デザイン界の最高峰ともいわれるEDIDA賞の授賞式。
受賞したのは…世界が注目するデザイナーが今回の先生です。
2015年秋。
東京・青山にある事務所を訪ねました。
あ〜どうもこんにちは。
母校での2日にわたる授業の依頼。
授業ですか?僕教えるの苦手なんですよ。
やっぱりデザインって教えれるもんじゃないというか。
しかも中学生ですよね。
戸惑いながらも佐藤さんは企画を了承。
「デザインは教えにくい」。
大学で教壇に立った際の苦い体験が佐藤さんにはありました。
今取り組んでいるのはスイスの時計メーカーから依頼された商品のデザインの刷新。
多くの部品の中佐藤さんが変えたものはたった一点だけ。
おじいちゃんがやってるような昔からある古いちっちゃな時計屋さんのイメージでして。
メカメカしい時計を修理に出したらおじいちゃんが間違えて針をつけちゃったっていう。
佐藤さんが目指すのはシンプルで心に残る斬新さ。
これが佐藤流デザイン。
デザイナーだから思ったように表現して下さいってお客さんに言われてしまうと困ったなって。
それが一番困る仕事なんですよね。
誰か困っている。
何か課題があるとか何か問題があるからこそデザインというのが役に立つっていう。
それを解決するための手段としてデザインがあるんじゃないかなといつも思ってるんで。
問題をどう発見できるかみたいな部分もすごく大事なんじゃないかなという気がします。
佐藤さんのデザインは困っている人に応えるためのアイデアがいっぱい。
これはカップの一部がめくれスプーンやティーバッグをかけられるデザイン。
便利ですよね。
ヨーロッパで高く評価されている佐藤さん。
デザインする秘訣を聞いてみました。
スタートがミラノだったので本当に化け物みたいな天才だなっていうようなデザイナーがゴロゴロいるんですよね。
才能の固まりというか感性の固まり。
この人たちと…本当に社会人1年目で思い知ってしまったっていうところがあって。
そのあとで自分にできる事って何かなって思った時に…そういった部分を…些細な出来事を大事にする。
その発見をみんなが共有できる形にする。
佐藤さんから授業の準備ができたと連絡が入りました。
精緻な手作りの教材が出来上がっていました。
必死です。
そこは伝わりましたか。
かなり本気度高いですこれは。
もう僕一生誰にも教えなくてもいいぐらいここで教えますって思いました。
後輩たちに伝えたい事は何ですか?…っていうぐらいかなって気がするんですよね。
デザインを教える自信はないですし。
新しいアイデアとか発想法とかでもないと思いますし。
目線を変える。
佐藤さんのまなざしのその先には一体何が見えているのでしょう?さあ授業が始まります。
東京・東大泉。
ここが佐藤さんの母校。
隣の小学校も変わってないですね何も。
この学校は海外からの帰国生を長年にわたって積極的に受け入れてきました。
佐藤さんもその一人でした。
おはようございます。
(一同)おはようございます!僕の仕事はデザイナー。
デザイナーって仕事聞いた事ある人手を挙げてみて下さい。
おお結構知名度高いですね。
よかった。
よかった。
誰も知らないって言われたらどうしようかなと…。
デザイナーっていうと何となくいろんなものをカッコよくしたりちょっと器用な人とか美術が得意な子とか絵が得意な子っているよね。
そういう人たちがなる仕事っていうふうに世の中ではちょっと思われてたりするの。
実はそうじゃなくて…アイデアを考えて。
ちょっと特殊な仕事なんですね。
今日はですね授業という事でアイデアがひらめくためのちょっとしたヒントというか。
そのヒントっていうのは頭の中でもないし手先の器用さでもなくて毎日見ている当たり前のもの。
自分たちの筆箱でもいいし座っている椅子でもいいし。
そういうのが見つかると…今日は体感してもらえたらいいのかなって思ってます。
もっと前来ちゃっていいよ。
触ってもらって全然。
もうここに来ちゃっても大丈夫。
来ちゃって来ちゃって。
佐藤さんの実際の作品に触れる事から授業は始まりました。
かわいい豚。
これ何だか分かんないでしょう。
おっそうすごいじゃん。
意外とね歩ける。
こうやって自分で立てておける。
手に取る事でアイデアのさまざまな形を実感する生徒たち。
今度はゲームでウォーミングアップです。
瓶に入った24種類の香りが用意されました。
難しいやつだ。
困っちゃうやつだ。
という事でね目に見えない香りをどうやって形にするか。
みんな一から絵を描くのはちょっと難しいと思うからパーツを作ってきました。
こちらはさまざまな色や形のフィルムが100種類。
こういう透明なフィルム。
これブラウンかな?これ茶色だね。
よ〜くやっぱり考えながらね。
じゃあ始めて下さい。
くっさ!臭いを嗅いでみる。
早速感じた香りの色や形のフィルムを探します。
そのフィルムを台紙の上に並べて香りを形にするのです。
瓶の中は2種類の香りをブレンド。
少し複雑な臭いが…。
メッチャ最後まで嗅いでみ?薬品のきな臭い臭いするから。
フワッとまるい感じなのかな。
ツンツンしてる。
ツンツンしてる。
ツンツンしてる?でも両方混ざってる。
あと5分。
5分ぐらいでまとめようか。
頑張れ頑張れ!ヤバイヤバイ!超悩んでるんですよ。
悩んでるね。
各班の作品が完成しました。
これで全部出ましたねじゃあ。
な〜るほど。
面白いね。
ツンツンするという香りはこうまとまりました。
少し薄くなったあとにまたずっと嗅いでると…この辺がツンツンの感じ?はい。
この辺は?それも何か。
この辺含めて全体でツンツン感があって全体の香りとしてはこう消えていくみたいな感じ。
これタバコ。
感じ出てない?何か。
何か雲っぽいもんねこれね。
どういう考え方でこういう感じになったの?何か「うわっクサッ」ってなんないんですけど後からだんだん来る感じがその上の…。
これなんだ。
あ〜なるほどね。
結構いけるかもみたいな感じ?これは。
なるほどね。
なるほどね。
すごい。
ウォーミングアップ終了。
先生はもう一段高いレベルの課題を出しました。
これ最初に言っちゃったよね。
目線を少しだけずらす。
例えばこのペンをデザインして下さいって言われると…四六時中このペンを見てみてどうしたら新しいペンカッコイイペンが出来るかなって考えるんだけど。
トートバッグってこういうもんだよね。
フォークってこういうもんだよねっていう誰もが共有しているイメージというか認識というかそこを…ふだんデザインを考える時の佐藤さんです。
例えばカップ。
カップの周辺を見ていく事で新しいデザインが生まれます。
スプーンの置き場所そしてさまざまな用途の蓋など。
ちょっとしたアイデアがカップに盛り込まれます。
佐藤流デザインのポイントはものへの固定概念から自由になる事少しずれる事。
モノの休み時間という部分も認識して…これっていうのはすごく…モノにはそれぞれ休み時間がある。
これは枝に留まる小鳥をイメージして作られたグラス。
グラスとボトルの両方の休み時間を利用して新しい表情を佐藤さんは生み出したのです。
ものが新しい顔を見せてくれる瞬間です。
…で思ったのがコップ。
このコップの休み時間を考えて何かデザインをしてもらいたいなと思います。
その時の…何か困ったな…コップの休み時間を考える。
いきなり難しい課題が出されました。
どこからどう考えればいいのか。
生徒たちの試行錯誤が始まります。
コップと何?ソーサー。
生徒たちみんな言葉を失った。
先生は別室で待機中。
生徒たちは先生に相談に行きました。
これは何なの?不衛生の固まり。
ひっくり返せばいいじゃん。
まあまあまあ…にいさん方。
細かいな。
カップケーキか。
そもそものお題言うね。
飲んでない時間であればいいんだよね。
すてきにしてあげるか。
チャリチャリチャリ…。
ハハハハッ!いやすごいエネルギーだ。
言いたくてしょうがないという。
まとまってないけど言いたいみたいな。
アドバイスをもらって少し分かってきたのかな?コップの休み時間。
昨日に引き続き課題は「コップの休み時間」をデザインする事。
こんにちは。
どうですか?どうですか?ABCから始まって…。
突然ユウさんから予想もしなかった言葉が飛び出しました。
え?もちろん全く異なる意味の単語。
でもちょっと動かすと同じ…?本当だ。
大丈夫なのかな。
売れちゃうなこれ。
逆さまにしたら…面白い。
何かすてきな…ちょっと面白いかもしれないですね。
(4人)ありがとうございました。
佐藤さんユウさんのアイデアに動揺…?何で思いつくんだろう?そんな事。
マジっすか!それでアルファベットが並んでたんですね。
うわ〜へこむ。
すごっ!気抜けないですねこれ。
いや〜そうか。
こういう感じになるか。
世界の佐藤オオキ生徒からのアイデアに衝撃を受けるの図。
幼い頃から「ドラえもん」が愛読書だった佐藤さん。
誰もが潜在的にこんな事できたらいいなっていう事を実現してくれててやっぱそういうのって大人になるとそういうの忘れちゃうんですかね。
そういうの何となく捨て去ってしまうような事を思い出させてくれるのが「ドラえもん」なのかもしれないですよね。
でも今日いた皆さんもあれですもんね。
あんな事いいなできたらいいなは多分できるであろうぐらいな希望に満ちあふれて…何でしょうね。
すばらしいですよね。
案がたくさんあってまとまらない3人がやって来ました。
上も下もメチャクチャだねこれ。
これ何?これ。
組み合わせたんですいろんなのを。
組み合わせてみたの。
試しに合わせてみた。
さっきの…何かくびれてね。
何だろうね。
何でもない…。
どうしたの?どうしたの?いえでも何か現実的には。
いやいいんだよいいんだよ。
徐々に混ざっていく?…っていう。
それだけでね。
砂時計みたいに混ぜるか。
面白いな面白いな。
ありそう。
メチャクチャ…もう見てるだけじゃなくて自分もデザインしたくなってきちゃった。
ウズウズしちゃって。
砂時計をどうすればコップの休み時間になるのか。
ヒントをつかみアイデアを書き出す3人。
考えたのがすっぽりコップの中に入れる案。
コップの中の砂時計がどういう働きをすればいいのか悩みます。
じゃあこれ清書用の紙配りま〜す。
清書しちゃいま〜す。
さあ間もなくタイムアップ。
提出の締め切りです。
これがパカッて押されて…。
止まるのは?そう同じ同じ!そうそうそう…。
ちょっと待ってちょっと待って。
ちょっとしたきっかけでイメージが膨らんだ3人。
思いついたのは砂時計を横にしてコップの中に置く事でした。
やるねえ。
やるねえ。
課題「コップの休み時間」が終了。
休み時間から考えてデザインしたコップです。
それぞれアイデアを凝らしたユニークなものが生まれました。
いよいよ発表です。
アルファベットからデザインを発想したグループ。
どんなふうに仕上がったのでしょう。
私たちが考えたコップは…ここを僕たちは…コーヒーを作ってマドラーで混ぜたあとに…それで○×ゲームをして最後水で洗って落として…これはビックリしちゃって本当に全く予想してなかったんだけど。
最後ねゲーム。
遊ぶための道具。
そこにもTOYって書いてあるんだよねきっと。
はい。
じゃあありがとうございます。
(拍手)終了ギリギリまで悩んでいたこのグループ。
砂時計とコップの一体化は成功したのでしょうか。
私たちの班は…これを作りました。
これを傾けるとここから…すごい面白いアイデアでしかも傾ける事で砂糖の量調整できるって話だよね。
コップってこっちにしか傾けないよね飲む時ってね。
こっちに傾けると砂糖が出るっていう…。
そういうアイデアね。
いやこれは本当にすごいなと思います。
はいじゃあありがとうございました。
すばらしい。
(拍手)2日間の授業が終わりました。
楽しいですね。
フフフフッ!あれ何が起きてんでしょうね。
すごい感動しますよね。
ビックリしました。
いや感動しますよこれは本当に。
今までやっぱりデザインをしてるのが好きでデザインを教えるっていうのはどう教えていいか分からないし結局深い部分で共鳴できないっていうふうに自分が諦めてたんですかね。
ああそうやって見ると面白いものがあるんだっていう事ですよねきっと。
それを何か共有できたっていうのはすごくやっぱり深いつながりなのかなって思いましたけどね。
先生はひそかに一つの思いを温めていました。
デザイナーの感動は形を手にした時。
その感動を後輩たちにも体験してもらいたいと佐藤さんは内心期するものがあったのです。
プロの意地じゃないですけど先輩の意地を見せないといけないですよね。
ちょっと今日すごかったので。
何か思いっきりサプライズ。
1週間後先生は戻ってきました。
フリップレイもデザインしてきました。
hotになってて…。
(一同)お〜!作ってみました。
かわいい。
両サイドにお猿さんがついてる。
緊張する…。
そのぐらいでいいじゃない?すごい。
ちゃんと模型で作ってくるとこんな形になりました。
これ多分複数あった方が楽しい。
ちゃんと重ねられるように下にはちょっと段差をつけておく事で。
(一同)お〜!皆さんの箱です。
持って帰ってもらって。
そこには2日間の授業で考え抜いたアイデアの形がありました。
(拍手)自分の想像力を使うような感じで結構面白かったです。
出てきた時に本当に形になってるってすごい感動しました。
友達になれそうだなと思いました。
本当にデザインって奥が深いなっていうか。
自分が好きだなと思ってたデザインってまだまだこの表面の薄いところ見てたんだなと思っていて。
まだまだ多分掘り下げなきゃいけないなっていう勉強になりましたね。
(一同)佐藤先生〜!ハハハッ!2015/12/14(月) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
課外授業 ようこそ先輩〜センセイの頭の中〜「デザイナー 佐藤オオキ」[解][字][再]
今回の先輩は、デザイン界の最高栄誉といわれるEDIAデザイナー・オブ・ザ・イヤーを最年少で受賞した佐藤オオキ。生徒たちと一緒にコップのデザインに挑戦する。
詳細情報
番組内容
今回の先輩は、デザイナーの佐藤オオキ。文房具や食器を始め、家具や店舗まで、幅広くデザインを手がけ、世界的に知られたデザイナーだ。今回の授業はデザインのおもしろさ。毎日見てる当たり前の物を、ちょっと目線をずらすことによって、新鮮なアイデアが見つかることを教える。番組では、2日間かけて子どもたちとコップのデザインづくりに取り組む。ヒントは「コップの休み時間」。どういう意味だろうか。
出演者
【出演】デザイナー…佐藤オオキ,【語り】冨永みーな
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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