鹿児島市にあるろう学校。
できる人?幼稚部から高等部まで65人。
耳が不自由な子どもたちが通っています。
ほとんど聞こえない子の場合会話は手話が頼りです。
この夏中学部の生徒12人にある目標が示されました。
鹿児島市で一番大きなホールで行われる演奏会への参加。
12人が別々の楽器を演奏しハーモニーを奏でようというのです。
子どもたちには自分がどんな音を出しているのかはっきりとは聞こえていません。
楽器を通して体に伝わってくる振動から正しい音が出ているのか感じ取ろうとしています。
(先生)せ〜の。
先生の手の動きに合わせリズムを覚えようとする子。
(先生)速さがねバラバラ。
なかなか感覚をつかむ事ができません。
(先生)上田くん。
仲間と音を合わせハーモニーを奏でるために格闘する子どもたち。
音楽に向き合う中で何を見つけるのか4か月の記録です。
6拍子といいます。
子どもたちの挑戦が始まったのは6月。
まずは演奏する曲のリズムを体に覚え込ませます。
子どもたちの耳の聞こえ方はさまざまです。
補聴器をつければ音が聞き取れる子もいればほとんど聞こえない子もいます。
(ウッドブロック)あっ!
(笑い声)
(先生)手が違うもん。
こっちだもん。
子どもたちの中でなかなかリズムがつかめない子がいました。
せ〜の。
(ウッドブロック)12人の中でも特に耳の聞こえ方がよくありません。
結局この日はリズムを覚える事ができませんでした。
演奏会で披露する事になったのは映画「ウエスト・サイド物語」に登場する音楽のメドレーです。
8分の6拍子の変則的なリズムが特徴的な「アメリカ」。
徐々にスピードが上がるクライマックスの部分では全員の息を合わせる事が特に大事になります。
そして「マンボ」。
ところどころに休符が入る独特のリズム。
更に独自にバイオリンを加えより深みのあるハーモニーを目指します。
いよいよ楽器を使った練習が始まりました。
しかし…。
ほかの子たちが楽器の練習を始める中晴喜くんは一人その輪の中に入れずにいました。
晴喜くんが担当するバスマリンバはベースとなるリズムを作るのが役割です。
晴喜くんが加わらないとハーモニーが成り立ちません。
(先生)分かる?大体2枚目は同じになるから。
だからちょっと今のうちに覚えて。
晴喜くんは生後6か月で重度の聴覚障害だと診断されました。
左耳は全く聞こえず右耳も音をかすかに感じる程度です。
晴喜くんの障害を知った時父の周作さんはどうやって育てていけばいいのか頭が真っ白になったと言います。
父親に「ろうの気持ちが分かりますか」と投げかけた時晴喜くんは何を思っていたのか書いてもらいました。
「僕はイヤなことがあっても忘れる」。
「僕の人生イヤな思い出を残したくない」。
家族との間でさえコミュニケーションに苦労する中で晴喜くんは気持ちを伝え合う事を諦めるようになりました。
演奏会に向けてひときわ練習に力を入れている子がいました。
こんにちは。
そう。
せ〜の。
ここら辺でいいよ。
ここら辺で…。
初めてバイオリンを弾く事になった茜さん。
美しい音色を出すために指や弦をどう使うのかを教わります。
そうそうそうそう。
でもうちょっと…。
しかし茜さんには音が出ている事は分かっても音階までは聞き取れません。
茜さんに聴覚障害があると分かったのは2歳の時です。
兄弟の中で自分だけ耳が聞こえず話せない事が嫌で幼い頃から言葉を話す練習を積んできました。
茜さんは小学校にあがる前初めて楽器に触れました。
その時聞こえた音をとてもきれいだと感じた茜さんは楽器に興味を持つようになりました。
小学校5年生の時茜さんはテレビでバイオリンを弾く女性の姿を見て自分も同じように演奏してみたいと母の和子さんに話しました。
しかし和子さんはバイオリンを習うのは難しいと話しました。
夏休み。
茜さんの家でバイオリンの特訓が始まりました。
どこ駄目?バイオリンを担当する友達と一緒にまずは楽譜どおりに音を出す練習を繰り返します。
次に友達と音を合わせる練習。
でも楽譜どおりに弾く事に精いっぱいで相手の事を見る余裕がありません。
10月。
演奏会の本番まで1か月を切りました。
しかし晴喜くんはまだ8分の6拍子のリズムが身についていませんでした。
(先生)せ〜の。
ツタタツタタツタツタ…。
(先生)でそして小さく。
もう一回せ〜の。
ツタタツタタ…。
せ〜の。
(先生)ず〜っと同じ。
ダダダダダダツタツタツタツタ…。
あなたはツタタツタタダダダダダってなる感じがする。
晴喜くんはハーモニーの土台となるバスマリンバの役割がいかに大切かを先生から聞きました。
「合わないと困る。
バスマリンバは一番責任があります」。
晴喜くんが練習に取り組む姿勢に変化が表れました。
自分一人で練習するのではなく積極的にほかの楽器の子に声をかけるようになったのです。
自分の演奏のどこが駄目なのかを知ろうとしていました。
どうすればリズムを合わせられるのか話し合いながらの練習。
晴喜くんが合図をしようと提案します。
マンボ!バイオリンの特訓を続けてきた茜さんです。
どうにか楽譜どおりには弾けるようになりました。
一緒に演奏するピアノと合わせる練習へと進みます。
弦を押さえる左手の指は皮がむけて真っ赤です。
それでも茜さんはピアノが演奏を始めるとすぐにバイオリンを手に取り練習を続けました。
演奏会に向けて茜さんには気がかりな事がありました。
8分の6拍子の曲「アメリカ」の次第にスピードを上げていくクライマックスの部分がどうしてもうまくいかないのです。
合ってない。
すぐにみんなで楽譜を囲みます。
自分のパートだけでなくほかの楽器がどう演奏しようとしているのか全員で確認し合います。
スピードを上げながら演奏を合わせるにはお互いのコミュニケーションが何より大切だと気付いたからです。
演奏会本番の日。
1,000人を超える観客の前での初めての演奏です。
(拍手)自分の気持ちを人に伝える事に積極的ではなかった晴喜くん。
仲間に声をかけて自分の演奏を見てもらいリズムを合わせるコツをつかんできました。
(一同)マンボ!バイオリンできれいな音を出す事に憧れてきた茜さん。
本当に美しい音はみんなの音が合った時に生まれると考えるようになりました。
8分の6拍子の曲「アメリカ」。
徐々にスピードを上げていくクライマックスが近づきます。
これまで完璧な演奏はできた事がありません。
(拍手)最後の1音まで初めてぴたりと合わせる事ができました。
(カメラマン)じゃあお願いしま〜す!こちらで〜す。
はいいきます。
12の3は〜い!これまで伝えたい事ややってみたい事を諦めてきた子どもたち。
「これからは自分の気持ちをぶつけてみよう」。
音楽と向き合う中で得た自信が背中を押そうとしています。
2015/12/13(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「届けたい 私たちの“ハーモニー” 鹿児島ろう学校 合奏に挑む」[字]
鹿児島ろう学校に通う12人の中学生が合奏に挑んだ。音の聞こえ方に差がある中で、自分の障害の度合いに向き合い、仲間をカバーしながら音楽を作り上げていく過程に密着。
詳細情報
番組内容
鹿児島ろう学校に通う12人の中学生が合奏に挑んだ。聴覚障害を持つため、生徒たちはこれまで音楽を自分たちには縁のないものとして遠ざけてきた。ピアノを習いたかったのに諦めていた女の子や、苦手なことから逃げ続けてきた男の子。そんな12人が力を合わせ、お互いの聴覚障害をカバーし合いながら音楽を作り上げていく過程に密着。自分の障害と向き合い、仲間とのコミュニケーションを通して成長していく子どもたちを追う。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
福祉 – 障害者
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