緑がきれい。
空気が澄んでる。
は〜…これこれ。
呼吸がくるみたいな。
ファンタジーの向こう側にあるリアリズムですよね。
そこが面白いです。
80歳でこれ!?絶対この方も好奇心旺盛ですよね。
京都の南西にある大山崎町。
ある秋の日一人の旅人がやって来ました。
何かここだけ見るとちょっと違う国に来たみたい。
アジアかアフリカか…この向こうはサバンナみたいな。
すごく緑豊かなとこですね。
結構子供の頃から好奇心が旺盛なのでまだ見た事がない景色とか人とか文化とかもそうですけどそういうのに出会うのがすごく楽しみで。
日常では押されないアンテナを押されるみたいな感じがあるから。
小西真奈美さんは女優の仕事を始めて17年。
最近時代劇に初挑戦しました。
忙しいさなか少しでも時間ができるとふらり旅へ出かけるといいます。
えっ?後ろですか?あの集落の中ですか?その上?あのちょっと屋根が赤めの?すっごい山の中じゃないですか?へ〜。
これ一番最初の入り口ですよね。
すごい。
私美術館に行く時に美術館自体とか絵自体が目的という時もあるんですけどそこに行くまでのアプローチが楽しい所とかがすごく好きなんですよ。
自然とか植物とかいっぱいあって何て言うんだろう何かその美術館も踏まえて全体的に体感型って言うんですかね。
五感で感じるみたいな。
だって紅葉に竹に…ほ〜すごい。
どの季節に来ても楽しそう。
この屋根ですか?さっきの。
へ〜!やって来たのはおよそ100年前大正時代に実業家が設計した山荘をそのまま生かした美術館です。
失礼しま〜す。
うわ〜…。
山小屋みたい。
すごくきれいな状態ですね。
とにかくまずモネが大好きなのでモネのお部屋に行くのは絶対楽しみにしてるので。
おお〜。
ここと…ここが一番好き。
やっぱりきれいだな。
光の画家クロード・モネの「睡蓮」。
亡くなるまでの30年自ら造った睡蓮の池を伸びやかにただひたすらに描き続けました。
この色がすごい好きなんです。
だって見て下さい。
よく近づくとピンクとブルーと紫と…みたいなのがいっぱいオレンジとがいっぱい混ざってるんですよ。
これすごい好き。
これでもここから見た方がすっごくいい!何か近づいたら見えなかったり感じなかったりするのが抽象的だから離れれば離れるほどうわ〜って違うものに見えたり。
ここから見ると何かもっときらきらした日ざしが見える。
何か夕方の窓外の景色みたいな。
すごくいつもモネの絵を見て感じるのが何かこう深呼吸できるんですよ。
呼吸が入ってくるっていうか。
は〜…これこれ!呼吸がくるみたいな。
何かそれこそ何て言うんだろうさっき歩いてきた道中とかを五感で感じるみたいなそういう自然を感じるみたいな感覚がモネの絵を見るとあるんですよ。
風が来るみたいな。
何なんでしょうね。
何でこんな吸い寄せられるんだろう。
この美術館の見どころはまだまだ尽きません。
山荘のインテリアもその一つです。
設計した実業家加賀正太郎が目指したイメージは「世界中の美しいものを集めた豪華客船」。
加賀のこだわりが隅々まで詰まった夢の館です。
暖炉?ちょっとのぞいて見てみると何の模様になっていますか?えっ?もう言ったら絶対怒られる。
いや…タケノコ?当たり?ほんとに!?やった〜!これですよね?もうだって絶対タケノコにしか見えないと思って。
竹があるから?その特産品を入れようと思ったんですか?ほ〜!やった〜。
他は…あっタケノコだらけ!タケノコだらけですよよく見たら。
ちょっと遠目に見ると何かの楽器にも見えますけどね。
おしゃれタケノコ。
アハハハ!へ〜。
一つ一つはすごくこだわりがあって集めてらしてるけど何かすごくさりげないから押しつけがないところがすてきですよね。
だけどタケノコっていうところがいいですね。
地元愛みたいな。
へ〜面白い。
続いて向かったのは日本の名品が並ぶ部屋。
民藝運動をけん引した陶芸家濱田庄司の作品です。
小西さん初対面。
ちょっとこういうものとかがふわ〜って。
「釉流し」って書いてあるからそうかもですね。
何か画家さんがペンキをバシャみたいな見た事ありますけどああいう発想なんですかね。
へ〜…これはたらしたのがこの白い部分なんですかね。
へ〜。
一応4本線みたいにたらしたんですかね。
それともピッてやったのかな。
ある時濱田庄司はこう話しています。
「このような大皿一枚を流し掛で装飾し薬を施すのに実際には15秒以上はかかりません。
それで多くの訪問客が尋ねます。
「早すぎるのではないか」「15秒しかかからないのになぜそんなに高価なのか」私は答えます。
「皿を作るのには60年と15秒もかかっているのです」
ある人には15秒に見えるんでしょうけどほんとに何て言うんだろう一番いい状態に持っていくみたいな。
何かスポーツとかだと気合いが入ってるのもよくないけど抜きすぎてるのもよくなくてパッと見抜けてるようにリラックスしてるように見えるところまで行き着くのにすごく時間がかかるみたいな。
多分その熟練と鍛錬があって行き着いての15秒なんでしょうね。
だから何気ない感じでも味が出るみたいな事になるんですかね。
この白釉ブロンズ縁ってきれい。
何かほんのりきらきらしてほんのりピンクで品があるのにかわいらしい。
このゴールドの先端もちょっと薄いブルーになってて何か自然の中にある色みたい。
イギリスを代表する陶芸家ルーシー・リーの作品です。
釉薬と形が響き合いりんとした表情を生み出しています。
えっこれってルーシーさん80年代おいくつの時なんだろう。
80歳とか?80歳でこれ!?何かかわいらしいと言っていいのか分かんないけどすごいセンスの持ち主ですね。
絶対この方も好奇心旺盛ですよね。
あれは?これも80歳!?80歳…ドットですよ。
ドットって言っちゃいけないのかな。
すごい…何か人生楽しんでそう。
逆にお若い時って…。
これお若くないですか?もうちょっと。
それでも66歳ですね。
66歳。
でもよりシンプル。
58歳ぐらいがこれという事ですよね。
60年とか。
むしろこっちの方が何かもうちょっと晩年みたいな落ち着いた色彩ですねっていう。
すごい。
60歳70歳80歳!へ〜。
ルーシーはウィーン出身。
ナチスから逃れて亡命したイギリスで93年の生涯を陶芸一筋に生きました。
「全ての新しい作品は新たな始まり」。
ルーシーの言葉です。
だってもしかしたらこれだってともすれば「そんな80にもなってドットはないでしょ」って言われちゃうかもしれないじゃないですか。
それでもこれを作りたいって絶対ぶれない芯の強さとでも何かどこかに優しい所とか柔らかい所がないと絶対こんなきれいな色を作ろうとは思わないですよね。
ふ〜ん生き方が出るなぁ。
82歳!82歳でこれすごい!やっぱりすてきなおばあちゃんだったんだろうな…。
結局やっぱり自分が信じたものとか自分がいいと思った方向に進んでその道を貫いてきた方々ばっかりじゃないですか。
あっなんかそういう事を積み重ねていくとこういうふうにいろんなものがそぎ落とされて軽やかですてきな年齢の重ね方とか仕事のしかたとか生き方とかができるんだろうなっていうのはう〜ん…すっごく随所から感じましたね。
やっぱりわくわくして生きるって大事と思って。
あとは最後にあの傘を…。
あの傘が入った時からずっと気になってたので…。
きれい!中から見てもきれい!でもこれ差してるのが見たい。
(笑い声)外から…まあでもいっか周りの人が楽しければ。
購入します。
かわいい!
何年ぶりになるんだろう。
確か10年ほど前鳥取県西側に位置する米子でコンサートを行った。
そこでライブをやるのは初めてだったにもかかわらずその夜は多くの人たちがホールに集まってくれた。
その温かい歓迎がとてもうれしかったのを覚えている。
2015年11月。
私はある写真家の生まれ故郷である鳥取を訪ねた
広く日本海を臨んで東西16キロメートルに広がる砂丘地帯がある。
鳥取砂丘だ。
前日までは雨が降っていた。
しかし撮影のこの日空は高く澄み渡り風ひとつない晴天となった
子供の頃この砂丘に来た事があった。
自分の背丈よりはるかに高い砂の山を前にしてこれは到底一人では登りきれないとため息をついた。
そして思った。
「あの砂山の向こうには一体何があるんだろう」
今日私はある写真家のアートを探求しに行こうと思う
(植田)縦に1列!縦に1列!もっと…もう少し離れて!ああ…。
2番目ちょっともうちょっとバック2番目バック2番目バック。
文句のない舞台装置じゃないの。
いくぞ!絶好でしょう。
これもう僕のスタジオなんですから。
こんにちは。
(「SOMEDAY」)ない。
ロックンロール表現が最高だと思ってますから。
はい。
ロックンロール音楽には言葉がありそしてメロディーハーモニーそれからビートがありそして作った本人の身体がありそして電気で増幅された大きな音がありますから最強です。
ただ…自分が生きている同じ時代にいろいろな他のジャンルの表現者たちも同じ時代の中に生きて表現してるんだな。
そうすると表現しているのは孤独な事ではなく一つの連なりの中でやってるんだなと思うとえ〜何か心強いというかそれを面白いというか…はいそう感じてます。
あ〜目的地が見えてきましたね。
この写真好きです。
非常に関心があります。
ちょっと自分の資料見ますね。
1950年代。
あ〜この写真もいいですね。
奥様を被写体として撮られている写真ですね。
余分なものがない。
対象と舞台の砂丘とそれで構成されている。
非常にシンプルでスタティックな表現ですので見る側がいろいろと想像できる。
その砂丘の中に自分を投入できるというか…そこがいいですね。
そこには植田正治初期の演出写真弓ヶ浜を舞台とした家族写真が集められていた
何となくユーモラスで温かい。
家族という日常が芸術になっている
まさに究極の記念写真
何だか幻想的な写真
まるで昔話に出てくるような一コマだ。
当時は相当実験的な写真だったんじゃないだろうか
そして植田家の子供たちカコさんミミさん。
お父さんの撮影に協力している
「ハイこっちを向いてあっちを向いて」。
そんなやり取りが聞こえてくる
戦後まだ間もない頃。
植田正治35歳のポートレート。
この時彼がカメラ越しに見ていたものは何だったのか
まあ一見劇場的なシアター的な表現といいますかそのように一見見えるんですけれどもよ〜く見てみるとその向こう側に家族の風景日常が見えてくる。
ファンタジーの向こう側にあるリアリズムですよね。
そこが面白い。
「砂丘モード」シリーズ1983年の作品
しかしこの写真どうやって撮影したんだろう?
晩年の彼は広告の世界で活躍した
砂丘を背景にした作品。
その非現実的なイメージはファッションや広告の世界で光を放った
帽子ステッキこうもり傘。
ダリやマグリットを思わせるようなシュールレアリスティックな表現。
植田正治のそれは一体どこから来たんだろう。
私の個人的な関心はそこにあった
ちょうど植田さんが多感な頃ですね。
10代から20代にかけてシュールレアリズム一連の詩や絵画や文学そうしたものに触れていたのかどうか。
アンドレ・ブルトンや瀧口修造ですね。
そうした自分より年上のアーティストの作品にどのような感想を持たれていたのか何を見ていたのか?というか植田さんに直接お伺いしたかったですね。
ここですね。
(ノック)こんにちは〜。
こんにちは。
・はい。
どうもはじめまして佐野と申します。
こんにちは。
どうぞお入り下さい。
おじゃまします。
あ〜ここが先生のアトリエという事になりますね。
台所兼でございます。
創作の秘密がいろいろと詰まってそうですね。
先生の生活の息遣いのようなものも感じられるような気がしますね。
亡くなってそのまんまにしてますので。
最近このノートが出てまいりまして「植田正治の作画ノオト」と。
作画…。
ノートじゃなくてノオトですね。
こういうふうなその当時の作品のイメージを作ってますね。
非常に興味深いですね。
まずこちらの方が「パパとママとコドモたち」ですね。
最初恐らく「お父さんとお母さんと子供たち」とこう書いてあるんですけれどもこういうふうに棒を引っ張って「パパとママとコドモたち」と。
モダンにしたわけですよね。
その「子供の絵のようなポーズで」というのがどうも目的みたいですね。
今さっき美術館の方でちょうどこの写真を私は拝見してきたばかりですので非常にリアリティーを感じますね。
一番小さいのが私でございまして六十何年前です。
ああそうですか。
絵コンテでありある種台本といってもいいかもしれないですね。
これはほんと貴重な…。
やっぱり私も創作しますので創作する時というのはやはり混沌としたものが渦巻いてるんですけれども自分自身をやっぱり整理つけるために言葉にしたりスケッチにしたりして一度自分の内部を整理してから一つの形にまとめていくというプロセスがあるんですけれども…。
植田正治の…あっどうぞ。
はぁ〜これはコラージュですね言ってみればね。
面白いな〜。
ああ〜コドモの風景ですね。
これは私の推測なんですけれども多感な頃にそうしたシュールレアリズムの芸術に触れられていたのかどうかというところが私の興味なんですけど。
実を言うとですねその本を買い求めて自分はやったなっていう感じがすごく出てきてるんです。
やっぱりですか…。
だから自分の世界が正しかったとそういうものは自分の意思に合ってると。
その本を見てすごく感動して本人はやった〜っていう事を言ってます。
やはりそうですか。
はい。
しかしその写真をよ〜く見てみるとその向こう側に何か一つの温かさを感じるんですよね。
ああそれありますね。
よくシュールレアリズムの作品にある魑魅魍魎とした世界観その先の寂しい世界観みたいなものではなく先生の作品の向こう側には超現実的な表現ではあるんだけれども何か温かいものを感じる。
「その温かいものの源泉はどこにあるのか?」と僕は推測するんですけれどもやはり先生が生まれたこの土地ですよね。
この土地が持つ温かみまた特に家族という現実ですよね。
家族という現実が先生の創作の源泉にあったのかもしれないなという事をちょっと思ったりするんですよね。
作品の温かみというのはそこから来てるのかなという思いなんですけれどもね。
植田さんの仕事場を拝見できた事はとても幸運だった。
そこにはアーティスト植田正治のクリエーティブな日常があった。
東京に戻る前に弓ヶ浜に立ち寄った
植田さんが若い頃家族を被写体として撮影したその舞台となった砂浜だ
この砂浜を歩き私は植田さんのスピリットに少しでも触れてみたかった
11月の柔らかな風が日本海を吹き抜けていった
気持ちいい!2015/12/13(日) 20:00〜20:45
NHKEテレ1大阪
日曜美術館「アートの旅 みつけよう、美 秋編」[字][再]
ミュージシャン・佐野元春さんは鳥取へ。日本を代表する写真家・植田正治の秘密を探りに。女優・小西真奈美さんは京都へ。大好きなモネを堪能。二人はどんな美を見つける?
詳細情報
番組内容
魅力的な旅人が、感性全開でアートの魅力を発見してゆく「アートの旅」。今回は、ミュージシャン・佐野元春さんと女優・小西真奈美さん。佐野さんは、鳥取で“UEDA−CHO”と呼ばれる独特のシュールな作風で知られる写真家・植田正治の魅力を探求。佐野さんのモノローグにご注目! 小西さんは京都で大好きなモネと対面。さらに、美術館を探検するうち、思いがけない出会いが…。喜び。不思議。二人の旅のドキュメント。
出演者
【出演】佐野元春,小西真奈美,【司会】伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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