デザイナーだからこそ思う。
Webは面倒くさくて、本当にイケてない。
わたしはWebデザイナーとして働いているから、Webについての色々な事を当たり前だと思い込んで何の疑問も抱かなかった。
しかし、冷静に考えてみると、おかしいことだらけだ。
Webデザイナーは、デザインするのが仕事だ。
コンテンツの魅力を最大限にエンドユーザーに伝えるべく、情報をデザインする。
Webデザイナーは、コンテンツの質を高めることに注力しなければならない。
だが、現状はどうか。
本来ならデザインに集中すべきなのに、なぜブラウザの差分に振り回されたり、SEOを気にしながらWebコンテンツを作らなければならないのだろうか。
ブラウザもSEOも「手段」であるはずなのに、わたしたちはいつも「手段」に振り回されている。
特に、SEOなんてひどい話だと思う。
なぜ、人間側が検索エンジンに合わせなければならないのか。
あなたは、それを傲慢だと思ったことはないだろうか?
Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)ではなく、本当ならSearch Human Optimizationであるべきではないだろうか。
検索エンジンに優しい作りにするのではなく、人間に優しい作りであるべきだ。
Googleもそれを目指して検索エンジンを改善しているはずなのに、Web業界の多くの人間はその意に反して、人ではなく検索エンジンに擦り寄っていく。
また、ひとつのWebコンテンツを作るために、どうしてバラバラにたくさんのことを管理しなければならないのだろう。
HTMLで構造を定義して、CSSで体裁を整えて、JavaScriptでモーションをつけて…と、とても面倒だ。1つにまとめてほしい。
例えば、FlashだったらFlashというプラットフォームでデザインしたものをそのまま表示してくれる。
これはデザイナーにとって理想の形だと言える。
Webコンテンツの用途としてのFlashは廃れて、HTML5最高!JS最高!となったのはいいけれど、最近それによって「手段」と「目的」がすり替わってしまっているように思う。
Flashの全盛期は、デザインとしての「表現」を模索していたけれど、最近はHTMLとJSで既存のものをどれだけ再現できるか…という「手段」で競い合っている気がする。
今フロントエンド界隈でイケてるとされているモーショングラフィック的な表現も、既に世の中に出た表現法の焼き直しに過ぎない。
アウトプットだけ見れば、昔からあったものばかりだ。
Web業界では、ここ最近になって、やたら「UI/UX」という言葉を耳にするようになった。
だが、ゲーム業界だとそもそも「UI/UXを意識してデザインしましょう」なんてのは当たり前の話だし、彼らからすれば「え、いまさら?」という感じだろう。
Webデザイナーは、わたしも含めて、身近に実践されているワークフローが当たり前のものであるとすっかり信じ込んでしまっている。
だから、身近に触れているWebデザインというものに対して違和感を持たないのかもしれない。
しかし、誰でも一度はこう思ったことがあるはずだ。
「PhotoshopなりSketchなりでデザインしたら、そのままそのレイアウトを実現する綺麗なソースを吐き出してくれたらいいのに」と。
なのに、そうはなっていないから、マークアップしたり面倒くさいことばかりやらなければならない。
ちなみに上の一言は、わたしが職場でデザインしているUIをコーディングしてくださっているエンジニアの方がふと漏らした言葉だ。
わたしはそんなこと、これまで考えたこともなかった。
だが、その通りだ。
なぜ一度画面上で作ったデザインを、またHTMLやCSSで構築しなおさなければならないのだ。
こんなの、全然クリエイティブじゃないと思う。
Webという規格には欠陥がある。
AppleでもGoogleでもいい。市場を独占してくれても構わない。
Webを潰して、新しい規格を作ってくれないだろうかと、たまに思うことがある。
デザイナーが、インターネットを通して価値のあるデザインをエンドユーザーに届けるために。
手段ではなく、目的を達成するための創造的な仕事だけに時間を割くことができるように。