ろーかる直送便 ドキュメントしこく▽いのち咲かせたい〜71歳の助産師 言葉の力 2015.12.14


思春期のあなたたちが…。
体育館に集まった100人を超える高校生たち。
一人の女性の言葉に引き込まれていました。
リストカットしてる人いませんか?つらいからって自分に傷をつけてる子いませんか?あなたたちの体は産まれた時はどこにも傷がなかった。
この子いらんかったって産んだ親は一人もいませんでした。
そんなに望まれて出てきた命です。
50年近く赤ちゃんを取り上げてきた助産師です。
肌で感じてきた命の重みを伝えようと全国で講演を続けています。
山本さんの言葉は傷ついた子どもたちの心に響いてきました。
いじめに苦しみ自殺も考えていたという女子高生。
長年の活動で山本さんの体は悲鳴を上げています。
それでもなお伝えたい思いがありました。
抱きたくなくても抱きなさい。
一日に1回でいいから。
なぜか分かる?親のぬくもりを与えて下さい!71歳の助産師。
いのちを語る言葉です。
朝8時。
高松市の助産院でお産が始まっていました。
(うめき声)畳の部屋で息む女性。
夫に支えられてのお産です。
陣痛が始まって4時間。
(助産師)お顔拭いてやって…お顔拭こうどこや?3,284gの女の子です。
(泣き声)
(拍手)よかったでも…無事に産まれてきて。
山本文子さんは9年前にこの助産院を開きました。
おめでとうございます。
よかったねほんとに。
心配して…出たり入ったりしよったんでしょ。
今ちょうどおっぱい飲み終わったところ…。
1年で100人ほどの赤ちゃんが産まれています。
おお〜そうかおめでとうようこそ!おおいい顔してる…おおおお。
今お風呂に入ってね今おっぱい終わったあと。
建物の中にはお年寄りが通うデイサービスの施設もあります。
赤ちゃん来た。
ほらほら赤ちゃんだよ。
あのね今日が4日目。
山本さんは幅広い世代が集う大家族のような助産院を目指しています。
そうや気持ちいいんじゃわ。
90過ぎたばあちゃんに抱かれて気持ちいいって言ってるわ。
長生きして…。
長生きしてもらわにゃいかんもん。
22歳で助産師となった山本さん。
病院や助産院でこれまで3,000を超える赤ちゃんを取り上げてきました。
講演を始めたのは39歳の時。
出産と中絶に立ち会ってきた立場から当初は性の大切さを訴える話が中心でした。
皆さんの中にだって今ねもう高校生5人に1人は終わってるって言われてる…初体験の経験あるでしょ。
71歳の今も山本さんには1年で100か所ほどから講演の依頼が寄せられます。
前日入ろうかなと思ったりもしてるんや。
だけどかまわないよ高知で泊まるけん。
理事長を務める夫と共に助産院を切り盛りしながら全国を飛び回ってきました。
とにかく自分が思ったとこへバーンと行きますんでね。
10月山本さんは冷え込みの増した北海道にいました。
車で移動しながら道内各地を回ります。
この日向かったのは3年前から毎年訪ねている高校です。
どうもこんにちは。
お世話になります。
お世話になります。
ようこそおいで下さいました。
出迎えた校長が生徒たちの内面について話し始めました。
情報だけがどんどん入ってきて頭でっかちになって。
一見勉強ができてるから肯定感が持ってるかってそういう事ないんですよね。
自分が必要ないどうでもいい死んでも誰も泣かないだろう誰も何とも思わないだろうとか…山本さんは最初から本音で語りだします。
あなたたちはどうでもいいと思ってるかも分かんないけど私にとっては違うんです。
あなたたちにとっても大事な1時間私にとっても大事な1時間。
私は助産師です。
赤ちゃん取り上げるのが私の仕事です。
私はその…時にはこの中にリストカットしてる人いませんか?つらいからって自分に傷をつけてる子いませんか?その傷を見た事が何度もある。
「どうして?」って。
赤ちゃんで産まれた時傷が一つもないその体に傷つけるのどうして?山本さんは講演への感想文を通して子どもたちが直面する現実を見てきました。
「母は常に不機嫌で私は常におなかを空かせていた」。
「なぜ『死ね』と簡単に自分の子に言えるのか」。
親からの虐待や育児放棄の問題です。
ほんとにこの親が僕をほしくて私をほしくて産んでくれたんだろうかと思いたくなるような親いっぱいいるだろう!だからどうして私を産んだのって何で?って言いたくなるよな?言いたくなるかも分かんないけどねそんな親でもねあなたたちが産まれた時は父さん母さん愛し合ってたんだよ。
愛し合いあなたたちがほしいから産んだ。
ほしゅうなきゃ親は産まん。
あなたたちの親泣くんだよ。
泣くの。
産まれてくれてありがとうって言われた命でどんな親だってあなたたちを見て産まれてくれてありがとう今の親からは想像つかんという人もいるかも分からんけどね。
この子いらんかったって産んだ親は一人もいませんでした。
そんなに望まれて出てきた命です。
翌日の現場は中学校です。
山本さんが生徒たちに話したのは子どもを中絶した中学2年生の言葉でした。
私はその女の子にいろんな事をお話ししてる時でした。
ちょうど分娩室で「赤ちゃんが産まれるから山本さん分娩室に入って」って言われたんです。
私は出産したお母さんの許可をもらい中学校2年の女の子に赤ちゃん抱かせたんです。
そのヤンキーの中学生今産まれたばかりの赤ちゃんを抱き締めて何と言ったと思う?そ〜っと抱き締めて言った言葉。
私も気が付いてなかった言葉を彼女が教えてくれた。
「赤ちゃんってあったかいね」って言ったんだよ。
分かる?みんな。
死んだら冷たいんだよ。
冷たくなった命は二度とあったかくはならん。
生きてるからあったかい。
君たち一人ずつの命がどんなにあったかいかを知って下さい。
1週間かけて600人を超える人たちに語りかけた山本さん。
助産師としての実体験から生まれた言葉をぶつけました。
昼夜を問わない助産師の仕事と講演を30年以上続けてきた山本さん。
脊髄を痛め一時は歩く事さえ困難になりました。
医師からは無理をしないよう言われています。
今日も首肩もほんとにすごいです。
すごい。
いつまで講演を続けられるのか不安を抱えています。
自分の言葉は子どもたちの現実を変える力になっているのか?分からなくなる時もあります。
感想文が返ってきた時にその子がどうしてるかという不安は大体はいつも持ってるから。
だけど顔も見えないし…。
感想文を読んで山本さんが自分から連絡を取った少女がいます。
中学校でクラス全体からいじめに遭い自殺を考えた女子生徒です。
枠の外まで文字で埋め尽くされた一枚。
山本さんは直接会って話を聞きました。
しかしここ最近は連絡が取れなくなっていました。
(呼び出し音)あっ!元気?私どうしようかと…全然出ないからさ。
どうかなと思って…頑張って行きよるん?学校。
女子生徒は体調を崩していたものの進学した高校に通っている事が分かりました。
学校が楽しかったらいいわ。
ほんであんたお父さんのお仕事手伝いよる?いやすごい!いや〜いや…。
なんか変な心配したけどあっそうか!へえ楽しくやってる…お友達はできたんだ。
いる?それじゃいいじゃん。
今はいじめもなくなり部活動にも積極的に参加していました。
私はね思ってます。
疲れが吹っ飛んだわこれでね。
山本さんの電話に出た女子生徒です。
当時親はいじめに気付いていませんでした。
自分からも相談できないまま一人で抱え込んでいました。
カミソリ見つけてやろうかやらんかとか…。
ネクタイとかで首やろうかって時にリビングで家族の声聞こえたらもうできんと思って。
それで何回もせんかったりみたいな…。
もうボロボロやったと思います。
生きる意味を見失っていた時出会ったのが山本さんの語る言葉でした。
子どもたちの問題と向き合ってきた山本さん。
今親のケアにも力を入れています。
助産院に母親たちが集える場所をつくりました。
保育士や看護師が常駐し孤立しがちな母親たちの相談にのります。
もう終わったの?バイバイもう帰る?母親たちに山本さんも積極的に声をかけます。
これでお母さんちょっとゆっくりご飯できる。
イライラするもんねやっぱしね。
そうでしょああうれしいそう言ってくれたら。
そうだね相談もできるけんな。
優しくなれるわ帰ったら。
分かります分かります。
お母さん癒やしの場所だもんね。
ほら帰ったらいい子でおってよ。
山本さんは子どもたちとの関わりに悩む親たちに伝えたい事がありました。
ほいじゃ気を付けて。
(母親)ありがとうございます。
はいどうも。
虐待を受けたと思われる子どもたちがウワーッといっぱい吐き出してくるのを見た時これをお母さんに返していかないかんというのがあって。
あなたたちが何気なく言った言葉子どもたち傷ついてるし何気なくしたしぐさが結構きつくズッとずっしりきてる子どもたちがいるよ…。
この日向かったのは地元の小学校。
山本さん自らが話を持ちかけて講演が実現しました。
来年小学校に入学する児童の身体検査の日です。
一人で問題を抱え込む親たちにも言葉を届けたいと考えました。
虐待受けてる子どもたちがいたんですよ。
その子どもたちが中学生になってた。
ある時これは県外での話です。
中学校2年の男の子からこんな感想文もらった。
「山本さんこんな親でも感謝せないかんかな?」って。
「山本さんの講演を聞いたら感謝せないかんと思うけど僕できんのや」って。
何でできんかっていったら「僕が生まれた時から父さんと母さんは僕にはご飯をほとんど食べさせてくれなかった。
怒られ殴られたたかれ…」。
山本さんは子どもたちの本音を親たちに突きつけます。
私は全員みんなの前で謝りました。
20名の前でねごめんね。
私の講演でとっても苦しんでいる子がいる事を知った。
その子に言いたい。
あなたたちを大切に大切に育ててくれた親ならば感謝すればいい。
だけどあなたたちに対して嫌な思いをさしてる親がいたならばあなたたちがそんな親になるな。
親を追い越せ。
親以上の人間になりな。
時にはあなたたちの方から親を捨てろってやっちゃったんです。
親を捨てろと言ってきた時1週間後に来た感想文返ってきたんです。
こんな親でも感謝せないかんかなって言った男の子。
「山本さんありがとう。
僕とっても心が軽くなりました。
だけどね山本さん…」。
ここのあとの言葉を皆さん忘れないで下さい。
子どもはこう書いてあります。
「だけどね山本さんこんな親でも僕の親です。
僕父さん母さん大好きです」。
誰が親捨てる?だから子育てできるでしょあなたたち。
あなたたち多分子どもを叱ったあとにまたそっと抱き締めて「ごめんね」って言ってる親がどれぐらいいる?子どもたちは親好きなんです。
子どもは抱き締めて下さい。
抱き締められてない子どもがいろんな事件を起こしてます。
私はこの言葉をものすごく皆さんに言いたかった。
だけどある中学校で高松市内の中学校で講演した時あるお母さんからこんなお手紙をもらった。
「子どもを抱けとはどういう事や?」って。
抱けん親に対しては。
「抱きたくないから抱けないのに抱けとはどういう事や」って書かれました。
だけど言います。
抱きたくなくても抱きなさい。
一日に1回でいいから。
なぜか分かる?親のぬくもりを与えて下さい!そういった時に先生の言葉で…やってみようかなと思います。
講演のないこの日。
山本さんを慕う助産師や看護師が全国から集まりました。
本音で闘わないと駄目なんです。
育てた弟子は200人を超えました。
「助けて」って言ってもらえるような地域をつくっていこうっていうのは今頑張っていきたいなって思ってる事です。
(笑い声)山本さんの言葉に出会い前へ踏み出そうとする子どもたち。
「『死にたい』気持ちを生きたいに変えたい」。
「生まれ変わります」。
ここまで親が育ててくれた命を何にも咲かせずもせずしてつぼみのすばらしいものを持ってる子が散っていくっていうのも心痛む事で…。
みんなそれぞれできる事はいっぱいあるだろうと思うけど私のできる事はこれ…こうやって語り続ける命の大切さを語り継ぐ事が私の…生き方というか考え方というか。
というのとそれしか私もできないから。
いのち咲かせたい。
71歳の助産師を突き動かす思いです。
2015/12/14(月) 15:15〜15:41
NHK総合1・神戸
ろーかる直送便 ドキュメントしこく▽いのち咲かせたい〜71歳の助産師 言葉の力[字]

高松市の助産師、山本文子さん71歳。3000人以上の赤ちゃんをとりあげた経験から、命の重みを伝える講演を全国で続けている。言葉の力を信じて活動する助産師を追う。

詳細情報
番組内容
高松市に住む71歳の助産師、山本文子さん。3000人以上の赤ちゃんをとりあげてきた経験をもとに「いのちの重み」を伝える講演を続ける“熱血”助産師だ。親の離婚や虐待、いじめで心に深い闇を抱えた子どもたちに「あなたは望まれて生まれた命」と語りかけ、救いの手を差し伸べてきた。子どもとの接し方に悩む母親たちには「一日に一回でいいから、子どもを抱きしめて」と訴える。言葉の力を信じて活動を続ける助産師を追う。
出演者
【ナレーション】玉川砂記子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – その他
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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