横浜港にある人気の釣り場を訪ねました。
釣り人たちから思いっきり嫌われている魚がいるといいます。
魚の名はゴンズイ。
猛毒のトゲを持ち刺されると何時間も激痛が続きます。
この人も刺されました。
さかなクンです!嫌われ者のゴンズイですがほかの魚にはない得意ワザがあります。
ギュッと集まって玉になるんです。
人呼んで「ゴンズイ玉」。
一糸乱れぬ動きで海底を進み食べものを探します。
さらにこのゴンズイ玉変幻自在に姿を変えるんです。
ある時は竜巻。
またある時は毛むくじゃらの妖怪。
まか不思議な集団パフォーマンスです。
今日は毒魚が全員集合。
ゴンズイ玉の秘密に迫ります。
(テーマ音楽)見事なサンゴ礁に集う色鮮やかな魚たち。
この絶景一体どこだと思いますか?ここは高知県の西の端にある柏島。
周囲わずか4キロの小さな島です。
島の周辺は日本でも指折りの魚の宝庫。
見られる魚はなんと1,000種類。
そんな海の水深8メートルほどの所石の下に…。
ヒゲを生やした魚が見えます。
ゴンズイです。
大きさは15センチほど。
本州から沖縄までの沿岸で見られます。
ヒゲは8本。
この顔何かに似ていませんか?そうナマズです。
ゴンズイは川や池にすむナマズの仲間なんです。
胸ビレと背ビレの根元にトゲが隠されています。
敵に襲われるとトゲが現れ毒を注入。
うっかり人が刺されると焼け付くような痛みがひたすら続き体質によっては死に至ることさえあるんです。
でもゴンズイって大きな群れになるはずなんですが…。
実は群れになるのはもっと小さな子どものゴンズイ。
いました!大きさ4センチほどの子どもの群れです。
大人に比べて黄色のしま模様が鮮やかですね。
50匹以上はいるでしょうか。
皆同じ方向を向きお互いの体が触れ合うほどびっしりと固まって泳いでいます。
ゴンズイの群れは玉のように密集した様子から「ゴンズイ玉」と呼ばれます。
周囲には恐ろしい肉食の魚たちが潜んでいます。
ゴンズイの子どもたちは密集した群れを作ることで天敵から身を守っているんです。
こちらのゴンズイ玉は岩場を進み砂地の海底に到着。
すると何やら奇妙な動きを始めました。
それぞれのゴンズイが群れの先頭に向かって泳ぎながら群れ全体は海底をはうように進んでいきます。
先頭の魚たちは口を砂につけています。
どうやら食事をしているようです。
砂の中にどんな食べものがあるんでしょう?ゴンズイが食事をしていた付近の砂を集め調べてみました。
見つかったのは…。
小さなカニやゴカイクモヒトデの仲間など。
ゴンズイは砂の中のこうした生きものを食べるんです。
この時大活躍するのがヒゲ。
獲物のかすかな匂いなどを敏感に感じ取ることができます。
ゴンズイたちが大勢で食事をすると砂が舞い上がります。
それを見つけて魚が集まってきました。
砂と一緒に舞い上がった生きものを盛んに食べています。
ゴンズイのおかげで楽に食べものを得ることができるんです。
ゴンズイたちのこの食事法。
よ〜く見ると動きに規則性があることがわかります。
魚に色をつけて見てみましょう。
上にいた1匹が海底まで下がっていきます。
後ろのゴンズイはそれを追い越し先頭へ。
ひたすらその繰り返しです。
これとっても理にかなった動きなんです。
真横から見るとこんなふうに回転しながら動いています。
1匹に注目してみましょう。
しばらく食事をするといったん群れの後ろに回り再び先頭へ。
こうして群れは密集した形を保ったままメンバー全員が平等に食べものをとることができるんです。
回転しながら進むゴンズイ玉のこの動き道路工事に使うロードローラーに似ていることから「ローラー式食事法」と呼ばれます。
こうして固まっていると食事中も安全です。
肉食の魚が潜んでいますが…このとおり襲ってきません。
ゴンズイ玉のローラー式食事法食欲と安全とを同時に満たす優れた作戦なんです。
ゴンズイ玉が繰り出すさらなる驚きの作戦があります。
大きな魚が近づいた時突然ゴンズイ玉の形が複雑に変化し始めました。
これはゴンズイが大きな天敵に対抗する時の行動。
群れ全体がまるで一つの巨大な生きもののようです。
こうして敵を圧倒する作戦なんです。
群れの形は目まぐるしく変わります。
たてがみをなびかせるライオンのような姿から…。
巻き上がる竜巻へ。
変幻自在のパフォーマンスで敵を寄せつけません。
刻々と姿を変えていくゴンズイ玉。
あっこれなんかまるで黒いヒゲじいみたい。
オッホン!私はもっと男前ですぞ!おっとご本人の登場ですね。
ハハハはい。
いやゴンズイには猛毒があるんでしょ?なにも大きな群れなんか作らなくても怖いものなし!なんじゃないんですかね。
確かにそう思いますよね。
でもちょっとこれをご覧下さい。
ふ化して1〜2か月子どものゴンズイの群れです。
フエフキダイに襲われてしまいました。
あちゃ〜。
あれ?何か口をモゴモゴしてますな。
トゲが刺さったんですかね。
あっでもかまわず襲ってますな。
はい。
成長したゴンズイと違って小さいうちは毒の量が少なく天敵に襲われやすいんです。
へえ〜あそうなんだ。
群れからはぐれてしまうととても生きてはいけません。
だから子どものゴンズイは仲間と群れを作りいつも固まっていなければならないんですよ。
単に毒があるだけでは単ドク生活は無理ということですな。
え…ええそうなんですね。
でねヒゲじいゴンズイが群れを作る性質は彼らが海にすむナマズの仲間だということと関係があるんです。
えっどどういうことなんでしょうか?ナマズの仲間は世界におよそ2,800種類。
その大部分は川や池など淡水にすんでいます。
こちら日本のナマズと同じように多くは小さい時も群れを作らず1匹だけで暮らします。
そうなんだ。
ゴンズイはもともと淡水にいたナマズの仲間が海に住みかを広げたものだと考えられています。
海は川や池に比べて生きものが多い豊かな世界。
一方で天敵となる魚やイカタコなどもたくさんいます。
う〜ん豊かだけど危ないんですな。
そうなんです。
そんな危険な海を生き抜くうえでゴンズイの群れを作る性質が役に立ったと考えられるんですよ。
う〜んなるほどねぇ。
ゴンズイのように毒を持ちしかも群れまで作るナマズは世界でもほとんど知られていないんです。
へえ〜。
海に進出したナマズゴンズイ。
海ではナマズもなまずっかな事では生きていけねえってことですな。
なんてね!第2章ではゴンズイ玉のさらなる秘密に迫ります。
2つのゴンズイ玉が合体したら…バラバラになっちゃった。
一体どういうこと?今回の舞台高知県の柏島。
日本の海水魚全体のなんと1/3にあたる1,000種類もの魚が見られます。
柏島でこれほど多くの魚が見られる理由の一つは島の位置にあります。
四国の西の端にある柏島。
豊後水道を通る潮の流れと暖流の黒潮が交わるあたりにあります。
そのため温帯と熱帯両方の魚が見られるんです。
柏島の海の豊かさを象徴するのがキビナゴです。
キビナゴは大きさ10センチほど。
毎年5月産卵のため何百万もの大群でやってきます。
産卵が始まるのは夜明け前。
メスは砂におなかをすりつけて次々に卵を産んでいきます。
スナダコが現れました。
キビナゴに襲いかかります。
さまざまな生きものがキビナゴを狙って集まってきます。
しかしどんなに食べられても圧倒的な数のキビナゴが食べ尽くされることはありません。
柏島では命をつなぐ壮大な営みが毎年繰り返されているんです。
「ゴンズイ玉」と呼ばれるユニークな群れを作るゴンズイの子どもたち。
昼間食事や移動の時も群れは常に一緒です。
岩陰でひと休みする時も一緒。
移動している時群れが分かれてしまうこともありますが…。
すぐに合流します。
夜はどうしているんでしょうか?8時ごろ。
海底を探してみると…。
いました。
岩の間で皆一緒に休んでいます。
24時間常に仲間と身を寄せ合っているゴンズイたち。
でも不思議なことに気付きました。
それはほかのゴンズイの群れとの関係です。
2つの群れが近づくことはありますが…どんなに近づいても一緒にはならないんです。
体の大きさがよく似た群れ同士でもやはり互いに知らんぷり。
そこで専門家の監修のもと実験を行うことにしました。
ちょっと失礼して2つの群れを合流させてみます。
すると1つの群れになったかと思いきや…あれ?次々に離れていきます。
群れはバラバラになってしまいました。
5分後10メートルほど離れた場所で片方の群れが再び集まり始めました。
何かに引き寄せられるように集まっていきます。
10分もしないうちにすっかり元の群れに戻りました。
もう一つの群れもこちらの岩の下で元どおりになっていました。
ゴンズイの群れ同士やはり一緒になることはないんです。
ちょちょっと待った!おやヒゲじいどうしました?いや〜ゴンズイって集団で身を守ってるんですよね。
はい。
それならほかの群れとも仲よくして大きな集団になったほうがいいんじゃないんでしょうかね?う〜んそう思うのも無理ありませんよね。
でもねほかの群れとは一緒になれない理由があるんです。
え〜どんな?それは群れの成り立ちに秘密があります。
実はゴンズイの群れのメンバーは同じ親から生まれた子どもたちつまり兄弟なんです。
へえ〜あそうなんだ。
それぞれの群れには群れごとに違う匂いがあります。
こんなイメージです。
兄弟たちはその匂いを頼りに集まっているため2つの群れが1つになることはないんですよ。
あなるほど。
この匂い「集合フェロモン」と呼ばれます。
「集合フェロモン」。
先ほどの実験で何が起こっていたかといいますと合流した直後はそれぞれのフェロモンが混ざってしまったため混乱したんです。
ほうほうほう。
そのあとバラバラになりましたよね。
これは混ざった匂いからいったん逃れるためだったと考えられます。
なるほど。
そして最終的にそれぞれの集合フェロモンを頼りにメンバー同士集まることができたんです。
う〜ん。
でも何でそうまでして兄弟のキズナにこだわるんですか?ヒゲじいなかなか鋭いですね。
へへへ。
実は兄弟だけで一緒にいるといろんなメリットがあるんですよ。
へえ〜どんな?1つには天敵対策です。
群れのメンバーは同じ卵の固まりから同時に生まれた兄弟です。
つまり全員の大きさがぴったりそろっているので敵は狙いを定めにくいんです。
あなるほどね。
そしてもう一つは食事の時。
ゴンズイ独特の「ローラー食事法」です。
この統率のとれた見事な動き。
泳ぐ速さが同じ兄弟だからこそできるんです。
ふ〜ん。
もしここに大きさの異なるゴンズイが交じると泳ぐ速さが違うため群れを維持したまま食事を続けることはできません。
あ〜そうか。
ゴンズイ玉はサイズが皆同じ兄弟だからこそ天敵にも対抗できるし食事も効率よくできるんです。
なるほど!ゴンズイ玉はメンバーが兄弟だからキズナも強大!さらに動きも器用だい!なんちゃってね。
続いてはゴンズイ玉誕生の瞬間に迫ります。
幼い子どもの群れに強敵出現。
大丈夫?ゴンズイが属するナマズの仲間。
南極を除くすべての大陸に分布しています。
魚類の中で最も繁栄しているグループの一つです。
世界には驚きの生き残り術を持つナマズがたくさんいます。
こちらはアマゾン川にすむメガロドラス。
すごいのはその体。
敵から身を守るため皮膚が鎧のように硬いんです。
ヨーロッパのスペインには豪快な狩りを見せるナマズがいます。
その名は…ヨーロッパオオナマズ。
全長3メートルにもなる世界最大級のナマズです。
水辺にハトが集まっています。
あっナマズが近づいてきましたよ。
うわっ一瞬で丸のみ!巨大なナマズならではの豪快な狩りです。
続いてはアフリカ東部のタンガニーカ湖。
ここには口の中で子どもを育てるシクリッドの仲間がたくさんいます。
しかしこちらのシクリッドから出てきたのは…。
なんとナマズ!一体どういうことなんでしょうか?子どもの本当の親はこちら。
親はシクリッドの卵に自分の卵を紛れ込ませ一緒に育てさせるんです。
う〜んしたたか!まさにびっくりぽんのナマズたち。
大繁栄しているのも納得ですね。
兄弟の固いキズナで結ばれたゴンズイ玉。
しかし全員がいつまでも一緒にいられるわけではありません。
こちらは体長4センチ。
生まれて4か月ほどの群れです。
その数は100匹前後。
生まれて10か月ほどたったこの群れではわずか30匹ほど。
鉄壁のゴンズイ玉といえども天敵に襲われ仲間が次第に減っていくんです。
生後1年たった群れではメンバーの数がさらに減ります。
10匹足らずしか残っていない事も珍しくありません。
そして誕生から1年半15センチほどになるとゴンズイ玉から卒業。
毒が十分備わり1匹で過ごせるようになるんです。
このころになると子孫を残す営みを始めるようになります。
別の場所で撮影されたその貴重な映像です。
カップルは大きいほうがメス。
オスはパートナーが決まると岩の下などに巣穴を掘ります。
巣が出来上がるとメスが卵を産むため穴に入ります。
卵は直径3ミリ。
一度に数百個産み付けられます。
産卵から1週間。
赤ちゃんの誕生です。
大きさはおよそ7ミリ。
子どもたちは生後4日ほどでフェロモンを出し始め少しずつ集まるようになります。
ふ化から2週間。
もう群れが出来ています。
ゴンズイ玉はこうして誕生するんです。
再び柏島の海です。
7月末。
岩の間に幼い子どもたちのゴンズイ玉を見つけました。
体の大きさは2センチほど。
生まれてまだ1か月くらいです。
そこへ天敵の大きな魚が近づいてきました。
危険に気付いた子どもたち。
決して離れ離れにならないよう群れを保ったまま逃げようとします。
あっ敵が突進してきました!絶体絶命のピンチです!すると子どもたちギュッと身を寄せ合いながら海面を目指します。
なんとか天敵の魚を振り切ることができました。
でも海面にとどまると今度は鳥などに襲われる危険があります。
子どもたちのゴンズイ玉は再び海底を目指します。
海底まであと少し。
がんばれ!サンゴの陰に入りました。
ここまで来れば大丈夫。
子どもたちは兄弟の固いキズナでピンチを乗り切ったんです。
ゴンズイたちが作る驚くような知恵にあふれたゴンズイ玉。
ぴったりと息の合った動きで行う食事。
変幻自在な動きで相手を惑わす天敵対策。
危険な海をまさに一丸となって生き抜いていました。
小さな賢者たちの大集団が今日も海の底を進んでいきます。
2015/12/13(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「毒魚だヨ!全員集合 ゴンズイ玉 高知 絶景の柏島」[字]
猛毒のトゲを持つ魚・ゴンズイ。「ゴンズイ玉」と呼ばれるその群れは、海底を転がるように進んだり、変幻自在に形を変えたりと不思議だらけ。高知県・柏島の海で謎に迫る!
詳細情報
番組内容
あるときは“竜巻”、またあるときは“妖怪”。変幻自在に形を変える魚の群れ。正体は、ゴンズイだ。海にすむナマズの仲間で、猛毒のトゲを持つ。その群れは密集した様子から、「ゴンズイ玉」と呼ばれる。海底を転がるように進みながら行う食事や、めまぐるしく形を変えて相手を惑わす天敵対策。統率のとれた驚きの行動の秘密は、ゴンズイ玉の成り立ちに隠されていた!高知県・柏島、絶景の海でゴンズイ玉の謎に迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】中山準之助,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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