水木しげるさんを偲(しの)んで 連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」総集編 第3回 2015.12.13


第3部ではですね水木プロが立ち上がってだいぶおうちもにぎやかになってきて…。
どうでしたか?ドラマで改めて水木プロを見ると。
お金は入ってくるようになりましたけどもそれだけ人の出はいりも多いし緊張も多いしね。
それはそれなりに大変でしたけども。
ドラマの中での布美枝は大きな変化というかどんどんどんどんやっぱり有名になっていってどんどん環境が変わっていく中でどこか寂しさを感じる瞬間がすごいあったんですよ私。
いくら貧しくても膝寄せ合って一緒にやってた時の方が懐かしい気持ちもありますよ。
第3部は水木プロダクションが設立するところからお話が始まります。
それではご覧ください。
(登志)
「テレビくん」でマンガ賞を受賞したあと順調に売れだした茂は水木プロダクションを設立しました
(茂)よし出来た!
(倉田)北村さんお待たせしました。
熱血漢の倉田芸術家肌の小峰そしてカンピョウのような男菅井と個性的なアシスタントもそろいました
(北村)すごい迫力ですね先生!ありがとうございました!ではお先に失礼!じゃあ。
危ない!
(藍子の泣き声)
(布美枝)ほらほら痛くないの痛くないの。
すいません大丈夫ですか?平気です。
ちょっとびっくりしただけです。
ごめんね。
(菅井)あっ!泣かないで!お父ちゃんお仕事してるから。
・あっお姉さんすいません。
ちょっと出ていただいて。
(佐知子)私今手離せないから!・暑い狭いうるさい!これでは仕事にならん!
人も仕事も増えてすっかり手狭になった村井家は自宅を大改造。
本格的な仕事場を造りました
(シャッター音)
慌ただしく生活が変わっていく中布美枝は2人目の子供を身ごもり…
あ…。
赤ん坊か?はい。
ふるさとの安来から妹のいずみがやって来て村井家はますますにぎやかになりました。
そこに待ちに待ったうれしい知らせが届いたのです
(豊川)奥さん!決まりました!えっ?「悪魔くん」の放映が決まったんです!お父ちゃん!お父ちゃん大変!何だ大きな声出して…。
「悪魔くん」がテレビになるんです!ええっ!?
(豊川)決まりました!本当に!?・「『ありがとう』って伝えたくて」・「まぶしい朝に苦笑いしてさ」・「あなたが窓を開ける」・「舞い込んだ未来が始まりを教えて」・「いま輝いているんだ」・「『ありがとう』って伝えたくて」・「あなたを見つめるけど」・「繋がれた右手が」・「まっすぐな想いを」・「不器用に伝えている」・「いつまでもただいつまでも」・「あなたと笑っていたいから」・「信じたこの道を」・「確かめていくように」・「今ゆっくりと歩いていこう」美智子さんから来とる!「オメデトウコンヤタノシミニミマス」。
(いずみ)姉ちゃんごはん5合炊けばええかね?お兄さん夫婦とうちの家族と…。
ああ駄目だ足らん!
昭和41年10月6日とうとうその日がやって来ました
(テレビ「悪魔くん」)
(テレビ)「エロイム・エッサイム」。
(テレビ「悪魔くん」)
(哲也)おっ始まったかや。
(源兵衛)黙っちょれ!
(テレビ「悪魔くん」)
(テレビ・ナレーション)「頑張れ悪魔くん。
負けるなメフィスト。
次回悪魔くん『化烏』にご期待ください」。
あっお父ちゃんの絵です!おっおう!悪魔くん!
(「悪魔くんマーチ」)
(修平)おい今茂の名前出たな!
(絹代)いや〜もう一回出ませんかねえ!ほいほれ!出た〜!
(歓声)
(拍手)
(中森)面白かったね!
(富田)あれ昔の仲間なんです!ブラボー!よいしょ。
あっどうぞ。
(一同のにぎわい)あれ?お父ちゃんがおらん…。
お父ちゃん?そうですか。
見てくれましたか。
(戌井)ええ。
面白かったですよ。
怖さもあって大人も子供も楽しめる。
え…?はい…。
はい。
おめでとうございます。
では…。

(早苗)水木さん何だって?「あんたの編集者としての目に狂いはなかった。
これはすごい漫画だ」。
これはすごい漫画だ。
絶対に当たると言ったあんたの言葉が…。
本当になりました!「本当になりましたよ」って…。
そう…。

(受話器を置く音)お父ちゃん。
お祝いの支度出来たよ。
みんな待っとる。
おう…。
う〜ん出来た!
(いずみ)姉ちゃん大丈夫!?どげしたの!?何かおかしい。
もしかして産まれそうなの?
まあなんという巡り合わせでしょう。
またもクリスマスイブに陣痛が始まったのです。
その夜帝王切開となった布美枝のお産が無事に済み女の子が誕生したとの知らせが届きました。
雑誌の連載を何本も抱える茂を手伝うため弟の光男が水木プロに加わりました。
いずみは淡い恋心を胸に安来に帰っていき…。
アシスタントの倉田と小峰も水木プロから巣立っていきました
そろそろまた改築せんといけん。
アシスタントの泊まる部屋もいるし。
そげですね。
ついでに台所ももう一つ作って。
えっ?イトツとイカルうちに呼ぶぞ。
当分は冬の間だけだ。
まあなんとかやってくれ。
はい。
俺は仕事があるけん相手はお前がすることになるが知ってのとおりなかなか手ごわい2人だぞ。
はい。
「冬の間だけ」と言っとるが…ひょっとしたらそのまま住み着いてしまうかもしれんなあ。
そげですねえ。
お前それでもええか?はい。
どげなことがあっても私はお父ちゃんと一緒にやっていくだけですけん。
うん。
よし!早速棟梁に連絡するかなあ。
はい。
おい。
頼んだぞ。
はい。
そしてその年の秋
さあどうぞ。
(絹代)やれやれ着いた。
布美枝さんが車で迎えに来てくれて助かったわ。
ここが我々の冬の別荘か。
さあ上がってください。
お父さんたち着かれましたよ!おう。
(修平と絹代の歓声)よう来たな!しばらくやっかいになる。
よろしく頼むね。
おじいちゃんおばあちゃんだよ。
喜子!アハハハ。
さあさあ上がってください。
おっシャボン玉か。
(喜子)うん。
どれ貸してみろ。
うわ〜!ゆっくり吹くのがコツだ。
ほれ大きいのが出来るぞ。
(村尾)お暑うございます。
ああどうも。
(村尾)ああどうも!お父さん偉いわねえ。
片腕で何でもできて。
ねえねえお母ちゃん!何?お父ちゃんはどうしてこっちの手ないのかな?えっ?どうして?それはねお父ちゃん昔腕をけがしたんだよ。
転んだの?ううん。
もっと大きなけが。
痛かったかなあ。
鬼太郎ならまた生えてくるのにね。
そげだね。

(藍子)きっと誰かに言われたんだよ。
えっ?私もよっちゃんくらいの時に「お父さん大変だね」ってよその人に言われて初めて気が付いたから。
よっちゃんテレビ見ようよ。
(喜子)うん。
回想
(うめき声)
(軍医)やむをえんこのままほうっていても死ぬだけだ。
切れ〜!
(絶叫)お父ちゃん夜食。
ああそこ置いといてくれ。
何読んどるんですか?うんこれだ。
「敗走記」。
ようやく見つかった。
何です?しげさんの漫画ですか?ああ…今日松川さんがこれの話しとってなあ。
また松川さん…。
(冴子)先生が以前お描きになった「敗走記」。
ぜひ加筆して単行本にしてください!
(せきばらい)こ〜だわな。
ああこの漫画ですか。
ラバウルのズンゲン守備隊にいた時に10人ちょっとの分隊で最前線まで送られたことがあったんだ。
はい…。
バイエンという所だ。
本隊から川を2つ越えてジャングルの中をず〜っと100キロも行った先だ。
あ〜あれはきれいなとこだったなあ…。
到着してしばらくは不気味なぐらい静かだったんだが。
朝早く俺が歩哨に立っている時にそれは突然始まった。
見張っていたのとは反対の方角から敵の射撃を受けて俺はとっさに目の前の海に飛び込んだ。
俺も渦に飲み込まれかけてしかたなく銃も弾薬も捨てて必死で岩にしがみついた。
味方は全滅だ…。
そこからがまさに生きるか死ぬかの逃避行だ。
よじ登った崖の上にはたいまつをかざした敵が待ち構えとって後ろは断崖絶壁…。
進退窮まって俺は崖っ縁にぶら下がった。

(絹代)この絵のとおりでしたわ。
あの晩夢の中で…私はこれとそっくりの光景を見たんですよ。
回想しげさんが危ない!お父さんお父さん!起きなはいお父さん!
(修平)どげした?しげさんがやられる。
何を言っとるんだ?断崖絶壁にぶら下がっとる。
敵に見つかったらやられる!お前夢でも見たか?夢なもんですか!しげさんが死んでしまう!よし。
名前を呼べ!連れていかれんように呼び戻すぞ。
はい!しげさ〜んしげさ〜ん!茂茂〜!しげさ〜ん生きて戻れ〜!茂死んだらいけんぞ!しげさん!死んだらいけん!
(修平)死んだらいけんぞ茂!
(絹代)生きて〜生きて戻れ!しげさ〜ん!茂〜!
(修平)茂!
(絹代)死ぬな〜!
(修平)茂!
(絹代)しげさんしげさ〜ん!イトツとイカルが俺を呼んどった。
声がしたんですか?ああ。
後から聞いて驚いた。
2人で夜通し叫んどったそうだ。
敵は崖にぶら下がった俺の頭の上を気づかずに通り過ぎていったよ。
お母さんたちの声が守ってくれたんでしょうかね?うん。
そげかもしれんな…。
本物の戦争を描かねばならない。
その強い思いを茂は持ち続けていました
(三井)総員玉砕と発表された以上全員死んでおらねばならなかったんです。
自分は近頃どうした訳かよく夢を見るんですよ。
(笹岡)死んだ仲間たちのかね?みんなが言うんです。
「村井俺たちのこと描いてくれ」。
こうして戦争漫画の傑作「総員玉砕せよ!」が世に送り出されたのです
(小鳥の鳴き声)
(光男)現代漫画社の代理人と連絡を取ってみたんだがやっぱり状況は厳しそうだ。
そげか…。
回収できないとなると…かなりの打撃ですね。
う〜ん。
お兄さんいらっしゃい。
(雄一)ああどうも。
こげな時間に珍しいですね。
う〜ん俺も役員の一人としてこの一大事を見過ごすわけにはいかんからな。
一大事って何ですか?あれ布美枝さん聞いとらんのか?仕事のことだけんお前は口挟まんでええ。
知り合いの弁護士にも聞いてみたんだが全額回収は難しいなあ。
おいおい!よその仕事で穴埋めするしかないか。
(雄一光男)ああ…。
何しとる?向こう行っとれ。
はい…。

(ペンを走らせる音)
(ドアの開く音)兄貴妙な苦情が来とるぞ。
何だ?鬼太郎のオモチャでいい加減なもんが出回っとるらしい。
電池で動くはずの人形が動かんとかチャックが壊れたとか…。
うちには関係ないだろう。
どうも製造元と連絡がつかんようだなあ。
俺は知らん!そげな話はお前がなんとかせえ!お父ちゃん?ん?どげしたの?ああ風に当たっとったんだ。
あんまり無理せんでくださいね。
現代漫画社のこと大変だって聞きました。
いらんこと言うな。
えっ?お前は仕事の話に口出すな。
散歩行ってくる。
「いらんこと言うな」か…。
何だこりゃ?「お父ちゃんへ」。
「お父ちゃんに手紙書くなんて初めてだけどどうしても伝えたいことがあります。
もしできることがあれば私にもお手伝いさせて下さい。
家族なんですから打ち明けてもらえないのは淋しいです。
最近働きすぎじゃないですか?どうか無理はしないで下さい」。
分かっちょらんなあ…。
えっ…何これ…。
読んどらんのかな…。
先生。
ここの指定なんですけど。
ん?あんた!何で月を2つ描いとるんだ?えっ?先生?いやここは墨で。
(ため息)ん?あれ…。
(ため息)根詰めすぎたかなあ。
(猫)の〜んびりやりゃいいのさ。
ん!?「無為に過ごす」って壁に貼ってあるじゃないか。
だら!本当にダラダラしとったら飯が食えんわ。
家族にアシスタント。
一個分隊を養わねばならんのだ。
気分転換すればまだなんとかな〜わ。
(ため息)
(喜子)お父ちゃんまた新聞読みながら食べてるよ。
し〜っお仕事忙しい時はしかたないんだよ。
(喜子)つまんないの!おい…お茶。
はい。
今夜も遅いんですか?ああ。
夜食に芋ぜんざいでも作りましょうか?ああ。
疲れとるようだけど体大丈夫なの?うん…。
できることがあったら何でも言ってくださいね。
会社も大変かもしれんけど大切なのは会社よりもお父ちゃんの体ですけん。
またいらんことを…。
えっ?仕事のことに口出すな。
お前は黙って家のことしたらええ。
仕事行ってくる。
今度の日曜久しぶりに富士山行くぞ。
(藍子)え?日曜は智美ちゃんと約束…。
みんなで行く。
ええな。
おい。
おい返事ぐらいせえ!私…行かない。
えっ?私行きませんから。
何を言っとるんだ?ええけん俺の言うとおりにせえ!「いらんこと言うな。
口出すな」。
お父ちゃん近頃いつもそればっかり!私にだって気持ちはあるんです!何言っても…お父ちゃんの耳には届かんのですけん。
お父ちゃん…。
ええけんほっとけ!
(泣き声)飛び出してきてしまった。
あっここ昔…美智子さん捜しに来たとこだ…。
お父ちゃん?来るはずないか…。
お母ちゃんはどこへ行ったの?何で帰ってこないの?
(泣き声)何がいけんだったんだろう…。
あの人…前はいつも笑っとったなあ。
あのころに戻りたい。
(子供の泣き声)
(子供)もう嫌だよ〜!
(母親)いつまで泣いてるの?
(子供)だって〜!もう行くわよ。
(子供)待ってよ〜お母ちゃん!喜子泣いとらんだろうか…。
(母親)パパも待ってるよ!
(子供の泣き声)あ…。
何しとるんだろう私…。

(ドアの開く音)
(ドアの開閉音)ただいま。
あっ!お母ちゃんだ!お帰り!やっぱり帰ってきた!ほ〜らねお姉ちゃんの言ったとおりでしょ?うん!どこ行ってたの?心配したんだよ。
ごめんね。
でもねお姉ちゃんがお母ちゃんは絶対に帰ってくるって言うの!だってお母ちゃんが私たちを置いてどっかに行くはずないもん!藍子…。
私ちっとも心配じゃなかったよ。
お母ちゃん帰ってきた!お母ちゃん帰ってきた〜!お母ちゃんの帰ってくるとこはここしかないもんね。
そうだよ。
回想これポケットに入ってた。
「できることがあれば私にもお手伝いさせて下さい。
家族なんですから打ち明けてもらえないのは淋しいです。
最近働きすぎじゃないですか?どうか無理はしないで下さい」。

布美枝の心配がとうとう現実のものになってしまいました
(光男)過労か…。
はい。
(菅井)先生働きすぎだもんなあ。
(相沢)漫画以外にも取材とか記事の原稿とか随分受けてましたからね。
お医者さんには「3〜4日は休むように」と言われました。
調子悪かったんだろうに。
兄貴そういうことは全然言わんからなあ。
すいません私が気づかんもんで…。
いや「休め」と言ったところでどうせ聞く耳持たんから…。
あとのことはこっちでなんとかしますわ。
しばらくゆっくりするように言ってください。
よろしくお願いします。
今何時だ?そろそろ5時ですよ。
5時?こげしちゃおられん。
まだ寝てないと駄目ですよ。
そうはいかん。
あさってには締め切りが2つもある。
光男さんが少し延ばしてもらうように頼んでくれたそうです。
しかし…。
菅井さんたちも頑張ってくれとりますけん。
ほんなら晩飯まで寝るか。
はい。
お父ちゃんどうしたの?病気なの?心配いらんよ。
ちょっと疲れただけだけん。
少し寝たらすぐよくなるって。
喜子お歌聞かせてあげようか?もうちょっとよくなったらね。
そうだ!リンゴすろうかな。
やっぱりお父ちゃんバナナの方がええかな…?お母ちゃん何か張り切ってるね。
うん!ルームサービスか。
気が利くな。
今日は特別ですよ。
浦木のせいだなあ。
えっ?イタチの毒気にあてられて目が回ったんだ。
またそげなこと言って。
働きすぎです!だけん無理しないでくださいって何度も頼んどるのにお父ちゃんちっとも聞いてくれんのだもん。
お父ちゃんが我慢強いのはよう知っとりますよ。
けどつらかったら「つらい」って言ってください。
ここんところちょっこし無理しすぎたかもしれんな。
現代漫画社の赤字の分をほかの仕事で埋めようとして詰め込みすぎたわ。
漫画の世界はどこまで行っても厳しいぞ。
いつ貧乏に逆戻りするか分からん。
もう俺一人で好きなように描いていた頃とは訳が違うけんな。
だんだん…。
ん?お父ちゃんはみんなのために頑張ってお〜なさったんですね。
私も貧乏は嫌ですよ。
けど…あのころのお父ちゃんにはいつも心が楽しくなるようなこと教えてもらっとったわ。
だけん私貧乏しててもつらくはなかったです。
お父ちゃんと一緒に笑っていられたからつらいことなんて一つもなかった。
近頃のお父ちゃんあんまり笑っとらん。
私貧乏しとることよりもお父ちゃんが笑ってくれんことの方がつらいです。
う〜む…作戦は失敗か。
えっ?俺はな貧乏よけ大作戦を決行しとったんだ。
先陣切って戦っとるつもりがいつの間にか部下たちを置き去りにしとったんだな…。
1人で突撃しても戦いには勝てんな。
そげですよ!後方部隊のことも少しは信用してください。
私だけ何も知らされんのは…寂しいです。
手紙読んだぞ。
家の中まで仕事のゴタゴタを引きずったらいけんと思ってな。
だけん仕事部屋に行く時もいっぺん外に出てから入り直しとった。
お父ちゃん…。
おい。
俺が今何を考えとるか分かるか?えっ?いつになったらその飯を食わせてもらえるのか。
あっすみません!あら冷めとる。
温め直してきます。
あ〜そのままでええ。
もうこれ以上は待てん。
早ことせえ!ほいほい。
はい。
あっ梅干し…。
ええ。
このままでええ。
持っとれ持っとれよ。
はい。

茂の体調が回復した頃安来では悲しい出来事が起こりました
(克江)フミちゃん。
あっおばさん…。
とんだことだったね!
弟の貴司が海の事故で亡くなったのです。
まだ38歳の若さでした
そして時は流れ…
あらまだ食べとる。
随分ゆっくりね。
(藍子)うん今日は1限目休講だから。
大学生ってのんきねえ。
昭和56年姉の藍子はこの春大学に進学しました。
妹の喜子はちょっと風変わりな中学3年生です。
一方茂の仕事はというと…
兄貴スランプかもしれんな…。
スランプですか…?
(菅井)先生スランプだと思う。
こんなにパッタリと注文が止まったのは初めてだよ。
回想
(喜子)京都にはどんな妖怪がいるの?何もおらんよ…。
妖怪さえ信じられなくなった茂のもとを漫画家をやめ山梨で教員をしているはるこが訪ねてきました
(はるこ)実は今日お願いにあがったんです。
何ですか?一度学校に来ていただけませんか?えっ?子供たちに先生のお話を聞かせてやりたいんです。
先生の子供時代の頃とか話してやってもらえませんか?「河童の三平」のように愉快で怖くて不思議なことがいっぱいある妖怪の世界の話も。
そういう世界を忘れると子供たちの息が詰まってしまう気がするんです。
そして…
(小豆あらい)・「小豆とごうか」・「人とって食おうかショキショキ」ああ?
(小豆あらい)絵描きの先生…俺たちのこと描いてくれよな。
頼んだぜ!分かった。
(光男)妖怪事典を作る?
スランプを抜け出した茂は妖怪画に打ち込みやがて漫画の枠を超えた妖怪の第一人者として知られるようになっていくのです
・「カチューシャかわいやわかれのつらさ」
芝居と活動写真と家族を愛したイトツの人生にもとうとう幕を下ろす時がやって来ました
(拍手)何だ。
もう終わりか…。
あ〜面白かったなあ…。
(絹代)お父さん…。
60年も一緒におったのに…。
親よりも長く一緒におったのに…。
なあ。
はい。
パーティー開くか?えっ?プロダクション設立20周年の記念に。
パーティーですか?うん。
今お前が言ったろう。
私が何か…?「大勢の人たちが力貸してくれとる」と。
ええ…。
俺は一個分隊を率いとる。
俺の代わりはおらん。
分隊の命運は俺に懸かっとるんだ。
はい。
そげですね。
けどな…。
スガちゃんの代わりもやっぱりおらんのだ。
アシスタントや編集の人たち誰が欠けてもここまでやってこられんだったかもしれん。
だけんこれまで世話になった人たち呼んで謝恩会を開くのが20周年の記念にふさわしいと思うんだがな。
20周年謝恩パーティーか…。
ええですね!角にバン止めてあるからどんどん積み込んで。
(一同)はい!
いよいよ20周年謝恩パーティーの日がやって来ました
(2人)うわ〜!きれい!どげかね?うん。
よく似合ってる。
わ〜すてき!それサンゴだね。
これは…おばばからもらったんだよ。
「紅のサンゴ玉はご縁を結んでくれる」って言っとった。
回想
(登志)紅のサンゴ玉は良縁のお守りだ言うてなよいご縁がありますように…。
おばばも自分のお母さんから譲られたんだって。
(2人)ふ〜ん。
いつかあんたたちがお嫁に行く時にあげるね。
でも一つしかないよ。
早い者勝ちってこと?一人にはこのかんざし。
もう一人にはこの着物あげる。
これはね安来のおばあちゃんが夜なべして縫ってくれたお母ちゃんの嫁入り道具だわ。
へえ〜。
波のような模様が入っとるでしょ。
(喜子)うん。
これはね青海波っていって…。
回想
(ミヤコ)青海波の波の模様には日々の暮らしが静かな海のようにいつまでも続くいう意味があんだよ。
(藍子)静かな海のようにか…。
それにしては荒海だったんじゃないの?う〜ん…。
(3人の笑い声)おいそろそろ行くぞ。
はい!おっ…ええな…。
うわ〜お父ちゃんが見とれてる!だら!早ことせえ。
置いてくぞ!てれてるよ。
(3人の笑い声)
着物もかんざしもよう似合っちょ〜よ布美枝
戌井さ〜ん!今日はお招きありがとうございます。
水木さん20周年おめでとうございます!はい。
布美枝さんおめでとう!ありがとうございます。
あんたとのつきあいももう25周年になりますなあ。
25年か…。
四半世紀ですね。
(2人の笑い声)四半世紀ですって。
お互いよくやってきたわよね。
漫画バカにつきあって。
本当です。
まず飲んで食ってください。
後でまたゆっくり話しましょう。
はい。
では…。
(浦木)お〜いゲゲ。
あっ来た!
(浦木)おっ!奥さん今日はまた見事なお召し物で。
はあ…。
イタチ!何でお前…。
おっと。
何でおるんだとは言わせんぞ。
今日はれっきとした招待客だ。
ああそげだった。
(絹代)浦木さん!うわっイカルだ…。
今日はお祝いだけんあんたもしっかり食べていってごしなさい。
はいはい。
さあ!奥へ行きましょう!奥へほい!あの僕…あ〜!浦木さんはお母さんに任せとったら安心ですね。
そげだな。
(暁子)フミちゃん!フミちゃん。
おめでとう。
アキ姉ちゃん!
(塚本)漫画のことは門外漢ですが家内のお供でやって来ました。
あ〜ゆっくりしてってください。
伯母ちゃんいらっしゃい。
奥にどうぞ。
伯母ちゃん元気だった?
(雄一)茂。
そろそろどうかしら?乾杯の挨拶始めたらどうだ。
あ〜そげだな。
大勢集まってよかったわね!はい。
(せきばらい)え〜今日は水木プロ創立20周年謝恩パーティーにお運びいただきありがとうございます。
乾杯っていってもお父ちゃんたちはジュースだよね。
今日は飲ませたらいけんよ。
せっかくの会がめちゃくちゃになるけん。
はい!え〜今日は大いに食って大いに飲んでそして大いに笑ってえ〜楽しんでいってください。
ああ腕が疲れた…え〜それでは乾杯!
(一同)乾杯!
(拍手)ああどうも。
あ〜ありがとうございます。
まあ飲んでください。
(倉田)奥さん!ああ倉田さん。
あっ小峰さん…。
ご無沙汰してます。
(小峰)しばらくです。
これ奥さんのギョーザですね。
覚えとってくれたんですか?これで随分スタミナつけさせてもらいました。
(倉田)忘れられへんですわ。
ギョーザも野菜のぎょうさん入ったみそ汁も。
菅井さん。
品川君も来ましたよ。
(菅井)おお!
(品川)ご無沙汰してます。
倉田先生!僕大ファンなんです!おおほんまですか。
(船山の笑い声)雄玄社の皆さんそろっとる…。
思い出しますねえ。
プロダクション設立のお祝いの日のこと。
ああ。
あの時はボロ屋に人がぎゅうぎゅうでしたなあ。
(船山)また「鬼太郎」のアニメが始まってうちは大いに士気が上がってますよ!
(梶谷)う〜ん雄玄社も盛り上がってますよ。
なあ松川君。
はい。
ありがとうございます。
いやそれはこちらが言うことです。
今日は謝恩パーティーですから。
水木先生。
これからもよろしくお願いします。

(郁子)奥さん!こんなに大勢の人たちに支えられて今までず〜っとやってきたんですね。
(郁子)みんな水木先生と先生の漫画を愛する人たちです。
深沢さんがいらしてなくて残念だわ…。
少し体調崩されとるようで。
私仕事で迷った時は必ず考えるんですよ。
深沢さんに恥ずかしくない道はどっちだろうって。
あの人は今でも私が一番尊敬する編集者ですから。
ええ…。
(豊川)奥さん!いや〜盛況ですね!はい。
おかげさまで。
20年間奥さんもいろいろ大変でしたでしょう。
いいえ皆さんのおかげで楽しいことばかりでした。
20周年おめでとうございます!ありがとうございます。
(倉田)奥さん奥さん!ああ。
ほんまにおめでとうございます!
(一同)おめでとうございます!ありがとうございます!お世話になりました!ああありがとうございます…。
ありがとうございます。
そして秋風が吹き始めた9月の末。
安来から悲しい知らせが届いたのです
おばばお父さんが…そっちに行ってしまったよ。
一緒に送りに行くか。
仕事はええの?なんとかなる。
みんなで行こう。
昼にはお姉さんが来ますけん。
こっちのことはええけん。
悔いのないようお別れしてきなさい。
はい。
行くぞ。
布美枝さん。
ミヤコさんのこと…くれぐれも…。
はい。
源兵衛の葬儀は大塚の家で執り行われました。
飯田家の墓所に続く道には真っ赤な彼岸花が風に揺れていました
(邦子)だんだん!すいません。
お母さんがそろそろ一緒にって。
おかんつけたら行くわ。
懐かしいなあ。
うちの台所のにおい。
年季入っとるもんなあ。
昔はここにかまどがあったね。
回想お母さんおひつ。
(ミヤコ)ああ。
よっお願いね。
はい!落ち着くなあうちの台所は…。
うん。
(ユキエ)お父さん寝ついてからもちっとも変わらんで威張っとったね。
(ミヤコ)うん。
寝ている間にもいろんなことを思いつかれるんですよ。
どんなことです?私たちに用事がある時はラッパを吹くんです。
(ラッパの音)
(邦子)用事によって吹き方が変わるんです。
調子のええ時はよう詰め碁を打っとりました。
昔うちによう碁打ちの人が来とったね。
料理出したりお酒出したりお母さんとおばば大変だったんだよね。
うんそげだね。
「お前はヘボでいけん」と言って俺は相手にされんだったわ。
村井さんの腕はまあまあ買っとりました。
(邦子)テレビも楽しみにしておられましたよ。
「悪魔くん」の初めての放送の時お父さんもう喜んで…。
(子供1)あのおじちゃん「鬼太郎」の漫画描いてる人?
(横山)ああそげだぞ。
ねえ「鬼太郎」描いて〜。
(子供2)「目玉親父」描いて。
これこれせがまないの。
いや〜ええですよ。
俺のスケッチブック持ってきてくれ。
はい。
はい出来た。
うわ〜「ねずみ男」だ!こげな時に絵を描いて笑っとったらいけんかな?ううん。
ほらうれしそうに見ちょ〜わ。
お父さん満足しとるよ。
何でもない普通の人生だったけど俺はこれだけのものを残したんだぞって。
あんた知っちょ〜?ん?彼岸花の咲く頃に亡くなった人はご先祖様に守られてあの世に行けるっていうんだよ。
お父さんもおばばや貴司やご先祖様と一緒に彼岸に渡っていけるわ。
よかったねえ…お父さん。

(子供1)うわ〜「一反木綿」だ!これはな…。
似とるだろ。
(笑い声)もう…また言っとる!お父さん。
みんな笑って暮らしとるよ。
お父ちゃんはやっぱり絵がうまいね。
当たり前のこと言うな。
お父ちゃん…。
ん?私でよかったのかな?何だ?別の人と一緒になっとったらお父ちゃんどげしてただろう?そげだなあ…。
横を見たらいつもお前が立っとったなあ。
ぼんやりした顔して。
あら。
ぼんやりですか?よかったんじゃないか…お前で。
お父ちゃん…。
おいそろそろ行くぞ。
はい!
(鳥の鳴き声)
(足音)何か…おるよ。
ええか?振り向いたらいけんぞ。

(2人)「『べとべとさん』先へお越し」。
(足音)行ったようだが…。
あれはやっぱり…。
お前よう知っとったな。
「べとべとさん」の呪文。
昔教わったんです。
「見えんけどおる」って。
ふ〜ん。
「見えんけどおる」か。
お〜い。
あれ?
(主題歌「ありがとう」)ああ…。
何だ…。
みんなおったのか。
ず〜っと一緒だったんですね…。
さて行くか?はい。
まだまだこれからだ。
はい!・「信じたこの道を確かめていくように」・「今ゆっくりと歩いていこう」すごく今回布美枝役をやって思ったのがやっぱり水木しげる先生という方を本当に支えてたのは奥さんの布枝さんだってことが。
多分布枝さんじゃなかったらこうなってなかったんじゃないかなって。
私が思うのもおこがましいですけど。
そういうふうに本当思いましたね。
高い固い志でやってることを見ますからね。
私じゃなくても誰とでもちゃんとやっていけますよ。
だけど私この人間と縁があってやっていけることは苦労のしがいもあるしやりがいもあると暗黙のうちに思ってたと思いますよ。
そういうふうに思ってましたよって思える心がどこかすごく支えてたんじゃないかなって思うんですよね。
立派なことは言えませんけど…。
私一人ではやっていけないけど…。
一人ではやっていけないけど2人だったらやっていけるっていうのがね。
すごくやっぱりあったドラマでしたもんね。
本当にありがとうございました。
(向井)「ゲゲゲの女房」総集編をご覧の皆さんこんにちは。
村井茂役をやらせていただいた向井理です。
この作品は僕にとってもとても大事な作品で皆さんの心にも残ったとても作り手側としてもそして見てくれた方も幸せになってくれたそういう作品だったのでまたこの作品を超えるいい作品を残さないといけないなととても強く感じました。
2015/12/13(日) 16:05〜17:13
NHK総合1・神戸
水木しげるさんを偲(しの)んで 連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」総集編 第3回[解][字]

漫画賞を受賞した茂(向井理)には注文が殺到し、さらに「悪魔くん」のテレビ化も決定する。忙しさの増す茂と布美枝(松下奈緒)のあいだにはすれ違いが生まれて…。

詳細情報
番組内容
大手出版社の漫画賞を受賞した茂(向井理)には注文が殺到し、ひとりでは執筆がこなしきれない状況だった。茂はプロダクション設立を決意し、3人のアシスタントが村井家に集結。「悪魔くん」のテレビ化が決定し、茂の作品が多くの人々に受け入れられる瞬間が訪れる。忙しさが増す茂と布美枝(松下奈緒)の間には、すれ違いが生まれ、布美枝は茂といさかいになった勢いで、思わず家を飛び出す。夫婦に初めての危機が生じるが…。
出演者
【出演】松下奈緒,向井理,大杉漣,眞島秀和,南明奈,古手川祐子,風間杜夫,竹下景子,うじきつよし,中村靖日,斎藤工,窪田正孝,柄本佑,風間トオル,青谷優衣,荒井萌,【語り】野際陽子
原作・脚本
【原案】武良布枝,【脚本】山本むつみ
音楽
【音楽】窪田ミナ

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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