和久峻三ミステリー 赤かぶ検事奮戦記15 2015.12.14


(雷鳴)
(雷鳴)
(激しい水の音)
(柊葉子)また見てるの?それ同窓会の写真でしょ?なんかいいことあった?
(柊茂)何を言うとるんだあ〜。
(柊正男)あっ今動揺したよ!怪しいなあ〜。
(柊誠二)最近多いんだってさ。
同窓会不倫ってやつ!おみゃあらとろくさいこと言うとるんでねぇ!結婚記念日も近いっていうのにお母さん気をつけた方がいいかもよ。
(柊春子)「女房妬くほど亭主モテもせず」ってね。
あたしゃね信じとるでおみゃあさんのこと。
ああ?
(電話)ああいい!わしが出る。
わしが出るわしが出る。
(電話)あっもしもし柊ですが。
ああ榊田くんか…。
何?死体?
赤かぶ検事は平湯大滝で死体発見という知らせにすぐさま現場へ急行した
捜査部門と公判部門が分かれている都市部の検察庁と違い赤かぶ検事が治安を預かる飛騨高山では現場の検証捜査指揮取調べから起訴公判求刑と一切の検察業務を全部一人でカバーしなければならない
(行天遼子警部補)6時で間違いないですか?…ぐらいだったと思うんですけど。
(榊田警部補)ああご苦労さん。
どんな状況だ?こちら第一発見者。
昨夜平湯の温泉に泊まって今朝散歩にやってきて滝壷に浮かんでる遺体発見したそうっす。
(榊田)ああご苦労さん。
ご苦労様です。
(行天)そこの車遺体本人のものと思われます。
車検証から古川町芹沢一臣さんとわかりました。
念のため家族がこちらに向かってます。
事故ですかね?それとも自殺かなんか…?他殺の可能性あると思いますけど。
他殺?遺体の側頭部後頭部2か所傷あります。
他には傷らしいものありません。
足滑らして頭打つってこともあるだろう!
(西山刑事)検事芹沢さんの奥さんです。
(行天)こちらです。
(行天)ご主人に間違いありませんか?
(芹沢翔子)はい…。
昨夜ご主人何時ごろ戻られたかわかりますか?いいえ…。
2〜3日留守にすると言って一昨日出かけたきりで…。
行き先は?わかりません。
いつも詳しいことは言わずに出かけてしまうので…。
昨夜戻られたのは?わかりません。
子供と一緒に早く寝ていましたので…。
あのーすいません。
あのーご主人の行く先にどこか心当たりありませんかね?よーく考えてよーく…。
そういえば平湯温泉にはよく行っていたようでした。
もしかしたら昨日も…。
旅館当たります。
あとお願いしますね。
え!?あっそういえばその中にこんなケースのようなものが落っこっています。
至急鑑識に調べさせてください。
西山!一緒に行こう。
おいっ!おいこらっ!俺はベテランだぞ!給料だって高いんだ!あのーすいません。
あとでもう少し詳しいお話をお伺いすることになると思いますけどよろしくお願いします。
おいっ中野!ちょっと!あの彼女を…丁重に!丁重に!榊田くん!あっはい!これ薬ですかね?私がちょっと調べてきますわ。
ええ確かにお泊りになってましたよ。
昨夜はお連れさんとご一緒で男の方お二人と女の方がお一人でした。
じゃ他に3人いたんですか?はい。
失礼します。
おっ強いねそりゃ。
(笑い)
(芹沢一臣)俺が知らねぇとでも思ってるのか?何を?おいっ!やめなさいよ!なんでもねぇよ!そこ置いといてくれ。
熱くなるなよ!おっさんも!それから暫くして急にお会計してくれとおっしゃって。
帰りは皆さん車でしたか?えーっと…男の方がお一人別であとの方は芹沢様の車に乗られたようでしたけど…。
帰ったのは何時ごろかわかりますかね?確か…9時ごろだったと思います。
(溝口警部)遺体で発見されたのは芹沢一臣さん。
家は代々続く裕福な農家で昔から有名な地元の名家ですな。
自宅とは別にですね高山市内で古美術店も経営しています。
家族は奥さんと4歳になる息子。
それと奥さんの両親でですな。
えー一臣さんは婿養子だったようですな。
ちょっと…聞いとるんですかあんた!ちゃんと聞いとるだあ。
どえらい声出さんといてちょうよ。
人が報告してるときにわざわざぞうきんなんか縫うことねえでしょうが!ぞうきん?ああ!おっ…おみゃあさん飛騨刺し子も知らんのきゃあ。
あ?刺し子?これがですか!?何が可笑しんだあ?
(吉沢事務官)ちょっと花粉症で…。
おみゃあさんもよこんなところで油を売っとってええのけえ?事件の方はどうなっとるんだあ?まだ事件かどうかもはっきりしてませんしねぇ。
榊田の連絡じゃ自殺か事故だろうってことでしたから。
ほぅー。
ほんでぇ他殺の可能性はねぇってこときゃも?え?ええ…。
おはようございます!おおご苦労さん!どうだなんかわかったか?検視結果が出ました。
死亡推定時刻は午後10時から午前0時の間。
側頭部と後頭部に頭蓋骨陥没骨折がみられこれが死因だろうとのことです。
詳しいことは司法解剖の結果待ちです。
現場には何かを引きずったような跡と車の側に靴跡が発見されました。
靴跡なんですけども遺体の靴跡とは一致してないんです。
何!?それじゃ他に誰かいたってことか?芹沢さんと一緒に平湯に泊まっていた3人なんですけども宿泊カードに記入された名前住所全てでたらめでした。
一応念のため従業員には特徴や人相は訊いてあります。
よしとりあえずその3人の身元洗うのが先決だな。
榊田お前さん家族から詳しく話を訊いて被害者の交友関係洗ってくれ!はい!これ3人の特徴です。
私は芹沢さんが経営してた古美術店当たってみます。
西山!了解…。
いってきます。
おおおいっ!先輩だぞ!榊田くんまあそうむくれんでやる気になっとるだでよ。
あっあのわしも一緒に行くでよ。
そんなこと言ってほんとはあの美人のカミさんに会いたいんでしょ!おみゃあさんたまには真面目になれんのきゃあ?
(笑い)はあーこりゃあてえしたもんだわー。
ここら一帯の畑や山もみんなこの家のもんらしいですよ。
寝言ぬかしたんじゃねぇぞこらっ!なんなら出るとこ出てもいいんだぜ。
天下の芹沢家が借金踏み倒そうとしてますってよ!ごめんください。
お取り込み中すいませんが…。
なんだてめぇら。
なんなら俺が代わって話を聞こうか?え?いや…いやその…。
また来るからよ。
高山東署の榊田です。
なんですか今の男?
(芹沢辰雄)いやたいしたことじゃ。
それで警察の方が何か?実は一臣さんのことでお訊きしたいことがありまして。
はあ…。
ああ地検の柊っちゅうもんですがちょこっとお時間ちょうだい出来ませんかなあも?ああどうも。
どうぞ。
あっちょうだあします。
実はご主人が亡くなる直前に3人の人物と平湯温泉に泊まっていたことがわかりましてご主人と仲良くされていた方の中で心当たりはありませんかね?その3人がなんか事情を知ってるんじゃないかと思って探してるんですが…。
一臣は事故で死んだんじゃないんですか?それがまだはっきりしてないんです。
事故でない場合も考えられますので…。
(榊田)えーっとですね3人のうち女は20代半ばぐらい中肉中背。
髪はセミロング。
派手な感じだそうです。
男の1人は50代で中肉中背。
どっかの社長風。
もう1人の男は30代前後で長身細身チンピラっぽい感じの二枚目ということなんですが。
その50代の男というのはもしかしたら金森さんかもしれません。
金森?どういう人ですか?高山市内のパチンコ店の社長です。
2〜3度うちに来たことがあります。
一臣さんとはどういうお知りあいなんですか?さあよくわかりませんが借金のことでもめていたようで。
借金!お恥ずかしい話ですが一臣は遊びやギャンブルであちこちで借金をしておりましてさっきの男もそれで…。
奥さんはいかがです?お心当たりはございませんか?私はなんとも…。
あっそう言えば富樫さんと連絡ついたのか?いいえ…。
富樫?富樫慶子さん古美術店の従業員です。
一臣の事故のことも連絡しようと思ったんですが連絡がつかなくて。
ひょっとすると若い女の方はあの人かもしれません。
連絡先教えていただけませんか?
(西山)あれ?「誠に勝手ながらしばらくの間休業させていただきます」。
留守みたいだな。

(中村)それじゃ次は木曜日に来ますから。
どうもありがとうございました。
あの!あの…すいません。
あの警察の方ですよね?ええまあ…。
あのここの旦那さん殺されなすったんですか?あんた誰!はい介護サービスの中村と言います。
ああそうでもまだ殺されたかどうかはわからんよ。

(芹沢登美子)翔子。
何?お前…。
何も心配いらないからゆっくり寝てて。
あのー社長の金森さんに会いたいんだけどね。
あのどちら様ですか?警察。
はいどうぞ…。
赤かぶさん!赤かぶさん!
(金森隆治)そうしてくれ頼むぞ。
参っちゃうよな〜芹沢が死んだからってなんで俺が調べられなきゃならないの?亡くなる直前まで一緒にいたのがあなた方3人のようですのでそれで事情をお訊きしたんですが。
事情ったって平湯温泉で泊まりで麻雀やってただけですよ。
いくら儲かったんですか?あ?金森さん?えーいやそりゃあ…。
賭けてないとは言わせませんよ。
まあそれはそれとして…。
他の2人は誰だったんです?芹沢の店の富樫慶子と慶子の知り合いだっていう川村って男ですよ。
麻雀の途中でケンカになったようですが理由はなんです?あああれね。
芹沢の奴急に慶子と俺がデキてるんじゃないかって言い出してそれでケンカに。
あいつ負けがこんでたからカーッときちゃったんじゃないの?ほんとのところはどうなんです?その慶子とあんたは?ハハッまあねぇ…。
そのあとどうしたんですか?家へ帰りましたよ。
他の2人は?他の2人のことは知りませんよ。
何時に家に帰ったんですか?そーね10時ちょっと前ぐらいだったかな。
ほんとに家に帰ったんですよね?ええ帰りましたよ!司法解剖の結果ですが死因はやはり頭蓋骨陥没骨折による脳挫傷。
側頭部と後頭部に2つの傷がありました。
2つきゃあ…。
致命傷となったのは後頭部の傷のようです。
ということは逃げようとしたところを後ろから殴ったということだな。
凶器は出たのか?現場付近の捜索では凶器らしいものは発見出来ませんでした。
ということは凶器は犯人が持ち去ったってことか。
それは違います。
死斑の定着具合から見て殺害後に移動された可能性が高いとのことです。
別の場所で殺害し遺体を車で運び捨てたってことですね。
これで殺しは決まりだな。
現場から発見された靴跡あれ犯人のものである可能性が高いですね!おみゃあさんよ滝壷で発見されたあの薬のケースだがよあれどうなっとんね?薬?ああすいません忘れてた。
その薬のケース犯人の遺留品と考えられませんか?当たってみる必要はあるかもしれんな。
まあいずれにしろ殺害当日まで一緒にいた3人。
金森隆治富樫慶子それと正体不明の川村って男あらってみよう。
富樫慶子の足取りはまだ不明です。
立ち回り先は当たってますがそれと川村については今のところ手がかりなしです。
慶子と川村がデキてたとすれば共謀して芹沢を殺す可能性もあるか…。
だけど金森は慶子って女とデキてたんだろ?そうなんですよ!あの女3人の男をたらい回しにして!どうなってるんですかね?私はむしろ金森の方が怪しいと思いますよ。
おそらく動機は借金がらみの金銭トラブルでしょうね。
何言ってんだよ!現に慶子と川村は姿消してんだぞ!慶子が店か自宅に舞い戻る可能性もあるな。
西山お前そっちはってくれ。
それと手分けして目撃者探しだな。
わかりました。
いってきます。
行天お前は金森証言のウラを取ってくれ。
榊田お前は靴跡のせんを徹底的に調べろ!えっ?なんだ不満か?いや…そういうわけじゃ…。
いってきまーす!溝口くん。
は?あの芹沢ってうちもいっぺん調べてみた方がええんでねえの。
吉沢くん。
はい。
おみゃあさんのあのボロ車よ。
あれもう直っとるけ?もうバリバリですよ。
見栄はるんでねえよ。
明日ちょっと古川まで送ってもらいたいんだわ。
親父!あっ?何してんの?なんでもねえ。
おみゃあさん!何をそわそわしとりゃあすの?そわそわなんかしとらん。
だいたいおみゃあさんのん気に構えとって。
のん気が一番だで。
おみゃあさんもいっつもそう言うとりゃあすでにゃあの。
時と場合によるだあ。
だいたい母親がこうだで娘もおかしくなってまうんだ。
ああ葉子のこと心配しとりゃあすの?もうあの子も子供じゃにゃあで心配することにゃあよ。
子供じゃにゃあから心配しとんだ!
(葉子)ただいま!またデート?
(葉子)うるさいなあもう…。
葉子葉子葉子!ただいま。
おかえり。
今ねちょうどちょうどええとこ…。
今なお父ちゃんたらな〜。
わしはもう寝るで…。
何?なんかあったの?お父ちゃんに訊いてみやあせ。
よけいなことを!何お父さんどうしたの?おやすみ。
わっ!着きましたよ。
どこへ?どこって…。
あああんがっとさん。
検事さん車の中でもすっごいイビキかいてますよどっか悪いんじゃないですか?ああ?ほっといてちょ。
あおみゃあさん先帰っていいから。
また迎えに来てもらうかもしれんでよ。
ごめんくだしゃあ。
芹沢さん!ござらんけ?よかったねしんちゃん。
(登美子)もう痛い思いしなくてもいいんだからね。
大丈夫?お出かけでしたきゃ?どっか具合でも悪いんですきゃ?色々あって疲れが溜まってるようで。
今も病院に…。
ああそりゃいかんなあも。
ああちょっと…。
一人でいける?ああ。
ちょこっとご主人のこと訊かしてもらいたいんだがや。
もう葬式は?内々で済ませました。
病気や事故とは違ってましたから。
ご主人はこのあたりのご出身け?いえ実家は富山ですがもうご両親ともお兄さんに引き取られて今は北海道にいるそうです。
じゃ葬式には…。
連絡はしたんですけどあんまり付き合いがなかったものですから。
そう言やーよお子さんなんぞ怪我でもなさったんけ?は?いやいやおばあちゃんがお子さんの背中手当てしとらしたんでよ。
慎也。
もうよろしいですか?母を看てやる時間なので…。
亡くなった人の悪口は言いたにゃあんだがよ。
おみゃあさんもお父さんも亡くなったご主人にはえらあ手焼かされたんじゃにゃあのけ?お父さん早く寝ないと!あの晩帰ってきた?うちの亭主そんなこと言ってるんですか?それじゃ帰ってきてないんですね?当ったり前ですよ。
帰ってきたのは次の日の昼ですからね。
どういうことか説明してもらいましょうかね!いや…それがその…。
はっきり言う!あの晩芹沢と別れてから古川のスナックへ。
一晩中そこに?いやいや…そこのママの家へ。
古い友人なもので…。
友人…。
愛人の間違いじゃないの?あは…まあ…そんなとこで…。
金森さんあなた芹沢さんに持ちかけられた投資話で大損してたそうね?あっそうなんですよ!あいつの口車に乗っちゃって…。
ちょっ…ちょっと待ってくださいよ!私疑ってるんですか!?冗談じゃないですよ!あいつが死んだら私の貸した金も取り返せないんですよ!わたしゃ1円の得にもなんないんですよ!かあ…あいつが死んでね得するのは慶子の方ですよ!どういうこと?いや…前に言ってたんですよ。
芹沢が死んだら店と土地は自分のものになるって。
ほんとですよ刑事さん!ちょっと失礼。
薬の時間なもんでね。
西くんお水ちょうだい。
はい。
金森の愛人にも確認取れました。
事件の夜金森が泊まったのは確かだとは言ってるんですけどまあ嘘言ってる可能性も…。
どうも怪しいな…。
それからですねもう1つ気になることがあるんですよ。
金森は薬を常用してるようなんですがその薬のケースが事件現場で発見されたのと同じようなんですよ。
何!?同窓会の幹事なんてやるもんじゃないですね。
それだけ頼られてるってことですよ。
人数がお決まりになりましたらご連絡くださいね。
はいよろしくお願いします。
いかんいかん絶対内緒にしてちょうよ。
(松田みどり)いいのかな〜奥さんに内緒で!当たり前だ!こんなことバレたらどえらいどやしつけられるで。
絶対秘密だでよ!頼んだよみどりちゃん。

(正男)ただいま!
(誠二)ただいま!おかえり。
うわあ!うまそうこれ!これ並以下じゃねぇの?特上だで!早よう手洗ってきや。
(2人の歓声)葉子おみゃあさっきからちらちら人の顔見とるけどよ言いたいことあるんだったらはっきり言ってちょ。
いや…そうじゃないんだけどさ。
葉子葉子!おみゃあひょっとして好きな人が出来た!?えっ!?あっ…それはその…。
大丈夫だで!お父ちゃんには内緒にしとくで!どんな人?どこの人?イケメンきゃ?な?な?どんな人?どんな人?会わせてちょー!何をギャーギャーギャーギャー騒いどるんじゃ。
なんでもにゃあよ女同士の大事な話だでおみゃあさんには関係にゃあ。
どうせまたワイドショーかなんかの話だろうが…。
頼まれても聞きたにゃあでよ。
あのお父さん…。
あ?あの…いいやなんでもない。
なんですかこれは?
(富樫慶子)見てのとおりよ。
芹沢さんが亡くなったらあの土地と店を私に譲るっていう念書。
そんな…。
間違いないわよ。
富樫さんこんなものは無効だよ!いくら念書を取り交わしてもあの土地と店の権利書は私の名義になっているんだから!なんですって…。
冗談じゃないわよ!私出るとこ出るわよ!えー金森隆治さんですね?金森さんに処方してるのは血圧降下剤ですよ。
血圧?はい。
すいません。
川村徹さん?
(川村徹)なんだおたくら?高山東署の者なんですがちょっとお話を伺いたくて。
警察?
(慶子)徹?どうかしたの?富樫慶子さんですね?ええ。
だから言ったでしょ!芹沢さんが死んだって新聞に出てたから帰ってきたの。
このお店と土地私のものになるんだから手続きしなきゃなんないでしょ?だったらどうして急に姿を消したんですか?急じゃなくて前から決まってたのよ。
この人と一緒に金沢から能登の方へ行こうって。
そしたら前の日になって芹沢さんが急に麻雀なんか誘うから…。
…ってことはあなたたちは最初からその…デキてたってこと?
(笑い)当然でしょ!芹沢さんとはお金だけの関係。
どうせもうすぐ切れるつもりでいたのよ。
あの人あんなやさしい顔して暴力すごいのよ。
やってらんないわ。
それじゃですねあの夜の話を訊かせてもらえますか?私たち2人は高山の駅前で車を降りたわ。
そのあと徹と一緒にアパートに戻って一眠りして翌朝金沢に行ったの。
アパートに戻ったのは何時ごろですか?10時ごろ?そうだな。
それ確かですか?ほんとよ!あっ帰ってきたとき隣の部屋の学生に会ったよな?そうそうあの可愛い坊や。
そんなに疑うならあの坊やに訊いてみたら。
それとあの…あなたの家は京都でしたよね?どうしてわざわざこっちにきたんですか?だから!慶子と旅行に行く予定だからきただけだよ!私たちは無関係よ。
金森のおっさんの方がよっぽど怪しいわ!あのパチンコ屋結構経営苦しくてさ。
金返せって芹沢さんのこと追い掛け回してたもん。
どうもあのパチンコ店の社長おかしいなあ。
金のことで芹沢とだいぶもめてたみたいだし…。
アリバイがあるったって女と口裏合わせることも出来るわけだし…。
薬のケースも気になるな…。
ああ赤かぶさん!車の側で発見された靴跡が特定出来ました。
名古屋のメーカーのもんで作業用の長靴だそうです。
作業用の長靴!?警部!目撃者が見つかりました。
何!?こちらはJA飛騨の方なんですがあの晩滝の近くで不審な人物を目撃したそうです。
どういうことですか?実はあの晩…会合で遅うなってもうてうちに帰る途中そやな…1時ごろやったでしょうか…。
どこまでいかはるんですか?なんなら送りましょうか?すぐそこですから行ってください。
芹沢辰雄!?間違いありませんか?はい。
あとで思い出したんですが前にJAの観光イベントでお会いしたことがあるんです。
検事!検事!ちょっと…。
芹沢辰雄さんの病院当たってきました。
芹沢さん心臓病の薬もらってるようです。
心臓?靴ですか?ええ容疑者の供述に食い違いがありましてね。
確認のために一臣さんの靴をお借りしたいんです…。
そこの下駄箱に入ってます。
あっどうもどうも。
あっああそれは…。
何か?私の靴で…。
いやあ探してるのは黒い靴でしてね。
万一ということもありますので念のためにお借りします。
はあ…。
すいませんねどうも!どうも…。
つかぬこと訊きますがのう…。
おみゃあさん心臓が悪いようだがよう?医者から処方された薬いつも持ってりゃあすのか?はい…。
うん。
そりゃなんぞケースかなんかに入れてきゃ?ええそうですが…何か?ん?ああいやいや…。
そのケースだが…いやいや…。
お邪魔したなあも。
いえ…どうも…。
お父さん…やっぱりほんとのこと言った方がいいわ。
ねえそうして!馬鹿なこと言うな!絶対に何も話すんじゃないぞ。
お前さえ黙っていてくれればなんとかなる。
いいな!現場で発見された薬のケース。
芹沢辰雄のものと思われませんか?それと辰雄の長靴の底も現場で発見された靴跡と一致したんですよ!芹沢辰雄引っ張りましょう!ちょっと待ってちょ…。
もういっぺん調べてみたぁだ。
あの晩ほんとにうちにいたんですか?夜中の12時半ごろ平湯大滝で雨の中歩いてるあなたを見たという人がいるんですけどね?なんとか言ってくださいよ!あの晩よ10時ごろから1時ごろまでお父さんほんとにうちにおりゃあたんけ?父はどこにも出かけていません。
ずっとうちにいたはずです。
それでもよおみゃあさん息子さんと一緒に寝とったと言うとったんでにゃあの?それはそうですけど…。
でも考えてみてください。
心臓の悪い父があの雨の中出かけられると思いますか?んー…。
あっこれは念のためなんだがよお母さんとちょこっと話させてもらえんかなあも?母はこの時間いつも眠ってるんです。
あの晩も早く寝ていましたし何も知らないと…。
私じゃ!私がやったんじゃ!お母さん!私があの疫病神を殺してやったんじゃ!ああ私じゃ!ああ私が…。
あっ…。
ちょっと変なこと訊くんだがよ。
ええ。
ここのお婆ちゃん多少ボケが始まっとんのけ?はあお婆ちゃん。
ボケてませんよ。
体はあのとおりですけど頭はまだしっかりしてますよ。
ほおそうけ…。
あの何か?ん?ああいやいや。
どうもすまなんだも。
いえいえ。
赤かぶさん!あの父親絶対クロですよ!逮捕して徹底的に調べましょうよ!自宅をガサ入れしましょう。
きっと証拠品もみつかりますよ。
検事逮捕しましょう!グズグズしてると証拠隠滅の恐れもありますよ。
(榊田)赤かぶさん!
警察は芹沢一臣殺害容疑で義父の辰雄を逮捕した
(すすり泣き)検事ちょっと…。
おいっどうしはった?凶器らしいもの出たんけ?いえ。
あれ見てください。
血痕ですよね。

早速赤かぶ検事の取調べが始まった
畳の血痕は一臣さんの血液型と一致。
おみゃあさんの長靴の底なんだが死体遺棄の現場に残っとった靴跡と一致。
さらには目撃証言もあり。
芹沢さんまあこれだけ証拠が揃っとるでおみゃあさんいいかげんに正直に話してくれんかなも?私は何もやっておりません。
まあ正直おみゃあさんの気持ちもわからんでもにゃあ。
わしが同じ立場だったらひょっとしておみゃあさんと同じことをやったかもしれん。
おみゃあさんあの婿養子にはえりゃあいてぇめにあわされとったようだし。
可愛いお孫さんもあの男には散々痛めつけられとったんじゃにゃあか?私は何もやっておりません。
吉沢くん。
はい。
これはよ一臣さんが死んどった滝壷の中に落ちとった薬のケースだがよ。
おみゃあさんこれにこの心臓の薬入れとったんじゃにゃあの?滝なんか行ってません。
ああこんちは。
こんにちは。
ちょっと時間取らせてもらっていいかなあも?はあ…。
とにかくあの旦那ときたらひどいもんでしたよ!婿養子に入ったとたんにクルッと態度を変えちゃって。
ほうそういや婿養子だったんだなあも。
そうですよ。
ろくに家には寄り付かないわ帰ってきたらきたで奥さん殴ったり蹴ったりするんですからね。
ん?奥さんもけ!?そうですよ!その上奥さんだけじゃなくて慎也ちゃんまで…。
私はいっぺん見たことがありましたけどそりゃあひどく折檻してね…。
あんな一見優しそうな顔して…。
わかんないもんですね。
お父さんはなんも言わなんだのけ?あんまり強いことも言えないみたいですよ。
あの旦那を連れてきて再婚させたのは大旦那さんですからね。

(郡上節)実況見分は終わりましたし動機もハッキリしてるんですがね。
うーん…。
しかし…。
肝心の凶器が見つかってないんじゃあ起訴しても公判維持は難しいんじゃないですか?凶器は…もうええで。
はあ!?法廷でなんとかするで。
わしゃあ…起訴するでよ!
赤かぶ検事はそんな捜査員の不安をよそに芹沢辰雄の起訴に踏み切った
辰雄の弁護を担当するのは敏腕弁護士法眼正法である
起訴事実。
第一。
日ごろより孫に暴力を振るう被害者に対し激しい憤りを抱いていた被告人は被害者を殺害する目的を持って被害者の頭部を殴打し死亡させたものである。
第二。
被告人は被害者の遺体を車に乗せ平湯大滝に遺棄したものである。
罪名および罰状第一殺人。
刑法第199条。
第二死体遺棄。
刑法第190条。
(裁判長)被告人は前へ来なさい。
被告人は言いたくなければ何も答えなくてよろしい。
しかし任意に述べたことで被告人の有利にもまた不利にも証拠とされることがありますのでよく注意してください。
(裁判長)わかりましたね?…はい。
えーところで今検察官が読み上げた起訴状について何か言いたいことがありますか?私は…何もしておりません。
申し上げたいのはそれだけです。
(裁判長)弁護人の意見は?
(法眼正法)被告人の無罪を主張します。
被害者の血痕が被告人の自宅にあったとしてもそれだけで被告人の犯行であるとは言えません。
さらに凶器も特定されずまた具体的な殺害状況も明らかにされておりません。
(法眼)もちろん被告人は犯行を一切否認しており本件に関して十分な捜査が行われたとは言えないのです。
本件は金銭問題が大きな要素を占めていると思われますがそのことにも一切触れておらず警察検察の思い込みによる暴走と言わざるを得ません。
どうぞ。
おう!法眼のやつ…痛いとこを突いてきましたなあ。
検事…やっぱり起訴が早過ぎたんじゃありませんか?ああ…吉沢くん。
(吉沢)はいっ。
あたっ!あっ!痛…。
被害者の2つの傷…ひょっとして犯人は1人でにゃあかもしれねえでよお…。
ええっ!?それじゃあ…共犯者がいるってことですか!?いやあ…まんだ可能性の段階だがよう。
だとすると…金森慶子川村のうちの誰かが…。
いやまあ…今度の証人尋問で何か見えてくるきゃあも。

第二回公判。
赤かぶ検事は証人として芹沢辰雄の娘翔子を召喚した
これは確認なんだがよ。
おみゃあさんの4歳になる息子さんは亡くなったご主人ではのうて前のご主人との間に出来たお子さんだわなあ。
はい。
うん。
その慎也くんだがよぉこないだ背中にどえりゃあ怪我しとったようだがよ?あれは…どうしはった。
あれは…。
すまんがよお…おみゃあさんの腕もちょこっと見せてくれんか。
腕まくって見せてもらいたいんだがよ。
こっち側も頼むで。
このアザ…どうしはった。
これは…畑仕事のときにぶつけて…。
ほお…。
そんなに何べんもきゃあ。
事件の翌日おみゃあさんのほっぺたに同じようなアザが残っとったような気がしたんだがありゃあどうしはった。
ありゃあ前の晩…ご主人に殴られやあた跡じゃあにゃあのきゃ?異議あり!検察官の質問は明らかに誘導尋問です。
(裁判長)異議を認めます。
検察官は質問を変えてください。
あっわかりました。
おみゃあさん事件の夜どこにおりゃあた。
寝室で…子供と一緒に寝ていました。
うんそりゃあ何時ごろだ?9時ごろです。
ご主人が帰ってきたのもわからんでぐっすり眠っとったわけね?はい。
はあ〜…そりゃおかしいなあ。
おみゃあさん寝たきりのお母さんを看病するのは決まって夜の10時ごろだと言うとったよなあ。
ご主人は高山の駅前で午後10時ごろ古美術店の事務員富樫慶子さんとその男友達の川村徹さんと別れとって…10時過ぎには家に帰っとったはずだでよ。
一方お父さんの方は祭りの準備で午後10時ころ公民館を出たことはわかっとるで。
まどんなに遅くても10時半ごろには家に帰っとるはずだ。
ご主人の死亡推定時刻は午後10時から午前0時の間。
つまりよ…そのころみんなまんだ起きとったんでにゃあか?答えてちょう。
あの晩おみゃあさん帰ってきたご主人に居間でこっぴどく殴られた。
騒ぎを聞いて駆け付けたお父さんは日ごろからご主人に抱いとった殺意に火がついて思わず殺してまった。
おみゃあさん…全てを見とったんでないか?そのあとお父さんを手伝って死体を運び出し畳に飛び散った被害者の血を…拭き取った。
違っとりゃあすか?私…私は…。
翔子ぉ!くっ…ううっ。
お父さん!ううっ…ああ…。
お父さん!しっかりしてしっかりして!医者を早く!
(警備員)はい!
(裁判長)休廷します。
芹沢辰雄はすぐさま病院に搬送されたがそのまま帰らぬ人となった
検視の結果死因は極度の興奮による心筋梗塞の発作と判明した
(辰雄の声)絶対に何も話すんじゃないぞ。
(辰雄の声)お前さえ黙っていてくれればなんとかなる。
いいな。
刑事訴訟法339条1項4号に従い審議中の被告人が死亡したため裁判所は本件控訴を棄却した
これにより本件の裁判は全て終了した
あの〜…お焼香だけでもさしてもらえんかなあも。

(芹沢慎也)ああっ!
(車のクラクション)やあ!へっへっ。
いやいやいいんですか?こんなとこで遊んでて。
いいのいいの〜。
事件も終わっちゃったし暇だからさあ。
暇って…。
昨日の続き!そいでさあ…。
その新人のおネエちゃんがさあ胸なんかボーンでさケツなんかバーンでさあ。
あははお帰んなさい。
赤かぶさ〜ん!今夜パッといきましょうよ〜。
あの朝日町のスナックに新人のおネエちゃんが入ったんですよ。
これがまたいい女でスゴイんですよ〜も〜。
何をフワついとるんじゃあ!!いらっしゃい。
(法眼)柊さん。
ああ…。
ああかまわんで。
どうぞどうぞ。
これでいいんでしょうか…。
被告人は急死してしまって裁判は打ち切り。
しかしこれで終わりにしてしまって…本当にいいんでしょうか…。
はあ…なんとも言えんでよ…。
被告人が罪を犯していたのかそれとも無実だったのか。
全てはやぶの中です。
まその方が…ええこともあるんでねえか?えっ?わしゃあ思うんだがよお…。
真実は何らかの形で明らかにすべきでにゃあかと。
だがよその真実を明らかにすることで別の悲劇が生まれるとわかっとったら…。
おみゃあさんなら…どうするよ。
芹沢辰雄さん以外に法の裁きを受けなければならない人がいるってことですか…。
やらざるを得ないでしょうねえ。
それが我々の仕事ですから。
「あ〜お〜い山脈〜雪割…」おじゃじゃじゃジャンボくーん。
こんばんは。
は〜いこんばんは!あ〜い。
ん〜ジャンボジャンボ〜ジャンボバカ〜はっはー。
家そこですよ。
はいはいはいはい。
(鼻歌)あ〜…。
おーい!春子!春子ーっ!おみゃあさんまあ大きな声でわめいてちょっと。
いやぁどえらい酔っ払ってもうてちょっとしっかりしてちょうよ。
ほらちょっと…。
春子ぉわしゃあよおつれえことをやってまうんだ。
だからあの…。
あっ。
悲しいことをやってまうんだ。
なわかるか春子。
はいはい。
いやちょっとしっかりしてちょうよおみゃあさん。
芹沢翔子を逮捕しろって…そりゃどういうことですか!?ええから逮捕せえて言うとんだが。
いやちょっと待ってくださいよ!一度公判に持ち込んで決着の付いた事件をまた蒸し返そうってんですか。
決着は付いとらんでよ。
どういうことですか。
わしゃよおあの被害者についとった2つの傷の判断を間違っとったんだが。
このまんま終わらせたらあの娘は父親の愛情を知らんまんまになってまうでよお…。
(ため息)
(太鼓の音)
(太鼓の音)慎也も大きくなったらおじいちゃんみたいに起し太鼓の大太鼓たたけるようになるといいねえ。
お腹に力入れてシュッと。
そうそうそう。
そう。
おっ力強くなってきた!
(太鼓の音)奥さ〜ん。
ちょっと…よろしいですか。
(太鼓の音)芹沢一臣さん傷害致死容疑で逮捕します。

(奥田刑事課長)一体どういうつもりだね君は!いったん決着した事件を再度掘り返すなんて。
それともあの裁判は間違いだったとでも言うつもりかね!いや今回は…共犯者の立件ですで前回の被告人とは別人です。
(奥田)「詭弁はやめたまえ!」こんなことが報道されたら検察の威信にも関わるぞ。
君の立場だって…!部長…。
わしらの仕事は体面や面子を守ることじゃあにゃあですて。
真実を明らかにし罪を罰することです。
違うとりますか。
あ…もし万一のことがあればこのわしが全責任を取りますで。
失礼します。
検事さん…。
ああ心配いらん。
なんとかするで。
赤かぶ検事は夫の傷害致死容疑で芹沢翔子を起訴した
(裁判長)被告人は検察官が読み上げた起訴状について何か意見がありますか?私は…主人を殺してません。
(裁判長)では弁護人ご意見を。
(法眼)無罪を主張します。
被告人が本件の共犯者である根拠は極めて希薄であります。
また父芹沢辰雄氏も公判中に死亡しており新たに証言を求めることも出来ません。
(法眼)父親の公判においても事実認定は明確にされておらず共犯者が何者であるかも明らかになっておりません。
従って本件起訴そのものが無謀というよりほかありません。
明確なる物的証拠も無く検察官がどういう意図で被告人を起訴したのか全く理解に苦しみます。
被告人は…かねてより被害者である夫芹沢一臣の暴力に苦しめられてきました。
暴行は日常的に繰り返され被告人のみならず幼い息子まで被害者によって虐待を受けておりました。
そして…事件当夜。
平湯温泉から帰宅した被害者は博打に負けた腹いせに被告人に激しい暴力を振るいました。
騒ぎを聞きつけ駆けつけた父辰雄も止めることが出来ず以前から繰り返し暴行を受けていた被告人は生命の危険を感じとっさに付近にあった鉄製のこの灰皿で被害者の側頭部を殴打しさらに父辰雄は同じ灰皿で被害者の後頭部を殴打死亡させたものである。
その後父辰雄は被告人をかばい口止めをした上で被害者の遺体を平湯大滝に運び…。
ううっ…うーっ…。
ハアハア…。
裁判長!ただ今の検察官の陳述には何ら具体的な証拠がなく想像の産物としか思えません。
弁護人としてはこれ以上の公判の継続は無意味だと考えますが。
証拠は…ちゃんと揃っとるでよ。
おみゃあさんよお。
これに見覚えはありゃあすか。
いいえ。
ならこの字はどうだ。
お父さんの…。
うん。
これはよお亡くなったお父さん芹沢辰雄さんが書いとった日記だわ。
ここによ…こういう記述があるんだわ。
「とうとうやってしまった。
だがどんなことがあっても翔子も私も警察に捕まるわけにはいかない」改めて訊くでよ…。
この日記に書いたることに間違いはにゃあきゃ。
ちゃんと…正直に話して楽になりゃあ。
申し訳ありませんでした。
私が…やりました。
話して…ちょうでえすか。
結婚してすぐ…あの人はそれまでと全く態度を変え私や…慎也にまで暴力を振るうようになりました。
(慎也の泣き声)クソォ!うるさい!やめて!やめてよ!邪魔すんな!ああっ!やめてよ!やめろぉ!やめろ!コノやめろ!お父さん!くたばり損ないがよ。
しゃしゃり出てくんじゃねえよ!それだけじゃありません。
あの人は…ギャンブルや女にお金を注ぎ込みあちこちで作った借金の返済のために代々守り続けてきた山や畑を売らなければならなくなりました。
毎日が地獄でした…。
あの男のために家も家族も何もかも滅茶苦茶になってあんな男と無理矢理結婚させた父を憎んだこともありました。
けんどおみゃあさん…何で離婚せなんだ。
そんなひでえ目にあわされてまでよ。
考えたことはあります。
でも…暴力を振るった後の主人はなぜかいつも優しく接してくれて。
ごめん!悪かった!すまなかったよ本当に。
痛かったか?翔子…。
俺を見捨てないでくれよ。
翔子…なっ?なっ?ですからそんな主人を信じて明日はきっと改心してくれるだろうと…そう思うと離婚出来なかった。
毎日がその繰り返しでした。
芹沢家は先祖代々飛騨一帯を代表する名家です。
父は家名を汚すようなことを最も嫌っていました。
ですから父はいったん自分が家に入れた人間を追い出すことも出来なかった。
父は…そんな人だったんです。
あの夜帰ってきた主人は…。
待てコラ!やめて。
ああっ!アアッ!
(一臣)なんだよその目は!オラアッ。
アアッ!アッ!ウ…ウウ…。
てめえ…。
ウ…ふざけた真似しやがって。
アーッ!!ハァハァ…。
黙ってなさいよ!誰も見ちゃいない。
誰にも言っちゃいけないよ!いいか翔子お前は何も見てない。
何も知らない。
慎也と一緒に寝ていたんだ。
いいな。
こんな男のためにこれ以上芹沢の家が滅茶苦茶にされてたまるか!後は…俺がなんとかする。
お前はどんなことがあっても何もしゃべるんじゃないぞ!わかったな!父は…悔しかったんだと思います。
人一倍家名を大切にして芹沢家を守り続けてきた自分が犯罪を犯してしまったことが…許せなかったんです。
父にとっては芹沢の名が何よりも大事だったんです。
いや。
…それだけじゃあありゃあせん。
お父さんはよお…いよいよとなったら自分一人で罪をかぶるつもりだったんだ。
「翔子にはなんとわびていいのかわからない」「いくらだまされたとはいえ一臣のような男と結婚させてしまったとは」「家名や世間体にこだわり結局あの子を不幸にしてしまったのはこの私だ」「今になってようやくそのことに気付くとは…遅すぎた」「警察は私を疑っているようだ。
いいだろう。
いざとなったら私一人が罪を背負えばいいことだ」「翔子にもしものことがあれば慎也と登美子はどうなる」「どんなことをしてもあの子だけは守らなければ」「命に代えても。
それが私に残されたたったひとつの道だ」お父さんはよお…。
おみゃあさんを守るために必死だったんだ。
ほんだで命にかけても真実を隠し通そうとした。
バカだった…。
私が…もっとしっかりしてたら。
ちゃんとあの男と別れてたらこんなことには…。
お父さんだって死なずに済んだのに…!
(嗚咽)お父さんもおみゃあさんも…もーちっと早う気付いとったらなあ…。
つらいことだろうがよ起きてまったことは仕方のにゃあことだで。
ほんだけどもよそれでも人間は立ち直ることが出来る!お母さんや慎也くんのためにも1日も早う罪を償って身も心もきれいになって帰ってきてやってちょうよ。
それが…お父さんの気持ちに報いることでにゃあか?はい…。
はい!
(法眼)お疲れ様でした。
ああ。
ホントならよそおっとしといてやりたかったんだがよぉ。
しかし真実を知ってしまった以上やらなければならなかった。
それもあったがよ我々にとって事件は終わってもあの家族は…生きていかなならんでよ。
ずーっと背負い続けるちゅうのは…かえってむごいような気がしてよ。
はは…まあ因果な商売だわ。
その後芹沢翔子に下された判決は過剰防衛が認められ…
…というものだった
ほんじゃ頼んだでよ!うん。
ちょっと茂ちゃん。
はいっ。
いらっしゃいませ。
はあ!
(笑い声)
(高村誠)高校の同級生だったんすか。
浮気相手に間違えられるなんて光栄です。
すみません。
けどお父さんも結婚記念日のプレゼント頼むんだったらもっと堂々としてればいいのに。
うーん茂ちゃん昔から照れ屋さんだったから。
(笑い)
(祭りの声)
天下の奇祭と呼ばれる飛騨古川祭り
ワッショイ!ワッショイ!
(歓声)
(葉子)お父さん。
おうおう。
お父さん高村さん。
高校の先生よ。
高村誠です。
よろしくお願いします!ああそれはそれはどうも。
ああこれは…どうも。
おみゃあさん!もっとちゃんと挨拶してちょう!・「愛するひとよ」2015/12/14(月) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
和久峻三ミステリー 赤かぶ検事奮戦記15[再][字]

飛騨古川祭り・起こし太鼓は涙に霞む、名門旧家入り婿殺人事件!

詳細情報
◇番組内容
飛騨高山、乗鞍岳山麓の平湯大滝を舞台に、橋爪功が扮する赤かぶさんが事件解決に向けて奔走!そして法廷では人情味溢れる赤かぶ節が!天下の奇祭と呼ばれる飛騨古川まつり、起こし太鼓もたっぷりお楽しみ頂けます!
◇出演者
橋爪功、藤田弓子、有森也実、中島史恵、石丸謙二郎、石倉三郎 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:45560(0xB1F8)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: