日韓政府、関係好転を期待…無罪判決
産経新聞前ソウル支局長の無罪判決を受けて、日韓両国政府とも関係改善に向けた期待感を示した。懸案の慰安婦問題に関する外務省局長協議は年明けに持ち越されており、協議への影響が注目される。
「無罪判決が出たことを評価する。日韓関係に前向きな影響が出てくることを期待したい」。安倍晋三首相は17日夕、首相官邸で記者団にこう述べた。外務省幹部は「ほっとしている。執行猶予でも日韓関係にとっては厳しかった」と打ち明けた。
慰安婦問題で対立する日韓両国だが、11月に首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領との初の首脳会談がソウルで実現し、関係好転の兆しが出ている。日本側は、今回の判決はその流れに沿ったものと受け止めている。
ソウル中央地裁が11月に予定していた判決を延期した際、日本政府関係者は「韓国側からの前向きなメッセージであることは間違いない」と語っていた。ただ、事前に判決内容が日本側に伝えられることはなく、外務省は判決結果について、無罪のほかに、執行猶予付き有罪、実刑の計3パターンを想定していたという。
「日韓関係を推進していく上で良い影響をもたらすことを期待したい」。岸田文雄外相は記者団にこう述べ、慰安婦問題の進展に期待感を示した。
一方、韓国政府当局者は17日、日本側記者団に対し「この事案は基本的に司法の問題で外交問題ではないが、韓日関係の負担となっていたことも事実だ。今回の判決が両国関係改善の契機となることを期待している」と強調した。
「司法と行政は別」との建前を取りつつも、当局者の発言からは「裁判では(日韓関係のために)我々が努力した」との思いがにじむ。11月の日韓首脳会談では慰安婦問題について、今年が日韓国交正常化50周年であることを念頭に「できるだけ早期の妥結」を目指すことで合意した。今回の法廷で読み上げられた韓国外務省が作成した文書でも今年が50周年であることを繰り返し強調している。12月も半ばを過ぎ、韓国側にも当初期待した「年内妥結」は困難との認識はあるとみられるが、今後の協議の場で韓国側が日本側に一層の努力を求める可能性はある。【小田中大、ソウル米村耕一】