「NHK短歌」司会の剣幸です。
今日もご一緒に短歌を楽しんで下さい。
それでは早速ご紹介致します。
第二週の選者染野太朗さんです。
よろしくお願いします。
染野さん今日の一首は?生徒とのつらい関係を詠んだ歌です。
放送が12月という事で師走という事で教師の歌を持ってまいりました。
ありがとうございます。
さて今日のゲストをご紹介致します。
僧侶の白川密成さんです。
ようこそお越し下さいました。
よろしくお願いします。
愛媛県今治市からおいで頂きました。
四国八十八ヶ所霊場第57番札所栄福寺のご住職でいらっしゃいます。
よろしくお願い致します。
この秋白川さんのご著書が原作の映画「ボクは坊さん。
」が公開されて大ヒットになったという事ですがお写真をお借り致しました。
あれ?この後頭部は白川さんなんでしょうか?主演の伊藤淳史さんです。
伊藤さんは白川さんの指導を受けて撮影に臨んだとお聞きしました。
そうですね。
お坊さんの体の動きだとかお経の読み方あるいはしきたりって結構独特なところがありますのでできるかぎり私も現場に居させて頂いて「お坊さんはこういうふうにしますよ」というふうにお伝えしながら撮影を進めました。
現場というのは栄福寺そのものだったんですか?今回の映画はセットではなくて私が住職をしている栄福寺を現場にして撮影…お寺の外の風景も含めてですけれども全て現場で撮らせて頂いたので非常にその点もよかったですね。
すごい反響ものすごかったんじゃないですか?映画を見た方が結構現場の栄福寺に行ってみたいとか原作を読んでみたいとかそういう反響というのが思っていたよりもすごく大きかったですね。
染野さん原作読まれて映画もご覧になりました?原作もご著書も拝見しまして原作の方もそうなんですけれども白川さんご自身の生活とそれから仏教の教えというのが交互に出てくるというんですかね。
親しみを持ちながらご自身の生活に親しみをこちら読者として感じながら仏教の教えもスッと入ってくる非常に印象深いご本でした。
親しみがあるのはもしかしたら同じ年だからという事ですか?1977年生まれで同い年で白川さんはなんと24歳の時にご住職に。
そうなんです。
はい。
そうですか。
今日はですねご自身で短歌も作ってきて下さったので後ほど紹介させて頂きたいと思います。
お願いします。
では今週の入選歌ご紹介します。
一首目です。
白川さんこれいかがでしょうか?特に後半の「明日われがなくても回る地球」という言葉にはっとしたというかそういう視点を今まで持った事が自分自身なかったのでそういう視点を歌によって与えられた事によってちょっと自分が解放されるような居心地の良さのようなものを感じるすてきな歌だと思いました。
私も同じ感想を持ったんですけれども下の句ですよねこちらは自分の存在はちっぽけなんだという事を言ってるんだと思うんですよね。
でもそこで立ち止まって自分の思う人というんですかね何かを願っているのか思いは強くあるんですよね。
「立ち止まる」という事が何か一つ意思のある行動に見えるようなそういう印象深い歌でしたね。
では次です。
「蟷螂」というのはカマキリなんですけれどもカマキリがカマを振り上げてそれが祈る形に見えたと。
祈る形なんですけれども内実は攻撃をするわけでそこに矛盾があるわけですよね。
その矛盾をさびしさというふうに捉えてらっしゃるんですが何か一つ我々の生活のある部分の象徴にも見える。
味わえば味わうほど深い歌かなというふうに私は思いました。
では次です。
これも虫の歌で今回は「祈る」という題だったんですけれども虫の歌なぜかたくさん頂きました。
こちらもそうなんですが「風少し吹く」という辺りにおのずと侘しさがにじんできてそこが印象的な歌だなというふうに思いました。
では次です。
これはいかがでしょう?最初前半を読んだ時はもしかしたら少し重々しい生死とかをテーマにした重たい歌なのかなと思って読んでいたんですけれども後半読み進めると打球であるとか右中間っていうすごく爽やかでどこかポップな言葉が出てきて前半と後半の視点の置き方の跳ね方というかそれがすごく心地いいなと思った歌でしたね。
まさにそのとおりかと私も思いました。
野球ですよね。
応援しているチームが攻撃側で観客として祈ったんですよね。
そしたら打ったと。
そうすると祈ってた手が興奮して手が離れる。
そうすると「打球は伸びて右中間破る」って別にほどかれたから伸びたわけじゃないのにこんなふうに表現されると何か関わりがあるようにも見えてきて一首が不思議な空間になりますよね。
そこがやはり面白いなというふうに思いました。
映像がコマ送りのようにだんだん広がっていく感じありますね。
では次です。
これはものすごく怖い感じがして「祈る」という言葉と「高速コピー機」がわ〜っと積み重ねて…これどういう?多分就職活動か何かで落ちてしまう場合にも企業側から「今後のご活躍をお祈りします」なんて言われるそれを大量に印刷するわけですよね。
高速コピー機って無機質な感じなんですけれどもまさに祈りも全然中身が伴っていないような感じに見えて一つ現代の一場面を表しているんじゃないかなと思いましたね。
では次です。
これはどうでしょう?私は僧侶としての役割がありますのでまさにこの亡骸を柩に入れるシーンというのに数多くご一緒する事が多いんですけれどもそこで祈りっていうのは重なれば重なるほどどこか自分にとって重たくなってしまう事もあるというのはすごくよく分かるんですね。
その時にはもっと真っ白な状態でもっとゼロの状態でいたいというのがすごく率直でまたストレートで身に染みて分かるっていう本当にこう迫ってくるようなでもどこか爽やかな歌だと思いました。
まさにそのとおりかとやはり私もここでも思うんですが散文的ですよね言い方が。
すごくシンプルなんですけれども作者の祈りに対するこだわりというのが非常によく見えてくる歌だなというふうに思いますね。
では次です。
これもいかがでしょう?これもやはり私の僧侶という役割…亡くなった人とまた残された方たちとおつきあいする事が多いんですけれども亡くなった人そのものよりもその人が関わったもの例えば建物であったり考え方であったり食器であったりそういう身近なものがよりその人を想起させる事が私自身すごく経験する事が多いので何かいい歌だなと思いました。
咲かせてたのはもしかしたら自分かも分からないんですが祈りの相手だとは思うんですが具体的なその人に関する具体物ですよね。
その人だけに向けた祈りみたいなものがここで見えてくるかなと思うのとユリっていうのはキリスト教の聖母のイメージと重ねられる事も多いのでもしかしたらその辺りも意識されてるのかなというふうに思います。
すごく具体物のイメージで祈りを捉えてるっていう歌がこの歌がすごく特徴的で他にあまりなかったのですごく印象深かったですね。
では次です。
ラグビー選手の五郎丸選手なんですけれども今回本当に多くのご投稿を頂きました。
多分百首くらいあったと思うんですよ。
皆さんやっぱり「祈りのごとき」とおっしゃるんですね。
でもこの歌はちょっとやっぱり最後工夫してらして喚声でボールが浮いているというふうに言うんですよね。
ボールが浮く感じというのが祈りの神秘的な感じとちょっと響き合っているようでそのオリジナリティーがすごくいいかなというふうに私は感じました。
まさに今を映す歌だというふうに思います。
では九首目です。
結婚式でも何でもいいんですけどお祝いの場面か何かで乾杯の音頭をとる方が挨拶長くなっちゃったんですよね。
「では皆様のご多幸をお祈りして乾杯を」って言うまでが長かったもんで泡がなくなってしまったと。
「にけり」っていう言い方がちょっと大げさでここもユーモアにつながるかなというふうに思いますね。
以上入選九首でした。
それでは染野さんの特選を発表致します。
では三席をお願い致します。
田麻央さんの歌です。
では二席をお願いします。
清水峻さんの歌です。
それでは一席をお願いします。
武田穂佳さんの歌です。
「祈るとは立ち止まること」という発見と下の句との響き合いが非常に印象的だったのとちょっとこちらにお持ちしたんですが白川さんの「坊さん、父になる。
」というご本があるんですけれどこちらに白川さんが「祈りとは時間をかける事」というふうにおっしゃるんですよね。
それとも響くところがあって私は非常に印象的な歌として採らせて頂きました。
ありがとうございました。
以上入選作品のご紹介でした。
続いて「入選への道」投稿作品から惜しかった一首を添削します。
作品はこちらです。
実はこの方は今回多くの挽歌をご投稿下さったんですね。
その中の一首なんですけれども一つ気になったのが「独り逝く」の部分なんですね。
現在形で書かれているので場合によってはこれから亡くなるというその場面を描いてるようにも見えてしまうという事でここでは時制をはっきりすると一首の輪郭が際立つかなと思いましてこのようにしてみました。
これではっきりしたと思いますし「君が」の「が」が主格なのか所有格なのかというのも今回細かいんですけれどもはっきりさせてみました。
いかがでしょうか?ありがとうございました。
どうぞ参考になさって下さい。
では投稿のご案内です。
続いて選者のお話です。
今日もですね体の感覚にこだわった読み方をしてみたいと思うんですけれども介護の場面なのかも分からないです。
自分のお母さんがそのまたお母さんに対してお母さんに会いたいと言っている。
自分はその母親をさすっている。
背中なのか腕なのか分からないですけれども意識はそれぞれ違う方向を向いているんですよね。
だけれども体の感覚を使って感じようとすると手とどこかお母さんの体と触れていてそのぬくもりはやっぱり伝わってくると思うんですよ。
そうするとそのぬくもりはあるのに意識は別々になっているという事がよりはっきり感じられると思うんですよね。
その悲しみといいますかまあ寂しさですよね。
そういったものが体の感覚を使って読む事によってより際立つ歌なんじゃないかなというふうに思いまして持ってきました。
ありがとうございます。
実は染野さんのテーマの「こころ・ことば・からだ」白川さんにもとてもなじみが深いそうなんですけれども。
ちょっと書いてみたんですけれども私が修行したのは仏教の中でも密教という教えなんですけどもその中で「三密」という考え方というか言葉が出てきましてそれは「身口意」を表すんです。
つまり身口意というのは身…からだ口というのは言葉であったり言葉を使った真言であったり意というのはこころ意識イメージのようなもの。
これを密教では「三密」と言いましてその3つを使って仏様の修行をするという密教でも根本になるような考え方なんですね。
ちょっとびっくりなんですけどご存じでした?それが私知らなかったんですよね。
今回白川さんのご著書を拝見して初めてあっこういうのがあるんだと思って今まさに私が考えてるテーマと一緒だなと思いまして驚きましたね。
今日は僧侶で栄福寺ご住職の白川密成さんお越し頂いてますがホームページやブログそしてラジオでもご自身の言葉で仏の教えを発信されております。
そして今日はこちらにTシャツをお持ち頂きました。
ワオ!って感じですよね。
これは?コピーが「Sometimesmynameisyou」という「時々私の名前は君だ僕の名前は君だ」という私がちょっと体験の中で太陽を見つめてあっ仏教が言いたい事ってもしかしてこんな事でもあるのかなっていう思いを受けた言葉なんですね。
だからますます素直にそれをお寺のTシャツにしてみたんです。
真ん中の文字はどういったものなんですか?これはサンスクリット語で「あ」という字でして密教では「あ」という言葉をすごく大事にするんですね。
「あ」という文字を思い浮かべる阿字観というんですけど瞑想なんかもしたりするのですごく根本になる言葉なので「あ」というひと言を据えてみました。
白川さんのご本の中にまさに先ほどおっしゃった体験ご体験なさったという部分が書かれてますので是非今日は剣さんにご朗読頂ければと思います。
ではその一節をご紹介致します。
それでこのTシャツ…。
そうなんです。
実はですね私この部分にすごく感動しましてこの番組では初めてかと思うんですが歌をせん越ながら作らせて頂きました。
こういう歌です。
夕空がこう自分より自分に見えた。
そういった思いがあふれてきたんですよね。
あふれてきたところでやっぱりこう「Sometimesmynameisyou」なんですよね。
夕空と自分とそれから何か他者と言うんですかねどのあなたか分からないですけれども「自分以外のあなた」というのが混然一体となるというかそういった感覚を平仮名なんか使ってやれたらななんて思いました。
はいいかがでしょうか?よく短歌というのは僕とあなただけで終わってしまうような歌が結構多いと思うんですけどそこに夕空っていう自然のものまた人が昔から神みたいな感じで感じてきたものが入り込む事によって何か混然一体としたよく分からないでも心地よい感じというものになったような気がして僕はすごく作品で歌を詠んで頂いたの初めてなので感激をしました。
ありがとうございます。
白川さんのお好きな歌を一首ご紹介下さい。
この歌はどういうふうに?ぱっと歌の中の印象として細部よりも自分の心の中に海のブルーと山の鮮やかな緑色というのがばっとこう胸に迫ってくるような気がしたんですね。
私自身も文章を書く時にトレースっていう感覚自分の心をそのままストレートに写すという事をすごく意識して書く事が多いので子規が作品を書く中で写生っていうものを追求されたという事を後付けなんですけどあとで知っておこがましいですけれどもちょっと分かるかもというか共感する部分が強かったですね。
これは正岡子規が明治19年に中禅寺湖の辺りを旅した時に作った歌なんですけれどもまさに写生の歌になるかなとも思うんですがそのまま写すってすごく難しいんですよね実は。
「そのまま」っていうのはすごく簡単に聞こえるんですが実は一番難しい。
歌作っててもここはそのままいきたいなと思ってもそのままって深く考えれば考えるほど何がそのままなのかよく分からなくなるようなそういったところもありますよね。
そうですね。
そして白川さん今日は投稿のテーマ「祈り」でも短歌を作ってきて頂きましたのでご紹介下さい。
私は二首目を特に印象的に感じたんですけど白川さんはこれどういうようなおつもりで作られたんですか?実は短歌を作るのは中学校以来で非常にお恥ずかしいんですけど人を亡くした時っていうのはあるとかないっていう感情がすごく行ったり来たりしてすごく問答があるんですね。
あるのか?でもいてくれると。
でもそこをもう離れてやるしかない事がある。
そこに出てくるのが最終的に祈りなのかな言葉を超えた部分にある認識を超えたところにあるのが祈りなのかなと思って自分自身そういう場所に立っているので祈りに対する自分の思いを歌にしてみました。
白川さん今日短歌に触れてみて感じた事を教えて頂けますか?弘法大師空海の言葉を思い出したんですけれどもそれは「去去として原初に入る」という弘法大師の言葉なんですね。
どうしても創作をしていると付け加えたりいろいろ足したりして加えようとしてしまうんですけれども弘法大師は「去去として」去って去ってしかも元の部分に入っていくという言葉が残されていてすごく好きな言葉なんで何か創作を通じてこの言葉を思い出しました。
歌の一つ先ほどは写生という事で自分の外部を描くんですけれどおっしゃってる事はやっぱり内側を深く見つめていくという事だと思うんですよね。
すごくそれって私は豊かな時間だと思うんですけれどもねそれで歌に仕立てていくというのは私にとっても大げさですけど喜びのようなところがあって歌を読み終えると何かほっとするような感じもするんですよね。
短歌ってどうしても飾りたいような気になっちゃうけどそれをそぎ落としてそぎ落として言葉にするという…。
一つ表して下さってますよね。
まさしくそのとおりだなという。
内に籠もってそこでまた開いていくような感覚ですね。
そろそろお時間になりました。
もっとたくさんお話聞きたかったです。
今日はゲストに僧侶の白川密成さんお迎えしました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
染野さんまた次回もよろしくお願い致します。
ではまた来週。
2015/12/13(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「祈る」[字]
選者は染野太朗さん。ゲストは僧侶の白川密成さん。白川さんは映画「ボクは坊さん。」の原作者。見たままをシンプルに書くことが信条の白川さん。短歌にも通じるという。
詳細情報
番組内容
選者は染野太朗さん。ゲストは僧侶の白川密成さん。白川さんは映画「ボクは坊さん。」の原作者。見たままをシンプルに書くことが信条という白川さん。その心得は短歌にも通じるという。【司会】剣幸
出演者
【ゲスト】僧侶…白川密成,【出演】染野太朗,【司会】剣幸
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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