたたきます。
どれだけきれいに鋼と鉄が接合できているかがポイント。
うまく接合していないと隙間が出来てもろい刃物になってしまいます。
ここら辺のね膨れてたんですよポコッと。
それが熱で破れて。
直るかと思ってたたいたけど直らなかったんでやり直しですね。
これは捨てます。
新たな材料を使ってもう一度一からやり直します。
う〜ん…またもや失敗。
これまでに商品として泊ナタを作ったのはたった一度だけ。
形は頭によく入っていますがコツはまだつかめていません。
(取材者)どうして…?
(取材者)これも駄目ですか?どうしてうまくいかないのか。
とにかくやってみるしかありません。
作業を再開しました。
泊ナタの受け渡しが明日に迫ったこの日。
一本のナタを作るのにここまでに費やした鉄の材料は5本分。
そのうちなんとか2本がナタの形にまではなりました。
最後に刃を研いでみるまでは商品になるかどうかは分かりません。
(取材者)今のはうまくいった?お客さんに渡すのが明日だからちょっと一安心しました。
2本とも失敗してたら首切って死のうかと思ってた。
なんとか1本完成しました。
翌日。
泊ナタを注文したお客さんがやって来ました。
あれの見本にして…で両刃に作ってます。
ありがとうございます。
左利きに。
ちょっと心配なのがここが太すぎんかなっていうのを。
う〜ん…もうちょっと細い方がいいかもしれませんね。
じゃ今ちょっと削りますね。
はい。
本当にここしっかりないとスポッと離れたりすると危険なので。
お客さんが使いやすいよう最後の最後までベストを尽くします。
ちょっと握ってみて頂けます?いいですいいです。
もっと削り込めって言われたら大丈夫…。
でもまた何かあったらまた。
やっぱり使いにくいっていう事があって持ってきてもらったらその時に調整させてもらいますんで。
ありがとうございます。
今の自分にできる技術で可能な限りお客さんの要望に応える商品を無事に渡す事ができました。
そんな秋田さんが思い描く未来とは?そんな事…。
前よりよくなったですね。
2015/12/14(月) 19:25〜19:50
NHKEテレ1大阪
人生デザイン U−29「鍛冶職人」[字]
広島・安芸太田町の鍛冶職人・秋田和良さん(29)。廃業した鍛冶屋さんを4年前に復活させ、失敗を繰り返しながらも町の人たちのため日々農具や刃物作りに取り組む。
詳細情報
番組内容
広島・安芸太田町の鍛冶職人・秋田和良さん(29)が主人公。廃業した町の鍛冶屋さんを復活させた。大学で学んだ鉄の加工に魅力を感じ、もともとは芸術作品を作っていたが、ある鍛冶職人との出会いをきっかけに「自分の技術を使って人の役に立つ」仕事を志すようになった。鍛冶職人として仕事を始めて4年。まだ未熟ではあるものの、自分を頼って道具の注文や修理に訪れる町の人たちの期待に何とか応えたいと努力する日々に密着。
出演者
【語り】松坂桃李
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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